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1次試験過去問題集
目 問 次 題 平成 25 年度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 平成 24 年度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 平成 23 年度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79 平成 22 年度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115 平成 21 年度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 155 解答・解説 平成 25 年度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 197 平成 24 年度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 225 平成 23 年度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 261 平成 22 年度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 295 平成 21 年度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 331 問 題 企業経営理論◆平成 25 年度 問 題 第1問 経営計画の策定と実行について留意すべき点に関する記述として、最も適切な ものはどれか。 ア 経営計画策定時に用いられる業績に関する定量的なデータを収集して分析す ることによって、新機軸の戦略を構築することができる。 イ 経営計画になかった機会や脅威から生まれてくる新規な戦略要素を取り入れ ていくには、計画遂行プロセスで学習が起こることが重要になる。 ウ 経営計画に盛り込まれた戦略ビジョンは、予算計画や下位レベルのアクショ ン・プランと連動させるとコントロール指針として機能するようになり、戦略 行動の柔軟性を失わせる。 エ 経営計画の策定に際して、将来の様々な場合を想定した複数のシナリオを描 いて分析することによって、起こりそうな未来を確定することができる。 オ 経営計画の進行を本社の計画部門と事業部門が双方向的にコントロールする そ ご ことは、事業の機会や脅威の発見には無効であるが、部門間の齟齬 を把握する には有効である。 3 企業経営理論◆平成 25 年度 問 題 第2問 プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントに関する記述として、最も適切な ものはどれか。 ア 「金のなる木」の事業や資金流出の小さい「負け犬」事業の中には市場成長率が 低くとも高収益事業がある。 イ 投資家の注目を集める「花形製品」の事業は、マーケットシェアの維持に要す る再投資を上回るキャッシュフローをもたらし、「負け犬」事業からの撤退を支 える。 ウ プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの考え方は、外部からの技術導 入と資金調達とによる規模の経済の達成で優位性を構築する業界にも適用でき る。 エ プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの考え方は、製品市場の定義と はかかわりなく、相対的なマーケットシェアが小さくとも大きなキャッシュフ ローを生み出すケースにも適用できる。 4 企業経営理論◆平成 25 年度 問 題 第3問 企業は収益を確保するべく、活動(オペレーション)の効率を高めようとする。 オペレーション効率の特徴に関する記述として、最も適切なものはどれか。 ア オペレーション効率とは、ライバル企業と異なる活動を効率的な方法で行う ことである。 イ オペレーション効率における競争は、生産性を改善しながら、優れた収益性 を長期にわたって企業にもたらす。 