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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅

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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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脳血管障害および高血圧におけるヒドロキシルラジカル
の関与( Abstract_要旨 )
根岸, 裕子
Kyoto University (京都大学)
2002-03-25
http://hdl.handle.net/2433/149867
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
【5
7
9】
ね
ぎし
ひろ
」
根
岸
裕
子
学位(
専攻分野)
博士
(
人間 ・環境学)
学 位 記 番 号
人
学位授与の 日付
平 成 1
4 年 3 月 25 日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 4 条 第 1項 該 当
研 究 科 ・専 攻
人 間 ・環 境 学 研 究 科 人 間 ・環 境 学 専 攻
学位 論 文題 目
脳 血 管 障害 お よび高 血 圧 にお け る ヒ ドロキ シル ラジ カル の 関与
論文調査 委員
教 授 中村 条 太 郎
.
氏
名
博
第
1
43 号
(
主 査)
論
文
、内
教 授 松 村 道 一
容
の
要
教 授 津 田 謹 輔
旨
戦後, 日本人の寿命 は延長 したが,心身の活動が低下 した高齢者の介護 などが大 きな問題 となっている。 高齢者 における
要介護者の約 4割 は脳卒 中患者が占め, さらに老人性痴呆の約 3分 2は脳血管障害 に基づ くといわれている。2
1
世紀 には人
口の高齢化 とい う問題 と重 なって,脳血管障害 に基づ く高齢者の要介護者あるいは寝 た きり者が ます ます増加すると予測 さ
れる 従 って,脳血管障害やその危険因子 としての高血圧 の病態解明や予防に向けた研究 を行 うことが人類 にとって最重要
。
課題 となる。 近年,様 々な病態 に活性酸素の関与が注 目され,脳血管障害 において も重要な因子 となっている可能性が示唆
されている。 しか し,脳血管障害お よびその危険因子である高血圧 における活性酸素の関与 については未だ不明な点が多い。
本論文 は活性酸素の一つであ り,細胞傷害性の高いヒ ドロキシルラジカル と脳血管障害やその危険因子 との関係 について
明 らかにす ることを, さらに抗酸化物質 による予防法 を検討す ることを目的 とした。そこで,高血圧 を自然発症 し,ほぼ仝
SHRSP) を用いた実験的研究 と,都市
例が脳卒中で死亡す る疾患モデル動物である脳卒 中易発症高血圧 自然発症 ラッ ト (
化 とともに高血圧症が増加 しているにもかかわらず,治療がほ とん ど行 われていないアフリカ東部 に位置す るタンザニアの
都市部, ダルエスサ ラーム在住者 を対象 に疫学的研究 を行 った。本論文 は 4章 より構成 されている。
第 1章では,SHRSPを用いて高血圧 とヒ ドロキシルラジカルの関連 について検討 した。その結果, ヒ ドロキシルラジカ
ルの指標 の一つである2
4時間尿 中8-hydr
oxy-2'
-de
oxygua
nos
i
ne(
8-OHdG)排推量が,幼君期 の SHRSPにおいて,正
常血圧 ラッ トに比べ,有意 に高値 を示 した。 この知見 はヒ ドロキシルラジカルによる DNA 酸化傷害が幼君期で既 に生 じる
ことを示唆 した。
0
0
名 を対象 と
第 2章では, ヒ トを対象 に高血圧 とヒ ドロキシルラジカルの関連 を明 らかにするため, タンザニアで男女6
した疫学的研究 を実施 した。その結果,エイズやマラリアの感染症だけではな く高血圧,脳血管障害が問題 となっている都
4時間尿 中8-OHdG排推量が高血圧群 (
収縮期血圧 ≧1
4
0
mmHgあるいは拡張期血圧 ≧9
0
mmHg)で有
市部在住者では,2
意 に正常血圧群 (
収縮期血圧 <1
40
mmHgかつ拡張期血圧 <9
0
mmHg) より高値 を示 した。 さらに高血圧群 は正常血圧群 よ
り高血糖が認め られた。グルコースなどの還元糖 とタンパ ク質の非酵素的反応である糖化反応 によ り生成 される糖化反応後
期反応最終生成物 (
AGEs
)はグルコース濃度 に依存 的であ り,AGEsのタンパ ク質は活性酸素 を誘導することが明 らか と
なっている。 このことか らタンザニア都市部在住高血圧者 における高血糖が DNA 酸化傷害上昇の要因の一つであ り,高血
圧の発症 を一層高めていると考 えられる。
第 3章では, SHRSP を用 いて脳虚血後の神経細胞脆弱性が顕著である脳海馬 CAl領域 における虚血 ・再潅流後の ヒ ド
ロキシルラジカルの生成 をマイクロダイアリシス (
脳微小透析)法 により経時的に測定 した。その結果,再潅流によりヒ ド
ロキシルラジカルの生成量が増加 し, これが脳細胞死の一因 となる可能性 を示唆 した。
本研究 よ り,高血圧お よび脳虚血 ・再潅流傷害 にヒ ドロキシルラジカルが関与することが明 らか とな り, ヒ ドロキシルラ
ジカルによる傷害 を抑制す ることが重要であると考 えられた。そこで,第 4章では, ヒ ドロキシルラジカルの抑制 を目的 と
-1
3
5
6-
し,茶 に含 まれる抗酸化物質, フラボノイ ド類 を SHRSPに 4週間投与 した。テ レメ トリー送信器 をラッ トの体内に完全 に
