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第Ⅳ章 投資信託と税金

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第Ⅳ章 投資信託と税金
第Ⅳ章
投資信託と税金
【注】
平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間に生ずる所得に対する所得税
に係る基準所得税額(税額控除後で外国税額控除を適用しない場合の所得税額)
に2.1%を乗じて計算した金額が復興特別所得税として所得税額に上乗せされま
す。また、各種源泉徴収に対する税額についても、所得税の源泉徴収税率に
2.1%を乗じて計算した金額が源泉徴収税額に併せて徴収されますが、この章に
(123ページ)の項以外は原則として復興特別所得税の記述は
おいては、「まとめ」
省略しております。
Copyright©2017日本証券業協会
第
Ⅳ章
投資信託と税金
投資信託は、資金運用を専門に行う会
散運用し、そこから得た成果を投資額の
社が、多数の投資家から集めたお金を一
割合に応じて投資家に還元する仕組みの
つの基金 (ファンド) にまとめて、国内
金融商品です。
や海外の株式市場や公社債市場などに分
Ⅳ
縡
投
資
信
託
の
種
類
と
課
税
関
係
縡 投資信託の種類と課税関係
投資信託のタイプは非常に多くありま
信託、私募投資信託が導入されました。
すが、ファンドの設立形態によって「契
また、投資信託の運用対象は主に有価証
約型」と「会社型」に分けることができ
券とされていましたが、平成12年からは
ます。
株式や債券などの有価証券に加えて、不
また、募集の形態によって「公募」と
「私募」に分けられます。
動産などで運用する不動産投資信託の設
定もできるようになりました。
わが国で設定・販売されてきた従来の
投資信託は、契約型・公募のものに限ら
これらのうち、本書では主に契約型で
公募の証券投資信託について説明します。
れていましたが、平成10年に会社型投資
蘆証券投資信託の分類
追加型(オープン型)
株式投資信託
(株式の組入れが可能)
単位型(ユニット型)
証券投資信託
追加型(オープン型)
公社債投資信託
(株式を一切組み入れない)
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単位型(ユニット型)
第Ⅳ章 投資信託と税金
[1]証券投資信託の分類
① 期中分配金を受け取ったとき
運用対象によって、次の2つに分けら
れます。
期中分配金は配当所得とされ、上場株
式の配当金と同様に税率20%(所得税15%、
・株式を組み入れることができる株式
住民税5%) の源泉徴収による申告不要
制度(金額の上限なし)が適用されます。
投資信託
・株式を一切組み入れない公社債投資
また、総合課税又は申告分離課税を選択
することもできます。
信託
さらに、株式投資信託も公社債投資信
なお、公募株式投資信託の収益分配金
託も、信託財産を募集する期間ごとに1
にかかる配当控除については第Ⅱ章縱
単位として独立して運用する単位型(ユ
[1]④83ページを参照してください。
ニット型) と、最初に設定した信託財産
の上に次々と追加設定をして、全体を一
つのファンドとして運用していく追加型
(オープン型)に分けることができます。
②
信託の終了により償還金を受け取っ
たとき
単位型 (ユニット型) 株式投資信託の
終了により元本を超える償還金が支払わ
[2]単位型 (ユニット型) 公募株式投
れたとき、その償還金(収益分配金)は、
上場株式等の譲渡収入金額として取扱わ
資信託と税金
この型は、ファンドを購入できる期間
れます。
が1か月程度の募集期間だけで、それ以
後満期までの信託期間中は追加の購入が
③ 中途換金(解約・買取)したとき
単位型 (ユニット型) の株式投資信託
できないものです。
課税関係は以下のようになっています。
の受益証券を信託の終了前に換金する方
法は2通りありますが、中途解約とは、
公募株式投資信託
公社債投資信
託以外の証券投資信託でその設定
に係る受益証券の募集が公募によ
り行われるものです (特定株式投
資信託〈ETFなど。第Ⅳ章縡
[3]
⑤
。
120ページ参照〉を除きます)
証券会社等を通じて投資信託委託会社に
直接解約を請求する方法です。
もう一つの方法は、証券会社等に買い
