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第1部 高速・高精度の位置決め設計の勘どころ
特集 高精度・高スループットを実現する精密位置決め機構設計 第 1 部 高速・高精度の位置決め設計の勘どころ 総 論 精密・超精密・高能率位置決め 技術トレンド 静岡大学 大岩 孝彰* *おおいわ たかあき:大学院工学研究科 機械工学専攻 光 電・精密コース 教授 URL:http://oiwa.eng.shizuoka.ac.jp/ め制御を行っている。要求される精度や速度を実 はじめに 現させるためには,適切なアクチュエータ,案内 位置決め技術は,加工機,組立てなどの製造装 要素,運動伝達要素,センサおよび制御コントロ 置や検査・測定装置に必要な技術であり,アクチ ーラを選択する必要があるが,その種類・組合せ ュエータ,案内要素,センサおよび制御技術など は膨大であり,外乱や内乱(振動・熱など)など の幅広い機械・電子技術の集大成である。特に超 も加わり要求仕様を満足させることは年々困難に 精密位置決め技術は半導体製造装置を頂点とした なってきている。 精密機械産業を支える基盤技術の一つであるが, 精密工学会超精密位置決め専門委員会1)は 51 社 精密な運動だけではなく高速化つまり単位時間当 の法人会員および 43 名の個人委員(2014.4 現在) たりの処理能力(スループット)向上の要求が厳 からなり,超精密工作機械や半導体関連の超精密 しい今日では重要な技術となっている。 位置決め技術の情報交換会を年 5 回行っている。 図 1 は一般的な位置決め装置の構成を表してい さらに 1986 年以来 4 年ごとに「超精密位置決め る。リニアボールガイドや静圧空気案内などの案 アンケート」を実施し,位置決め技術の現状と変 内要素でガイドされた位置決め対象物であるテー 遷,また現時点と将来的に発生する具体的な問題 ブルを,モータなどのアクチュエータで運動方向 点などについて調査・分析を行ってきた2)~6)。ア に駆動する。図 1 ではテーブルの変位をセンサに ンケートの対象装置は,機械要素全般から測定機, よって計測し,アクチュエータへフィードバック 半導体検査・製造装置,超精密加工機,工作機械 して目標値からの偏差が最小となるように位置決 などから組立て調整装置・ロボットや情報機器関 連装置まで幅広い領域にわたっており,本誌読者 外乱 (熱・室温変動) 運動伝達要素 アクチュ エータ が位置決め装置を設計する際の重要な参考資料と なると思われる。本稿では主に 2010 年に実施さ 制御コントローラ 運動の方向 テーブル・ 位置決めの対象 内乱 (振動) 位置センサ れた第 7 回アンケート結果7),8)に基づき,位置決 め技術トレンドについて解説する。 回答者が関心を持っている装置 内乱(熱) 外乱(振動) 構造体 案内要素 図 1 位置決め装置の構成 14 2010 年調査時の回答者は位置決め専門委員会 委員のほか,生産自動化専門委員会委員,工作機 械関連協会会員などであり,所属は企業技術者約 79%,大学・高専など約 15%,公的研究機関約 4 機 械 設 計