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「間脳」

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「間脳」
神経放射線ワークショップ 2002 鳥取大山
“これで充分!神経画像解剖と神経線維連絡の知識”
「間脳」
熊本大学医学部放射線科 興梠征典
参考図書・文献
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
黒岩敏彦、太田富雄。間脳・下垂体の解剖。高倉公朋編集「図説
脳神経外科、間脳・下垂体」Medical View社、東京、1997
England MA, Wakely J. Color Atlas of the Brain and Spinal Cord.
Mosby-Year Book. St. Louis, 1991.
Nolte J. The Human Brain. An Introduction to its Functional
Anatomy. Mosby-Year Book. St. Louis, 1993.
高橋昭喜編著。脳MRI①正常解剖。秀潤社、東京、2001.
Wolf-Heidegger’s Atlas of Human Anatomy 2
Nomura K, et al: Epidemiology of germ cell tumors in Asia of
pineal region tumors. J Neurooncol. 2001; 54:211-217.
佐々木真理ほか。MRIによる灰白質内構造の描出。臨床放射線
44:1229-1234、1999
興梠征典ほか。内分泌臓器画像診断とその進め方、視床下部−
下垂体。画像診断18:1226, 1998.
Clinical Neuroscience 視床−update、中外医学社2000、No8
半田肇監訳。神経局在診断。文光堂、東京1982
水野昇。視床とは。Clinical Neuroscience、2000、18:872−875
間脳(diencephalon)
• 左右の大脳半球の間に位置し、大脳半球
と脳幹を中継
• 第3脳室の壁をなし、大部分は半球に覆わ
れる(視床下部の一部のみ下面から見える)
• 中脳との境界は乳頭体と後交連
• 背側視床(=視床)・腹側視床(視床下域)・
視床上部・視床下部に分ける
視床下溝
視床
手綱交連
松果体
髄条
後交連
乳頭体
視床下部
灰白隆起
後有孔質
間脳の解剖
文献 1より引用
視 床
• 視床と大脳皮質の間には直接の神経線
維連絡−特に大脳新皮質との間の線維
連絡は豊富で“相互的”
• 系統発生上視床と大脳新皮質の発育は
パラレル
• 大脳皮質が担う機能の全てに視床が深
く関わっており、そのため視床の病巣は
多様な臨床症状を起こす
視床核の解剖学的分類
前核群(背側前核AD、腹側前核AV、内側前核AM)
内側核(背内側核DM)
腹側核群
前腹側核(VA)
内側腹側核(VM)
外側腹側核(VL)
後腹側核(VP)
後内側腹側核(VPM)
外側
後外側腹側核(VPL)
背側外側核(LD)
背側(外側)核群
後外側核(LP)
視床枕(Pul)
視床後部(外側膝状体LGB、内側膝状体MGB)
髄板内核
正中核(CM)
網様核
基本的な視床の構造
内髄板
前
網様核
内側
外側
髄板内核
視床を包み込んでいる網様核内の神経細胞はGABA作動性の抑制
性神経細胞→視床細胞の活動を制御
MGB
LGB 文献 2より改変
基本的な視床の構造
外側から観察
LP
Pul
後外側
視床枕
LGB
外側膝状体
VP
VL
後腹側
外側腹側
前
LD
背外側
VA
前腹側
背側(外側)
Dorsal(Lateral)
腹側
Ventral
文献2より改変
視床核の解剖学的分類
前核群(背側前核AD、腹側前核AV、内側前核AM)
内側核(背内側核DM)
腹側核群
前腹側核(VA)
内側腹側核(VM)
外側腹側核(VL)
後腹側核(VP)
後内側腹側核(VPM)
外側
後外側腹側核(VPL)
背側外側核(LD)
背側(外側)核群
後外側核(LP)
視床枕(Pul)
視床後部(外側膝状体LGB、内側膝状体MGB)
髄板内核
正中核(CM)
網様核
基本的な視床の構造
内側から観察
LD
前
DM
背内側
Pul
CM
正中
MGB
内側膝状体
基本的な視床の構造ー背側
(やや上方)
前
LD
背外側
DM
背内側
LP
後外側
Pul
視床枕
文献2より改変
基本的な視床の構造ー腹側
(やや下方)
VA
前腹側
DM
背内側
VL外側腹側
CM
正中
VP後腹側
Pul
MGB内側膝状体
LGB外側膝状体
視床核の解剖学的分類
前核群(背側前核AD、腹側前核AV、内側前核AM)
内側核(背内側核DM)
腹側核群
前腹側核(VA)
内側腹側核(VM)
外側腹側核(VL)
後腹側核(VP)
後内側腹側核(VPM)
外側
後外側腹側核(VPL)
背側外側核(LD)
背側(外側)核群
後外側核(LP)
視床枕(Pul)
視床後部(外側膝状体LGB、内側膝状体MGB)
髄板内核
正中核(CM)
網様核
T2強調水平断像:大まかな視床の解剖
A
DM
LD
LP
DM
CM
VA
VL
VP
Pul
T2WIでは視床の内部構造はほとんど同定できない
やや上方
やや下方
IR画像における視床の解剖−1
Pul.
