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小樽市の中小企業の ワークライフバランスに関する調査

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小樽市の中小企業の ワークライフバランスに関する調査
平成 23 年 12 月 9 日提出
小樽市の中小企業の
ワークライフバランスに関する調査
2008278
商学科
田中綾乃
目次
第1章
はじめに....................................................................................................................2
第2章
ワークライフバランス..............................................................................................3
2.1 ワークライフバランスの定義 .....................................................................................3
2.2 ワークライフバランスの歴史 .....................................................................................3
2.3 中小企業における現状 ................................................................................................4
第3章
小樽市の中小企業 .....................................................................................................6
第4章
中小企業のワークライフバランスに関する先行研究 ..............................................7
第5章
小樽市の企業への調査..............................................................................................8
5.1 アンケート調査 ...........................................................................................................8
5.1.1 調査の方法............................................................................................................8
5.1.2 調査の結果............................................................................................... 12
5.1.3 調査結果の考察 ................................................................................................. 13
5.2 インタビュー............................................................................................................ 14
5.2.1 インタビューの概要 .......................................................................................... 14
5.2.2 インタビューの結果 .......................................................................................... 14
5.2.3 インタビュー結果の考察................................................................................... 15
第6章
分析........................................................................................................................ 17
6.1 4象限の作成と分析................................................................................................. 17
6.2 その他の自治体におけるワークライフバランス~札幌市を例に~........................ 18
第7章
おわりに................................................................................................................. 20
参考文献 ............................................................................................................................... 21
1
第1章
はじめに
近年、女性の社会進出が目立つようになり、社会、企業において活躍をする女性が増え
てきた。かつては夫が働き、妻が専業主婦として家庭や地域で役割を担うという姿が一般
的であった。しかし、現在は勤労者世帯の過半数が共働き世帯である。このように、女性