埋め込むことにより, 自由活動下での血圧測定が可能 となったテ レメ トリーシステムにより血圧 を測定 し,2
4時間経時的に
観察 した。その結果,紅茶お よび緑茶 フラボノイ ドにより有意 な血圧上昇抑制が観察 され, ヒ ドロキシルラジカルが一因で
ある高血圧 を予防する可能性が実験的に示 された。
以上の結果か ら,高血圧お よび脳血管障害の予防のためにはヒ ドロキシルラジカルの抑制が最重要 と考 えられる。 従 って,
ヒ ドロキシルラジカルを抗酸化物質により抑制 し,高血圧お よび脳血管障害 を予防することが高齢化社会での 「
寝 た きり」
者 を予防するうえで重要であると考 えられる。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
1
世紀 には高齢者の要介護者あるいは 「
寝 た きり」者が ます ます増加す ると予測 される。 高齢者
高齢化社会の到来 と共 に2
における要介護者の約 4割は脳卒中患者が占め, さらに老人性痴呆の約 3分 2は脳血管障害 によるといわれている。 従 って,
脳血管障害やその危険因子 としての高血圧 の病態解明や予防に向けた研究 を行 うことが人類 にとって最重要課題 となる。 近
午,様 々な病態 に活性酸素の関与が注 目され,脳血管障害 において も重要な因子 となっている可能性が示唆 されている。 し
か し,脳血管障害お よびその危険因子である高血圧 における活性酸素の関与 については未だ不明な点が多い。
本学位 申請論文 は,活性酸素の うち最 も細胞傷害性の高い, ヒ ドロキシルラジカルに焦点 をあて,脳卒 中易発症高血圧 自
SHRSP) を用 いて ヒ ドロキシルラジカルの高血圧お よび脳血管障害への関与 を検討す ることを, またこの
然発症 デッ ト (
研究の成果の妥当性 をヒ トを対象 として確認す るために,高血圧の治療がほ とん ど行 われていない タンザニアの都市部在住
者 を対象 に疫学的調査 を行 うことを, さらに高血圧予防のために食品抗酸化物質の効果 を検討することを目的 とする。
、本研究の第 1章では, まず SHRSPを用いて高血圧 とヒ ドロキシルラジカルの関連 について検討 した。その結果,重篤 な
4時間尿 中 8-OHdG排推量が,正常
高血圧 を呈す る幼若期 において,生体 内の ヒ ドロキシルラジカルの指標 の一つである2
血圧 ラッ トよ り有意 に高値 を示 し,SHRSPは早い時期 にヒ ドロキシルラジカルに曝 されていることを明 らかに した。本研
究は高血圧の病態 を解明するうえで大変重要な知見 を与 えた。
第 2章では, ヒ トを対象 に高血圧 とヒ ドロキシルラジカルの関係 を明 らかにす るため,WHO の国際疫学研究 に参加 し,
都市化 とともに脳血管疾患や高血圧 などの疾患の有病率の増加が問題 となっているアフリカ, タンザニアにおいて高血圧の
発症 とヒ ドロキシルラジカルの関連 について検討 した。その結果,SHRSPを用いて得 られた研究成果 と同様,高血圧群で
2
4時間尿 中 8-OHdG排推量が有意 に正常血圧群 より高値 を示 した。 さらに高血圧群 は正常血圧群 より高血糖が認め られた。
糖化反応後期反応最終生成物 (
AGEs
)はグルコース濃度 に依存 的であ り活性酸素 を誘導す ることが ら考 え, タンザニア都
市部在住高血圧者 における高血糖 は DNA 酸化傷害上昇の要因の一つであ り, さらに高血圧 を促進す ることを示唆 したこと
は,大いに評価 される。
第 3章では,脳血管障害 の原 因 を明 らか にす るため, SHRSPを用 いて脳虚血後 の神経細胞脆弱性が顕著である脳海馬
CAl領域 にお ける虚血 ・再潅流時の ヒ ドロキシルラジカルの生成 をマイクロダイアリシス (
脳微小透析 )法 によ り経時的
に測定 した。その結果,再潅流 によりヒ ドロキシルラジカルの生成量が増加 し,虚血 に伴 うヒ ドロキシルラジカルによる細
胞死の一因である可能性 を示唆 した。 さらに,虚血 ・再潅流時の脳海馬 CAl領域 ヒ ドロキシルラジカルを経時的に測定可
能なサ リチル酸 トラップ法 を新 たに確立 したことは高 く評価 で きる。
第 4章では, ヒ ドロキシルラジカルを抑制することが脳血管疾患の発症予防につながるか どうか を確かめるため,抗酸化
力 を有す紅茶 フラボノイ ドお よび緑茶 フラボノイ ドを SHRSPに投与 し,血圧 をテレメ トリー法 により測定 した。その結果,
紅茶 フラボノイ ドお よび緑茶 フラボノイ ド投与 により,有意 に血圧上昇が抑制 され,高血圧 を予防す る可能性 を示 したこと
は,極めて貴重 な知見である。
以上,本研究は,脳血管障害お よびその危険因子の一つである高血圧発症 にヒ ドロキシルラジカルが関与す ることを明 ら
かにし,その予防のために食品に含 まれる抗酸化物質, フラボノイ ドなどの摂取が役立つ とい うことを示唆 した大変有意義
な研究である。 これ らの研究の成果は,高齢化社会の到来 と共に大 きな問題 とな りつつある 「
寝 た きり」者の予防 に大 きく
貢献すると考 えられる。従 って,本学位論文 は,人間 と環境の問題 を総合的に考察す るとい う人間 ・環境学専攻, 自然環境
-1
3
5
7-
論講座,身体機能論の 目的に添 った ものである。
よって本論文 は博士 (人間 ・環境学)の学位論文 として価値あるもの と認める。 また,平成 1
4年 1月1
5日,論文内容 とそ
れに関連 した事項 について試問 を行 った結果,合格 と認めた。
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