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非対称化および非平面化による医薬品候補低分子の水溶性向上策

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非対称化および非平面化による医薬品候補低分子の水溶性向上策
Journal Club No.551
November, 22, 2011
非対称化および非平面化による医薬品候補低分子の水溶性向上策
大倉
彰太
医薬品開発において高い活性と同様に高い水への溶解性が必要とされている。これ
までに低い溶解性が理由で、数多くの医薬品候補化合物が開発段階でドロップアウト
している。Glaxo Smith Kline の報告によれば芳香環化合物の数は3つまでが良く、4
つ以上では、水溶性が低下するため、開発可能性が低くなるとの報告がなされている。
また、Wyeth の報告では sp3 炭素が多いほど開発可能性は高く、平面性の高い分子は
水への難溶性のため臨床試験でドロップアウトしやすいとの報告がなされている。構
造活性相関研究において活性の向上のみならず、水溶性向上の検討をしていかなけれ
ば医薬品開発まで結びつかない。これまでに、カップリング反応の貢献により複雑な
天然物合成が容易となったが、結晶性の高い化合物が増えてきた傾向にある。本論文
では医薬品候補の中から、水溶性が問題となった化合物を例にとり、新たな水溶性向
上策の提案がなされている。今後、この水溶解性向上策は医薬品開発に多いに貢献す
ることが期待できる。
紹介論文
Improvement in Aqueous Solubility in Small Molecule Drug Discovery
Programs by Disruption of Molecular Planarity and Symmetry
Minoru Ishikawa* and Yuichi Hashimoto
(Institute of Molecular and Cellular Biosciences, The University of Tokyo)
J. Med. Chem. 2011, 54, 1539-1554.
要旨
生理活性を有する低分子の水溶性は、活性・安定性・体内動態などに多大な影響を及ぼす
為、全ての低分子創薬において非常に重要な要素である。リード化合物の水溶性改善が、大
きな課題になる事例も多い。この場合親水性置換基を導入し、水溶性を向上させる手法が一
般的に用いられているが、この手法は万能な水溶性向上策とは言えない。そこで筆者らは、
親水性置換基導入に頼らない低分子の水溶性向上策の開発を目指した。これまでに、固体の
溶解性は、溶質の溶媒への親和性と、結晶の柔らかさの両方に影響を受けるとの報告がある。
そこで、筆者らは分子の非平面化・非対称化により結晶が柔らかくなり、水溶性を向上でき
ると考えた。この方法であれば、親水性・疎水性を共に向上することが期待できる。本論文
は、低分子の水溶性を向上させる新しい方策を提唱したものである。
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