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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅

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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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労働市場における差別(1) - レスター・サロゥの「ジョブ
・コンペティション・モデル」の意義について -
脇坂, 明
經濟論叢 (1980), 125(1-2): 91-109
1980-01
https://doi.org/10.14989/133801
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
経
務
騎
萄1
25巻
第 1・
2号
予 算過程 論 と財政 民主主義 ・
-・
最
惇
1
美
彦
1
6
房
雄
4
6
鳥
茂
71
坂
明
9
1
--池
上
比較生 産 費説 ・国際価値 論 ・貿易利 潤 (
上 )I
l
l
-・
本
山
-・
・
加
藤
不 確実 性 下 におけ る公 共投 資 の割 引率 -- ・
-∴
羽
労働市 場 にお け る差別 (
1)・
・
19世紀 末 ドイ ツにお け る 「本源 的 蓄積 」 と
土 地所 有 (
1)・
・
・
=-脇
昭和 55年 1・2月
東邦 大夢絃 衝撃曹
(91) 91
労 働 市 場 にお け る差 別 (
1)
-
レスタ- ・サ ロ ゥの 「ジ ョブ ・コンペ
テ ィシ ョン ・モ テル」 の意 義 につ い て-
脇
Ⅰ は
じ
め
坂
覗
に
1960年 代後 半か ら1970年 代 にか け ての /メ 1
)カ合 衆 国に おけ る人 種差 別 -女
性 差 別 の解 放 運動 は, 既存 の'
労 使関 係 シス テ ムに大 きなイ ムバ ク 1
、を与 えた.
政 -労 ・侯 の三者 構 成 の- - ジ ェン トに よるル ールの枠組 か らはず れ るマイ ノ
リテ ィ運 動 ・女性解 放 運動 は, 労働 問題 にお け る差別 問題 の重要 性 を垣頁在化 せ
しめ る こ とに な ったO い まや世 界的 に差 別 を抜 きに して労働 問題 は語れ ない と
い う状 況 で あ る。
さて労働 問題 にお い て労働 市 場分 析が重 要 な こ とは言 うまで もないが ,差 別
の問 題 に 関 して も然 りで あ るo 労働 市場 分 析 の基 礎 となる労働 市場 理論 は,60
年 代後 半 頃か ら大 きな転換 期 を迎 えてお り, と くに デ 1
)ンジ ャー- ビオ l
)の 内
部 労働市 場論 は多 くの注 目を集 めて い る. 日本 に お け る研 究状 況を見 て も内部
労働 市場 論 の影響 は大 き く′ 内部 労働市 場論 が 日本 に紹 介 され て以来, 労働 市
場 分 析は企業 内労働 市場 の研究 に方 向が定 ま った感 さ えあ る。 それ はそれ な り
に結 構 な ので あ るが, 差 別 分 析 の重 要性 ・必 要性 か らすれ ば この研 究方 向は不
満足 な と ころが 多 いo そ こで原 点 に立 ち帰 る意味 でデ リンシ ャ ー- t
=
'
オl
)の 内
部 労働市 場論 構 築 の問題意 識 を再 検討 してみ よ うO彼 らの研 究 成果 を下 敷 に し
て 「年功 制諭 の再 検討」 を振起 され た隅 谷≡ 善 男 氏が,彼 らの理論 を次 の よ う
に評 価 され て い るO
「かれ らの労働 市場 論 に おけ る理 論的 オ リジナ リテ ィは, (内部 労働 市場 論
9
2 (92)
第1
2
5巻
第 1 2号
とい うよ りも) む しろそ の二 重構 造論 に あ る といわ ねば な らないo
・・
・
6
0
年
代 以降 の労働市 場 問題 は この第二 次市 場 を め ぐって展 開 され た とい って も過
言 で な く, それ ゆ え, デ リンジ ャー, ビオ l
)の諸論 文 も多 くこれ に触 発 され
て展 開 され てい るの で あ るが, この第 二 次 市場 か ら第一 次市 場 の 内部 労働 市
場 まで を含 めて, 労働 市場 の総体 を新 しい 問題 意識 の も とで,統 一的 に分 析
した と ころに, かれ らの寄与 が あ る とい って よいで あ ろ うO」⊥
) (カ ッコ内は
引用者 補足)
そし7
=彼 らの 「新 しい 問題 意識」 とは,
「黒 人 労働 問題 や停 滞的 失業 者 層 の問 題, さ らには各種 の賃 金格 差 の問題 を
解 決 し,新 しい労働 市場 論 と賃金 論 を構成 しよ うとす る こと」2)
に あ った ので あ るD
以 上 の事 を 念頭 に置 いた上 で 「労働 問 題 に おけ る差 B
I
J
」 の問 題 に接近 す る本
稿 の対 象 の限定 と方 法論 を述 べ よ う。 まず 内部 労働市 場論 の想 定 に した が って
企業 組織 は最下位 の職 務 で のみ外 部か ら労働 者 を 調達 す る と し, そ の 置 入 口
(
por
t
sofent
r
y) で の メカ ニズ ムの考 察 を薙 稿 の対 象 とす る。 これ は狭 義 の労
働市 場論 とい うこ とに な るが, 従 来 の と異 な るの は 内部労働 市 場論 を,
しま えた
うえでの労働 市場 論 で あ る とい うこ とだO結 論 を先取 りす れ ば, シ ョ7 ・コ ン
一
ob compet
l
t
l
On model,以下 ,JC モ デル と略 すO)に
ペ テ ィ シ ョン ・モ デル (
よって雇 入 口での メカ ニズ ムを考察 で き る とい う ことであ る。
次 に, 雇 入 口で の メカニズ ムを差 別論 的 に み るア ブ p-チを とる。 これ は 上
に述 べた デ リ1
/ジ ャー- ビオ l
)の問題意 識 の延長 線 上 に あ る もo で,_ 重構 造
)
蘇 - の視 野 も持 ちあわ せ る こ とを意 識 して と られ た 7 ブ ローチ で あ るO つ ま り
雇 入 口で いか な る差別 が作 用す るか を見 る こ とに よ り, 労働市 場 構 造 の形成 ・