が男性と変わらない働き方をすることが可能となり、キャリアを積み重ねていくことがで
きるようになった現在の社会があるのは、「ワークライフバランス」の考え方の出現と浸透
によるところが大きい。
1986 年の男女雇用機会均等法の施行を皮切りに、これまでに様々な制度や法律が整備さ
れてきた。この 20 数年の間に少しずつ、「結婚しても退職せず、生活・家庭と両立させな
がら仕事を続けていく」といった考え方、キャリアプランは社会に浸透してきた。
特に大企業においては近年、ワークライフバランスが経営戦略としても非常に重要視さ
れる傾向にある。多くの大企業がワークライフバランス施策の拡充に積極的に取り組み、
新入社員の採用活動においてもこの点は大きなメリットと考えられている。
一方で、大企業と比べるとまだワークライフバランスが進んでいないのが中小企業であ
る。育児休業制度やフレックスタイム制度といった制度は、大企業では可能であっても中
小企業では導入することが難しいと言われている。
ここで、「中小企業において、ワークライフバランス施策の拡充が進まない理由は一体何
であるのか?」という疑問が浮かんだ。また、筆者にとって身近な小樽市の中小企業のワ
ークライフバランスの実態、そして現在どのような取り組みが行われているのかを行って
いるのかを知りたいと考えた。しかし現在、小樽市の企業がどの程度ワークライフバラン
スに取り組んでいるのかについての調査結果やデータはない。もしも、ワークライフバラ
ンスが進んでいないのであれば、そこにはどのような理由があるのかを知りたいと考えた。
そこで、本研究では小樽市の中小企業におけるワークライフバランスの実態を明らかにす
るとともに中小企業においてワークライフバランス施策が拡充しない理由を探るために、
企業に対し調査を行った。
2
第2章
ワークライフバランス
この章では、ワークライフバランスの定義や歴史、そして現状について論じる。
2.1
ワークライフバランスの定義
ワークライフバランス(Work–life balance)とは、Wikipedia によると、
「仕事と生活の
調和」と訳され、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を
果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各
段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる」ことを指す。
また、内閣府の仕事と生活の調和推進室の「憲章」によると、仕事と生活の調和が実現し
た社会は、
「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす
とともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に
応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」とされ、具体的には(1)就労による経済
的自立が可能な社会、
(2)健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会、
(3)(2)健康
で豊かな生活のための時間が確保できる社会と定義されている1。
株式会社ワークライフバランスによると、ワークライフバランスの目的は、仕事とプラ
イベートをうまく調和させ、相乗効果を及ぼし合う好循環を生み出すことである。
以下は株式会社ワークライフバランスの企業ホームページからの抜粋である。「仕事におい
て、高い付加価値を提供し成果を上げるためには、広い視野や人脈が必要ですが、それら
は仕事以外の場所で身につくことが多いと思いませんか?つまり仕事以外の場を大切にす
ることによって、仕事も短時間で成果を上げることができるようになるのです。いいかえ
ると、仕事での成果を上げるために「働き方の柔軟性を追求する」ということがワークラ
イフバランスの核心であるということです。2」
「ワーク」と「ライフ」を“ハーモニー(調和)
”させることで、仕事でも家庭でもより豊
かな生活ができるのである。
2.2
ワークライフバランスの歴史
内閣府仕事と生活の調和推進室のホームページによると、日本では、2008 年が「ワーク・
ライフ・バランス元年」といわれている。2007 年末に「仕事と生活の調和(ワーク・ライ
フ・バランス)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」を政府が策定した。
それらが目指す課題は、男女共同参画(女性の活躍の場の拡大)、労働市場改革(女性、若
年、高齢者の就業率向上)、少子化対策(結婚・出産に関する希望の実現)の 3 点にあるとさ
1
出典:内閣府
2出典:株式会社
仕事と生活の調和推進室
ワークライフバランス
3
れている。
しかし、実際のワークライフバランスの始まりは 1986 年 4 月に「男女雇用機会均等法」
が施行されたことであるといえる。事業主が男女労働者を、募集・採用、昇進・降格、福
利厚生等において、性別を理由に差別することを禁じるこの法律が制定されたことによっ
て、職場での男女差別は改善されたが、
まだ不十分ということで 1997 年の全面改定を経て、
2007 年に再改定された。
1992 年 4 月には、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する
法律(育児介護休業法・育介休法)が施行された。この法律によって、男女とも育児休業
ができるようになった。
また、2005 年 7 月には従業員 301 人以上を雇用する企業に対し、子育て支援の行動計画
策定を義務付ける次世代育成支援対策推進法(次世代法と省略されることが多い)が制定
された。
1986 年 4 月の男女雇用機会均等法の施行から 25 年、ワークライフバランスに関する様々
な法律や制度が施行・制定されてきた。今後は企業の具体的な取り組みが問われていくこ
とになるだろう。
2.3
中小企業における現状
1986 年の男女雇用機会均等法の施行を皮切りに、様々な制度や法律が整備されてきた。
