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標準化と知的財産 ~最適なバランスと求めて
信学会ソサエティ大会 パネルセッション(於、北海道大学) 標準化と知的財産 ~最適なバランスを求めて~ 2011年9月15日 大阪工業大学大学院知的財産研究科 平松 幸男 内容 • • • • • • • 標準化活動の多様化 標準化組織のIPRポリシー IPRポリシーの問題点 パテントプールの問題点 オープンソースの問題点 ホールドアップ問題の解決案 まとめと今後の課題 2 標準化活動の多様化 • 国際標準化 – ISO、IEC、ITUにおける標準化(デジュール標準) • フォーラム・コンソーシアム – 先進国の民間企業が主体的に進める標準化 – 技術の初期市場をとることが目的 – その後、国際標準化 • デファクト標準化 – 一企業が単独でしかける標準化 – 複数企業の連携も 3 標準化団体におけるIPRの取決め IPRポリシー: (技術標準に含まれるIPRの許諾条件) 無償(RF) 非差別合理的条件(RAND) (許 諾 範 囲 ) メ ン バ 非 メ ン バ 標準化する (注)技術標準の普及の観点から 非メンバにも許諾する 許諾不可 標準化 しない 問題: 1. 非メンバ所有のIPRの取決めができない 2. 「合理的条件」の程度が不明確 4 ITU-T特許宣言書の概要 (ISO、IECも共通化) 特許所有者 宣言書 提出 ① ③ DB ② オプション: 特許使用者 ITU-T (TSB) 参照 ④ 当事者間でライセンス交渉(ITU-Tの外) オプション1: 互恵主義条件*1)付無償 (RF)*2) サブオプション: オプション2への変更条件*3) 標準化 オプション2: 互恵主義条件付非差別合理的条件 (RAND) オプション3: 許諾しない 標準化しない *1) オプション3を選んだ企業に対してはこの宣言を撤回する権利 *2) 金銭のやり取りがないことを意味し、権利放棄ではないので契約は必要 *3) オプション2を選んだ企業に対してはオプション2に変更する権利 5 フォーラム・コンソーシアムのIPRポリシー比較 SSO W3C Scope Web Kantara Digital ID SSI Server Sys. Home Grid Home Net. Essential IPR Licensee Patent Software RF RF Not Limited RF RF (Apache V.2) Not Limited RF or T&C RF Member and its affiliates T&C RF Member and its affiliates RF: Royalty Free, T&C: Under Terms and Conditions (not free) 6 パテントプールの活用と問題点 ライセンサー (コンソーシアム) G.729, MPEG2 Visual, MPEG4 Audio, DVD, 3G Licensing 効用 • ライセンス交渉の効率化 • ロイヤルティの適正化 • アウトサイダー特許問題 の軽減 MPEG-LA, Sipro, Via Licensing, アルダージ 特許登録 ロイヤルティ 分配 管理会社 必須特 許認定 ライセンシー ライセンス (ユーザ) ロイヤルティ 回収 ライセン ス交渉 問題点 • プール外交渉による累 積ロイヤルティの増大 (例、3G) • 独禁法抵触の可能性 改善の方向 • RANDの明確化 • ロイヤルティ低減 の仕組み(例、Ex Ante宣言) 7 7 オープンソースソフトウェアとは? • ソースコードを利用し、複製・修正して再配布 することが可能 • 配布されるソフトウェアは無料または有料に て提供される • エンドユーザがソフトウェアに変更を加えた場 合、それらの変更を個人的なものとして保持 しておくことも、将来的にその変更がソフト ウェアに反映されるようにコミュニティに還元 することも選択可能 (注)詳細はOpen Source Initiative (OSI)のサイトを参照 http://www.opensource.org/docs/osd 8 OSSライセンスの3つの類型 OSSライセンスのカテ ゴリ・類型 改変部分のソース コードの開示 他のソフトウェアの ソースコードの開示 コピーレフト型ライセ ンス (代表: GPL) 要 要 準コピーレフト型ライ センス (代表: MPL) 要 不要 非コピーレフト型ライ センス (代表: BSD License) 不要 不要 (注)OSSライセンスは、現在100 以上存在していると言われており、OSIは、 2009 年10 月29 日時点で65 種類のライセンスを認定している 9 オープンソースに含まれる特許 • GNU GPL3, MPLの特許規定: – ライセンサーは自身が所有する特許を無償で許諾 • アウトサイダーが所有する特許については未解 決 • 過去の訴訟事例 – SCO vs. Lunuxコミュニティ: 2003 年3 月Linux がSCO 社のUNIX コードを不正に組み込んでいるとして、SCO 社がIBM を提訴。その後、他のLinux のディストリュー タやエンドユーザなどに対してもライセンス料の支払 いを要求 米Novell がUNIX に関する知的財産権(著作権、特許 権)を有しているため、請求は無効 10 ホールドアップ問題の解決案 • ホールドアップとは: 標準に含まれる特許の所 有者(アウトサイダー)が標準の制定後に現れ、 法外なロイヤルティを請求。または、パテント プールの場合、累積ロイヤルティが法外の場合 • 本稿では、オープンソースにもホールドアップの 概念を拡張 • RANDに基づく特許許諾をIPRポリシーに含む標 準化組織、特許無償許諾を規定するOSSに対し て、特許権の行使に一定の制約を適用(RAND/ 無償許諾義務、差し止め禁止など) – ただし、RANDの明確化 – OSSについては適用するライセンス形態を限定 11 ホールドアップに関する米国の動向 <プロパテントの見直し傾向> • ヤングレポート(1985年): プロパテントへ • パルミサーノレポート(2004年): 特許(IP)シ ステムと標準化の最適化、特に、標準化やパ テントプールを用いた特許の活用を強調 • DOJ/FTC共同報告書(2007年): 特許品質の 向上を提言、Ex Ante宣言を許容 • FTCによる訴追: Dell(同意審決、1995年)、 Rambus(FTCが敗訴、2009年) • eBay最高裁判決(2006年): CAFCの差し止 め請求認容を却下し、地裁に差し戻し 12 まとめと今後の課題 • 標準やオープンソースに含まれる必須のアウ トサイダー特許の問題を検討 • 次の条件の場合、特許権に制限(特に、ホー ルドアップの回避のため)を与えることを提案 – 不特定多数のライセンシーに対してRAND、また は無償の許諾が宣言されている – アウトサイダー特許の権利制限が競争を妨げな い • 日本のような大陸法の中でどのように法制化 するかは今後の課題 13