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大腿骨頚部骨折

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大腿骨頚部骨折
大腿骨頚部骨折
指扂病院
石川 直哉
大腿骨頚部骨折とは?
交通事故や骨粗鬆症による骨強度低下した高齢
者などに多く大腿骨の頚部がなんらかの理由で
骨折した状態をいいます。
骨折の部位によって大腿骨頚部骨折と転子部/
転子下骨折に分けられ、それぞれ治療法が異な
ります。
大腿骨頚部の撮影
体位
仰臥位。両下肢は伸展
させ、膝蓋骨が上を向
くように内旋させる。
股関節正面
股関節軸位
中心線
正中矢状面上で、恥骨
結合上縁から頭側約3
㎝の点に向けてカセッ
テに垂直に入射。
仰臥位で検側下肢は伸展
させ、膝蓋骨が上を向く
ように内旋させる。非検
側下肢は股関節・膝関節
を90°屈曲させる。
カセッテを鼠径線に対し
て直角になるよう設置す
る。
中心線
検側大腿骨頚部に向けて、
カセッテに対して垂直に
入射。
軸位とラウエンシュタインⅠ法
軸位
• 頚部は水平に長く投影される
• 大転子は骨頭に重複しない
ラウエンシュタイン
• 頚部は短縮し投影される
• 大転子は骨頭に一部重複する
骨折部位
骨折の特徴
手術の選択
骨折部位
大腿骨頚部骨折の部位別分類
関節包の内側
の骨折
関節包
関節包の外側
の骨折
大腿骨頚部骨折の部位別分類
正常
頚部骨折
転子部骨折
骨折の特徴
大腿骨頚部骨折・転子部骨折・転子下骨折
の特徴と外科手術の種類
頚部骨折
転子部・転子下骨折
関節包の内側の骨折
関節包の外側の骨折
解剖学的特徴から骨癒合が得られ
にくい
内側骨折に比べて血行動態も良好
なため比較的骨癒合しやすい
骨癒合しにくい
骨癒合しやすい
大腿骨頚部骨折の特徴
●骨癒合の悪い理由
• 関節包内骨折なので骨折部に外骨膜がない為に骨膜性仮骨が形成さ
れず、また滑液が骨折部に流入して骨癒合が障害される
• 大腿骨骨頭部への血行は、主として頚部側から供給されているので、
骨折によりこの血行が絶たれると骨頭側は阻血状態となるので骨折
治癒能は頚部側のみとなるが、成長期に末梢からの供給に依存する
ので、供給量は尐ない。
• 骨折線は垂直方向に走り易いので両骨片に剪断力が作用する。した
がって骨片は離解して骨癒合が阻害される。
• 高齢者に多発するので、骨再生能力が低下している(骨粗しょう症、
骨密度の低下)
• 土台となる筋力の萎縮や持久力の低下が根底にある
骨癒合の悪い理由を理解するまでの流れ
解剖学的特徴
• 骨膜と骨癒合の関係
• 頚部の栄養血管
力学的特徴
• 剪断力とは
骨癒合の条件
骨癒合の条件
骨折部の接合
骨折部の固定
十分な血流
適度な圧迫刺激
解剖学的特徴
~骨膜と骨癒合の関係~
 骨の構造
骨は骨質・骨膜・骨髄および神経・血管などから構成されている。
シャビー繊維
骨芽細胞
ハーバス管
骨膜
破骨細胞
海綿質
緻密質
解剖学的特徴
~骨膜と骨癒合の関係~
 骨の構造
骨は骨質・骨膜・骨髄および神経・血管などから構成されている。
 骨質
骨組織からなり、緻密質と海綿質に分けられる。
緻密質は骨の表面にあり、海綿質は内部に見られる。管状骨では骨幹は
厚い緻密質からなり、骨端は海綿質で、その表層だけが薄い緻密質の層
で構成されている。
 骨髄
海綿質の骨柱の間の小腔と管状骨の髓腔とを満たしている細網組織である。
骨髓は造血作用を営んでいるものは赤い色を呈しているので赤色骨髓とい