展開 ・解 体 の論 理 を探 る出発点 が与 え られ る ことに な るの では ないか と思 われ
るO 雇 入 口で の差 別 に対 象 を限 定す るこ との意 味 を敷 延 しよ うO い ま, 三 つ の
1
) 隅谷三吉男 「
労働経済の理論」昭和51年,198-1
99べ11
㌔
労働市場における差別 (1)
(9
3) 9
3
局 面 で の差 別 を考 え る。 労働 市場 (
雇 入 口) に 労働 者 が 入 って くる前 にお け る
pr
ema
T
keldl
S
C
r
i
mi
差 別, 即 ち教育 機会 な どでの差別 を 「市場 以前 の差 別」(
l
On) と名 づ け る。 次 に 「雇 入 口で の差 別」 が あ り, 第三 番 目に企 業組 織 内
nat
で の昇 進過 掛 こお け る差 別, つ ま り 「企業 内選抜 で の差 別」 が あ るO これ ら三
つ の差 別 は互 い に密接 に 関連 して い るけれ ども,一 応 異 な った論 理 の もとに展
開 され る と思わ れ る。 そ して雇 入 口で の差 別 を考 え る こ とは, 差 別論 総合 化 へ
の ワン ・ス テ ップ とな るので あ る。 つ ま り三 つ の局 面 で の差 別 の論埋 をそれ ぞ
れ 確 定 し, それ らをつ き合 わ せ て関連 を見 る こ とに よ り′ ひ とつ の大 きな論理
に なれ ば 中身 の濃 い差別 論 が 出来 上 が る こ とに な る。
以上 ,差 別 と労働 市場 との連 関 を見 る こ との重要 性 を述 べ たが, この こ とは
「差 別」概 念 の 明確 化 へ の布 石 と もな る。 「差 別」 概 念 は論 者 に よ りま ちま ち
で あ る どころか′一 人 の論者 で さ え も撮乱 して使用 して い る。 だ か ら,f
侍に政
・い うこ とは
策 論議 では議論 に な らない場 合 が 多いO 芦 別の概 念 を 明確化 す る 2
差 別撤 廃政 策 の評価 に不 可欠 な こ とで あ り,差 別 撤 廃政 策 は 労働 市場 政策 と密
接 に関連 して い るの で,経 済 政 策 の評価 に もか かわ って くるので あ る。
C モデ ルが 出て
木 稿 の構 成 を述 へ る と, まず 労働市 場理 論 の系譜 を追 って J
Cモ デル
くる理 論的 背 景 を見 る。 そ して, 労働 市場 論 の理論 的到達 点 と して J
C モデ ルを詳 し く展
を と らえる。次 に, まず サ ロ ウの問題 意識 を述 べてか ら J
C モ デル の有 効性 を考 察す る。以上
開 し, 最後 に労働市 場構 造 との関連か ら J
C モデル の雇 入 口にお け る労働 者選 抜方 法が 「統 計的 差別 」
で展 開 され た J
(
s
t
a
t
l
S
t
l
C
a
ldl
S
C
r
l
ml
nat
l
On) であ る こ とか ら,J
C モ デル と差別 との連 関 を次
に考 察 す るO そ して 「差 別」 の意 味 .定義 に関 して検討 を行 な うO 最後 に 以上
の議論 をJlまえて総 括 を行 ない, 雇 入 口で の メカ ニズ ムが経 済 システ ムにお い
て どうい う役 割 を果 たす のか とい う問題 を再 び考 え てみ るO その ことが最 初 に
述 へた筆 者 の問題 意識 か らの展開 で あ る こ とは言 うまで もな いO また そ うす る
C モテ ノ
Lの意 義 を要 約す る こ とに な るであ
こ とに よ り, レス タ ー ・サ ロ ヮの J
ろ うU
94 (94)
第1
2
5巻 第 1・2号
ⅠⅠ 労働市 場理 論史
労働市 場 の理論 史 を考 察 してい く場合 , 出発 点 と して J.R ヒ ックスの 「賃
金 の理論」 に代表 され る新 古典 派 の理論 を お くのが 妥 当 で あ ろ う。 この理 論 は
需給 均衡 論 とい われ るよ うに, 需 要 と供給 が独 立 に異 な る主 体 V
こよって意 志班
定 され てい る。 労働需 要 側 で あ る企業 は, 労働 の限 界生 産 力 が賃金 に等 しい と
里的 に
ころで需 要す るC 労働 供給 主 体 で あ る家 計 は, レヴ ヤ- と労働 時 間を 合】
配分 す るO こ う した主 体的均 衡 を有 してい る両 主体 が労働市 場 で 出会 って賃金
のせ りに よ って市 場 均衡 へ到達 し, 均 衡点 では賃金 水準 と雇 用量 が同 時に決定
され る ことに な るO
この よ うに労働市 場 の 自律 的調 軽枚 能 を 信奉 す る新 古典 派理論 に対 して, 現
実 の労働市 場 の動 態 を示 す こ とに よ り批 判 を展 開 してい った のがノ 制 度学 派 で
,カー, J
.T.ダ ソ FZップ らが概 念化
あ るO 制度 学派 の実 証研 究 の蓄積 か ら,C
95
0年 代 か ら6
0年 代初 めに か け て御 慶学 派 は 労働 経済 学 の
・理論 化 を試み て ,1
主 流 とな った。
この よ うな理論 状 況 を大 き く変 えた のが, 島 田晴雄 氏 の言 う 「人 的 資本 理論
革命」3)であ るoG.ペ ッカ-を 中心 とす る シカ ゴ学派 の特 色 は, 労働 を新 古典
派 の よ うに天賦 の もの として, あ るい は生 産要 素 と して扱 うの では な く, 古典
派 (リカー ド ・マル クス派) の伝 統 の よ うに 「生産 され た生 産 手段」 とみ なす
human ca
pi
t
al
) とみ なす ので
ところに あ る. つ ま り, 労働 力を 「人 的資本 」 (
あ る。 こうす る こ とに よ って,供 給行 動 .需要 図式 にそれ までの新 古典 派 と大
きな違 いを見 せ たO まず ,供 給行 動 の側面 では, 労働者 は 目前 の賃金 よ りも将
来 の長 期的 な期 待所 得 に した が って意 志決 定 を行 な うと したO
また需 要 側 の企業 の雇 用行 動 に おい ては. 短 期的 な賃 金費 用 のみを考 慮 す る
の では な く, 採 用 のた め の諸経 費 や訓 練費 用 な どの長期 的性 格 を もった費 用 が
3) 島田晴雄 「
労働経済学のフロンティア」昭和52屯 第 2葦参照.
