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Page 1 Page 2 kumausaーーene である。 これら 7種のニ依代謝産物

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Page 1 Page 2 kumausaーーene である。 これら 7種のニ依代謝産物
博士(理学)阿部剛史
学位論文題名
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(紅藻ウラソゾ及び近縁種の形態学的及び成分分類学的研究)
学位論文内容の要旨
紅 藻 ソ ゾ属 ( イ ギ ス日 フ ジ マ ツモ 科 ) は 世界 中 の 熱 帯か ら温帯 にかけ て広く 分布し 、
150種 近 く 知 ら れ て い る 。 形 態 学 的 形 質 の 変 異 の 把 握 が 困 難 で 、 分 類 学 的 に 難 しい グ ル ー プ
と さ れ て い る 。 本 属 植 物 は 特 異 な 含 ハ ロ ゲ ン 二 次 代 謝 産物 を 生 成 す る こと が 知 ら れ 、有 機 化
学 者 に よ っ て 多 く の 化 合 物 が 報 告 さ れ て い る 。 こ れ ら の化 合 物 の 分 類 学的 意 義 を 明 らか に す
る た め に 、 日 本 近 海 に 生 育 す る 種 の う ち 、 Laurencia composita Yamadaキ ク ソ ゾ 、 厶
okamurae Yamadaミ ツ デ ソ ゾ 、 L .japonens'is Abe et Nlasuclaニ ッ ボ ン ソ ゾ 、 及 び ム
nipponica Yainadaウ ラ ソ ゾ の 4種 に っ い て 、 天 然 藻 体 及 び 培 養 藻 体 を 用 い た 形 態 学 的 及 び
成分分 類学的 研究 を行い 、以下 に記述 する 事象を 明らか にした 。
キ ク ソ ゾ と ミ ッ デ ソ ゾ は 外 観 が 互 い に 類 似 し て お り、 し ば し ば 混同 さ れ て き た。 し か し 両
者 は 、 分 枝 の 様 式 及 び 髄 層 細 胞 壁 の 半 月 状 肥 厚 の 多 寡 に基 づ き 、 形 態 的に 区 別 で き る。 両 者
は 生 育 環 境 、 特 に 乾 燥 に 対 す る 耐 性 に 違 い が 見 ら れ る 。両 者 は ま た 、 二次 代 謝 産 物 の違 い に
よ っ て 明 瞭 に 区 別 す る こ と が で き る ( キ ク ソ ゾ は カ ミ グラ ン 型 セ ス キ テル ペ ノ イ ド を、 ミ ツ
デ ソ ゾ は シ ク ロ ロ ー ラ ン 型 セ ス キ テ ル ペ ノ イ ド を 生 成 す る ) 。 キ ク ソ ゾ は 種 々 の C1
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エ ー テ ル の 前 駆 体 で あ る ldllrCIlccnyneを 生 成 し 、 こ の こ とか ら 本 極 は 二 次代 謝 産 物 生 成に
おいて 、ミッ デソ ゾより も派生 的であ る。
こ れ ま で 他 種 と 混 同 さ れ て き た ソ ゾ 属 の 1種 ニ ッ ポ ン ソ ゾ を 新 種 と し て 記 載 した 。 本 種 は
以 下 の 特 徴 を 持 つ 。 1) 軸 は 直 立 し 円 柱 状 で 硬 い 軟 骨 質 、 小 盤 状 の 一 次 付 着 器 と 匍 匐枝 に 形
成 さ れ る 仮 根 状 の 二 次 的 付 着 器 を 持 つ 。 2) 三 方 向 ヘ 分技 す る 。 3)最 末 小 枝 及 びそ れ に 準 ず
る 側 枝 は 、 向 軸 側 に 強 く 湾 曲 す る 。 4) 不 定 枝 は 主 に 腋部 に 生 ず る 。5) 周 心 細 胞は 中 軸 細 胞
あ た り 4個 形 成 さ れ る 。 6) 皮 層 細 胞 間 に 縦 方 向 の 二 次 的 壁 孔 連 絡 を 持 つ 。 7) 皮層 細 胞 最 外
層 は 枝 の 先 端 に お い て も 突 出 し な い 。 8) 皮 層 細 胞 は 柵状 組 織 様 を 呈さ な い 。 9)髄 層 細 胞 壁