ウ オペレーション効率の差異がもたらす収益性は、企業間の差別化のレベルに 直接的に影響を与えることはないが、コスト優位に影響を与える。 エ オペレーション効率は、企業が投入した資源を有効に活用できるような活動 のすべてを指している。 オ オペレーション効率を改善するべく、他社をベンチマークするほど、企業の 活動は似通ってくるので、両社の戦略の差異はなくなる。 5 企業経営理論◆平成 25 年度 問 題 第4問 他社と連携を考慮する企業にとって、企業としての独立性を維持し、企業間に 緩やかで柔軟な結びつきをつくるには、戦略的提携が有効な戦略オプションのひ とつである。戦略的提携に関する記述として、最も不適切なものはどれか。 ア 企業の評判に悪影響が起こる可能性は、戦略的提携における裏切りのインセ ンティブを抑制する要素となる。 イ 戦略的提携が希少性を有しても、低コストでの代替が可能であれば、その戦 略的提携は持続的な競争優位をもたらさない。 ウ 戦略的提携によって、新たな業界もしくは業界内の新しいセグメントへ低コ ストで参入しようとするのは、企業間のシナジーを活用する試みとなる。 エ 戦略的提携を構築する際、その主要な課題はパートナーが提携関係を裏切る 可能性を最小化しつつ、提携による協力から得られる恩恵を最大限に享受する ことである。 オ 内部開発による範囲の経済を実現するコストが戦略的提携によるコストより も小さい場合、内部開発は戦略的提携の代替とはならない。 6 企業経営理論◆平成 25 年度 問 題 第5問 A社は医療分野での先端的な製品開発を通じて社会に貢献するという理念の下 で、現在の医療機器事業に加えて新薬開発の支援や再生医療の分野を包含した将 来的なドメインの定義を企図している。企業ドメインと事業ドメインの決定に関 する記述として、最も適切なものはどれか。 ア 企業ドメインの決定は、現状追認ではなく将来の方向性を明示しているが、 注意の焦点を絞り込んで資源分散を防止するのには適さない。 イ 企業ドメインの決定は、差別化の基本方針を提供し、新たに進出する事業の 中心となる顧客セグメントの選択の判断に影響する。 ウ 企業ドメインの決定は、将来の企業のあるべき姿や経営理念を包含している 生存領域を示すが、現在の生存領域や事業分野との関連性は示していない。 エ 事業ドメインの決定は、将来手がける事業をどう定義するかの決定であり、 企業戦略策定の第一歩として競争戦略を結びつける役割を果たす。 オ 事業ドメインは、全社的な資源配分に影響を受けるため、企業ドメインの決 定に合わせて見直すこともありうる。 7 企業経営理論◆平成 25 年度 問 題 第6問 次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。 ① 企業の価値連鎖の中の活動にどこまで携わるかによって、垂直統合の程度は異 なる。垂直統合は、企業が経済的な取引を管理・統治する重要な方法であるが、 企業によっては活用可能な管理・統治のための選択肢のひとつにすぎない。 企業が経済的な取引を管理する際に実施する統治選択(governance choice)に ついてはオプションを持っているのが通常である。その内容を垂直統合か非垂直 統合かによって大きく 2 つに分けた場合、非垂直統合による管理・統治の方法は、 さらに逐次契約(sequential contracting)、 ② 完備契約(complete contingent claims contracts)、スポット市場契約(spot-market contract)などに分類で きる。 (設問 1) 文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。 ア 企業が価値連鎖の中で携わる活動の数は一定で安定する必要があるが、価値 連鎖上で高付加価値を生み出している活動は垂直統合に適している。 イ 企業が価値連鎖の中で携わる活動の数は一定で安定する必要があるが、清涼 飲料水の生産者が独立したフランチャイジーだったボトラーと戦略的な提携を 始めるように前方垂直統合を行う例もある。 ウ 企業が価値連鎖の中で携わる活動の数はその増減から垂直統合度は推測でき ないが、価値連鎖で統合されている活動に関する情報開示があれば垂直統合度 のおおよその見当はつく。 