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米国の過少資本税制に関する財務省規則の 草案が与える影響

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米国の過少資本税制に関する財務省規則の 草案が与える影響
International Tax Services Newsalert
米国の過少資本税制に関する財務省規則の
草案が与える影響について
June 2016
In brief
この度、内国歳入法 385 条(過少資本税制)に関する財務省規則の草案 (Proposed Regulation) が財務省よ
り公表されました。日系企業の皆様への影響も大きい考えられることから、その概要をご報告いたします。
In detail
過少資本税制は、関係会社からのファイナンスについて、法形式上は借入であっても、実質的に資本と考え
られる場合に利息の損金算入を否認し、元利金の支払を配当とみなすものです。その具体的な判断基準に
ついては過去の判例からある程度明確になってはいるものの、これまで 385 条に関する財務省規則は設けら
れていませんでした。今回公表された規則案は、関係会社からのファイナンス(以下「借入」)の税務上の取り
扱いを網羅的に整備するものですが、同時に借入に関する「適時文書化」義務が新たに要求され、日系企業
にも追加の負担を与える可能性があります。
今回の改正により、日本親会社から米国子会社への貸付が、一定の要件を充たさないことで資本とみなされ
ることになります。その結果、米国子会社の日本親会社に対する支払利息が損金不算入となる可能があるた
め、今後日米間の借入を行う場合は留意が必要となります。
大規模な改正のため実務上の影響は広範囲に及ぶと見込まれていますが、本規則案の主なポイントは以下
の通りです。
1.適用対象
海外を含む 80%以上の資本関係で繋がり、かつ、下記のいずれかに該当する企業グループ(expanded group)
のメンバー(以下「メンバー」)間の借入(expanded group instrument、以下「EGI」)が対象となります。連結納
税グループ法人間の借入は対象外ですが、cash pooling や internal banking service も上記の要件を満たす
限り適用対象とされます。
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
メンバーのいずれかが上場している
借入が EGI とみなされた時点での総資産が$100 M を超えている (expanded group に関する SEC
向け財務諸表、株主・債権者報告用の財務諸表で監査証明の付されたもの等(applicable financial
statements)に基づき判定)
借入が EGI とみなされた時点での総収入が$50 M を超えている (判定方法につき同上)
www.pwc.com/jp/tax
International Tax Services Newsalert
2. 適時文書化義務
EGI に関する下記の資料を借入から 30 日以内に準備し、借入が継続している期間中の保管が要求されま
す。この要件を充足できない場合には、原則としてその借入は資本とみなされます。この要件を満たした場合
に、改めて本規則案の他の規定や従前の基準等に基づき EGI が借入か資本かが判定されることになります。
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法的に有効な借入契約書
EGI の保有者が債権者としての地位・権利を有していることの証明
EGI の返済が合理的に期待できることの証明(キャッシュフロー・比率分析等含)
元利金の返済義務が実際に履行されていることの証明
3. 一定の場合の資本へのみなし規定
メンバーに対する分配、メンバー会社株式の取得、あるいは非課税の組織再編による資産の取得等一定の
取引の対価として EGI に該当する負債(debt instrument)が発行される場合、適時文書化義務を満たしてい
たとしても、当該負債は資本とみなされます。また、負債がこれら一定の取引の資金調達(ファンディング)を
主目的として発行された場合で、一定の例外に該当しない場合にも、当該負債は資本とみなされます
(Funding Rule)。Funding Rule の適用上、負債がこれら一定の取引の前後 3 年以内に発行された場合(一
定の例外を除く)は、これら一定の取引の資金調達が主目的であったとみなされます(per se rule)。例えば、
米国子会社が日本の親会社から借入を行った前後 3 年の間に親会社へ当期に増加した利益積立金
(current year E&P)を超える額の配当を行った場合、配当が借入により資金調達されたとみなされ Funding
Rule により当該借入(の一部)が資本とみなされる可能性がありますので留意が必要です。
4. その他

IRS(内国歳入庁)は、例えば EGI の発行時点でその返済が一部しか見込まれない等の事実関係を有
し負債と認められない場合等一定の場合には、当該借入の一部を資本として取り扱う権限を有するとさ
れています。この規定については 80%ではなく 50%以上の資本関係で繋がる企業グループ(modified
expanded group)のメンバー間の EGI が対象とされます。

財務省規則案の最終化(最終規則の発行)のタイミングは現時点では未定ですが、本案が施行された
場合、2016 年 4 月 4 日以降に実行された EGI に適用 されることが見込まれます。当該 EGI が借入の
要件を充足しない場合は、最終化から 90 日を経た時点で資本に変換されたとみなされます。なお、借
入が資本とみなされた場合には連邦税法の全ての規定において資本と取り扱われます。
詳細は以下の英語版ニュースレターに記載しておりますのでご参照ください。
Proposed Treasury Regulations under Section 385 would have profound impact on related party financings
http://www.pwc.com/us/en/tax-services/publications/insights/assets/pwc-proposed-section-385-regswould-impact-related-party-financings.pdf
PwC
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www.pwc.com/jp/tax
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