しかし、景気の悪化・低迷などの影響によって、実際にそういった制度を利用する労働者
は近年減少する傾向にある。厚生労働省が発表した平成 22 年度の雇用均等基本調査による
と、女性が育児休業を取得した割合は 83.7%で前年度を 1.9 ポイント下回り、2 年連続で低
下した。男性の取得率も前年度比 0.34 ポイント減の 1.38%にとどまった。3
また、男性の育児休業の取得率が女性に比べて圧倒的に低いのというのも現状である。厚
生労働省によると「福祉先進国」といわれる北欧諸国では、男性の育児休業取得率はスウ
ェーデンが 78%、ノルウェーが 89%となっており4、1.38%の日本とは大きな差がある。
そして、育児休業の取得率や企業の子育てサポート体制には、企業の規模の大小で大き
な違いが見られる。
前節で述べた次世代法に基づいて、101 人以上の労働者を雇用する事業主は、「一般事業
主行動計画」を策定し、速やかに届出する義務があり、労働者が 100 人以下の事業主には、
同様の努力義務があるとされている。
行動計画を策定し、その行動計画に定めた目標を達成するなどの一定の要件を満たした
場合、申請を行うことにより、「子育てサポート企業」として、厚生労働省大臣(都道府県
労働局へ委任)の認定を受けることができる。認定を受けた事業主は、
「次世代認定マーク
3
4
出典:厚生労働省
出典:厚生労働省
4
(愛称:くるみん、図 1)を、商品、広告、求人広告などにつけ、子育てサポート企業であ
ることをアピールすることができる。
図 1 次世代認定マーク(くるみん)
2011 年 7 月末の時点での次世代認定マークの取得数を以下(図 2)に示す。
図 2
186 社
935 社
(83.4%)
16.6%
計 1121 社
中小企業(労働者 300 人以下)
大企業(労働者 301 人以上)
図 2 の通り、次世代認定マークを取得している企業は、2011 年 7 月末の時点で 1121 社
である。内訳は労働者 301 人以上の大企業における取得数は 935 社で、取得数全体の 83.4%
となっている。それに対し、労働者 300 人以下の中小企業における取得数は 186 社で全体
の 16.6%となっており、大企業における取得数の約 5 分の1以下に留まっている。中小企
業庁の統計によれば、日本の全企業 421 万社のうち中小企業が占める割合は 99.7%である。
(図 3 参照)つまり、0.3%の大企業で次世代認定マーク総取得数のうちの 83.4%を占めて
おり、99.7%中小企業では 16.6%となっている。大企業において子育てをサポートする体制
が比較的整っているのに対し、中小企業においてはまだそのような体制は十分に整ってい
るとは言えない状態であることがわかる。
ここで、「中小企業において、ワークライフバランス施策の拡充が進まない理由は一体何
であるのか?」「実際にはどれくらい施策の拡充は進んでいるのだろうか?」という疑問が
浮かんだ。また、筆者にとって身近な小樽市の中小企業のワークライフバランスの実態、
そして現在どのような取り組みが行われているのかを行っているのかを知りたいと考えた。
次章では、小樽市の中小企業の概要について述べる。
5
第3章
小樽市の中小企業
平成 21 年度経済センサスが行った基礎調査によると、小樽市の事業所数(事業内容等が
不詳の事業所を除く)は 6,765、従業者数(男女別の不詳を含む)は 60,321 人である。5
そのうち、上場している企業は 2 社となっている。業種で最も事業所数が多いのは、卸売
業・小売業で 2018 である。次いで、宿泊業・サービス業、生活関連業・娯楽業、建設業、
製造業…と続いている。規模の分布を見ていくと、1~29 人の小企業が多い。
小樽市には、小樽商工会議所をはじめとして、いくつかの企業協会や組合、団体が存在
しており、小樽商工会議所公式ホームページの「企業・団体」紹介ページには、42 の企業
が掲載されている。小樽商工会議所会員企業サイトには、平成 23 年 10 月末現在、約 80 社
の企業が登録されている。また、小樽市商店街振興組合連合会の公式ホームページには、
飲食店・物販店・サービス店が掲載されている。そして、社団法人小樽物産協会の公式ホ
ームページの会員企業一覧のページには、98 社が登録されている(平成 23 年 8 月 1 日現
在)。
小樽市役所の福祉部子育て支援課が平成 23 年 10 月に「ファミリーサポートセンター事
業」を開始した。名称を「おたるファミリーサポートセンター」とし、NPO 法人北海道子
育て支援ワーカーズに運営を委託し、援助活動を行う。しかし、平成 23 年 12 月現在、小
樽市にはワークライフバランスに取り組む企業を認証してさまざまな支援を行う事業は存
在していない。(札幌市には「札幌市ワーク・ライフ・バランス推進事業」という事業があ
る。)そのため、小樽市の企業がどの程度ワークライフバランスに取り組んでいるのかにつ
いて知るためのデータはない。もしも、ワークライフバランスが進んでいないのであれば、
そこにはどのような理由があるのかを知りたいと考えた。そこで今回、筆者は小樽市の中
小企業におけるワークライフバランスの実態を明らかにするとともに、中小企業において
ワークライフバランス施策が拡充しない理由を探るために、企業に対し調査を行った。
次章では、中小企業のワークライフバランスに関する先行研究について述べる。
5
出典:小樽市統計情報「平成 21 年経済センサス」
6
第4章
中小企業のワークライフバランスに関する先行研究
中小企業のワークライフバランスに関する先行研究としては、東京商工会議所人口問題
委員会(2007)、脇坂(2009)などがある。また中小企業を対象としていないが,男女の均
等とワークライフバランス(正確には,ファミリー・フレンドリー施策6)との関係をみた
ものに,脇坂(2006a),脇坂(2007b),脇坂(2008a),脇坂(2008b)がある。
脇坂(2009)では、中小企業における施策について、
「育児支援と企業経営に関する研究
会」(代表川口章同志社大学教授)による企業へのアンケート調査(「育児支援と企業経営
にかかわる調査」)を用いて,分析している。 またワークライフバランスは「win-win」が
