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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅

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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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フザリウムの関与する植物の交叉病害抵抗性に関する研
究( Abstract_要旨 )
清水, 文一
Kyoto University (京都大学)
2000-07-24
https://doi.org/10.11501/3172800
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
author
Kyoto University
【4
4
8】
し
みず
ぶん
清
水
文
学位(
専攻分野)
博
士
学 位 記 番 号
農
学位授与の 日付
平 成 1
2年 7 月 2
4日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 4 粂 第 1項 該 当
氏
名
(
農
いち
学)
第 11
43号
博
研 究 科 ・専 攻 、 農 学 研 究 科 応 用 生 命 科 学 専 攻
学位 論 文選 目
フザ リウムの 関与 す る植 物 の交 叉病 害抵 抗 性 に関す る研 究
論文調査委 員
教 授 上 野 民 夫
(
主 査)
論
文
内
教 授 岩 村
容
の
要
倣
教 授 坂 田
完
三
旨、
1
s
ar
i
um o
柳
サ ツマ イキつ る割 れ病 は Fu
or
um ∫
.s
p. b
at
at
as(
PF) の寄 生 に起 因す る土 壌 病 害 で, サ ツマ イモ
(
Z
po
mb
e
ab
at
at
asL.
)の栽培上大 きな障害 となっている。一般 に, この ような土壌病害 は薬剤 による防除が困難 とされて
いるが,本病害に対 しては非病原性の F・o
xyS
PPr
um l
O卜2(
NPF)を作付 け時 に前処理する生物防除 (
交叉防除)が高い
効果 をもた らす ことが示 されて∨沌
o
NPF と PF間に措抗作用 は観察 されていない ことか ら, この防除効果 は菌同士の相
互作用 によるものではな く,NPFが植物 に作用 して抵抗性 を誘導することによって もた らされると考 えられている。 しか
しこの NPF と植物の相互作用の詳細や NPFの有する抵抗性誘導因千,そ して誘導 される抵抗現象の分子機構 は不明であ
る。
本研究では,サツマイモにおける病害抵抗性誘導現象の分子機序の解明を目指 し葦。 まずサ ツマイモのファイ トアレキシ
ンL
として知 られる i
pome
a
ma
r
one(
I
P)の誘導抵抗性 との関連 について検討 を行 った。 また本現象 を解析する上でサツマイ
\
モ苗 は,」
均 質 な試料 を得 に くく取 り扱い が困難 であった こ とか ら,サ ツマ イモ と近縁種 にあ るソライロアサ ガオ (I
.
t
r
i
c
ol
o
r)を用いた, よ り簡便 な相互作用の評価系 を確立 した。さらにこの系 を用いて,PFの産生する病徴発現 に関わる植
物毒素の探索,お よび NPF処理後の植物組織内の二次代謝変動の検討 を行 った。本論文の主 な内容 は以下 に示す とお りで
ある。
1.I
Pはサツマイモ黒斑病 に対する抵抗性 に重要な役割 を果た していることが知 られている. そこで PFに対す る抵抗
性 について も関与 しているか否かを検討するため,NPF処理後のサツマイモ苗 (
c
v.be
ni
koma
c
hi
) もしくは根塊組織 中の
I
Pの分析 を行 った。その結果,処理後いずれの時間において も pF胞子の発芽 を抑制するのに有効 な濃度の I
Pは検出され
なかった。このことか ら本抵抗性誘導現象 に I
Pは関与 していな′
い もの と結論 した。
2. ソライロアサガオ幼苗 (
c
v.he
a
ve
nl
ybl
ue) を用いて,病徴 と抵抗性の簡便 な評価系 を確立 した。ここでは,子葉 中
の葉緑素含量 を指標 として PFによって引 き起 こされる病徴の程度 を評価 した。 またこの病徴 は NPFを前処理することに
s
ar
i
um の蔓延が抑制 されることを見出 した。以上の結果か ら, ソライロアサ
よって抑制 され,同時に茎以外の組織-の Fu
ガオにおいて もNPFによって PFに対する抵抗性が誘導 されることを明 らかにした。
3.抵抗性誘導 に関わる因子の性状 に関 して検討 を行 った。 ソライロアサガオに誘導 される抵抗性 は,NPF培養液液 に
よって も誘導 されたことか ら,NPFの産生する何 らかの化学成分 によって誘導 されていることが示唆 された。 またこの培
養液液 を熟処理することによりその誘導活性が失われたことか ら, この化学成分は熟 に不安定であると考 えられた。種々の
薬剤処理 による雁病性の変化 を検討 した ところ,a
bs
c
i
s
i
ca
c
i
dに抵抗性誘導活性が見出され,
、NPFによって誘導 される抵
bs
c
i
s
i
ca
c
i
dが関与 している可能性が示唆 された。 また作用機構 は不 明なが らジニ トロアニ リン系 除草剤 である
抗性 に a
t
r
i
Aur
a
l
i
nにも誘導活性が見出された.