MGB
LGB
シェーマは文献 3より引用
IR画像における視床の解剖−2
視床髄条
DM
CM
VPL
VPM
赤核
黒質
内髄板
LP
IR画像における視床の解剖−3
網様核
Ant.
VA/VL
乳頭視床路
不確帯
レンズ核束
視床下核
大脳脚
視索
黒質
これは通常の1.5T装置の画像です。ぜひ一度試してみて下さい。
視床の機能的役割
• 感覚
• 運動
• 意識および睡眠
• 注意
• 記憶
• 言語
• 情動
• 眼球運動
• 味覚
感覚
• 嗅覚以外の感覚の中継点
• 通過する情報を外界の状況に応じて変調
し、選別する役割も
• VPL:顔面以外の感覚
• VPM:顔面の感覚
LD
DM
• LGB:視覚
• MGB:聴覚
CM
VPM VPL
視床痛
• 視床VPLの血管障害の10数%に視床
痛が見られたとの報告
• ただし、様々な部位の病変で同様の
痛みが生ずるので中枢性疼痛と呼ぶ
方が正確
• 有名だが機序は不明で、有効な治療
法も未だなし
運動障害
• 随意運動系の2大調節中枢である基底核
と小脳からの投射線維が視床に豊富に分
布
• VA・(VM)・VLがmotor thalamus
• VL障害で半身の失調
• 頻度は高くないが不随意運動も起こる
• 一方で視床の定位的破壊術によって不随
意運動を治療
記憶
• 間脳性(視床)健忘
• Papezの回路:海馬→脳弓→乳頭体→乳
頭視床路→視床前核→帯状回→海馬傍
回→海馬
• Yakovlevの回路:扁桃核→視床背内側核
→帯状回→前頭葉→扁桃核
• この記憶の回路の障害で間脳性健忘が起
こるが、一部の例では健忘だけでなく痴呆
へと進行(視床性痴呆)
言語
• 視床性失語
• 大多数が出血例で全て優位側
• 視床は言語機能においては網様体と
前頭葉の間に位置し、語義的な言語
処理機能に携わっていると考えられて
いる
• CM核や視床枕が関与か
視床核の機能的分類
•• 運動系および感覚系特殊核(中継核)
運動系および感覚系特殊核(中継核)
–– 運動系:VL、VM、VA
運動系:VL、VM、VA
–– 感覚系:VPL・VPM、LGB、MGB
感覚系:VPL・VPM、LGB、MGB
•• 連合核
連合核(皮質下領域からの投射線維を受けず
(皮質下領域からの投射線維を受けず
に大脳新皮質の連合野との間に相互的線維連
に大脳新皮質の連合野との間に相互的線維連
絡を行う)
絡を行う):LD・LP・Pul、DM、前核群
:LD・LP・Pul、DM、前核群
•• 非特殊核
非特殊核(特定の領域を越えて新皮質の広い
(特定の領域を越えて新皮質の広い
領域に投射線維を送る)
領域に投射線維を送る) :髄板内核群、正中
:髄板内核群、正中
核群、網様核
核群、網様核
各視床核の皮質への投射
文献3から引用
視床脚(視床放線)
視床皮質路と皮質視床路は視床の前後上下に集まって線維束を作る。
これらをそれぞれ前、後、上および下視床脚(視床放線)と呼ぶ。
• 前視床脚:内包前脚、DM⇔前頭葉、
前核⇔帯状回
• 上視床脚:内包後脚、VPL/VPM ⇔
中心後回、VL/VA ⇔中心前回/運
動前野、LD/LP ⇔頭頂葉
• 後視床脚:内包のレンズ核後部、
Pul/LGB ⇔後頭葉・頭頂葉
• 下視床脚:レンズ核後部、MGBから
の聴放線を含む
文献3から引用
視床の二次変性
DM
• MCA領域梗塞後の視床の
逆行性変性
• 3ヵ月後頃から明瞭な所見
• DMまたは前核とDM。VLや
Pul.まで進展した例も。
• DMは前頭前野に広範に投
射、MCA梗塞で前頭前野の
皮質およびこの領域からの
線維が広範に傷害され逆行
性変性になると考えられる
(Ogawa T, et al. Radiology, 1997,
204, 255. )
視床の二次変性
Pul
• 視床灰白隆起動脈 thalamotuberal artery(TTA)
– 後交通動脈から起始、灰白隆起から穿通。VA、VL、DM。
• 視床穿通動脈 thalamoperforate artery(TPA)
– 後大脳動脈の最近位部から起始、脚間窩の後穿通野か
ら穿通。VL、VPM、DM。
• 視床膝状体動脈 thalamogeniculate artery(TGA)
– 後大脳動脈のambient segmentから起始、内側・外側膝状
体間より穿通。VL、VPL、CM、Pul。
視床の動脈
文献 4より引用
• 内側後脈絡動脈 medial posterior choroidal artery
(MPChA)
– 視床後面∼背面の内側域。手綱、Pul、CMなど。
• 外側後脈絡動脈 lateral posterior choroidal artery
(LPChA)
– Pul、視床背面の外側域
• 前脈絡動脈(AChA):間脳は視床下核と視床外
側腹側核の表層部を栄養
視床の動脈
文献 4より引用
TGA視床膝状体動脈領域梗塞
半身の感覚障害
文献 4より引用
TPA視床穿通動脈領域梗塞
意識障害、
眼球運動障害など
Ocariz MMS, et al. Stroke. 1996;27:1530-1536.
