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マイスター11期通信 第12号 伊吹山の高山植物と関ヶ原鍾乳洞
2 20 01 14 4 ((H 2 6 ) H26)年 年 8月2日 12 号 伊吹山の高山植物観察と関ヶ原鍾乳洞の見学 案内人 講座生 吉川悟氏 行 程 : 大阪駅西側旧中央郵便局前出発 = トイレ休憩 =高山植物観察 山頂駐車場 ~ ~ 西遊歩道コース ~ 伊吹山三角点山頂 ~ 高山植物観察 東遊歩道コース ~ ~ 山頂駐車場 =関ヶ原鍾乳洞 =トイレ休憩 =大阪駅東側 山頂へ向かう尾根道にはヒメフウロ、イブキフウロ、エゾフウロ、コイブキアザミ、キンバイソ ウ等が見られます 谷筋にはブナがあり、その周りにはマルバダケブキ等がみられます。見晴らしの良い草原の展望 コースで、シモツケソウやイブキトリカブトが群生しています。山頂ではイブキジャコウソウがた のしみです。アカソやフジテンニンソウが群生していますが、シカの食害により選択的に残された ものだとのことです。ルリトラノオ、メタカラコウ、オオバギボウシ、カノコソウ等が見られます。 伊吹山は高山植物が大変豊富です。この山が独立峰的であることや、古生代に海に堆積した石灰 岩が隆起してできているこ と等から、この山独特の植 物が多くみられます。そん なことで、植物名に「イブ キ」とつくものもいくつか あり、イブキトラノオ、イ ブキジャコウソウ、イブキ シモツケ等10数種にも及び ます。そして、この山が高 山植物の花々で染まるのは 8月の初め頃で、一番見ごろ の時期となります。 帰路、同じ石灰岩で形成された関 ヶ原の鍾乳洞も訪れます。 一口メモ 1.伊吹山の観察会、事前資料と解 説、それに天気もまあまあで十分 に満足しました。ありがとうござ いました。 2.伊吹山への植物観察は植物検索 表がありましたので、大変助かり ました。ありがとうございました。 それにしてもシカ害にはおどろか されました。 3.周到な準備、資料の用意、吉川 さんには感謝です! 4.植物の検索表のおかげで 50 種以 上の植物同定ができました。あり がとうございました。時期も天候 もちょうど具合良く、気持ち良く 過ごせました。 5.伊吹山の多くの高山植物を観察 できよかった。事前の説明と資料 がよく役立ちました。幹事さんご 苦労様でした。 6.花の咲いている山はきれいでし たが、イノシシや鹿の食害跡がは っきり見ることができました。い ろいろと考えることが多いです。 7.シカの害が伊吹山まで及んでい ると聞いて心配したが、予想以上 の植物に出会えてよかった。特に メタカラコウの群落には圧倒され た。ルリトラノオとクガイソウの 違いもよくわかった。今回も吉川 さんの資料準備、ご説明に感謝。 8.伊吹山の駐車場から山頂までゆ っくり山野草の観察ができて楽し かったです。天気がもう少し良か ったらもっと楽しめたのに・・残 念でした。 9.10 年前に比べ思った以上に高山 植物が少なくなっており残念。シ カ害やイノシシに荒らされ対策が 必要と痛感しました。 10.伊吹山のお花の種類が多いので 期待して参加しました。鹿害でだ いぶかわいい花が減っており、残 念でしたが、でも涼しい山中で自 然を十分楽しむことができました。 いつもお花の資料ありがとうござ います。 11.たくさんの美しい花と鍾乳洞の 魚、ますを見て楽しかったです。 12.鹿害力、赤花のシモツケソウが 激減しているのには驚かされたが、 可憐な伊吹の花々には感動した。 13.改めて伊吹山の高山植物の豊か さに感激しました。伊吹山を守り 維持されている方々に感謝いたし ます。 14.