ポイントであるので,女性の活用もあわせて考察しないといけないため、男女均等とあわ
せて論じている。
2007 年 9 月に大阪商工会議所加盟企業のうち,社員数 30-100 人未満企業 3089 社から
ランダムに抽出した 1313 社と社員数 100-1000 人未満企業すべての 2187 社,合計 3500
社に配布。428 企業の有効回答を得た(回収率 12.2 %)。従業員数のわかる 379 社のうち,
中小企業である 300 人以下の企業は 338 社を分析対象としている。
アンケート調査、分析を行うために、均等とファミフレの度合いを計る質問項目を作成
し(均等度は 70 点満点,ファミフレ度は 75 点満点で作成)、企業の規模別・業種別に分
析。規模別については、小規模企業は均等,ファミフレ度の平均は低いが,すべての企業
が進んでいないのではなく,非常に遅れた企業と非常に進んだ企業の双方が存在すること
を明らかにしている。
今回、小樽市の企業への調査を行うにあたって、この大阪府へのアンケート調査に用い
られた質問項目と同じものを使用した。
6ファミリーフレンドリー施策
仕事と育児・介護が両立できるような様々な制度を持ち、多様でかつ柔軟な働き方を労働
者が選択できるような取組のことを指す。
7
第5章
小樽市の企業への調査
小樽市の中小企業のワークライフバランスの実態を明らかにするために、企業に対して
アンケート調査およびインタビューを行った。
5.1
アンケート調査
5.1.1 調査の方法
◆対象:小樽市内に本社を置く中小企業(従業員規模 300 人以下の企業)
◆サンプル数:68 社(ランダムに抽出した 113 社にアンケート用紙配布、回収率 60.2%)
◆質問項目:均等度 18 問 70 点満点、ファミフレ度 32 問 75 点満点で作成(図 3)
図 3 アンケート調査質問用紙
問
次にあげる各項目について,選択肢のあるものについては当てはまるものを一つ選び,○をつけてく
ださい。
a.業種
建設業 | 製造業 | 電気・ガス・熱供給・水道業 | 情報通信業 | 運輸業・郵便業
卸売業・小売業 | 金融業・保険業 | 不動産業・物品賃貸業 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 宿泊業・飲食サービス業 | 生活関連サービス業、娯楽業 | 教育、
学習支援業 | 医療、福祉 | 複合サービス事業 | その他サービス業
b.従業員の人数
1~29 人
30~49 人
50~99 人
100~300 人
301 人~
50~99 人
100~300 人
301 人~
c.従業員のうち女性の人数
1~29 人
30~49 人
d.平均年齢(おおよそで構いません)
男性(
)歳
女性(
)歳
e.平均勤続年数(おおよそで構いません)
男性(
問
)年
女性(
)年
貴社の経営トップが社内に示している正社員の人事管理上の経営方針として,次にあげる各項目につ
いて,当てはまる番号を一つ選び,○をつけてください。
8
当ては
やや当
どちら
あまり
当ては
まる
てはま
とも言
当ては
まらな
る
えない
まらな
い
い
a.男女にかかわりなく採用する
1
2
3
4
5
b.男女にかかわりなく人材を育成する
1
2
3
4
5
c.男女にかかわりなく創造性の高い仕事をさせる
1
2
3
4
5
d.男女にかかわりなく同一基準で査定をおこなう
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
e.セクハラやいじめなど,従業員が被害を受けた場合の
対応策を周知させている
問
現在貴社では,ポジティブ・アクション*にかかわる以下の施策を実施していますか。次の各項目につ
いて,それぞれ当てはまる番号を一つ選び,○をつけてください。
実施してい
実施してい
既に女性社
る
ない
員が活躍し
ているので
必要なし
a.ポジティブ・アクションに関する専任の部署の設置,
1
2
3
b.女性の活躍にとって障害となっている制度や慣行の調査・分析
1
2
3
c.女性の能力発揮のための計画の策定
1
2
3
d.女性の積極的な採用,基幹職種や管理職への登用
1
2
3
e.女性の少ない職場に女性が従事するための積極的な教育訓練
1
2
3
f.女性専用の相談窓口設置
1
2
3
g.セクハラ防止のための規程の策定
1
2
3
h.法律を上回る仕事と家庭との両立支援を整備
1
2
3
i.女性の能力発揮促進の必要性について,従業員に対する啓発
1
2
3
j.職場環境・風土の改善
1
2
3
あるいは 担当者の任命(推進体制の整備)
*ポジティブ・アクションとは、固定的な男女の役割分担意識や過去の経緯から、営業職に女性はほとんど
いない・課長以上の管理職は男性が大半を占めている等の差が男女労働者の間に生じている場合、 このよ
うな差を解消しようと、個々の企業が行う自主的かつ積極的な取組をいいます。
9
問
貴社の経営トップが社内に示している正社員の人事管理上の経営方針として,次にあげる各項目につ
いて,当てはまる番号を一つ選び,○をつけてください。
当てはま
やや当て
どちらと
あまり当
当てはま
る
はまる
も言えな
てはまら
らない
い
ない
f.自社の育児休業制度などの仕事と家庭の両立支援を従業
1
2
3
4
5
g.従業員に育児休業を積極的に取得するように勧めている
1
2
3
4
5
h.従業員が仕事と育児を両立できるよう、
1
2
3
4
5
員に周知させている
職場(上司や同僚)が協力することを求めている
問
育児休業制度の導入状況についてうかがいます。
a. 育児休業制度*の有無
1.ある
2.ない
b. 育児休業制度の導入年
(西暦
)年
(女性のみを対象とした制度も含め,最初に導入した年をご記入ください)
*「育児休業制度」は,ここでは就業規則等により制度が明文化されている場合を指します。
慣行のみの場合は含みません。
問
貴社では,女性正社員の就業継続の状況として,次にあげるどのパターンが多いと思われますか。一
番多いパターンを一つ選び,○をつけてください。
1.結婚とかかわりなく未婚時に退職する
5.出産後,1~2年のうちに退職する