なお木節は.この木に多く依っている∪
労働諸掛 こおける差別 (1)
(9
5) 95
重 要 な役割 を しめて い る とした。 この ことは, ベ ッカーの訓 練 ・技能 の性 格 へ
の注 目か ら きて い る。 訓 練 を受 け た企 業 内で しか通 用 しない技 能 を企 業特 殊的
伝r
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pecl
点cs
kl
l
l
) とよひ, そ の よ うな訓練 を企 業特 殊 的 訓練 とよぶo
技能 (
これ に対 して, どこの企 業 で も通 用す るよ うな技能 (
訓 練)を一 姫 的 技能 gen-
er
als
kl
l
l(
一般 的訓 練 ge
ner
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r
al
nl
ng) とよぶO企業 特殊 的訓練 の重要 性 が
高 ま る と, 雇主 の方 は訓 練 を施 した労働 者 に能 め られ る と困 るの で定 着化 政策
を施 す。一 方, 労働 者 a
j方 も他企 業 -行 け ば全 く訓練 しない場 合 の賃 金 しか も
らえないか ら, 訓練 を受 けた企 業 に定着 する傾 向が強 くな る。 この よ うな企業
定 着性 が社 会的 規範 に な るほ と強 くなれ ば, 雇 土 も労働 者 も上述 の需 要 ・供給
の行動 図式 に したが わ ざ るを えな くな るO
この よ うな人 的資 本論 の理 論構 成か ら導 かれ る重 要 な論 点 は, まず 賃金 格差
の 問題 であ るO 訓練 投資 のた めに年数 とと もに生産 力が 卜昇 す るの で, 同一職
種 にお いて も訓 練 の程 度 に よ って賃金 率 にパ ラ ノキが あ る こ とに な るo も う一
つ の論 点 と して, 人 的資 本論 の供 給行 動 仮 説 に よれ は, 教 育 投資 す るか 労働市
場 に出 てい くか の選 択 は収益 /費 用比 率に したが うの で,教 育 の経 済 的側 面 を
と り込 む フ レー ム ワー クを人 的資 本論 が有 して い る こ とで あ る。
サ ロ ゥの
J
Cモデ ルにつ なげ る意 味 にお いて新 古 典派 理論 の流 れ で忘れ て な
s
cr
e
eni
ng hypot
hes
ュ
s
) であ るo この仮説
らない のは, ス グ 1
)-エ ソグ仮説 (
は人的 資本 論 の教育 の経 済学 に対 す る批 判 を 出発点 とす る0 人 的 資本 論 に よれ
ば教育 投資 す るか ど うか とい う理 論構 成 の大 前 提 として,教 育 が経 済 的 に価値
の あ る技能 や知 識 を 向上 させ るの であ るO この教育 の生 産 力上 昇効 果 に対 して
ス クl
)-エ ソグ仮説 は疑 問 を もつoM.ス ペ ンスや
KJ
・7 ロ クらが 始 めた こ
の仮 説 では,教 育 とい う もの は労働者 が もって生 まれ た潜在 的 な適応 能 力 や訓
練 の消化能 力を表示 す る もの であ る と考 え る。 とい うの は, この仮説 が着 目し
て い るのは, 労 働 の質 に 関す る情 報 の不 完 全性 であ るか らで あ るO企 業 は個 々
の 労働 者 の能 力 や特 性 に 関す る情 報 を採 用段 階 で完 全 な形 で持 ち えないの で,
教 育水 準 ・家庭環 境 ・性 ・年 齢 等 に よ って 労働 者 を色分 け し選別 を行 な うので
9
6 (9
6)
#1
2
5% # 1 2%
あ る。
以上 が新 古典 派 の 流れ であ るが,一 方, 制度 学派 の研 究 は人 的 資本 論 の影響
を 受 け なが ら, デ リンジ ャー- ビオ リの 内部 労働市 場論 に結 晶 され た。彼 らは
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) の形 成要 因 と して三 つ あげ て い る。
内部 労働市 場 (
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丘cl
亡
y) でノ これ はベ ッカ ーの
第一 にノ 企業 ご との技 能 の特殊 化 (
)と ころで述 -た よ うな論
企 業特 殊的 技能 と対 応 してい るo そ して人 的 資本論 o
理 で労働者 の企 業定 着性 が高 まる と, この企業 内の安定 的 な集 団 内部 での訓練
を規 制す るル ールが形 成 され てい くこ とに な るO
Ont
heJob Tr
al
nl
r
]
g,以下 ,OJ
T と略 すo)
第二 の要 因 と して,職 場 訓 練 (
を あげ てい るO これ は, 現代 企業 社会 にお け る次 の よ うな フ ァ ク ト ・フ ァイ ン
テ ィン クに よる もの で あ るo 労働 者 の技能 の大 半 は,職 場 にお い て作 業過程 の
なか で非公 式 に 習得 され る。 職場 の外 での正 観 の訓練 は あ ま り役 に立 たず ,局
よ う見 まね で技 能 を伝達 して い く OJT が,企 業 に とって有 効 な訓練 形式 なの
J
o
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adde
r
s
)
で あ る. そ して訓練 が昇進 の階段 にそ って行 なわれ ,職 務階 梯 (
が形 成 され てい る. この こ とは, 第一 の要 田で あ る技能 の特 殊 化 と結 びっ いて,
労働者 の企 業定 着性 を ます ます強 め る こ とに な って い る。
第三 の要 因 と して,過 去 の習慣 ・慣 例 に もとっ く一連 の不 文 律 で あ る作 業現
c
us
t
om) を あげて い るO これ は社 会 学的 な要 因 で あ るが,第一 ・第
場 の慣 行 (
二 の要 因が慣行 に結 晶す る こ とに よ って企 業 内労働 市場 が具 体的 に機 能す る と,
これ らの要 田 に よ り形 成 され た 内部 労働 市場 にお いて は, 技能 習 得 方 法 は
OJ
T だ か ら, 欠員 を外 部労働 市場 に求 め るよ りも内部 か ら 補 充 す る方が 効率
的 で あ り, 外 部 か らは雇 入 口でC
T
)み労働 )
J調達 を行 な う とい うこ とに な る。 そ
して高 い技 能 の職 務 にお い て外 部 の競 争 か ら遮 断 す る方 法 が, 先 任 権 制度
い で, この先任 権制 度 を重 要視す るO 七 二 ョリテ ィは企 業定 着性 が制度化 され
た もの であ るO また雇 主 が先 任 権 を過 度 に重視 せず 能 力 志 向 で あ るの に対
L,
労働市場における差別 (i)
(9
7) 9
7
労 働 者 が 雇 主 の 悪 意 性 を 阻 止 す るた め先 任 権 に 大 き く依 存 し よ う とす るか ら,
七二 ョ1
)テ ィは 労 使 の対 抗 点 で もあ るo
デ リンシ ヤー - ビオ リの労 働 市 場 論 は, 内部 市場 -外 部 市 場 の理 論 構 成 だ け
で な く, 「は じめ に」 で述 べ た よ うに二 重 構 造 論 が あ るが, これ に 関 し て は
J
C モ デ ル との 関 係 で後 に述 べ る こ とにう るO
以⊥ , す .
=クの
J
C・
モテ ル が 出 て くるま で の 労働 市 場 論 史 を概 観 したが ,ま
とめ て み る と, 新 古 典 派 の系 列 で は人 的 資 本 論 とス ク リー ニ ン グ仮 説 が, 現 在 ,
並 立 してお り, 制 度 学 派 の系 列 で は 内部 労 働 市 場 論 とラデ ィカル派 が あ るO ラ
デ ィカ ル沢 は労 働 市 場 の 階 層 化 を 階 級 闘 争 に お け る資 本 家 の対 策 と して と らえ
る と ころに 特 色 が あ る。 そ して これ らの 労 働 市 場 論 (但 し, ラデ ィカ ル派 を除
く) を再 構 成 ・統 一 した のが , L C
.サ .