視床梗塞
• 各穿通動脈の閉塞の頻度(Stroke27:1530,1996)
– TGAが40%、TPAが25%、TTAが14%、PchAが7%、
視床全体が残りの14%。
• TGA:半身の感覚障害。VL核梗塞では半身の
失調と半身感覚障害。精神神経障害はまれ。
• TTA:精神神経症状が主体。失語、健忘。
• TPA:両側性あり。意識障害、精神神経症状、失
語、記憶障害、眼球運動障害など。
• PchA:眼球運動障害など。
脳の発達と新生児仮死ーVLおよびVPL
正常の新生児
修正45週
VL
DM
IC
新生児仮死後
Thalamotomy
視床腹中間(Vim)核凝固術
•最近では副作用が少なく効果が同
等なVim核刺激が主流
•PDに対して淡蒼球内節や視床下核
刺激が次第に普及
Vim核
いわゆるétat cribléー基底核と視床の違い
視床に病変を認めるもの
• 血管性病変
– 視床出血
– 視床梗塞
– 静脈洞血栓症
• 変性疾患
– DRPLA
– Wilson病
– そのほか
• 感染症
– ウイルス性脳炎
– 日本脳炎
– 視床型プリオン病
• 腫瘍
– グリオーマ
– 胚細胞腫など
• 代謝性疾患
– Wernicke脳症
– RPLS
– Osmotic myelinolysis
• ADEM
• Leigh脳症
• 急性壊死性脳症
• NF1
Wernicke脳症
プリオン病
• 視床型CJD
– 痴呆・失調症状・自
律神経障害・睡眠
障害
– 視床および下オリー
ブ核の高度の変性、
皮質に軽度の海綿
状変性を認める
– 視 床 変 性 症 や FFI
との異同
新変異型Creutzfeldt-Jakob病
の“Pulvinar sign”
• 視床の役割、大脳皮質との密接な
関係、神経核(群)の解剖学的位置と
それぞれの機能、そして動脈支配を
意識しながら画像を読むように努力
しましょう。
視床上部
• 松果体、手綱核、手綱交連、後交連
• 背内側に視床髄条があり、最外側部が手綱に続く
• 松果体の実質は松果体細胞と神経膠細胞から構成
されるが大部分は松果体細胞
• 松果体細胞からはソマトスタチンやメラトニン、性腺
発育を抑制するインドール類などが分泌
• 松果体は低級な動物では光を感受する器官、哺乳
類でも網膜からの情報による日周変化あり
松果体部腫瘤性病変の頻度
腫瘍
割合(%)
胚細胞系腫瘍
70
松果体実質腫瘍
12
グリオーマ
7
そのほか
11
文献(6)より改変
視床下部
視床下溝より下の第3脳室壁内の灰白
質、乳頭体、漏斗、灰白隆起などが含
まれる。
• 視床下部は脳全体の容積のわずか1%
• 重要な機能調節に関与
–視床下部ホルモンによる内分泌機能の調節
–食欲、性欲、睡眠、体温調節など生存のための機能
–情動行動
• 視床下部には多数のホルモン受容体が豊富に
分布しているほか、脳のほかの部位と多岐にわ
たる神経回路を有している
視床下部過誤腫Hypothalamic hamartoma
•異所性の神経組織によって構成される先天奇形
•70∼90%の症例で思春期早発症
•灰白隆起から発生し脚間槽へと突出
•T1強調像で灰白質と等信号、T2で等∼やや高信号
•増強効果は一般に認めない
11 才女性。思春期早発症
視床下部過誤腫
CISS法
4 才女児、笑い発作
2 才女児、思春期早発
• 有茎性(pedunculated type)と無茎性(sessile type)に分類
• 痙攣や笑い発作で発症するものは比較的大きく、無茎性の
過誤腫が多い
• 思春期早発で発症するものは比較的小さく有茎性のものが
多い。
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