今日はたくさんの花が、用意し て頂いた資料のおかげでゲーム感 覚で同定することができ、大変有 意義な一日でした。ありがとうご ざいました。 15.夏の暑い日差しでなく曇り空で 雨も降らず観察日和でした。伊吹 山ならではの多くの植物が見れて とてもよかった。なかでもメタカ ラコウが多かったように思う。 16.伊吹山の植物観察はとても楽し く、写真を見ながらゆっくり写真 もとれました。ラミネートの花の 名前がとても参考になりました。 鍾乳洞のニジマスがおいしそうで した。ありがとうございます。 17.伊吹山での高山植物の観察をと ても楽しみにしていました。お天 気も私達の味方で、天気よく吉川 悟さんの説明もわかりやすく歩く ことができました。 18.ほど良い暑さの中で天然のシャ ワーの中でいろいろな花の勉強を させていただきました。だんだん と山の植生が変わって行くのはど うにもできないのですかね。 19.沢山の山野草に出会えて楽しい 一日でした。名前を控えましたがど れだけ頭に記憶できたか!まあぼ つぼつ名前覚えようとは思ってい ます。 20.20 代の頃から何度も伊吹山に来 ていますが、一面シモツケやシメ ツケソウのピンクの花畑に出会う ことが出来ず残念でした。数多く の花の同定が出来た事は良かった です。鹿対策どうしますか? 21.久しぶりに伊吹山を訪れたが様 子がずいぶん変わった様だ。でも 種類は多く、大変なつかしく、楽 しく花々を見られてよい時間でし た。 22.くもり空で歩くには良好。花も たくさん観察でき大満足です。 23.文字通り百花繚乱の花々、見応 えありました。何より立派な資料 を作って下さった吉川悟様に感謝 します。 24.伊吹山ではいろんな花と出会え てよかったです。 25.何十年かぶりの伊吹山、満喫し ました。写真つきの花の資料をみ ながらの説明、わかりやすく二倍 楽しめました。資料本当にありが とうございました。 26.話には聞いていましたが、山頂 にあれだけの植物があるとは思 いませんでした。他の季節にも来 てみたいと思います。 27.伊吹山良かったです。また個人 的に来たいです。植物観察シート を活用したいと思います。 28.お天気もくもりでとても良かっ たです。高山植物もたくさん見る ことができ良かったです。 29.久しぶりの高山植物の観察、たくさん見れて堪能しました。 OPL 二億六千年前の地球からのメッセージ 伊吹山の誕生と地質 作成:筒井杏正 http://www.ds-j.com/nature/ibuki/Information/old-story/tanjou-chishitsu.htm 伊吹山の誕生は、今か ら 2 億 6 千万年前、赤道 付近で活動していた伊 吹海山と呼ばれている 海底火山の噴火に始ま ります。この海山が地球 の表皮であるプレート の移動で、現在の場所に やってきたのです。 伊吹山をつくっている 岩石は、火山活動による 緑 色 岩 類 と 周 辺の 海の 生物としてフズリナ(紡 錘虫)、ウミユリ、サン ゴ、貝類、石灰藻などの 殻 が 堆 積 し て でき た石 灰岩です。 また移動途中、海底に堆 積したチャートやユー ラシア大陸から流れ出 た砂や泥(砂岩・泥岩)も 含まれています。このこ とから、伊吹山の岩石か ら発見されるフズリナやウミユリなどの化石が、伊吹山誕生の歴史を物語ってくれます。また移動 途中、海底に堆積したチャートやユーラシア大陸から流れ出た砂や泥(砂岩・泥岩)も含まれていま す。このことから、伊吹山の岩石から発見されるフズリ ナやウミユリなどの化石が、伊吹山誕生の歴史を物語っ てくれます。 