4.NPF処理 によってソティロアサガオに生ずる代謝変化 について検討 を行 った.その結果, フェニルアラニ ンアンモ
-1
0
3
9-
ニア リアーゼ活性 が NPF処理後, ソライロアサ ガオ組織 内で上昇するこ とを見 出 した。 この.
ことか ら, フェニルプロパ ノ
イ ド経路が NPF処理 によって活性化 され る と考 え られた。 また NPF処理後 の ソライ ロアサ ガオ組織抽 出物 を逆相液体 ク
c
opol
e
t
i
nお よびその配糖体 である S
c
opl
Ol
i
nが対照処理 に比べ てそれぞれ, 6
ロマ トグラフィーを用いて分析 した ところ,s
倍 お よび1
2
倍量蓄積 した。 これ らの反応 は抵抗性獲得 と並行 していた ことか ら,菌 と植物 の準互作用 を考察す る上で生物検
定 の指標 として用いることが出来 る と考 えられた。
5.PFの産生す る植物毒素 に関 して検討 を行 った。PF培養物 のアセ トン抽 出物か らソライロアサ ガオ芽生 えに対 して
r
gos
伸長 阻害活性 を示す 2成分 を単離 し,各種機器分析 を用 いて構造決定 を行 った. その結 果, これ ら成分 はそれぞれ e
t
e
r
olお よび f
us
al
a
ni
pyr
oneであ る と決定 した。それ ぞれの活性 を示 した最低濃度 は e
r
gos
t
e
r
olが 1
0ppm,
L
f
us
a
l
a
ni
pyr
one
は 0.
01
ppm であった。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
非病原性 フザ リウム (
NPF) を用 いたサ ツマ イモつ る割 れ病の交叉防除は植物体 に誘導 される抵抗性 によってその効果
が得 られ,現在 圃場で実用化 されている生物防除法である。 しか しこの抵抗性誘導現象 に関す る化学的知見 は,サツマイモ
が植物試料 として取 り扱 いが困難 であ ったため,詳細 に検討 された例 はこれ までにはない。本論文 はこの現象 を化学的に解
明す るため に,菌 一植物 聞相互作用 の よ り簡便 なモデル系 を確立す る とともに,植物 -NPF間の相互作用 の結果 として植
物体内 に生 じた代謝の変化 について検討 を行 った ものである。 その評価すべ き点は以下 に示す通 りである。
1.サ ツマ イモの ファイ トア レキシンとして知 られ る i
pome
a
ma
r
one(
I
P)の NPF処理 によって誘導 され る抵抗性 に対
す る関与 について検討 し, この交叉病害抵抗性 に I
Pは関与 していない こ と.
を明 らかに した。
2.サ ツマイモ と近縁種 にあるソライロアサ ガオを用いた,病徴 の簡便 な検定系 を確立 した。 またこれを用 いてソライロ
アサ ガオに も NPFによってサ ツマ イモつ る割 れ病菌 に対 す る抵抗性が誘導 されることを見 出 した。 この抵抗性 は NPFの
bs
c
i
s
i
ca
c
i
d,お よびジニ トロアニ リン系除草剤 t
r
i
丑ur
a
l
n といった化学
i
産生す る成分, さらには植物 ホルモ ンの一つである a
物質処理 によって も誘導 されるこ とを示 した。
3.NPF処理後 の抵統性獲得 に ともなって, ソライロアサガオ組織 内で phe
nyl
a
l
a
ni
nea
mmoni
a-1
yas
e活性が上昇す る
c
opol
e
t
i
nお よびその配糖体 s
c
opol
i
nが,NPF との相互作用の結果組
こ とを見 出 した。 また フェニルプロパ ノイ ドである s
織 内に蓄積 されることを見出 した。 これ らの反応 は迅速かつ測定が容易であったことか ら,植物 一菌の相互作用 における生
物検定の指標 となるもの と考 え られた 。
4.サ ツマ イモつ る割 れ病菌培養菌体抽出物か ら, ソライロアサガオ芽生 えに対す る伸長阻害活性 を示す成分 ,e
r
gos
t
e
r
-
olお よび f
us
a
l
a
ni
pyr
oneを単離 した。後者の植物 に対 す る活性 は,今回新 たに見出 された ものであった。
以上の ように,本論文 は NPFによって誘導 される交叉病害抵抗性現象 をよ り簡便 に検討 で きる系 を確立 し, さらに交叉
防除による抵抗性獲得 にともなって生ず る植物 の反応 を精査 した ものであ り,植物生理化学 ,植物病理化学,天然物化学,
植物防疫学 に寄与す る ところが大 きい。
よって,本論文 は博士 (
農学 )の学位論文 として価値 ある もの と認める。
なお,平成 1
2年 4月1
4日,論文並 びにそれに関連 した分野 にわた り試問 した結果,博士 (農学)の学位 を授与 される学力
が十分 にある もの と認めた。
-1
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