2.結婚を契機に退職する
6.出産後,育児休業を利用して,継続就業する
3.結婚後,妊娠や出産より前に退職する
7.出産後,育児休業を利用しないで,継続就業する
4.妊娠や出産を契機に退職する
8.女性正社員はいない
問
貴社の経営トップが社内に示している正社員の人事管理上の経営方針として,次にあげる各項目につ
いて,当てはまる番号を一つ選び,○をつけてください。
10
明文化された制度の有無
ある
ない
a.育児休業制度
1
2
b.子育て中の短時間勤務制度
1
2
c.子育て中のフレックスタイム制度
1
2
d.子育て中の始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ
1
2
e.子育て中,所定外労働を免除する制度
1
2
f.事業所内託児施設の運営
1
2
g.子育てサービス費用の援助措置等
1
2
h.育児休業後の職場への復帰支援
1
2
i.妻が出産した時の男性の休暇制度
1
2
j.子供の看護休暇
1
2
k.子育て中の転勤免除
1
2
l.育児等で退職した者に対する優先的な再雇用制度
1
2
m.子育て中の在宅勤務制度
1
2
問
明文化された制度の有無に関わらず,過去 3 年間の利用者について,それぞれ当てはまる番号を一つ
選び,○をつけてください。明文化された制度がない場合でも,慣行として実施されている制度の利用者
がいれば「いる」に○をつけてください。
過去 3 年間の利用者
(慣行としての制度の利用者含む
いる
いない
該当者なし
a.育児休業制度
1
2
3
b.子育て中の短時間勤務制度
1
2
3
c.子育て中のフレックスタイム制度
1
2
3
d.子育て中の始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ
1
2
3
e.子育て中,所定外労働を免除する制度
1
2
3
f.事業所内託児施設の運営
1
2
3
g.子育てサービス費用の援助措置等
1
2
3
h.育児休業後の職場への復帰支援
1
2
3
i.妻が出産した時の男性の休暇制度
1
2
3
j.子供の看護休暇
1
2
3
k.子育て中の転勤免除
1
2
3
l.育児等で退職した者に対する優先的な再雇用制度
1
2
3
m.子育て中の在宅勤務制度
1
2
3
11
5.1.2 調査の結果
調査の結果を全体・規模別・業種別で示す。また、それぞれの結果について先行研究の
大阪府のデータと比較を行い、全体の結果については労働政策研究・研修機構(JILPT)の
データ7とも比較する。全体の結果は以下の通りである。
図 4 全体結果(平均)
指標
小樽市
大阪府
JILPT*
均等度
48.1
43.1
47.1
22.3
22.1
35.1
(70 点満点)
ファミフレ度
(75 点満点)
*JILPT データによる調査では,均等度は 105 点満点,ファミフレ度は
89 点満点で作成されているため、それぞれを70点、75点満点に換算した値で比較した。
次に規模別の結果を示す。
規模別で見た均等度、ファミフレ度の結果は以下の通りである。
(図 5、6)
図 5
規模別(均等度) 70 点満点
都市
小樽
大阪
規模
平均
標準偏差
変動係数
数
平均
標準偏差
変動係数
1~29 人
49.66
12.55
0.262
22
40.86
13.24
0.324
30~49 人
47.50
15.12
0.292
16
44.20
12.22
0.276
50~99 人
44.00
6.02
0.137
18
42.49
10.63
0.250
100~300 人
41.83
11.20
0.268
12
44.35
9.57
0.216
計
45.75
3.32
0.252
68
43.04
11.49
0.267
図 6
規模別(ファミフレ度)
都市
75 点満点
小樽
大阪
規模
平均
標準偏差
変動係数
数
平均
標準偏差
変動係数
1~29 人
18.57
14.4
0.705
22
18.73
12.28
0.656
30~49 人
26.80
11.5
0.429
16
20.34
10.34
0.509
50~99 人
24.00
7.4
0.137
18
22.11
9.93
0.449
100~300 人
25.50
6.6
0.257
12
27.53
9.55
0.347
計
23.71
3.2
0.559
68
22.12
10.90
0.493
7労働政策研究・研修機構(JILPT)がほぼ同じ内容の質問項目を用いて行った調査のデータ。
12
最後に業種別の結果である。
図 7 業種別(均等度)
70 点満点
都市
小樽
大阪
業種
平均
標準偏差
変動係数
数
平均
標準偏差
変動係数
建設業
47.0
5.34
0.209
13
39.5
9.72
0.246
製造業
45.6
10.13
0.257
12
40.9
10.88
0.266
卸売業
50.6
7.23
0.143
10
43.1
10.66
0.247
小売業
52.7
12.57
0.264
11
47.3
10.37
0.219
通信・運輸
44.6
12.10
0.258
9
38.6
10.46
0.271
宿泊・飲食・その他サービス
54.2
8.83
0.144
13
46.5
12.39
0.266
計
49.1
9.37
0.245
68
43.0
11.49
0.267
図 8 業種別(ファミフレ度)
都市
75 点満点
小樽
大阪
業種
平均
標準偏差
変動係数
数
平均
標準偏差
変動係数
建設業
20.0
4.18
0.350
13
23.9
12.60
0.528
製造業
27.1
9.61
0.642
12
21.0
8.95
0.426
卸売業
14.0
5.66
0.404
10
22.2
12.21
0.550
小売業
23.3
13.20
0.392
11
26.3
10.67
0.406
通信・運輸
21.2
15.57
0.537
9
19.2
10.81
0.563
宿泊・飲食・その他サービス
26.3
9.12
0.320
13
22.5
11.48
0.511
計
22.0
9.56
0.256
68
22.1
10.90
0.493
5.1.3 調査結果の考察