伊吹山の地質 https://www.gsj.jp/Muse/100mt/ibukisan/index.html 伊吹山は 1970 年代まではすべて古生代の地層ででき ていると考えられていました.このため, 今でも"古生 代の地層"と本や web で書かれていたりします.しかし 今ではこれは間違いです. 伊吹山をつくる地層は,ジュラ紀の中頃に,海洋プレ ートが大陸の下に沈み込む時に, 海洋プレート上の石 炭紀後期−ジュラ紀中期までの地層 が,大陸の縁にくっついてできたも のです. 大変複雑な地層で,付加体 と呼ばれます. 細かくみると,伊吹山の上半分は 主に石灰岩(ペルム紀)でできていて, 下半分の砂岩, 泥岩(ジュラ紀),チ ャート(三畳紀−ジュラ紀)からなる 地層の上に断層で重なっています. その断層は山頂の東側では,肩のと ころにあるドライブウェーの駐車場 のすぐ上にあり,南側はスキー場の 上付近,西側では山麓ないし地下に あります.石灰岩の部分が急傾斜に なっているので,地形からも地層の 違いはだいたいわかります.この石 灰岩は岐阜− 滋賀県境の尾根の上の 方だけに低角な断層で乗っかってい るのです. また,伊吹山の山麓を伊勢湾から 若狭湾につながる柳ヶ瀬−養老活断 層系に属する活断層が走っていて, この活動が伊吹山を南側からみると そそり立っているように見える地形 をつくったと考えられます. 石灰岩鉱山 伊吹山の西側では滋賀鉱産(株)伊 吹鉱山によって石灰岩の採掘が行わ れています.2003 年 3 月までは住友 大阪セメント(株)伊吹鉱山として, セメント向けを中心に採掘が行われ ていましたが,現在は骨材,路盤材 向けに採掘が行われています.この石灰岩鉱山の部分は,この付近の地層ができあがって以降の断 層運動による破砕が認められ,古くからの崩壊地となっています.鉱山の初期は崩壊地の下でこの 崩壊物だけを採っていました.現在はこの崩壊地の上部を採掘しており,最終的には急傾斜の破砕 を受けた石灰岩や石灰岩の崩壊物を採掘して安定した山腹になる計画です.緑化も採掘地だけでな く,崩壊地に対しても行われています(現地取材 2001 年 5 月). http://www.pref.shiga.lg.jp/d/sh izenkankyo/ibukiyama/files/siryo u2-1.pdf#search='%E4%BC%8A%E5%90 %B9%E5%B1%B1%E3%81%AE%E5%9C%B0%E 8%B3%AA' 伊吹山の自然環境 1.位置 この全体構想の対象となる伊吹山 は、滋賀県と岐阜県にまたがり、北 は福井県の若狭湾に、南は三重県の 伊勢湾に迫る本州で最も狭い部分の 中央部に当たる。行政界としては、 滋賀県米原市(旧伊吹町)ならびに 三島池からのぞむ伊吹山の雪景 岐阜県揖斐川町(旧春日村)、関ヶ原 町および大垣市に属する。 2.地形地質 伊吹山は標高 1377mの起伏山塊で、 典型的な石灰岩地帯に属し,山頂に はカレンフェルト地形(石灰岩の墓 石様地形)や巨大な石灰露岩が見ら れる。伊吹山の西側斜面は石灰岩の 断層崖で「白じゃれ」 「大富抜け」等 の崩壊崖が見られ、石灰岩の採石が 行われている。伊吹山南西斜面は傾 斜が緩く,スキー場として利用され ている。南斜面は急崖となっており, 山脚部には扇状地を形成し,弥高、 上平寺等の集落が形成されている。 伊吹山は滋賀県の最高峰であり、 かつ周辺に高い山がないことから湖 北のランドマークとなっており、四 季を彩る美しい山容が広く県民から 愛されている(例えば、平成 19 年の 長浜市(米原市に隣接)での景観づ くり市民アンケートでは、長浜らし さを感じる場所、長浜市にとって重 要であると感じる場所として、 「伊吹 山が見える風景」が全体の 50.8% (430 件)を占めている。)