=ゥの 「ジ ョブ ・コ ンペ テ ィ シ ョン ・
モ デ ル」4
)
で あ る とい え よ う。 詳 しい展 開 は 次 節 に ゆ ず るが, 以 前 の理 論 と
J
C
モ テ ル との つ な が りを 明 らか に す るた め に ,J
C モ デ ル の基 本 的 な枠 組 だ け を
速 へ る こ とに し よ う5
)
0
第 一 に, 雇 主 は労 働 者 に対 して , ジ ョブ と賃 金 を セ ッ トに して オ フ ァーす るD
それ ゆ え賃 金 は あ る ジ ョブに 対 して固 定 され て お り, 一 つ の ジ ョブに 様 々 な賃
金 が存 在 す る とい う こ とは な い。 これ はノ 制度 学 派 の実 証 研 究 , なか んず くは
内部 賃 金 構 造 (1
mt
err
l
alwage st
ruct
l
l
r
e) の研 究 を ふ ま えて い る。 現 代大 企 業
の 生 産 組 織 は職 務 間 の結 びつ きに よ り決 定 され てお り, 職 務 か ら職 務 へ の 昇進
に した が って賃 金 も上 昇 して い くO この- 企 業 内に お け る職 務 分 額 また は 仕 事
4) 本稿が全面的に取 り扱ったのは次の著作。L
es
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rC Thur
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9
7
5
また次の論文 も参周 した。
L C Tl
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l
e
r1
97
2
以下,前著を 「GI
」
.後者を 「
PI論文」と略すG
5
) 以下のサロクの要約は次を参照b
Gl
e
nG,
Ca
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n,"TheCha
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engeofDuala
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2
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C
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第1
2
5巻 第 1 2号
9
8 (9
8)
の割 り当て の安定 的 な グル ー プが 「職 務群 」 (
j
ob cl
us
t
er
s
) で あ る. 職 務 群 で
はノ 技 術 ・管理 組織 ・社 会 的 慣行 に よ って結 びつ け られ てお り, 賃金 形成 上共
通 性 を持 ってい るO とい うの は ジ ョブ と賃 金 が 無関 係に設 定 され る と, 生産組
織 と して大 きな フ リクシ ョンが 生ず るか らで あ る。 ゆ えに 当然雇 入 口の最下 位
の ジ 王プで は, 唯一 種類 の賃金 を セ ッ トとす る ことが必要 と され るの で あ る0
第二 に, シ ョプは雇 入 口で のみ開放 し, そ こにお いて雇主 は 「待 ち 行 列」
(
l
aborqueue
) をっ くる. 待 ち行 列 は′企 業 内に入 った卓
寺の期待 訓練 費用 が小
さい ものか ら優 先的 に ラ ン クづけ られ るO この想定 は 内部 労働市 場論 に よ って
お り, 企業組織 は
OJT のた め最 下位 の職 務 以外 で は外 部か ら労働 力 を調 達 せ
ずノ 外 部市場 と競 争 関係 に あ る雇 入 口での み開放 す る。 また 労働 者 の序列 のつ
け方 も問題 に な るが, とにか くあ る ジ ョブの行 列 で悪 い位置 に い る著 が, その
nextbet
t
e
r]
ob) に まわ され る
ジ ョブで採 用 され ない と, 「次 に 良い仕事 」 (
こ とに な る。 こ こか ら二 重構 造論 に もっ なが るので あ る。
第三 に, 待 ち行 列 の形 成 に おい て, 労働 者 が い ま有 してい る技 能 とか, オ フ
ァーす る賃 金水 準 は意 味が ない とい うこ とで あ る。 つ ま り, 行列 で悪 い位 置 に
い る労働者 が低 い賃 金 で もよいか ら働 か してほ しい とか,技 能 が す くれ て い る
と自負 して い る労働 者 が もっ と高 い賃 金 を要 求 した として もJ 待 ち行 列 の順 番
に は何 の影響 も与 え ない。 二g
)想定 は ス ク リー ニ ン グ仮 説 を ふ ま えた もU
)で あ
る。 教 育が 現在 の労働者 の技 能 を高 め るの に貢 献 してい るか ら, 高 い教 育 に よ
って良 い ラ ン クつ け を され るので は な い。 単 に 「教 育水 準」 とい う肩 書 きが,
企 業 に入 ってか らの訓練 費用 が少 ない確率 が大 きい, とい うシ グナル として作
用 す るO この よ うに, ス ク リ- エ ソグ仮説 では とらえて い るが, E
]本 に よ り適
合 的 で あ る よ うに思 われ るO
9
4
0
年 代か らの新 古典派 と制 度学 派 の
以上 の よ うに サ T
]クの JC モデ ルは ,1
対 立 を,理 論 的 に解 決 しよ うとす る画 期的 な労働市 場論 なの で あ る。
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ ジ ョブ ・コンペ テ ィシ ョン ・モ デル
労働市場における差別 (1)
(9
9) 9
9
Ⅱで述 べ た よ うに
J
C モ デル は労働 市場 論 の理論 的 到達 点 と思われ るが,本
節 では まず サ ロ ゥが
J
C モデ ルを提 出 した 問題 意識 を述 , 次 に J
C モデ ルを
-
詳 説す る。
(
1
) サ ロ クの問題 意識 6
)
サ p クの 問題 意識 の根 底 に あ る現実 は, ア メ リカ社 会 にお け る所 得 と富 の不
平 等 で あ る。 この不 平等 が時 の経 過 に もか かわ らず 安定 的 に存′
任す る とい う事
実 を説 明す るた めに, サ ロ ウは所 得 の分配 のル ールを知 って, そ の メカニズ ム
を 明 らかに しま うとす る。所 得分配 の メカ ニズ ム と して
J
C モデ ノ
しの仮説 を構
成 し, 富 を分配 す る棟構 として 「ラ ンダム ・ウ ォー ク仮説 」(
r
andomwal
khy-
I
S
) を提 示 す る。
pot
hes
本 稿 は所 得分配 メカニズ ムであ る
J
C モ デルに限定 す るが, ラ ンダム ・ウ ォ
ー ク仮 説 とのつ なが りを述 べれ ば 次 の よ うに な る。 ラ ンダム ・ウ ォー ク仮 説 で
は, くじに 勝 った者 が資 産蓄 横 を続 け るこ とが で きる. マイ ノ l
)テ ィが くじに
勝 つ確 率 は. ラ ンダムな プ ロセ スでは マ ジ ョリテ ィ と同 じで あ る。 それ ゆ え現
実 に観 察 され る金持 ち と貧乏 人 の資産 の相 違 は, 資 産蓄 積 の ゲ- ムを行 な うの
に 必要 な参 加資 格 を, マ イ ノ リテ ィが 持 ってい ない ことか ら生 じる こ とに な る。 】
だ か ら, 富 の不 平等 しい ては差別 の分 析 は′ この参 加資 格 を 争 う場所 で あ る労
働 市場 に焦 点を 当てねば な らない7
)
0
Ⅱで述 べ た新 古典 派の労働 市場 辞 か ら導 かれ る所 得分 配 理論 は, 分 配 の限 界
生 産力 理論 であ る。 労働 市場 にお いて は, 人 は誰 で も彼 の限 界生産 性 の水 準 を
支 払 われ る。 けれ ど も完全 競 争 .完全 知識 等 の前提 条 件 に よ って措か れ て い る
新 古典 派 の抽象 的 な世界 は, 現 実 と大 き く隔 た りが あ り, 所 得 の不 平等 の安定
性 の説 明を不 可能 に して い るU この よ うな (
新 古典 派) 理論 と現 実 の諦 離 は,
現 実 の労働 市場 の動 向を よ り良 く説 明 で き る新 た な理論 仮説 を必 要 な ら しめ る
。
6
) サロケの問題意識に関しては,Th、
ユ
r
O
W「
GT
J chE
I
P 5 と,Tl
l
l
ユ
r
O
W 「PT論文 」
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) Thurow r
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Jp,1
7
1
pp_6
6
-7
1
_
.
