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天の瞳(184KBytes)

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天の瞳(184KBytes)
天の瞳
著者:灰谷健次郎
書名:
出版社:角川書店
出 版 年 月 : 1998 年 2 月 ~ 2009 年 7 月
総 ペ ー ジ 数 : 2982 ペ ー ジ ( 全 9 冊 )
ISBN: 4 04 8 73 09 67( 幼 年 編 Ⅰ ) 40 4 87 30 97 5( 幼 年 編 Ⅱ )
「
4 0 48 7310 0 9( 少 年 編 Ⅰ ) 404 8 73 15 99( 少 年 編 Ⅱ )
4 0 48 7320 4 8( 成 長 編 Ⅰ ) 404 8 73 28 62( 成 長 編 Ⅱ )
4 0 48 7337 9 6( あ す な ろ 編 Ⅰ )4 0 48 73 5128( あ す な ろ 編 Ⅱ )
4 0 43 5203 7 9( 最 終 話 )
推薦者
田村隆宏
鳴門教育大学大学院教授
幼年発達支援コース
趣味といえば現実逃避系一辺倒の私にとって読書は最も大切なものの一つです。本の中
でも読めばすぐに現実から引き離され,別世界に誘ってくれる小説を最もよく手にとるこ
とから,推薦図書ももちろん小説から,と考えついたまではよかったのですが,お薦め作
品があまりにも多すぎて,1つを選ぶのに大変苦労しました。私が神と崇める宮部みゆき
作品の弱者へのエールに満ちた癒しの世界は絶対にお薦めですし,かつて高校の国語教師
をしながら覆面作家をしていた北村薫氏の心温まる作品も捨てがたい。重松清氏の子ども
に対する優しさ溢れる学校物も魅力満載ですし,どんな題材でも楽しく読ませてくれる百
田尚樹氏の作品も・・。と散々悩んだわけですが,ここでの推薦図書はこれらお気に入り
作家達の作品を敢えて外して,教師を志す本学の学生諸氏に是非とも読んでほしいもの
で,かつ私の心にも深く残っている作品ということで1つを選びました。
そ の 作 品 は 灰 谷 健 次 郎 氏 の 遺 作 「 天 の 瞳 」 で す 。 代 表 作 「 兎 の 眼 」 や 「 太 陽 の 子 」,「 わ
たしの出会った子どもたち」ではないのを意外に思われる方があるかもしれませんが,敢
えて未完の超大作「天の瞳」なのです。この作品の大筋は倫太郎という主人公の幼児期か
ら中学生時代までの成長物語なのですが,当初,いわゆる「気になる子」であった倫太郎
やその仲間達が周囲の様々な魅力的な人物とのかかわりの中でしっかりと成長していく
姿が数々の印象的なエピソードを交えながら丹念に描かれています。読み進める中で,読
者は既成の子ども観を大いに揺さぶられ,望ましい教育のあり方について改めてじっくり
と考えさせられることでしょう。
少 し ネ タ バ レ に な り ま す が ( 未 読 の 方 は ご 注 意 下 さ い ), 終 盤 , 倫 太 郎 の 在 籍 す る 中 学
校で大きな問題が発生し,その解決に向けて倫太郎やその仲間達が教師や保護者をも巻き
込んで動き出そうとしているところで,ストーリーは未完のまま終わってしまうのです
が,未完であるが故にその結末を知りたかったというあまりにも大きな渇望感からかえっ
て心に深く残るものがあるのです。残念ながら作者病没のために完結されなかったわけで
す が , 私 に は , こ の 作 品 が 未 完 で あ る こ と に ,「 こ の 解 決 の 有 様 は 教 育 に 携 わ る 方 々 の そ
れ ぞ れ の 心 の 中 で 思 い 描 い て 日 々 の 実 践 に 活 か し て 下 さ い 。 私 は 見 て い ま す よ 。」 と い う
灰谷氏の天からのメッセージがあるようにも思われて,改めて「天の瞳」というタイトル
が至極意味深長なものに感じられるのです。
幼年編,少年編,成長編,あすなろ編が各2巻ずつに,灰谷氏没後に遺稿を集めた最終
話と9冊分にもなる超大作ですが,長さを全く感じさせないどころか,まだまだずっと倫
太郎の成長を見続けたかったとさえ思わせます。小説好きの方に生涯ベスト1作品を尋ね
たところ,この「天の瞳」を挙げた方が何人かありましたから,お薦めに間違いはないか
と 思 い ま す 。是 非 手 に と っ て 子 ど も や 教 育 に つ い て じ っ く り と 考 え て み て 下 さ い 。そ し て ,
読後の渇望感を将来発揮される教育実践力の糧にしてもらえれば,こんなに嬉しいことは
ありません。
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