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「担任力」を育む研修の充実 県教育センター

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「担任力」を育む研修の充実 県教育センター
「担任力」を育む研修の充実
県教育センター
1
本県の教員研修における重点
県教育センターでは、キャリアステージに応じた研修を充実し、教員の継続的な資質向上
を図るとともに、今日的教育課題に即した研修を実施し、教員と学校の課題解決力を高める
ことを目指している。
特に今年度は、次の3点を重点として研修を実施してきた。
(1) 山形県教員研修体系に基づき、教員が、教科・領域等の指導力、教育課題解決力を
向上させるとともに、総合的な人間力と教育への使命感を高め、教育理念を深める研
修を行う。
(2) 教員自らと学校組織の活力を高めるマネジメント研修を充実する。
(3) 受講者の意欲的・主体的な参加を促す魅力ある講座の企画・運営を行う。
当センターで学んだことを自主的な研修や学校での研修に結び付け、より広がりと深まり
のあるものにしていく「学び続ける教師」を育成することに主眼を置いている。
「担任力」は、「学習指導力」「生徒指導力」「特別支援教育力」で構成されているが、『この
研修をすれば身に付く』といったものではない。研修によって身に付けた力が、一人一人の
教師の中で整理統合され、蓄積醸成されて「担任力」になると考えたい。
したがって、研修で学んだことを児童生徒のいる教室で実践し検証していくことがきわめて
重要であり、その過程において「担任力」は育成されるのである。
2
研修後の実践に向けた各学校の環境
先述したとおり、
「担任力」を身に付ける上で、教員個々の努力が大切であることは自明で
ある。一方で、学校に戻って実践をすることを考えれば、各学校で実践を試みる際の環境に
ついても考えなければならない。
つまり、研修を通して学んだことを他の教員に伝えたり、実践を通して他の教員から感想
や意見をもらったり、教員同士で協働性を発揮し学び合うことも重要である。そうすること
で、より学校の実態に合った試みが可能になり、多様な視点から実践を検証することができ
るなど、一人の研修成果がより多くの教員等に還元されるのである。
4
研修成果を生かした実践事例
-小国町立北部小学校-
平成23年度の教育センターにおける研修を受講し、帰校後、実践を試みた小国町立北部
小学校 髙橋真江美教諭の具体的な事例を紹介する。
(1) 受講した研修講座の概要
① 講座名
「道徳授業づくり講座」
② 日時
平成23年9月30日(金)午前10時~午後4時30分
③ 講師
東京学芸大学 教授 永田繁雄 氏
④
目的
学習指導要領における道徳教育の基本的な在り方や、道徳教育の要としての道
徳の時間の充実についての研修を行い、道徳教育についての実践的な指導力の向上を図
る。
⑤ 講座内容
・ 「心の活力を育む道徳教育」(講義)
講師より学習指導要領解説(道徳
編)についての解説や授業づくりの
際のポイント等の説明
・ 「魅力ある道徳の授業づくり」
(講義・演習)
資料『泣いた赤おに』を使って、
実際に資料を分析し、グループ内で
各自の分析結果を検討
(2) 研修前の髙橋教諭の様子
研修を受ける前の自身の道徳の授業を次
のように振り返っている。
研修を受けるまでの私の道徳の授業は、副読本を読んで、主人公の気もちや行動について
考え、自分の体験をふり返らせるという型にはまったものでした。こちらが予想した反応を
期待するあまり、誘導的な発問を繰り返したり、ねらう価値項目につながる発言を選んで板
書したり、まさに効率的に価値項目を教え込むような授業だったと思います。もちろん、ね
らいに迫るためであり、価値項目について考えを深めさせるために、さまざまな手立てをと
ったのですが、そのことがかえって児童自身が生き方を語ることを阻害しているのではない
かという不安もありました。
(下線筆者付記)
髙橋教諭は、研修を受けながら、これまでの実践を振り返り、課題意識をもっている。し
かも、自身の指導の在り方に課題の原因を探ろうとしているところがポイントである。特に、
「教師の手立てがかえって児童の学びを阻害している」と感じられることは、児童の視点で
授業づくりを行う上できわめて重要である。
「担任力」育成の視点で学ぶべき点は、髙橋教諭が、自身の指導を省察し児童の視点に立
って指導にあたろうとしている点である。このことは、
「担任力」育成のキーセンテンスであ
る「児童一人一人のよさや特性を多面的・立体的にとらえる」ことへつながる。
(3) 髙橋教諭の授業の実際