1
0
0(
l
o
o
)
そ こで
#1
2
5% # 1・2%
J
Cモデルを提示す るので ある。
サ ロ ゥの問題意識 である所得 の不平等 とい う問題 を教育政策 の側面 か ら見て
み よ う0
1
96
0年代 アメ 1
)カにお いて,貧 困間親を解 決す る手段 としての教育 の重要
性に関 してはノ諸派一致す る ところであ ったO とくに人的資本論者は, スキル
を創 り出す もの としての教 育 の役割を重視 し,教育政策 こそを貧 困者 .マ イ)
リテ ィの地位 向上 の宴 であ る とした。 つま り, 良い教育 を うけれ ば スキルが 向
上 し, 良い仕事 ・高 い所 得な える ことがで きるO また後述す るJ
:うに,数育水
準が高 まれ ば所 得分配 の平等化に も導 くし′GNP も増大す る。 この 1 うに人
的資本論 は,教 育水準の 向上に j
:って各 自が メ リッ トに応 じた社 会が形成 され
てい く, と展望 した ので あるo
Lか し現実を見れ ば, 確か に教 育 の分布 は平等化 したが所 得分布は そ うでな
い。 白人大 人男子の所 得分布 において,総貨幣所得 の五 分位 シェアで最低 層は
1
9
49年 の3.
3%か ら1
96
9年 の2.
6% に低下 してい るのに対 し, 最 高層 は44.
8% か
63% へ と増加 して い る。 また黒人 と白人 との関係 を見れば なお一層 は っき
ら4
952年か ら1
968年にか けて,黒人 男子 労働者 の平均教育水準 は 白人男
りす る。1
7%か ら87% に上昇 しているのに対 して, 賃金 .俸給所 得の平均 は58%か
子 の6
% に上昇 したにす ぎない8
)
0 (っま り,黒人 は白人に比べ て教 育投資に対す
ら66
る収益率が著 し く低 いのであ る。
)
この ように所 得分配 の平等化 には,教育水準 の向上 とい う手段 は有効性 を失
ってい るo これ は人的資本静, しいては新 古典 派が もつ労働 市場 観 と教育 に対
す る認識 の甘 さか らきてい るo サ pクは伝統的経済学の労働 市場観を賃金競争
(
wage compet
i
t
l
On;以下 ,W C と略す こ ともある。) と呼 び,それに対 して ン
ゴブ .コンペテ ィ ンヨンを提 唱 して, これ こそが労働市場 を特徴 づけ る ものだ
とす るoサ ロゥの言葉 を借 りれば,
s
ul
l
abl
e) 人
「什事を捜 し求 めてい る人 々が い る とい うよ りも, 『適 当 な』 (
o
8
) Thu
rw「
PI論文」 p7
0
.
労働市場における差別 (1)
(
1
01
) 1
01
を 捜 してい る仕 事 が あ る」9
)
のが 現実 の労働市 場 なの で あ るO そ して教 育 の磯 能 に 関 しては, 生産 力上昇 効
果 に あるので は な く, 当人 の 「訓練 可能 性」 を証 明す るた めの もの で, この証
覗 (
c
eTt
i
丘c
at
l
On) に よ り彼 に一 定 の地位 (
st
at
us
) を与 え る ものが 教育 で あ る
とす る 10)0
サ ロゥの問題意 識 を要約 しよ う.1
9
6
0年代 に行 なわれ た 7 メ リカの マ ンパ ワ
ー政 策 あ るい は教 育政 策 は,貧 困解 消や マイ ノ 1
)チ ,
Jの向上 に さ した る効果 を
ホ さなか った。 こ うい った現実 か らサ ロ ゥは 出発 し, その マ .
/パ ワー政 策 の理
論 的 支 柱 とな った 人的 資本 静 の 労働 市場 観 ・教 育観 に疑 問 を投 げか けた。 そ し
てオ ール クナ テ ィ ヴな労働 T
F場 モデ ルの必要 性 を認識 し, 教育 に関 して もス ク
リー
ニ
ン グ仮 説 に つ なが る論 点 を提示 して,J
C モ デ ルを構成 す る こ とに な っ
た の であ る
。
(
2
) 待 ち行 列
J
C モ テル とは, 労働者 が 労働市 場 で賃金 率 を指標 として競 争す る とい った
「賃金 競 争 モデ ル」 とは異 な り, 労働者 の操 有 して い る 「属性 」 (
ba
c
kgr
ound
cs
), 例 えば,教 育 ・生 来 の能 力 ・年 齢 .性 別 ・習慣 ・心理 テス ト
c
ha
r
a
ct
er
i
s
t
i
の点 数 な どを もって供 給者 として労働 市 場 へ 出 るので あ るが, この属性 を指標
に競 争 が生 じるの であ る。 雇主 は, 採用 後 に お い て特 定 の職 務 を満 足 に遂行 す
るた めに 必要 な訓 練費 用を 計算 して, これ に基 づ いて労働 者 を ラン クづ け るo
この ラ ン クづ けで待 ち行 列 (
l
aborqueue
) を形 成 し, 訓 練費 用 を最小 化 す る
た めに待 ち行 列 の前 の位 置 の老 (
訓練 費 用 が最小 であ る労働 者) か ら採 用 して
い くO 労働者 は行 列 に おい て良 い位 置 を確 保 しよ うとす るた め,後 天的 な属性
であ る教 育 な どに積 極 的 に投資 をす るの で あ るo 競 争 が生 じるのは こ うい った
意 味 にお いて で あ り, 賃金 を上 げた り下 げ た りして雇 用を 確保 しよ うとす るセ
9)
1
0
)
Thu
r
o
w「
PI論文」 p 68.
Thu
r
u
w「
PI論文」 p 68
1
02 (
1
0
2
)
第1
2
5巻 第 1 2号
リに よる競争 では ない。
こ こで,訓練費用 とい うのは産業規律 や労働習慣を教 え る費用や訓練 費用が
不確 定 な労働 者 を覆 うのに伴 う不確 実性 の費用 の ことであ る.訓練 費用 のほ と
ん どの部分は雇主 が負担す るO人的資本論 では特殊訓練 の費用 は雇主が 負担す
るが,一 般的訓練 の費用に関 しては労働 者が 負担す るのが合理 的帰結で あるo
そ して,一つ の企業で しか通用 しない技 能はほ とん どないか ら, どの よ うな訓
練 で も一 艇的訓練 の部分を多かれ少 なかれ含んでいる とす る。 しか し, サ T
:ゥ
ほ次 G
'
)よ うに 看って,一般的訓練 の現実的有意味性 を否定 す る。
「他の雇主 に とって の幸
告在的 な有用性 を見 て一 敗的訓練 とみ える多 くの もの
は, 他 の経 営者 - をの技能を実際 に売れ るか, とい う制度的可能性か ら考 え
れ ば, 特殊訓練 なのであ るO つ ま り, 理論的に他企業が その技能 を使用 で き
」l
l)
た とLて も, 制度的 には その技能 は/
蔽業特殊的 なのであ る∩
「企 業特殊的」 の意味 をサ ロクがベ ッカー とは異 なって使 ってい るか ら, 当然
と言 って しま えばそれ までだが, 少 しで も現実 に近 い意味 内容 で概 念を便お う
とす る姿勢が読み とられ, 制度学派 に近 い方法論 とい える。
とにか く訓練費用 の大 部分を雇主 が負担 し, この訓練投資に よって雇主 は利
潤を あげ るこ とが で きるので, 訓練 費用 は企業 の利潤 の青写真に とって中心 的
な もの とな らざるを えないo この訓練費用 の計算 において, あ る労働者 はあ る
雇主 には低 い訓練 費用 で済 む と見 な され, あ る雇主に は高 くつ くと見 な され る
か もしれ ないOだか ら各 々の属性 の組 には, 可能 な位置の範 囲 と望 ま しさの平
均的位置 があ るこ とに なる。 い ま,教育 ・性別 ・年齢 な どの属性を菓素 とす る
n 次 元ベ ク トルを考 え る。 例 えば, Bl
- (大卒, 男, 25歳, ・) とい った属性
の鮭 を持 った労働者 は,属性 としては全 く同 じに もかかわ らず,様 々な理 由か
の よ うに分布す る こ
ら雇主に よって訓練費用の評価 は異 なるか ら,第 1図のBl
とに なる。 しか し,B⊥
とい う属性のJ
阻を肴 してい る限 り, 図のCL
とC
2
の区間以
外 の ところの訓練 費用 であ る と評価 され るこ とは ない。 同 じよ うに,BB
- (高
ll
) Tl
l
ur
DW 「
GI
Jpp 9091.