に 多 数 の 半 月 状 肥 厚 を 持 つ 。 IO)最 外 層 の 皮 層 細 胞 と 毛 状 枝 細 胞 は 、 細 胞 あ た り 1個 の サ ク
ラ ン ボ 小 体 を 持 っ 。 11) 四 分 胞 子 嚢 の 配 列 は 平 行 型 。 12)嚢 果 は 広 卵 形 で 、 下部 は 枝 の 組 織
に 半 ば 埋 没 す る 。1:3)不動 精 子 嚢 の 核は 先 端 に 位 置す る 。 本 種 は また 、 特 典 的 な二 次 代 謝 産 物
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を生成
するこ とによ って も特徴 付けら れる。
ウ ラ ソ ゾ に は 、 形 態 的 に は 区 別 で き な い が 化 学 成 分の 異 な る 、 多数 の 個 体 群 が見 出 さ れ て
い る 。 各 個 体 群 は そ れ ぞ れ 特 有 の 含 ハ ロ ゲ ン 二 次 代 謝 産物 に よ っ て 特 徴付 け ら れ 、 その 最 終
産 物 は カ ミ グ ラ ン型 セ ス キ テ ルベ ノ イ ド の p
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kumausalleneで あ る。 これ ら7種の 二次 代謝 産 物の 生成 は、 天然 藻体においても様々な 条
件下における 培養藻体においても維持され た。ブロモエーテルとテル ペノイドの予想される
生合成過程は 非常に異なり、これらの生合 成にかかわる酵素群もそれ ぞれ異なったものであ
る と考 えら れる 。 まず 、テ ルベ ノイ ド のprepacif enol、ブ ロモエーテルのlaureatinを 生
成する各個体 群を選び、培養株を用いた交雑実験を行なった。I’1四分胞子体の分析結果は、
これらの酵素 にかかわる遺伝子が核ゲノムにあることを示唆した。正逆交雑により得られた、
胞子四分子を 含むFl配偶体の分析結果は、 テルベノイド及びブ口モエ ーテルの生合成にかか
わるそれぞれ の遺伝子が、相同染色体の異 なる部位に存在し、減数分 裂時に分離することを
示唆した。得 られた多数のF
エ配偶体のう,ち一個体のみ、両親由来の化学成分両方を生成する
例 が見 られ たが 、これはおそら く組み替えによるものと思わ れる。prepdcif cnolを生成 す
る株とlaureatinを生成する株との交雑で 得られたFエ四分胞子体、お よびそれから得られた
Fユ配偶体は、 両親由来の成分を生成する 佃体のみを生じた。この結果は、二次代謝産物の違
い で特 徴付 けら れ る各 個体 群が raceと して取り扱われるべ きものであることを示してい る
(chemical race)。
培養株を用 いた交雛実験により、ウラソ ゾのcliaiuical race間の遺伝的関係を解析した。
個 々の race内の 交 雑に より 生じ たrl四 分胞子体とFI配偶体 は、それぞれのr(Iceを特徴 付
ける化学成分 を生成した。異なるrace間の 正逆交雑により生じた1’1凹分胞子体には以下の
場合があった 。1)両親の二次代謝産物を ともに生成する。2)両親の 二次代謝産物のいずれ
かのみを生成 する。3A)両親の生成する二 次代謝産物に加え、さらに 異なる化合物を生成す
る 。3B)両 親の 生成する二次代謝 産物の一方に加え、さらに 異なる化合物を生成する。後 二
者 は、 両親 株の 酵素群の補完に より、雑種特異的な産物が形 成されることを示唆する。 2つ
の raceが 同 所 的 に 生 育 す る 場 所 で の 個 体 群 構 造 を 解 析 し た 。 prepdcifenol raceと
laureatin raceが 同所 的に 生育 する 南 茅部 町の 3調 査地 のひ とっ では、雑種四分胞子体 に
加え、雑種配 偶体(組み替え型)が高頻度で見出された。このことは、自然交雑により新たに
prepacifenol/laureatlIlraceが形 成さ れつっあることを強 く示唆する。一方、laurencin
raceと epilaurallene raceが 同所 的に 生育 す る忍 路湾 に於 いて は 、rwe問 雑種 は希 であ
り、四分胞子 体(おそらくFl世代)が少数 見出されるのみであった。 このことは、環境の選