い、それを失ったものは黄色をしているので黄色骨髓という。
長骨の骨端、短骨、扁平骨と丌規則骨の骨髓は一生涯赤色骨髓であるが、
他の骨髓はおよそ5歳後に黄色骨髓となる
解剖学的特徴
~骨膜と骨癒合の関係~
 骨膜とは
• 骨の表面を覆っている緻密な結合組織の白い層をいう。
• 骨膜の表層は結合組織性線維が主で、骨表面に近い下層ではシャ
ピー繊維という膞原繊維束によって、骨膜はまた筋と骨との結合
の媒介をも営んでいる。
• 豊富な血管をフォルクマン管を通じて骨質に導入する。
• 内骨膜と外骨膜がある
• 骨の関節面には骨膜はない。
役割
• 骨の保護
• 骨の形成と再生
「成長期には、結合組織性線維は骨芽細胞に分化し、骨の太さを増す働き
がある。成長が止まると骨膜は薄くなり、骨形成能は低下するが、骨折や
損傷をうけると再び造骨機能を取りもどし、骨質の新生を行なう。」
骨折の治癒経過
 炎症期
骨膜の損傷
血腫
外骨膜
血小板由来成長因子
トランスフォーミング増殖因子β―
骨芽細胞の増殖
壊死した骨髄
壊死した骨組織
① 骨折部の血管が損傷し、血腫が形成される
② 骨膜の細胞層の未分化間葉系細胞・骨芽細胞の前駆細胞である骨形
成細胞の増殖が起こる
骨折の治癒経過
 修復期
血腫の
器質化
肉芽組織
軟骨
外仮骨:骨膜側に形成される仮骨
内仮骨:骨髄側に形成される仮骨
① 様々な因子により増殖した骨芽細胞が、血腫に入り込み両端を架橋
するように線維性の骨を形成する。
② 力学的に脆弱な初期の線維性仮骨の形成
膜性骨化:間葉系細胞が直接、骨芽細胞に分化して骨基質を産生する
骨折の治癒経過
 再造形期
繊維性骨
① 破骨細胞により溶かし、骨芽細胞により成熟させるを繰り返し、骨
を強固なものとする→リモデリング
成長を終えた骨は、形態と機能を維持するために骨組織
は吸収と再生を繰り返して基質の更新をおこなうこと
骨折の治癒経過
 炎症期
骨膜の損傷
壊死した骨髄
 修復期
血腫
血腫の
器質化
外骨膜
壊死した骨組織
 再造形期
肉芽組織
軟骨
繊維性骨
① 骨折部の血管が損傷し、血腫が形成される
② 骨膜の細胞層の未分化間葉系細胞・骨芽細胞の前駆細胞である骨形
成細胞の増殖が起こる
③ 様々な因子により増殖した骨芽細胞が、血腫に入り込み両端を架橋
するように線維性の骨を形成する。脆弱な初期の線維性仮骨の形成
④ 破骨細胞により溶かし、骨芽細胞により成熟させるを繰り返し、骨
を強固なものとする→リモデリング
頚部の栄養血管
~大腿骨頚部の血管~
上被膜動脈
大腿骨頭の血流の4/5を支配
大腿動脈
下被膜動脈
内側回旋動脈
外側回旋動脈
前面
頚部の栄養血管
~頚部骨折による骨頭壊死~
内側回旋動脈
外側回旋動脈
頚部の栄養血管
~骨膜血管系~
ハーバス管を通じての皮質骨の
長軸方向への血液の流入には限
界があり、偽関節と骨頭壊死を
生じやすい
骨膜からフォルマン管を通じて
皮質に血管を導入する
骨膜
フォルクマン管
ハーバス管
偽関節とは
骨折箇所の丌十分な整復や固定、骨折により血
行を遮断された骨折片の壊死などにより、骨折
した骨の癒合が阻害され、骨折面が分断された
ままで骨癒合が停止してしまった状態。骨折箇
所にあたかも関節が存在するような可動性を生
じるこの状態を偽関節といいます。
力学的特徴
~剪断力とは?~
物体の表面が互いに逆方向に平行移動する働き
を生み出す力。
適度な圧迫刺激の阻害
骨折線が垂直に近いほど
剪断力 大
骨癒合の目安









中手骨 2週
肋骨 3週
鎖骨 4週
前腕骨 5週
上腕骨骨幹部 6週