エ 自社の境界外に当該事業にかかわる価値創出活動の多くを出している企業は 売上高付加価値率が低く、垂直統合度は低いレベルにある。 8 企業経営理論◆平成 25 年度 問 題 (設問 2) 文中の下線部②の完備契約とスポット市場契約に関する記述として、最も適切 なものはどれか。 ア 完備契約は、契約履行の詳細なモニタリングと、取引主体が契約上の義務を 果たさない場合に法的な制裁が科されるという脅威で機会主義をコントロール できる。 イ 完備契約は、取引主体の権利と義務を詳細に特定している契約であるが、取 引において将来いくつかの異なる展開を示す可能性は想定していない。 ウ スポット市場契約では、複雑な契約書の作成や履行は必要がなく、多数の買 い手と売り手が存在すれば機会主義の脅威が小さくなる。 エ スポット市場契約は、市場で取引される製品やサービスの品質確認に大きな コストをかければ、機会主義的な行動の脅威は小さくなる。 オ スポット市場契約は、市場で取引される製品やサービスの品質が低いコスト で保証され、取引の相手が限られている場合には経済的な取引を管理・統治す る適切な方法である。 9 解答・解説 企業経営理論◇平成 25 年度 解答・解説 第1問 【解答】 イ(配点2点) 正解率 73.6 % 【解説】 経営計画の策定と実行に関する問題である。経営計画は経営戦略と密接に結びついているため、 戦略策定の基本プロセスを理解することが重要である。戦略策定の基本プロセスとは、経営理念と ビジョンを踏まえて、環境分析、戦略代替案の創出、戦略の選択、実行、レビューを行うことであ る。経営理念とビジョンは、環境分析による価値判断の根拠となる。戦略代替案の創出では、ブレ ーンストーミングなどの発想法を活用して、数多くの代替案を導き出すことが重要である。また選 択した戦略を予算計画やアクション・プランとして具体化することによって戦略行動に結びつける ことが必要である。戦略のレビューでは、柔軟性を持たせながら戦略行動を軌道修正することにな る。 ア 適切でない。 業績に関する定量的なデータの収集と分析では、新機軸の戦略を構築する ことはできない。新機軸の戦略は、戦略代替案の創出と選択を通じて構築されるが、重 要になるのは発想法を活用した斬新なアイディアを導き出すことである。斬新なアイデ ィアは、業績に関する定量的なデータだけでは導き出すことはできない。 イ 適切である。 計画遂行プロセスで、立案の時点には無かった機会や脅威が発生すること があり、こうした機会や脅威に対処するために新規の戦略要素を取り入れるための組織 学習が必要になる。 ウ 適切でない。 戦略ビジョンは、コントロール指針として機能することはなく、戦略行動 の柔軟性を失わせることもない。選択した戦略を予算計画やアクション・プランとして 具体化することによってコントロール指針として機能するのであり、戦略ビジョンがコ ントロール指針として機能するわけではない。また戦略行動は戦略のレビューを通じて、 柔軟性を持たせながら軌道修正すべきである。 エ 適切でない。 経営計画の策定で、起こりそうな未来を確定させることはできない。戦略 代替案の創出と戦略の選択において、複数のシナリオを描いて分析を行うが、その目的は、 戦略を達成する可能性を高めることにある。 オ 適切でない。 計画の進行段階で本社の計画部門と事業部門が双方向的にコントールする ことは、混乱要因になるため、避けるべきである。実行段階では事業部門が中心になるべ きであり、本社の計画部門は事業部門を支援する役割に徹するできである。本社の計画部 門が支援することによって、事業の機会や脅威をみつけやすくはなるが、関与しすぎると 部門間の齟齬を発生させる。 よって、イが正解である。 197 解答・解説 企業経営理論◇平成 25 年度 第2問 【解答】 ア(配点2点) 正解率 17.9 % 【解説】 プロダクト・ポートフォーリオ・マネジメント(以下、PPM)に関する問題である。PPMは 全社戦略の手法であり、自社内の資源を適切に配分することが目的である。PPMは、市場成長率 と相対的マーケットシェアから「花形製品」、「金のなる木」、「問題児」、「負け犬」の4つの 象限に分類して、各事業を位置づける。