まず、全体結果についての考察を行う。なお、後に記述するインタビューの結果も参考
にした上で考察を行っていく。均等度は、平均 48.1、最小 22、最大 69、ファミフレ度では、
平均 22.3、最小 4、最大 63 となり、大阪府の結果よりも 5 ポイント、JILPT の結果よりも
1 ポイント高くなる結果となった。一方ファミフレ度は、大阪府の結果とほぼ同じものとな
り、JILPT の結果よりも約 13 ポイント低い数値が出た。このように、全体結果としては、
均等度は大企業と同水準であるが、ファミフレ度については、大企業と比べると低いこと
がわかった。
次に、規模別の結果の考察を行う。図 5 で均等度について見てみると、30 人未満の企業
で最も高くなっており、規模が大きくなるにつれて低くなっている。これは大阪府の結果
13
とは大きく異なる。大阪府では、30 人未満の企業で最も低く、30 人以上では大きな差はな
い。小樽市の 1~29 人規模の企業において均等度が非常に高くなったのは、小樽市の小規模
な企業の傾向・特性に理由があると考えられる。これは後に述べるインタビューの結果・
考察の一部と繋がる事柄であるが、小樽市の小規模な企業では、小規模であるが故、従業
員は男女に関係なく様々な職務をこなす必要がある。そのため、必然的に男女間の均等度
が上昇したことのではないかと考えられる。
ファミフレ度(図 6)は 30 人未満で最も低く、30 人以上では大きな差は見られない。こ
こで、ばらつきを表す変動係数に注目してみると、規模の小さい企業ほどばらつきは大き
い。つまり小企業では、ファミフレ度は低いものの、全ての企業が進んでいないのではな
く、非常に遅れた企業と非常に進んだ企業の双方が存在するということである。
最後に業種別の結果であるが、図 7 で均等度を見てみると、宿泊・飲食・その他サービ
スで 54.2 と最も高くなっており、次いで小売業、卸売業となっている。建設業や製造業で
均等度が低くなっているのは、これらの業種における職種の内容に原因があると考えられ
る。これらの業種の企業に対してインタビューを行った際に、
「この業種では担当すること
ができる職務に男女間で差がある。作業の現場での仕事や外回りの営業を女性が担当する
ことは難しいため、女性は事務的な仕事を担当することが多い。
」といった情報が得られた。
以上のことがこれらの業種の企業全てにおいては当てはまるとは限らないものの、建設
業・製造業において均等度が低いことに少なからず関係している要因である。変動係数で
ばらつきを見てみると、小売業、通信運輸、製造業で大きくなっている。
ファミフレ度(図 9)を見てみると、製造業が 27.1 と最も高くなっている。製造業につ
いては、均等度は 45.6 と 2 番目に低いが、ファミフレ度は高いという結果になった。しか
しここでも変動係数を見ると、製造業は最も数値が大きい。つまり製造業においては、比
較的ファミフレ度が高い企業もあれば、非常に低い企業も存在し、多様であることが分か
る。2 番目にファミフレ度が高い宿泊・飲食・その他サービスについては変動係数が小さく、
業種全体としてファミフレ度が高いと言える。
5.2
インタビュー
5.2.1 インタビューの概要
アンケート回答企業のうち、11 社に対してインタビューを行った。インタビューでは、
主にアンケートの内容・回答結果に沿った質問や、従業員の働き方についての質問等を行
った。それを通じて、小樽市の中小企業ではワークライフバランスについてどのように考
えられている傾向があるのかを探った。
5.2.2
インタビューの結果
以下は、企業に対して行ったインタビューの結果の一部である。
14
①育児休業の制度は整っているものの、利用された実績が少ない企業へのインタビュー
筆者:育児休業の制度が整っているにもかかわらず、実際に育児休業を取得する従業員が
あまりいないという実態にはどのような理由があるとお考えですか?
A 社:結婚・出産をする前、もしくはそれを機に退職してしまう女性従業員が多い。経営者
側としては制度を利用して仕事を続けてほしいと思っているものの、育児休業を利用して
まで仕事を継続しようと考える女性が少ないのかもしれない。
②育児休業がない企業へのインタビュー
筆者:貴社には育児休業がないということですが、そのために出産をした従業員(主に女
性)が働きにくさを感じるということはありますか?
B 社(女性従業員)
:もちろん人によるが、長期の休みをとってまで育児をしようと考えな
い女性が多い。長い間仕事に穴をあけることはできない。ただ、出産・育児を機に退職し
た女性従業員が再び職場に復帰したという例もある。
C 社:きちんと明文化された形では育児休業の制度はないが、その都度臨機応変に対応して
いる。長期間の休みを取るという形ではなく、必要に応じて休みを取る、といった方法が
多い。中小・零細企業ではよほどのことがない限り、従業員から不満は出ないのではない
か。
③均等度の点数が高い企業へのインタビュー
筆者:アンケート調査の結果によると貴社の均等度の数値が高いですが、仕事をする中で
はどのように感じていますか?
D 社:弊社のような零細企業では、従業員が少ないので男性も女性も同じように仕事をし
ないと回らない。
④均等度の点数が低い企業へのインタビュー
筆者:仕事をする中で男女が同じように扱われていないと感じることはありますか?
E 社(女性従業員)
:業種にもよるが、担当することができる仕事には男女間で差があるの
で仕方ない。現場での作業や外回りの営業を女性が担当することは難しいため、女性は事
務的な仕事を担当することが多い。男性に適性がある職種はあるが、もちろん女性だから
こそ向いている仕事もあるので、それぞれの仕事で活躍できればいいと思う。
F 社:
(女性従業員)
:男女間の仕事内容における差は仕方ない。女性が比較的活躍しやすい、
内勤のデスクワークの仕事が多い企業というものが小樽市には少ないかもしれない。1 つの
企業で事務員は数人で足りてしまう。
5.2.3 インタビュー結果の考察
インタビューの結果についての考察を行う。なお、アンケート調査の結果も踏まえた
15
うえで考察を行う。インタビューを通してわかったことは大きく 2 つである。