。また、山の品格、歴史、個性に優れているものとして、1964 年に深 田久弥氏により日本百名山の一つとして選ばれている。 3.気象 伊吹山を南端とする美濃・越前山地稜線 と中部山脈、丹波山地、鈴鹿山地に囲まれ ているため、特徴的な気候を示す。気温が 低く降水量が多いうえ特に冬期に積雪が多 い日本海気候区北陸型に属する。 伊吹山の月平均気温は 8 月で 18.1℃、2 月で-5.2℃である。下の図は伊吹山と彦根 における月平均気温(統計期間 1971 ~ 2000 年)を比較したもので、伊吹山の気温 は彦根に比べて年間を通して 7~9℃低い。 冬は若狭湾からの北西風、夏は伊勢湾か らの南西風の強い風が多い。風速は 1~2月 が最も強く約 10m/s、7月が最も弱く約7m/s である。最大風速の記録としては、第2室戸 台風(1961.9.16)による 56.7m/s がある。他 の山岳と比較して、高さの割に風が強いこと が特徴である。また、伊吹山は一年を通じて 霧が多く、山頂の霧日数は年間平均 300.8 日 (1918~1988)となっている。 積雪は 11 月に始まり、2 月が最も深くな りおよそ 5m となる。その後は減り始め、5 月 にはなくなる。積雪は年々の変動が大きく、 倍ぐらいとなることも多い。最深積雪は 1,182cm(1927.2.14)の記録があり、世界山 岳観測史上 1 位となっている。 4.植物相 (1)概況 伊吹山には、滋賀県全域の生育植 物(シダ植物以上の高等植物)約 2300 種類のうち約 1300 種類の植 物が生育している滋賀県随一の植物 の宝庫である。 山麓の海抜 300mまでに潜在自然植 生としてのシラカシ林があるが、現 在は面積的にはごくわずかしか残っ ていない。海抜 300~600mには、薪 炭林として利用されてきたアベマキ -コナラ林、尾根筋のアカマツ林、 スギ・ヒノキ・カラマツの植林など が見られる。 海抜 600~900mには、同じく薪炭林 として利用されてきたミズナラ-コ ナラ林、谷筋のケヤキ林、ヒノキ造 林地、伐採跡のコクサギ・マユミ・ シロモジなどの低木群落がある。ま た、4 合目以下の山腹~山麓にある スキー場付近にはススキ群落が広が っているほか、花の美しいユウスゲ 群落が見られる。 海抜 900~1200mには、石灰岩地 特有のオオイタヤメイゲツ林が多く、 場所によってはブナ-ミズナラ林が 発達している。 海抜 1200m以上は、特殊な地質・ 気象条件から山地草原(お花畑)が できている。ただし、山頂の山小屋 や測候所付近は、観光客に踏みつけ られ、平地の路傍と同じようなオオ バコ-スズメノカタビラ群落や裸地 となっている。山頂の窪地など残雪 の多いところでは、イブキザサ群落 やチシマザサ群落が分布している。 山頂の北西部および西側の尾根部の 冬期季節風の強い風衝地で、石灰岩 の露岩の多い場所では、低木を主と するイブキシモツケ群落が見られる。 (2)山地草原(お花畑)の特色 海抜 1200m以上の山頂部周辺お よび3合目から山頂にかけての登山 道沿いの三角地帯(上記植生模式図 参照)の山地草原(以下「お花畑」という。)は、メタカラコウ、オオバギボウシ、ショウジョウ スゲ、サラシナショウマ、フジテンニンソウ、シモツケソウなどを優占種とし、約 300 種の温帯 性および亜高山性の草本が生育している。コイブキアザミ、ミヤマコアザミ、ルリトラノオ、イブ キトラノオ、クガイソウ、シュロソウ、アキノキリンソウ、リュウノウギク、イブキトリカブト、 リンドウ、クサタチバナ、タムラソウ、 カノコソウ、ニリンソウ、ショウジョ ウバカマ、サンカヨウなど春から秋に かけて美しい花を咲かせる草本が多 く、7月から8月が百花繚乱の最盛期 である。 