PPMでの資源配は4つの象限の特徴に応じて行うことが 必要である。キャッシュフローを最も生み出しやすいのは「金のなる木」であり、不足しやすいの が「問題児」である。そのため、一般的には「金のなる木」で稼ぎ出したキャッシュフローを「問 題児」に投入する傾向が強い。 ア 適切である。 「金のなる木」の事業に加えて「負け犬」の事業も高収益になることがあ る。「負け犬」の事業は市場成長率が低く、事業のライフサイクル上、衰退期に相当する ことが多い。衰退期における市場成長率の低下は、同業他社が業界から撤退することによ って拍車がかかるが、その結果、残存者利益といわれる高い収益を、業界に残った企業が 分かち合うことがある。 イ 適切でない。 「花形製品」の事業は事業の成長率が高く、設備投資などの多額の資金を 必要とすることが多く、キャッシュフローがマイナスになる傾向が強い。マーケットシェ アの維持に要する再投資を上回るキャッシュフフローをもたらすのは「金のなる木」の事 業であり、稼いだキャッシュフローを投入する先は、「負け犬」ではなく「問題児」の事 業になる。 ウ 適切でない。 PPMの目的は自社内の資源配分を適切に行うことにあり、外部からの技 術導入と資金調達で規模の経済の達成を目指す業界では、PPMを適用する価値は低い。 エ 適切でない。 PPMでは製品の定義は重要であり、製品の定義によって相対的マーケッ トシェアや市場成長率が変わってくる。また一般的に相対的マーケットシェアが低いと、 生み出されるキャッシュフローは小さくなる。 よって、アが正解である。 第3問 【解答】 エ(配点2点) 正解率 25.8 % 【解説】 活動(オペレーション)の効率に関する問題である。マイケル・ポーターは 1996 年に発表した 「戦略とは何か」という論文の中で、戦略とオペレーションの効率化(効率を高めること)につい て説明している。この論文の骨子は2つあり、1つはオペレーションの効率化と戦略は別の概念で あるということ、もう1つは戦略の本質は戦略ポジショニングにあるということである。戦略ポジ 198 企業経営理論◇平成 25 年度 解答・解説 ショニングとは、業界内で競争相手とは異なる戦略ポジショニングを選択することである。異なる 戦略ポジショニングを選択することの実例には、異なる顧客層を対象にすることや、異なる製品や サービスを提供することがある。 ア 適切でない。 ライバル企業と異なる活動を行うことは、異なる戦略的ポジショングの選 択であり、オペレーション効率を高めることではない。 イ 適切でない。 オペレーション効率によって獲得した優れた収益性は、戦略によって獲得 した優れた収益性よりも、短命に終わることが多い。理由は、オペレーションの効率化は 戦略よりも模倣されやすいためである。 ウ 適切でない。 オペレーション効率による差異はコスト優位のみならず、差別化に影響を 与えることも可能である。オペレーションの効率化はコストの削減を通じてコスト優位に 貢献することに加えて、スピードの経済などを実現することによって差別化に影響を与え ることができる。 エ 適切である。 オペレーション効率を高めることは、人、物、金、情報といった企業の投 入資源を有効に活用することによって実現される。 オ 適切でない。 オペレーションの効率化は戦略とは別の概念であるため、他社のオペレー ションの一部をベンチマーキングしつつ、他社と異なる戦略ポジショニングを採用するこ とは可能である。 よって、エが正解である。 第4問 【解答】 オ(配点3点) 正解率 87.0 % 【解説】 戦略的提携に関する問題である。戦略的提携は、多角化を行う場合の選択肢の1つであり、範囲 の経済を実現するための内部開発コストが大きい場合などに採用される。提携する業務の内容に応 じて販売提携、生産提携、物流提携に分類される。戦略的提携によって、企業間のシナジーを発揮 して範囲の経済を実現させるために、自社にとっての有利な条件を実現すること、提携相手(パー トナー)の強みを活用することを両立させることが必要になる。 ア 適切である。 戦略的提携におけるリスクの1つに、提携相手(パートナー)の裏切りが あるが、裏切ったことが対外的に知れ渡ると、パートナーの評判が悪化するため、この評 判の悪化は裏切りのインセンティブを抑制することになる。