研修後、髙橋教諭は校内授業研究会で授業実践を試みた。研修で自身が学んだことを基に、
次のような授業を展開した。実践するにあたり、髙橋教諭は、児童の実態やこれまでの自身
の反省から、次のことを指導における配慮点とした。
①
②
③
全体交流を充実させるためにペアで話し合う時間を設けた。
主題について内省するために、課題を精選し児童が書く時間を十分に確保した。
特別な支援を要する児童に配慮するために、資料を紙芝居で提示した。さらに、その
絵を板書に活用し、その子の興味関心を持続させるとともに、他の児童が場面のイメー
ジをもちやすいようにした。
3・4年複式 道徳
主題名「大切な友だち (信頼友情)」
資料名「泣いた赤おに」
【2時間扱い】
○発問
・児童の発言、反応
≪1教時…青おにのおかげで、赤おにが人間と仲良くなれた場面まで≫
○青おには、どうして自分が犠牲になったのでしょう。
・赤おにの夢を叶えてあげたかった。
・赤おには大切な友だちだから。
・赤おにを喜ばせたかったから。
○青おにのことをどう思いますか。
・青おにはえらい。自分のことよりも赤おにのことを一番に考えている。
・青おにはかわいそう。一緒に仲良くなれたらいいのに。
・今のぼくにはとても難しいことだなあ。
○赤おにへの手紙を書きましょう。
・青おにくんのおかげで夢が叶ってよかったね。
・赤おにくんは、あんなに自分のことを思ってくれる親友がいてうらやましいなあ。
・赤おにくんは、青おにくんをどんな気持ちでたたいたの?平気ではなかったよね。
≪2教時…青おにが旅に出たことを知り、赤おにが泣いた場面。そしてその後の赤おにについて≫
○青おにの手紙を読んだ赤おには、どんな気持ちで泣いたのでしょう。
・青おにがいなくなって悲しかった。寂しかった。
・青おにに悪いことをしたと思った。
○泣き止んだ後、赤おにはどうしたでしょう。
・青おにのことが心配なので探しに行く。
・せっかく青おにのおかげで夢が叶ったんだから、このまま村にもどる。
・村人を裏切るわけにはいかないから、村にもどる。
・青おにが帰ってくるのを信じて待つ。
・村に帰ってもやっぱり泣いていると思う。
○「親友」とはどういうものでしょう。
・とても大切な友だち。 ・助け合う友だち。
・何があっても信じる(信じ合う)友だち。
・一生の友だち。 ・思い出に残る友だち。
・相手のために何でもできる友だち。
授業後のつぶやき
☆青おにくんの夢は何だろう。→・赤おにくんの夢を叶えてあげることじゃないかな。
☆人間がおにを信じてあげればいいのに。→ みんなで探せば青おにくんを見つけられるかも
しれないね。
さらに、授業実践を通して、髙橋教諭は「発言に隠された児童の思い(なぜそう感
じたのか)を考えるようになった」と述べている。児童の言葉を生かして考えを深め、児童
同士で学び合わせたいという教師の思いが伝わってくる。
「担任力」育成の視点で学ぶべき点は、髙橋教諭が、特別な支援を要する児童に配慮しな
がら、発言に隠された児童の思いを考えるようになった点である。このことは、
「担任力」育
成のキーセンテンスである「児童一人一人についての情報(認知の特性等)を的確に整理・
分析する」ことへつながる。
(4) 髙橋教諭の実践から学び合う教員
本校では、上記の授業実践を校内授業研究会の一環として行った。髙橋教諭が研修で学ん
できたことを、単なる口頭による伝達講習で他の教員に伝えるのではなく、授業を通して具
体的に提案し、児童の姿で効果を検証している。まさに、子どもの姿を根拠とした具体的か
つ日常的な研修(OJT)が展開されている。
このことは、「担任力」育成の視点からも重視
したい校内研究の在り方である。特に、校長や教
頭には、教員間の協働性を発揮できる学校の環境
を構築していくことが求められる。
このように、校内での研修を充実していくこと
が、「担任力」を含む教員の資質向上には欠かせ
ない。その際、教師間のコミュニケーションを豊
かにすることにより、実践的指導力の世代間の継
承と創造を意識的に行うことも肝要である。
5
学び続ける教師
最後に、子どもが違い、置かれている学校の環境も違い、教師の価値観も違う、等々、
「教
育に最良は存在しない」のである。だからこそ、教師は目の前の子どもにとって最良の策を
模索し続ける。また、
「教育は人なり」と言われるように、児童生徒の望ましい成長を図る上
では、教師の力量に負うところがきわめて大きい。
「担任力」を育成するにあたり、謙虚な姿勢を忘れず常に伸び続けようとする、髙橋教諭
のような「学び続ける教師」を目指したいものである。
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