この山地草原の主な成因としては 石灰岩地で立地が乾燥しやすいこと や冬期季節風の強い風衝地という高 山的な気象条件が加わること、さらに 近年まで田畑の肥料や家畜の飼料と して、山頂から滋賀県側山麓にかけて 盛んに採草が行われたことなどが挙 げられる。 お花畑に生育する植物の特徴として、 以下の6点が挙げられる。 a) 固有種(特産種)の宝庫 コイブキアザミ・イブキヒメヤマア ザミ・ルリトラノオ・イブキコゴメグ サ・イブキレイジンソウなど9種の固 有種(特産種)が見られる。これは、 古い地層〈古生代二畳紀〉で覆われて いるこ と、乾燥しやすく森林が発達しにくい 石灰岩地であること、中腹以上が冬期 季節風の強い風衝地で あることから、残存した種があったり、 新種形成が行われたりしたためと考 えられる。 b) 北方系要素の植物の南限 北方系要素の植物とは、地質時代の 氷河期に、その発生地である北極周辺 から樺太または千島列島を経て日本 に入り、南下していったと考えられる 植物である。多くの北方系要素の植物 は、石川県の白山が南限となっている が、高山の少ない滋賀県ではほとんど 分布していない。 しかし、伊吹山のお花畑には、イブキトラノオ・サラシナショウマ・サンカヨウ・コキンバイ・ マルバダケブキ・イブキボウフウ・キ バナカワラマツバ・メタカラコウ・キ オン・イブキヌカボなど北方系要素の 植物が生育している。 特に、グンナイフウロ・ハクサンフ ウロ・エゾフウロ・イブキソモソモ・ キンバイソウ・エゾ ハタザオ・イワシモツケ・ヒメイズイ などは、伊吹山が北方からの分布の西 南限である。ニッ コウキスゲも分布の南限に近い。 c) 日本海要素の植物の存在 日本海要素の植物とは、日本海側の 斜面で発生したり、そこを分布の本拠 とした多雪地帯の植物をいう。 積雪によって冬期の寒い季節風から 守られるが、樹木では低木性になった リ、伏状性となるものがある。伊吹山 では、イブキトリカブト・スミレサイ シン・ミヤマイラクサ・ハクサンカメ バヒキオコシなどが多数生育している。 d) 石灰岩地に適応した植物の存在 典型的な石灰岩地帯であるため、こ のような環境を好むイチョウシダ・ヒメフウロ・イワツ クバネウツギ・キバナハタザオ・ヒロハノアマナなどの 植物が見られる。また、イブキスミレは石灰岩地残存植 物といわれ、近畿地方では伊吹山でしか確認されておら ず、県のレッドデータブックにおいて絶滅危機増大種に 指定されている。 e) 襲速紀要素の植物の存在 襲速紀(熊襲、速水瀬戸、紀伊の略語)要素の植物と は、紀伊半島の櫛田川、紀ノ川、四国の吉野川、九州の 八代と臼杵を結ぶ線以南すなわち西南日本の中央構造 線以南の地域に分布の本拠を置く南方系の植物をいう。 伊吹山にも、ギンバイソウ・ミカエリ ソウ・カキノハグサなどが、わずかで あるが北上してきている。 f) 大陸系の植物の存在 前述の北方系要素の植物とあわせて、 オケラ・タムラソウなど中国の東北部 や朝鮮半島に分化発生の本拠をもつ温 帯性の植物も見られる。また、ヒマラ ヤや中国大陸と共通して分布するマル バダケブキ・クガイソウなども生育し ている。 これら山地草原群落を植物社会学的に 群落区分すると、おおむね以下の8群 落に分けられる。 a.メタカラコウ群落 b.オオバギボウシ -メタカラコウ群落 c.オオバギボウシ群落 d.オオバギボウシ -ショウジョウスゲ群落 e.ショウジョウスゲ群落 f.ショウジョウスゲ -イブキノエンドウ群落 g.イブキノエンドウ群落 h.フジテンニンソウ群落 i.