まず、1 つ目は小樽市に非常に多い家族経営等の個人企業(超小企業)においては、育児
休業や出産休業に関して、明文化された制度は存在しないものの、状況に応じて、休業を
取得してその後も仕事を継続する女性が多い傾向にあることがわかった。主に大企業にお
いて整備されている育児休業は、3 か月や 6 カ月等、ある程度長期間であることが多い。し
かし、小樽市の中小(個人)企業における育児休業はそのように長期間のものではない。
例えば、「子供が体調を崩し、病院に連れていかなくてはならないため今日は休みを取る」
といったように、必要な時にその都度休みを取るといった人が多いそうである。その理由
は、従業員の数が少ないため、一人が長期間休んでしまうとその人の代わりにその人の仕
事を行う人がいないことにある。育児のために仕事を長期間休むことはできない・もしく
は休もうとはあまり考えられていないといった傾向にあり、そもそも育児休業へのニーズ
が少ないことが、制度・施策が拡充しない理由の一つであると考える。
次に 2 つ目は、制度がきちんと整備されていても、それはあまり利用されず、結婚や出
産を契機に退職してしまう女性が多いということである。これについては、アンケート調
査の方でも明らかになっており、女性正社員の就業継続の状況を問う設問(図 4 参照)で
は、 約 80%の企業が1~4(未婚時もしくは結婚出産を契機に退職するパターンが多い)
のどれかを選択している。このような結果になるのは、「結婚・出産してからも仕事を続け
たい」と考える女性が多くないためではないだろうか、とインタビューをしたほぼ全ての
企業は話している。女性の社会進出が進み、女性の管理職への登用が増加し、男性と同様
にキャリアアップをしていきたいと考える女性が増えてきている傾向にはあると感じられ
るものの、実際にはそのようには考えていない女性もまだまだ多いというのが実態ではな
いだろうか。
これら2つのことを踏まえると、中小企業においてワークライフバランスが進まないの
は、仕事を長期間休むことはできない・望まない、結婚出産後も働き続けたいとは考えな
いといったように従業員の育児休業等の制度に対するニーズが少ないことが理由の一つで
あると考える。しかし、明文化された制度はなくとも、臨機応変に対応して就業を継続で
きる企業は、その他の地域においても多く存在すると考えられるため、企業によっては、
中小企業は従業員にとって柔軟な働き方が実現できる環境であると言える。
16
第6章
6.1
分析
4象限の作成と分析
先行研究の大阪府の調査・分析にならって、小樽市のデータの均等度,ファミフレ度の
それぞれを中位値で分けて 4 つの象限を作成し、それぞれの象限の企業の特徴を見る。4 つ
の象限は,300 人以下の企業における均等度,ファミフレ度それぞれの中位値(均等度 48
点,ファミフレ度 22 点)で分けた(図 9)。象限別に均等度、ファミフレ度を見ると、「本
格活用企業」は均等度で「均等度先行企業」より高く、ファミフレ度でも「ファミフレ度
先行企業より」もやや高い。このようなサンプルとなっている。
図 9
ファミフレ度
ファミフレ先行企業
本格活用企業
Ⅱ
Ⅰ
Ⅲ
Ⅳ
男 性優 位企 業
均等度先行企業
この 4 つの象限にある規模,業種の分布をみる。
図 10 象限別規模分布
第Ⅰ象限
規模
本格活用
第Ⅱ象限
第Ⅲ象限
第Ⅳ象限
均等先行
ファミフレ先行
計
男性優先
1~29 人
40.0
25.0
71.3
55.6
30~49 人
20.0
25.0
14.4
11.1
50~99 人
10.0
37.5
14.3
11.1
100~300 人
30.0
12.5
0
22.2
100.0
100.0
100.0
100.0
1~29 人
20.8
13.0
37.2
28.8
100
30~49 人
28.4
35.5
20.5
15.7
100
50~99 人
13.7
51.4
19.6
15.2
100
100~300 人
46.9
19.5
0
34.7
100
サンプル数
20
16
14
18
計
17
68
まず規模別に見ると
(図 10)、
本格活用企業が最も多いのは、1~29 人規模、次いで 100~300
人規模という結果となった。そして、1~29 人規模の企業は第Ⅳ象限の男性優先企業につい
ても最も割合が高くなっている。これは、アンケート調査の結果からも明らかとなったよ
うに、1~29 人の企業は特にファミフレ度において変動係数が大きくなっており、ワークラ
イフバランスが非常に進んだ企業とそうでない企業の両方が存在しているというためであ
ると考えられる。
次に業種別に見ていく(図 11)。本格活用企業は、宿泊・飲食その他サービスで最も高く
なり、その次に小売業・通信運輸で高くなっている。通信運輸はアンケートの平均点数に
おいては均等度・ファミフレ度ともに高くはなかったが、ここでは本格活用企業における
割合が大きい。その理由は、平均点はあまり高くないものの、中位置としている均等度 48
点・ファミフレ度 22 点を超えている企業が多かったことであると考えられる。
図 11 象限別業種分布
第Ⅰ象限
業種
第Ⅲ象限
第Ⅳ象限
均等先行
ファミフレ先行
男性優先
計
建設業
7.1
12.5
10
18.2
製造業
14.3
50.0
10
27.3
卸売業
7.1
0
30
18.2
小売業
21.4
0
30
9.1
通信運輸
21.4
12.5
10
18.2
宿泊飲食その他
28.6
12.5
10
9.1
100.0
100.0
100.0
100.0
建設業
14.9
26.2
20.9
38.1
100
製造業
14.1
49.2
9.8
26.9
100
卸売業
12.8
0
54.2
32.9
100
小売業
35.4
0
49.7
15.1
100
通信運輸
34.5
20.1
16.1
29.3
100
宿泊飲食その他
47.5
20.8
16.6
15.1
100
計
6.2
本格活用
第Ⅱ象限
その他の自治体におけるワークライフバランス~札幌市を例に~
札幌市では、ワークライフバランスに積極的に取り組む企業を独自の基準で認証してさ
まざまな支援を行う「札幌市ワーク・ライフ・バランス推進事業」を実施している。ワー