(
1
0
3) 1
0
3
労働市場 におけ る差別 (1)
辛, 女 ,1
9
歳,
) とい う組 が
してい る とす る第 1図か ら明 ら
か な よ うに,Bg
のあ る労働者 は
ち
行
列
紹労働者数
考 え られ′ 図 のBZ
の よ うに分 布
第 1回 待
Blの あ る労働 者 よ り,訓 練費 用
が小 さい (良い 労働 者 で あ るO)
と評価 され るけれ ども, 平均 し
てみ る と (メデ ィア ンでⅩ1
の方
C2
がⅩ2
よ り訓 練 費 用が 低 いか ら),
B⊥O
)
-方が B空よ り選 好 され る こ
高 一 訓 練 削 り一 億
Thur
o- 「
Ge
T
l
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l
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子
t
yJp9
3 の回 を修正
とに な るO また,各 属性 の組 の/
分 布 を足 し合 わ せ た もの が. 第 1国の よ うな全
・
at
l
Onall
aborqueue) の形 を 決定 す るので あ る。
国 的待 ら行 列 (,
さて,雇 主 は何 故 に この よ うな方法 で訓 練 費 用 を計算 し ラ ン クづ け待 ち行 列
9
6
0
年 代 の 「自 動 化 に 関す る大 統 領 諮 問 委 員会」
を つ くるの で あ ろ うか。1
(Pr
esl
dent
'
sAut
or
nat
l
On Comml
SSI
On) の調 査 に よれ ば1
2
)
,労働 力 の6
0
%が技
能を
OJ
T に よ り習 得 してい るOそ し七, 公式 訓練 や専 門教 育 で技能 を習 得 し
0
%の労働 者 もノ そ の技 能 の あ る部分 は
た残 りの4
い る。 大学 卒 の労働 者 に お い て も三分 の二 以上 が
OJ
T に よ り習 得 した として
OJ
T に よ り習 得 した として
い る。 この よ うに労働 者 は仕 事 に 関す るほ とん どの技能 や知 識 を特 定 の企 業 に
。O
J
T が なぜ これ は と普 及 して い るか と
お け る職場 内訓練 に よ って習 得す る
い えばノ訓 練 と生産 活動 は補 完的 な もの で あ るか ら,技 能 とい う もの は問題 と
す る仕 事 との関連 に お い てのみ, よ りよ く教 える こ とが で きるo この よ うな労
働 者か ら労働者 - と技 能 を伝 達 してい くとい う形式 での
OJ
T は, 訓練 に お い
て最 も安上 りな方法 なの で あ る。 そ して こ0
)こ とは, 労働者 は雇 入 日で あ る下
位 の職 務か ら密 接 に 関連 した職務 階梯 を順 に昇 進 して い く過 程 にお いて技 能 を
1
2
) U S Depa
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9
6
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Jp 7
8
1
04 (
1
0
4
)
第1
2
5巻 第 1・2号
習得 して い く 「内部労働 市 場」 が存 在 してい る こ とと,裏 表 の関係 に あ るO デ
リンジ ャー- ビオ 1
)の研 究 か ら明 らか な よ うに, 内部 労働 市場 は相 当一 般 化 し
8
)
0
てい る1
労働者 は OJ
T に よ り技 能 を 習得 す る とい うこ とか ら, 雇主 が労働 者 の選 抜
に あた って重 要 な ソ グナル とす る ものは, 現 在 労働者 が もって い る技 能 では な
く, 訓練 を受 けた後 に生産 力化 す るた め の潜 在的 な資 質 , 即 ち 訓 練 可 能 性
(
t
r
al
nabl
l
l
t
y) で あ るO そ して, 必 要 とされ る訓練 費 用 を計算 し, 訓練 費用 最
小 化 の基 準 に よ る選 抜 とい う行 動様 式 を とるので あ るo こU
)
-訓練費 用 O
)
-計算 に
お い て, 労働 者 の知的 能 力 ・仕 事 に対す る態 度 ・協 調 性等 に関 す る情報 を.雇
入 口にお け る採用 の段 階 で完全 な形 で入手 す る こ とは不 可能 で あ るか, 費 用 が
禁止 的 に高 くつ くO そ こで. 訓顔 費 用 の代理 変数 として, 上述 の属 性 を用 い る
こ とに な るの で あ るO
(
3
) ウ ェイ ジ -コンペ テ ィシ ョン とノ ヨプ .コ ンペ テ ィソ ヨソとの比 較
サ ロ ケが前 額 で展 開 した よ うな形 で と らえ られ てい る労働 市場 は, 以前 の も
C モ デル と WC モ デル の比 較 を労働 市
の とは全 く異 な るo そ こで こ こでは′J
場 の様 々な側 面 か ら行 な ってい きた い。 新 古 典派 の WC モデ ルは, 労働 市場
を 労働者 が既 に有 して い る技経 を賃 金 と比較 して売 買す る 「せ り市 場」 (
bl
ddl
ng mar
ke[
)1
4
)
あ るい は 「技能 市場 」 (s
kl
l
lmar
ket
)⊥
5
)と して把握 して い る。
C モデ ルで は, 労働 者 を 序列 に応 じて訓練 機会 に配 分す る 「訓練 市
ところが J
場」 (
t
r
al
nl
ng mar
ket
)1
6
)と して労働 市場 が認 識 され て い るO
この こ とか ら詣 要 と供給 の関 係に 関す る認 識 も当然 違 って くるO 新 古典派 で
紘, 異 な った技能 に対 す る需要 と供 給 が, それ ぞれ a
)技能 C
'
)市 場 で需給 を一 致
1
3) Pe
t
e
rB Do
e
r
L
n
ge
ra
ndMI
C
ha
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Or
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,7
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ke
t
sa72d J
I
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l
'
owe
l
ys
l
S
,1
9
71 p 42 の第 1表参照。
Anal
1
4) Tb
uT
O
W「
GI
Jp.7
6.