サラシナショウマ群落 その他、優占種からの区分では、ア カソ群落、シモツケソウ群落、オオヨ モギ群落と呼べるものもある。 (3)山地草原以外の特殊群落 a.オオイタヤメイゲツ-ミヤマカタ バミ群集 滋賀県の石灰岩地帯に見られるオオ イタヤメイゲツの優占する落葉樹林で、 標高およそ 900~1,300m間に生じ、土 壌層の発達も悪いのでブナ林に替わっ て極相をつくっている。 オオイタヤメイゲツの樹高は 8m 前 後で、階層構造が発達し、令温帯性の 樹種や草本、日本海要素の植物、石灰 岩地に多い植物、固有種、稀産種、伊 吹の山地草原の構成種などの宝庫にな っている。本県、御池岳、藤原岳、霊 仙山のオオイタヤメイゲツ林の中でも 最も植物の多様性に富んだ貴重な群落 である。 b.イブキシモツケ群落 伊吹山頂の平頂部の周縁の石灰岩の 露岩の多い崖や急斜面で、海抜 1,000m 以上の風衝地に生ずる低木群落である。 群落高は 0.9~1.8m で、植被率は 95% ~100%、1調査区当たりの出現種数は 11~28 種あった。イブキシモツケ、ミ ヤマイボタ、ヒメウツギ、アカソがす べての調査区に出現した。イブキシモ ツケとヒメウツギが他群落にほとんど 見られず、この群落を区分する種であ り、林床には山地草原の構成種や石灰 岩地に多い草本が生育するのが特徴で ある。 5.動物相 伊吹山に生息する動物でよく見られ るのは、哺乳類としては、ニホンジカ・ ニホンカモシカ・イノシシ・テン・ニ ホンイタチ・アナグマ・キツネ・タヌ キ・ムササビ・ノウサギなどが挙げら れる。また、と きどきツキノワ グマも確認され ている。 鳥類としては、 11 目 28 科 4 亜科 62 種が確 認されている。 中でもよく見ら れるのは、キ ジ・トビ・ホト トギス・ツバ メ・キセキレ イ・ヒヨドリ・ウグイス・ヤマガラ・ホ オジロなどである。食物連鎖の頂点に立 つイヌワシ、クマタカも少数が見られる。 両生・爬虫類としては、シマヘビ・ジム グリ・アカジムグリ・アオダイショウ・ シロマダラ・ヒバカリ・ヤマカガシ・ニ ホンアマガエル・ニホンアカガエル・ヤ マアカガエル・タゴガエル・トノサマガ エル・ツチガエル・ウシガエルなどであ る。 昆虫としては、12 目 114 科 444 種が確 認されている。生物地理学的に北方系の 種と南方系の種が混在しており、鱗翅 目(蝶類)ではダイミョウミセリ・ヒ メキマダラセセリ・コキマダラセセ リ・キアゲハ・スジグロシロチョウ・ モンキチョウ・オオウラギンスジヒョ ウモン・ウラギンヒョウモン・コミス ジ・ヒメウラナミジャノメ、鱗翅目(蛾 類)ではイブキスズメ・オオキンウワ バ・トガリアツバ・シロオビアツバ・ スカシオビガ・ヘリクロテンアオシャ ク・クロマダラエダシャク・クロヘリ ノメイガが見られる。鞘翅目(甲虫類) では、ヒメボタル(別名イブキホタル) の 重 要 な 生 息 地と なっており、7 月中 旬 頃 か ら 成 虫 が発 光 す る 姿 が 見 られ る。直翅目ではイブ キスズ・イブキヤブ キリ・イブキヒメギ ス、半翅目ではクロ バアカサシガメ・フ タ モ ン ウ ス キ メク ラガメ・スケバハゴ ロモ・イブキコガシラウンカがよく見られる。 また、山頂部周辺においては、伊吹山固有種であり、県のレッドデータブックにて絶滅危機増大 種に指定されているヤコビマイマイをはじめ、伊吹山地から鈴鹿山脈北部にかけての石灰岩地に固 有なミカドギセルガイ、シリボソギセルガイをはじめ数多くの種類の陸産貝類が集中的に生息し、 生育密度も比較的高い種が多く、全国的に見ても貴重な陸産貝類群集を育んでいる。また、複数の 陸産貝類の種・亜種の基準産地となっている点からも、学術的に重要である。