クライフバランスに積極的に取り組んでいる企業を、取り組み内容に応じてステップ 1~ス
テップ 3 に認証している。ステップ 2 またはステップ 3 の企業は、別途、届け出ることで、
札幌市ワーク・ライフ・バランス推進事業のシンボルマーク(図 12)を印刷物やウェブペ
18
ージに掲載することができる。
図 12 札幌市ワーク・ライフ・バランス推進事業のシンボルマーク
このマークは、バランスの「B」をモチーフに、丸みを帯びたデザインは
ハートや胎児、パレットなどにも見え、ワークライフバランスがあらゆる
人にとって欠かすことのできない、多様性を持ったものであることを表し
ている。
ステップ 1~3 に認証されている企業は平成 23 年 12 月現在で 277 社である。ステップ 1
は 144 社、ステップ 2 は 76 社、ステップ 3 は 58 社となっている。ステップ 3 の企業を規
模別に見てみると、50 人未満が 27 社、50~99 人が 9 社、100~300 人が 7 社、301 人以上
が 14 社である。また業種別では、建設業が 31 社、製造業が 3 社、卸売業・小売業が 3 社、
通信運輸が 4 社、宿泊・飲食・サービスが 4 社、その他 13 社で構成されている。ちなみに、
ステップ 2 認定企業の業種別内訳は、建設業 42 社、製造業 3 社、卸売業・小売業 6 社、通
信運輸 2 社、宿泊・飲食・サービス 11 社、その他と、ここでも建設業が 5 割以上を占めて
いる。小樽市では均等度もファミフレ度も低い方であった建設業であるが、札幌市におい
て建設業はワークライフバランスが進んだ業種なのだろうか、という疑問が浮かぶが、こ
こで札幌市における建設業の事業所の数に注目したい。札幌市統計書(平成 22 年版)によ
ると、札幌市の建設業の事業所の数は 62968となっており、これは卸売・小売業、サービス
業に次ぐ 3 番目であるが、小樽市に関しても建設業は 4 番目に多い業種であり、なおかつ、
全業種の事業所数に占める割合は札幌市が約 8%、小樽市は 7%とこちらについてもそれほ
ど差はない。札幌市においては建設業の事業所数が多いため、高いステップに認証される
企業が他業種と比べると相対的に多くなるのは自然であり、一つ下のステップでも割合は
変わらない。一見すると、「札幌市の建設業はワークライフバランスに積極的に取り組んで
いる企業がとても多い」ように見えるが、認証されていない・申請をしていない企業の方
が割合的には圧倒的に多いため、実際には小樽市と同様に、「ワークライフバランスが進ん
でいるとは言えない業種である」可能性もある。
8
出典:札幌市統計書(平成 22 年版)
19
第7章
おわりに
本研究は、小樽市の中小企業におけるワークライフバランスの実態を明らかにするとと
もに、中小企業においてワークライフバランス施策が拡充しない理由を探ることを目的と
してきた。そのために、ワークライフバランスの定義・歴史・現状、そして小樽市の企業
の概要について第 2 章と第 3 章で述べ、中小企業の先行研究について第 4 章で述べた。
そして、第 5 章ではアンケート調査とインタビューを行い、2 つの調査の結果を踏まえて
考察を行った。まず、先行研究をもとに質問項目(図 3)を作成した。次に、作成した質問
項目を用いて小樽市の企業に対しアンケート調査を行い、小樽市の中小企業全体としては
均等度については大企業よりも高いが、ファミフレ度については、大企業と比べると低い
という結果となった。また、規模別のファミフレ度については、30 人未満の企業で低く、
30 人以上では大きな差はなかった。しかし、30 人未満の企業全てが進んでいないのではな
く、非常に遅れた企業と非常に進んだ企業の双方が存在するということが明らかになった。
業種別では、均等度は宿泊・飲食・サービス、ファミフレ度は製造業が高い結果となった。
また、インタビューを通して、中小企業においてワークライフバランスが進まないのは、
従業員の育児休業等の制度に対するニーズが少ないことが理由の一つであることがわかっ
た。しかし、明文化された制度はなくとも、臨機応変に対応して就業を継続できる企業も
多いと考えられるため、企業によっては、中小企業は従業員にとって柔軟な働き方が実現
できる環境であると言える。
本研究では、小樽市の中小企業のワークライフバランスの実態や考え方の調査のみに終
わったが、今後さらに分析のサンプル企業を増やし、企業業績や成長性、財務パフォーマ
ンス等との関係についても調査・検討していく余地がある。また、今回は大阪府のデータ
と比較したが、北海道内のその他の都市や小樽市と特性が似た都市等に対しても調査を行
い、比較することでさらに興味深い結果が得られるだろう。これらを今後の課題として研
究を進めていきたい。
20
参考文献
・脇坂
45 巻
明 「中小企業におけるワーク・ライフ・バランス」『学習院大学
経済論集』第
第 4 号 pp.337-367 (2009)
・東京商工会議所人口問題委員会 「今後の少子化対策・両立支援策の推進について」
(2007)
・小樽市
http://www.city.otaru.lg.jp/
・小樽商工会議所
http://www.otarucci.jp/kigyoh/kigyoh.html
・小樽商工会議所会員企業紹介サイト
http://www.otarucci-members.com/
・独立行政法人
労働政策研究・研修機構(JILPT)
http://www.jil.go.jp/
・株式会社ワークライフバランス
http://www.work-life-b.com/
・内閣府 仕事と生活の調和推進室
http://www8.cao.go.jp/wlb/
・厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001npdt.html
・中小企業庁
http://www.chusho.meti.go.jp/
・札幌市ワーク・ライフ・バランス推進事業
http://www.sapporo.jp/
21
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