1
5
) Th
ur
o
w「
Pl
論文」 p 6
7
,
1
6) Th
ur
o
w「
GI
Jp 7
6
労働市場における差Bl(1)
(1
0
5
) 1
0
5
(
ma
t
c
h
)のが労働市 場 の機能 であ る。 とこ ろが J
C モデ ルで は, 訓練
ma
t
c
h
) のが 労働 市場 の機 能 で あ る とと らえ られ
階梯 に訓練 生 を一 致 させ る (
させ る
て い るか ら,職 務技 能 の供給 を生 み 出す の は職 務需 要 で あ る. つ ま り′ 問題 と
〕
ob openi
ng) が あ った時
され る技能 へ の需要 を生 み 出す よ うな仕事 の空 き (
の みに訓練 戟会 が生 じるので あ る1
7
)
. この こ とは OJT の仮 定か らきて い る。
OJT とい うの は, 問題 とな る技 能 へ の需 要 が あ った時 のみ に技 能 が形成 され
る とい う訓 練形 式 だか らで あ る。 これ らV
)こ とか らわか る重 要 な こ とは, 労働
供 給 は 労働 需要 か ら独立 でな い とい うこ とであ る。 つ ま り通常 の意味 での供給
coi
nel
de) こ とに な る。 サ
曲線 は存在 せずノ需 要 曲線 と供給 曲線 は一 致す る (
・
lゥは第 2回 の よ うに描 いて お
り. 外 生的 に与 え られ た賃金
第 2因 J
C モデルにおける労働の
供給 と需要
職務技能への
瀬音と1
兆給
W⊥で訓練 機会 に ql人が 配分
叫 るo
以上 で新 古典 派 モ デル と
J
C
w.
矧祭の賃金
モ デル の相 違 点 の概 略が 明 らか
に な った と思 うが, 次 に よ り詳
し く見 るた 桝 こ, 労働需 給 の バ
ラ ンスを保 った めの調 整 変数 が
両 モデ ルで どうな るか を考 えて
1
\
.
I
;
リザベーション
ウエイ ジ
0
q▲
q2
1、
buT
OW 「
GJ
」p・7
9 より
み よ う。 労働市 場 を ク リア ーす る メカ ニズ ムに お い て,WC モデ ルで は,短期
で は賃 金 の変化 に よ り市 場 をr
ク リア ーす る0- 万 長 期 に おい てほ,短 期 で の賃
金 変化 が需 給 内線 を ノブ トさせ る ことに な り, この需給 曲線 の シフ トに よ り巾
C モデ ルの場合 は全 く逆 の形 に な るO 短期
場 が ク リ7 -され るO と ころが,J
で は需 給 曲線 (
一 致 して い る)その もの の シフ T
lが市 場 を ク .
)7-す る1
8
㌔ つま
lグラムの変 更 に よ り企 業 は調 整 を行 な うO 言 い換 え
り,採 用資 格 や OJT プ T
]
7) Thu,
o
w 「pT論文 」 p 7
2
1
8) 「クリア-する」(
c
l
e
a
r
) という言集は,新古典派の用語では需要と供給を一致させるという
ことであるが,サロクの場合,新古典派の意味では需要と供給は一致しない。
第1
2
5巻 第 1 2号
1
0
6 (1
0
6
)
れ ば,要 求 され る属性 (
demandedbac
kgr
ound c
har
ac
t
er
l
S
t
l
C
S
)1
9
)
の変化 に よ
り市場 を ク リア ーす る。 労働 力不足 の時 に は, よ り費用 のか か る労働 者 で あ っ
一
ob vac
ancy) を埋 め るため には仕方 が な いか ら, 採用 せね
て も仕事 の空 き (
ば な らないO ゆ えに雇 主 は採 用 資格 を ゆ るめ, 待 ち行列 の後 ろの方 まで採 る こ
に な るO 反対 に労働 力 が過 剰 の時 には, 不 必要 な仕 事 が 多い ので資格 要件 を赦
し くす る結 果,行 列 の後:
万の労働者 は失 業す るか悪 い仕 事 に つ くこ とに な る。
この よ うに
J
C モデ ルで は,題 期 にお いて賃 金 で な く採 用条 件 の変更 に よ り調
整 を行 な うo なぜ賃金 を動 か さない か とい えは,J
C モ デル の世 界 は 内部労働
市場 を前提 として い るよ うに, 企業 は ヒエ ラル キ ーを もった組 織 であ り企 業 内
賃金 構造 が で きあが ってい るか らだO そ して最下 位 の職務 のみ外 部 に 開放 して
い るので あ るが, 置 入 口で賃金 を度 々変 更 す る とな る と, 入職 賃金 の微小 変化
も企 業 内賃金 構造 の安定 の た め次 々に波 及 し, 企 業組 織 全 体 としては労務 費用
(
賃 金費 用) の大 きな変化 とな り, 企業 に とって多大 な コス トとなるD だか ら
賃金 の上 げ下 げ よ りも,採 用条 件 の変更 に よ って採用 人数 を可 変的 にす る方 が
C モ デ ルにお い て も賃 金が絶 対 に動 か ない とい
合 理 的 なの で あ る。 しか し′J
うの では な く,長 期 に お いて は相対 賃金 の変 化 が起 こる。 こ こで入職 賃 金 の絶
対 的 変化 とい う ものは あま り問題 で な く,相 対的 賃金 構造 が変 わ る とい うこ と
が重 要 で あ るo つ ま り, 技 術革 新 そ の他 の原 因に よ り技術 体系 が変 更 され る と
職 務編 成 もそれ に合 わ せ て再編 成せ ね は な らず, それ に応 じて賃金 構造 も変 わ
る ことに な るO だか ら長期 とい って も実 際 の 時間 の長 さは あ ま り関 係 せず, 高
度 成 長期 の 日本 U
)よ うな変 化 U
)激 しい経 済 に お いて は短期 間 で賃金 構造 が変 動
す る こ とに な る。 この こ とが, 高度 成長 期 の 日本 の労働市 場 で新 古 典派 的需 給
論 が 有効 性 を示 したか の よ うに見 えた原 田か も しれ ない。 厳 密 性 を欠 くが わか
りや す くま とめ る と. 企業 行動 の調整 変数 は WC モ テ ルで は短期 に おい て賃
C モ デル では短期 にお い て
金 で あ り長 期 にお い て需給 曲線 の ノ7 トで あ り, J
需給 曲線 の /フ ト (-採用 条 件 の変 更) で あ り長 期 に お いて賃 金 (相対 的賃 金
1
9) Thur
o
wr
GI
Jp 9
5
労働市場における差別 (1)
(
1
07
) L
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構 造) で あ る。
C モデ ル と WC モデ ルの違 い で重 要 なのは待 ち行 列 にお け る位 置 の
次 に,J
モデル で も一 応 待 ち行 列 とい う ものを考 え られ ない こ とは
問題 であ る20)0 WC ・
ない。 そ して訓練 費用 を基 準 に行 列 をつ くってみ る と, 問 題 とな るのは, 労働
者 の行 列 にお け る絶 対 的位 置 で あ る。 つ ま り, あ る労 働者 の訓 練 費 用が 少 しで
も減 少す れ ば その労働 者 は ベ ターオ フされ るので あ るか ら, 他 o
)人 間 o
)こ とを
考 え る こ とは ないO 他 人
J
C モデ ルで は相 対的 位置 が重 要 に な る。 この こと
を例 を あげ て説 明 してみ よ うo あ る高校 生が 大学 進学 を しない こ とを い った ん
決心 してか らの ちに, 周 関 の多 くの者 が大学 進 学 を しよ うと してい る ことを認
T
識 した とす る。WC モ デル の場 合 は彼 の決心 は変 わ らない と ころか一 層 強 固 甘
な るO なぜ な ら, 大学 進 学 希望 者 が増 えて大 卒者 の供 給 が増 加 す る とい うこ と
は, 大卒 者 の賃金 が下 落 す る こ とを意 味 し, また非大 卒者 の供 給 減 少 の た め非
大卒 者 の賃金 が上 昇す る と予測 され る。 つ ま り WC モデ ルで はノ 労働 者 は 自
分 の有 して い る技 術 水 準 とい った絶 対的 性格 の もの と, 賃 金 の みを比較 .関連
づけ て労働市 場 に 出て い くので あ るD そ して, そ の技 能 水 準 に おけ る労働市 場
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での需給 が賃 金 水 準 に影響 を及 はす で あ ろ うと労働者 は予 測
して進 学 か否 か を決定 す るのが 合理 的 な ので あ る0
C モデ ルで は他 の労働 者 との 関係 で 自分が 行 列 の との位 置 に い るか
- 万, J
とい うこ とが 決定 的 に重 要 とな る。 労働 者 は行列 の相 対 的 位置 に基 づ い て選 別
され, か つ技 能 は OJT に よ り習得 され るの で, そ うい った就 業機 会 (-訓 練
機会) を逃 が した とす る と技能 を 習得す る機 会 もない し, 所 得 向上 の機 会 もな
くな って しま うの で あ るo そ して属 性 に よ り行 列 の位 置が 決 め られ 選 別 され る
の で あ るか ら次 の よ うな結 果 を もた らす 。大 学進 学 希 望名 が増 えて大 卒名 が増
える と, よ りよい属性 の労働 者 の数 が増 す ことに な り, もと大 卒者 が 占めて い
た仕 事 は 当然 大 卒者 が 占め た ま まで, それ どこ ろか大 卒者 が あふれ て もと高 卒
者 の仕事 で条 件 の よい所 へ就 こう とす る著 も現 ま
っれ て くる。 だか ら高卒 者 は,
2
0) 以下 の説 明は. Thur
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J pp 95-97.