提携における裏切りの実例に は、パートナーが、自社の競合先と同じような提携関係を築くことがある。 イ 適切である。 戦略的提携が低コストで代替可能であることは、競合先にとっては模倣し やすいため、提携時に稀少性があっても、模倣により短期間で競争優位が損なわれる可能 性が高い。 ウ 適切である。 戦略的提携によって企業間シナジーが活用できる状態は、範囲の経済を実 199 解答・解説 企業経営理論◇平成 25 年度 現している状態であり、範囲の経済を実現するための方法の実例には、新しい業界や業界 内の新セグメントに参入することがある。 エ 適切である。 戦略的提携を成功させるためには、リスクを回避すること、自社が得られ る恩恵を最大化することが必要であり、回避すべきリスクにはパートナーの裏切りがある。 パートナーの裏切りを回避するためには、パートナーに恩恵を与えることが必要であるが、 自社が享受できる恩恵を最大化にする努力も行うべきである。 オ 適切でない。 範囲の経済を実現するための内部開発コストが戦略的提携のコストより大 きい場合は、内部開発は代替となりうる。そのため、内部開発を選択する場合には、コス ト面のみならず、範囲の経済によって実現できる売上や利益の大きさも含めた総合的な比 較、検討が必要である。 よって、オが正解である。 第5問 【解答】 オ(配点3点) 正解率 75.0 % 【解説】 企業ドメインと事業ドメインの決定に関する問題である。ドメインは平成 23 年第1問、第 24 年 第1問に続いての3年連続の出題なった。事業ドメインとは事業領域のことであり、顧客、機能、 技術の3つの次元から構成される。多角化により複数の事業を展開する場合は、経営資源の調達や 配分を適切に行うために事業ドメインに加えて、企業全体の領域としての企業ドメインを決定する ことが必要になる。また資源の調達と配分を適切に行うためには、事業ドメイン、企業ドメインと もに広すぎたり、狭すぎたりしない適度な広さで設定することが必要である。 ア 適切でない。 企業ドメインの決定は、注意の焦点を絞り込んで資源分散を防止すること ができる。資源分散に結びついてしまう理由は、企業ドメインを広く設定しすぎているこ とである。 イ 適切でない。 顧客セグメントの選択の判断は、事業ドメインの決定によって影響を受け る。対象顧客を設定するための顧客セグメントは事業単位に行うべきであり、顧客セグメ ントに影響を与えるのは企業ドメインではなく、事業ドメインである。 ウ 適切でない。 企業ドメインは、現在の生存領域や事業分野同士の関連性を示す内容にす べきである。企業ドメインは、複数事業分野のシナジー効果が発揮できるように決定すべ きである。そのためには、将来のあるべき姿や生存領域と現在の生存領域や事業分野同士 の関連性を考慮すべきである。 エ 適切でない。 事業ドメインの決定は、既に手がけている事業や手がける準備中の事業が 対象になる。将来手がける事業の定義は、企業ドメインに照らして決定すべき課題である。 オ 適切である。 企業ドメインによる全社的な資源配分は、事業ドメインに影響を与えるた め、企業ドメインの見直しにあたり、事業ドメインも見直す必要が発生することがある。 200 企業経営理論◇平成 25 年度 解答・解説 よって、オが正解である。 第6問 【解答】 (設問1)エ(配点3点) 正解率 17.9 % (設問2)ア(配点3点) 正解率 31.8 % 【解説】 価値連鎖、垂直統合、垂直統合によらない統治メカニズムに関する問題である。価値連鎖とは、 企業が行う活動を製造や販売といった主活動と人事・労務管理や調達といった支援活動に分けて、 顧客に提供する価値をどのように生み出しているかを分析するための手法である。垂直統合とは、 製品やサービスを提供するために必要な活動や業務工程の段階を社内に取り込み、企業活動の範囲 を拡張することである。 垂直統合によらない統治メカニズムでは、契約による関係構築が必要になる。この場合の契約に は完備契約、スポット市場契約、逐次契約がある。完備契約とは、提携相手の機会主義を回避する ための契約であり、スポット市場契約とは、提携相手との関係で不利な条件を発生した場合に他の 提携相手に切り替えができるようにするための契約であり、逐次契約とは期間を限定することでリ スクを軽減するための契約である。 (設問1) 価値連鎖と垂直統合に関する問題である。垂直統合のメリットには、範囲の経済が活用できるこ と、情報漏洩が防ぎやすいこと、取引費用がかからないことがある。一方、デメリットには、規模 の経済が活用しにくいこと、需要低下の影響を受けやすいこと、人件費など内部費用が増加しやす いことがある。 ア 適切でない。 価値連鎖上で付加価値を生み出している活動は、垂直統合の対象にはなり にくい。垂直統合のメリットには、範囲の経済を活用することがあるが、その場合に垂直 統合の対象になる活動は、顧客に対する付加価値を増やすことができる活動になる。その ため、付加価値を生み出している活動は、本来、垂直統合の対象にはならない。 イ 適切でない。 清涼飲料の生産者とボトラーの戦略的提携は前方垂直統合にはならない。 ボトラーとは、原料を仕入れて容器に詰め込むことを行う業者のことであり、製造業に位 置づけられる。そのため、清涼飲料の生産者とボトラーとの戦略的提携は水平統合になる。 前方垂直統合とは、川下工程との提携のことであり、製造業が卸売業や小売業と提携する ことが実例になる。また後方垂直統合は、川上工程と提携することをいう。 ウ 適切でない。 企業が価値連鎖の中で携わる活動の数を増加したり、減少したりすること から垂直統合度を推測することができる。企業が垂直統合を行うことによって、価値連鎖 の中の活動数は増加する。反対に垂直統合をやめることによって、価値連鎖の中の活動数 は減少する。 エ 適切である。 価値創出活動の多くを社外に出している企業は、売上高付加価値率が低く、 201 解答・解説 企業経営理論◇平成 25 年度 価値創出に対する貢献度が低いため垂直統合度のレベルも低いことになる。垂直統合度の レベルは、価値創出に対する貢献度で判断されるため、貢献度が高い方が垂直統合後のレ ベルが高いことになる。 よって、エが正解である。 (設問2) 垂直統合によらない統治メカニズムにおける、完備契約とスポット市場契約に関する問題である。 ア 適切である。 完備契約では機会主義を回避するために法的制裁などの脅威を契約に組み 入れて、機会主義の可能性を低減させるようにコントロールする。 イ 適切でない。 完備契約では機会主義を回避するために、様々な条件を整備するが、将来、 発生する可能性がある複数の展開を想定することは、条件を整備する上で重要である。 ウ 適切でない。 多数の買い手と売り手が存在している場合、機会主義は発生しやすく、機 会主義の脅威は大きい。またスポット市場契約は、取引相手との関係で不利な条件が発生 することを想定しているが、その中には機会主義的な行動が含まれている。 エ 適切でない。 市場で取引される製品やサービスの品質確認に大きなコストをかけても、 機会主義的な行動の脅威を小さくすることはできない。機会主義により、取引相手が裏切 る場合、市場での取引とは異なる相対での個別の条件交渉がきっかけになることが多い。 オ 適切でない。 スポット市場契約では別の取引相手に切り替えることを想定しているため、 取引相手が限定されている場合には採用しにくい方法である。 よって、アが正解である。 第7問 【解答】 (設問1)オ(配点3点) 正解率 86.4 % (設問2)エ(配点3点) 正解率 51.9 % 【解説】 完成品メーカーと部品メーカーの取引関係に関する問題である。完成品メーカー、部品メーカー の双方が自社に有利な条件で取引を行おうとするため、取引関係は流動的になりがちである。また 取引関係の変化に対しても、完成品メーカー、部品メーカーの双方が様々な対策を講じることにな る。 (設問1) 完成品メーカーからの部品メーカーに対する発注の方法や条件に関する問題である。 ア 適切でない。 完成品メーカー部品の発注先を分散する場合、部品コストは上昇する。部 品の発注先が、特定の部品メーカーに集中しすぎていると、その部品メーカーに事故が発 生した場合など、完成品の供給不足などが発生する。こうした不測の事態を回避するため に、発注先を分散する。分散の結果、部品メーカー1社当たりの発注数量が少なくなるた め、部品コストは上昇する。 202