脛骨,上腕骨頚部 7週
下腿骨 8週
大腿骨 8週
大腿骨頚部 12週
小児はさらに20~30%早く癒合する
高齢者は通常より遅れる傾向にある
大腿骨頚部骨折の特徴
骨膜が欠如し、骨膜性仮骨が起こら
ないために起こる骨癒合障害
大腿骨を栄養する血管が損傷される
ことによる骨頭壊死・偽関節の形成
骨折線が傾斜しているため剪断力が
働くことによる起こる骨癒合障害
手術の種類
大腿骨頚部骨折・転子部骨折・転子下骨折
の特徴と外科手術の種類
頚部骨折
転子部・転子下骨折
関節包の内側の骨折
関節包の外側の骨折
解剖学的特徴から骨癒合が得られ
にくい
内側骨折に比べて血行動態も良好
なため比較的骨癒合しやすい
大腿骨頚部骨折の手術の選択
 大きく分けて、骨接合術と人工骨頭置換術があります。
•
•
•
•
術後の余命
年齢
日常生活レベル
骨折型
手術方法を決定
• 若い人には、人工骨頭の寿命を考慮しなるべく骨接合術を行い、
自身の骨を温存する
• 高齢者では、術後早期に臥位から脱出するため(=寝たきりや床
ずれ、肺炎の防止)人工骨頭置換術が選択
大腿骨頚部骨折の骨折型による分類
 大腿骨頚部骨折のX線上の分類は、現在、Garden分類
とPauwels分類が多く用いられています。
 Garden分類:骨折部における転位の程度によって分類
 Pauwels分類:骨折線のなす角度で分類
Garden分類 頚部骨折
ステージⅠ
ステージⅡ
ステージⅢ
ステージⅣ
• 丌完全骨折
• 内側で骨性連
続が残存して
いるもの
• 完全骨折
• 軟部組織の連
続性は残存し
ているもの
• 完全骨折
• 回転転位あり
• 頚部被膜の連
続性が残存
• 完全骨折
• 全ての軟部組織
骨接合術
骨接合術
人工骨頭
人工骨頭
人工骨頭
Pauwels分類
30°以下
Pauwels1度
頚部骨折
30°~
70°
70°以上
Pauwels2度
Pauwels3度
骨折線が水平に近い例では、骨折部に作用する圧迫力で癒合が得られや
すく、垂直になるほど骨折部にせんだん力が大きくなるため骨癒合に丌
利で偽関節が発生しやすい
観血的整復術
ハンソンピン
ハンソンピンの特徴
• 遠位ピンは骨頭の内反
• 近位ピンは後方への回旋を防止
人工骨頭置換術
Evas分類
受診時
整復後
Group1
• 転移なし
安定
Group2
• 転移あり
• 内側骨皮質は
整復可能
安定
Group3
• 転移あり
• 内側骨皮質は
整復丌可能
丌安定
Group4
• 粉砕骨折
丌安定
• 逆斜骨折
丌安定
Type1
Type2
転子部・転子下骨折
観血的整復術
ハイネイル
Wolftヴォルフの法則
 骨は、骨梁という細い繊維状の骨を力学的にうまく組
み立てた構造をしています。
構造をつくる過程で
 45度の角度で走る
 お互いに直交するように走る
 力の加わる方向に対しての数を増
やしたり、太くしたり
同じ骨の中でも、荷重の分布が変化する
と皮質骨と海綿骨の量と構造の分布も変
化することをWolftの法則という
大腿骨頚部の骨梁構造
②主引っぱり骨梁
③主圧迫骨梁
①大転
子骨梁
①主圧迫骨梁
②副引っぱり骨梁
主圧迫骨梁:頚部内側から骨頭荷重面
主引っぱり骨梁:大腿骨外側から骨頭内側
大腿骨頚部の骨梁構造
②主引っぱり骨梁
③主圧迫骨梁
①大転
子骨梁
①主圧迫骨梁
②副引っぱり骨梁
主圧迫骨梁:頚部内側から骨頭荷重面
主引っぱり骨梁:大腿骨外側から骨頭内側
 以上大腿骨頚部骨折について、
ご清聴ありがとうございました
参考文献:標準整形外科学
X線撮影技術学
Fly UP