第1
2
5巻 第 1・2号
1
0
8 (1
0
8)
良 い仕 事 は奪 われ るので悪 い仕 事 に就 くこ とに な るばか りか, 押 し出 され るか
っ こ うで中卒者 の仕 事 に就 く者 も出て くる。 この よ うな プ ロセスが下 の方 まで
波 及 してい くの で非 大卒 者 の期待 収入 は 当然 減 少す る と予 想 され るO それ ゆ え,
周 囲の著 が み な大学 進学 しよ うとすれ ば 自分 も進学 せ ざ るを えな くな るの で あ
る。 つ ま り,彼 が大 学 へ行 かず 他 の人 間が 進学 すれ ば, 彼 が 現在 就 き うる仕事
(高卒者 の 良い仕事) も もはや ない とい うこ とに な るo それ ゆ え, サ T
=ゥは教
育 投資 (
大 学進 学) の槻 能 につ い て次 の よ うに言 ってい るO
good I
nves
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ment
) で あ るのは. も し誰 も教 育 投資 し
「教 育が 有効 な投 資 (
ない時得 られ る所 得 よ りも投資 した 時 の方が 所得 が上 昇す るか らでは な く.
他人 が投 資 し自分 が しない時 よ りも投資 した方が 所 得 が 多いか らで あ る。要
す るか
こ, 教育 は 自分 の 『マ ーケ ッ ト . シ ェア』 を守 るた め打必 要 な防衛 的支
出に な った の で あ るO」2
1
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y) は. 現 代 にお け
この よ うな教 育 の 「防 衛的 必要 性」 (
る教育 問題 ・受 験戦 争 な どを よ りよ く説 明す る道 具 の よ うに 思われ るO
最後 に第 1項 で述 べた人 的 資本 論 者 の教 育機 能 を 中心 に論 じて み るO教 育 は
技 能 を形 成 す る もの として と らえ られ て い るか ら, 低所 得層 の労働者 の教 育水
準 を上 げ る ことは そ の労働者 の技 能が 高 くな る こ とを意 味 し, それ に従 って彼
の生産 性が 上昇 し収 入が増 え る。 また, 低 い技 能 の労働 者 が 減 る こ とに な るか
ら需 給 親係 に よ り, 低 い技能 の労働者 の賃 金 は 上昇す る こ とに な るo それ と全
く対 照 的 に 高い技能 の労働者 が増 えるか ら,彼 等 の賃金 は下 落す るo この結果 ,
技 能 に よる賃金 格差 は締 まる こ とに な るo この よ うに低 所 得 層 の教 育 水準 の向
上 は, 生産 力を あげ る し. 所 得分 配 も平 等 化 に 向か うとい う全 く- ッ ピーな政
策 で あ る として, 人 的資 本論 者 を 中心 として力強 く提 唱 され た の で あ ったO と
こ ろが 第 1項 で みた よ うに, 黒 人 (
低 所 得 層) の教 育水 準 が 白人 に近 つい たの
に所 得 格差 は それ ほ ど締 ま らない こ とな ど, 人 的資 本論 と矛 盾 す る結 果が 現 わ
れ た。 サ ロ ゥの
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C モデ ルで は教 育 は属性 の一 要素 として しか と らえ られ てい
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GrJpp.9
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7,「
PI論文 」p 7
9
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1
0
9) 1
0
9
労働市場 における差別 (1)
ないか ら,真人だ とい うだ けで訓練機会 が朗かれ なけれ ば,教 育水準がい くら
向上 して も所 得格差が締 まる ことはない。
以上で
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Cモデルが 以前 の理論 とは異 な り′様 々な局面 で現 実性 を もつ こと
が明 らかに なった と思 うo Lか し, 今 まで の説 明は待 ち行列 での相対約位健が
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個人 の所 得に影響す る関係 だけを述 べたのだが, 個 人の所 得 は就業機会 (
opport
uni
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y) の分j
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K も強 く依存 す る。 この就業機会 (-訓練機会)の分布が
所得分布 を直 接的 に決定す るのであ り.待 ち行 列は所 得分布 の決定 に間接的に
しか寄与 しないo む しろ待 ち行列は就業機会 の 7 クセスの順 序を決定す るだけ
で ある。
労働力が配 分 され訓練 され る什
・
第 3国 就業機会の分布
事 の分布状態 を就業機会 の分布 と
いい,第 3図の ように措かれ る。
全回的就業機会
の分布
そ して就業機会 の分布 の形 を決定
分
布の
雇主2の
就業機会
す る ものに三 つ の要 因が あ り.技
術進 歩 の性格 .賃金決定 の社会学
的性格 ・訓練 費用 の分布 をあげて
い る。最後 の ものは待 ち行列 の分
布 の こ とであ り, 各 々の職 務 の賃
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GZ
Jp.9
8 より
金 に影響 を与 える もので あるo サ T
,ゥは これ らの要 因 と就業機会 の分布 との関
係 につ いて潰極的 に展 開 していないので,就 業機会 の分 布の説 明は これ だ けに
とどめてお く2
2
)
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(
1979年 6月 7日脱稿 )
2
2) 就業機会の分布に関しては.Thu
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Jchp 5 と,「
PI論文」pp 74-78 を参照 。
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