択 によ る棲 み分 け があ り、 組み 替え 型 の配偶体が生じない ことにより、raceの独立性が 保
た れて いる こと を示唆する。cliemical raceの地理的分布と 、各rilceを特徴付ける化合 物
の 生合 成過 程、 お よび 最終 氷期 以降 の 日本海の古環境を考 慮することにより、raceの分 化
と分布域の変 動過程を説明する作業仮説を 立てた。
本研 究で 扱っ た4種は亜属レベ ルの形質のみならず、多く の形質を共有している。これ ら
近 縁種 の系 統関 係 を明 らか にす るた め 、以 下の 5つ の形 質を 検討 した。1)分校様式、 2)
半 月状 肥厚 、3)不動精子嚢核の 位置、4)低温耐性、5)含 ハロゲン二次代謝産物。これ に
基づき、これ らソゾ属4種の系統関係を類 推した。
- 74ー
学位論文審査の要旨
主査
教授
増田道 夫
副査
教授
片倉晴 雄
副査
助 教授
堀□ 健雄
副査
助 教授
市村 輝宜
副査
助教授
鈴木
稔(大学院地球環境科学研究科)
学位論文題名
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(紅藻ウラソゾ及び近縁種の形態学的及び成分分類学的研究)
紅 藻ソ ゾ属 (イ ギス目フジマツモ科)は形態学的形質の変異の把握が困難で、
分類 学的 に難 しい グループとされている。本属植物は特異な含ハロゲン二次代謝
産物 を生 成す るこ とによっても特徴付けられ、これらの化合物の分類学的形質と
し て の 有 効 性 が 指 摘 さ れ て き た が 、 本 格 的 な 成分 分類 学は 試み られ てい なか った 。
著者 はこ れら の化 合物の系統分類学的意義を明らかにする目的で、日本近海に生
育す る種 のう ち、 Lau
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ウラソ
ゾ の 4種 に つ い て 、 天 然 藻 体 及 び 培 養 藻 体 を 用 い た 形 態 学 的 及 び 成 分 分 類 学 的 研
究を行い、多くの新知見を得た。
外 観 が 互 い に 類 似 し て お り 、 し ば し ば 混 同 され てき たキ クソ ゾと ミッ デソ ゾは 、
形態 学的 並び に生 態学的特徴の他に、二次代謝産物の違いによって明瞭に区別す
るこ とが でき た。 キクソゾはカミグラン型セスキテルベノイドを、ミッデソゾは
シク 口口 ーラ ン型 セスキテルペノイドを生成する。これまで他種と混同されてき
た ソ ゾ 属 の 1種 を 新 種 二 ッ ポ ン ソ ゾ と し て 記 載 し た 。 本 種 は 硬 い 軟 骨 質 の 藻 体 を
持つ こと 、三 方向 分枝、向軸側に強く湾曲する最末小枝、主に腋部に生ずる不定
枝及 び枝 の組 織に 半ば埋没する衰果によって近縁種と区別され、特異的な二次代
謝 産 物 laurenenyneや japonenyneを 生 成 す る こ と に よ っ て も 特 徴 付 け ら れる 。ウ ラ
ソ ゾ に は 、 形 態 的 に は 区 別 で き な い が 化 学 成 分 の 異 な る 、 多 数 の chemica
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存 在 す る こ と を 培 養 実 験 と 交 雑 実 験 に よ っ て 証 明 し た 。 各 chemicalraceは そ れ ぞ
れ特 有の 含ハ ロゲ ン二次代謝産物によって特徴付けられ、それらはカミグラン型
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である。また、組
み 換 え 型 の 新 し い raceが 分 布 域 を 拡 大 し つ っ あ る こ と を 、 フ イ ー ル ド 調 査 に よ っ
て示した。
こ れを 要す るに 、著者は二次代謝産物の分類学的形質としての意義を明らかに
した ことによ って海藻 類の系統 分類学の新しい分野を開拓したものであり、生物
学に 貢献する ところ大 なるもの がある。
よっ て著者は 、北海道 大学博士 (理学)の学位を授与される資格あるものと認
める 。
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