取ってもらう方法です。
いずれの方法による換金でも、その換
金代金は株式等の譲渡収入金額として取
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縡
投
資
信
託
の
種
類
と
課
税
関
係
り扱われます。従って「上場株式等の譲
渡損益」と同様の取扱いとなります(②
。
の償還金を受け取った場合と同様です)
[3]追加型(オープン型)公募株式投
資信託と税金
この型の投資信託は、最初に100億円
つまり、換金により利益が生じている
とか200億円といった枠を決めて、その
場合には、その利益は申告分離課税の対
範囲内で自由に追加設定ができ、すでに
象となり、原則として確定申告が必要と
運用されている信託財産も含めて全額が
なります。適用される税率は上場株式の
一緒に運用されるものです。
譲渡所得と同様です。
基準価額が設定されており、常に募集
が行われていて、解約も自由です。
④
Ⅳ
縡
投
資
信
託
の
種
類
と
課
税
関
係
換金(償還を含む)損と株式譲渡益
この型の投資信託も、決算ごとに収益
の損益の通算
分配が行われますが、原則として、イン
平成21年1月1日以後、公募株式投資
カムゲイン(株式の配当等によって得る所
信託の解約(償還)により交付を受ける
得)もキャピタルゲイン(株式の売買等に
金銭の額等については、その全額を株式
よって得る利益) も決算のつど、かなり
等譲渡所得金額の収入金額とみなされる
の部分を分配してしまうファンドが多い
ことから、株式等の譲渡損益と公募株式
ことが特徴です。
投資信託の換金(償還)損益とはすべて
通算ができることになっています。
平成12年4月より、課税の計算方法は、
個々の受益者がファンドに信託した額を
当該受益者の元本とする「個別元本方式」
⑤ 換金(償還を含む)損の繰越控除
公募株式投資信託の解約(償還)差損、
に移行しています。
これは、個々の投資家が取得した投資
譲渡損失は、上場株式等の譲渡損失の繰
信託の発行価額を基礎として所得を算定
越控除制度の対象とされます。
するものであり、「その受益者の解約・
また、上記換金差損は、その年の上場
償還価額」から「その受益者の個別元本」
株式の配当金や公募株式投資信託の収益
を差し引いた元本超過額が配当所得とな
分配金と損益通算することもできます。
っていました。なお、平成21年以後、株
式投資信託の解約・償還により交付を受
ける金銭等の額は、その金額が株式等の
譲渡収入とみなされます。
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第Ⅳ章 投資信託と税金
① 制度移行時における個別元本の切替え
民税5%)の源泉徴収による申告不要制度
新制度は平成12年4月1日算出の基準
が適用されます。また、総合課税又は申
価額から適用されており、移行時に保有
告分離課税を選択することもできます。
していた受益者の当初個別元本は、平成
一方、追加型株式投資信託において支
12年3月31日の平均信託金が適用されて
払われる「元本払戻金(特別分配金)」
います。
は、非課税となっています。
「元本払戻金(特別分配金)」とは、決
算日における「分配落ち後の基準価額」
② 個別元本の把握方法
平成12年の制度移行後は、受益者ごと
が、「各受益者の個々の個別元本」を下
に個別元本を把握することになっていま
回る部分に相当する金額のことをいいま
す。
す。いわば投資元本の一部払戻しに相当
ただし、同一ファンドを複数回取得し
た場合には、移動平均法によることにな
ります。
するため、非課税とされます。
なお、元本払戻金(特別分配金)の支
払いを受けた場合には、その後の個別元
また、ファンドの取得にかかった手数料
等の費用は個別元本には含まれません。
本の額が修正され、分配金支払前の個別
元本の金額から元本払戻金(特別分配金)
に相当する額を差し引いた金額が、新し
③ 期中分配金を受け取ったとき
い個別元本の額になります。
追加型株式投資信託の期中分配金に
は、
「普通分配金」と「元本払戻金(特別
分配前の
基準価額
分配金)
」の2種類があります。
「普通分配金」は、投資資本を運用し
て得られた利益、すなわち配当、利子、
売買益等の利益から分配されるもので、
これは税法上では配当所得となります。
普通分配金
配当所得
元本払戻金
非課税
(特別分配金)
分
分配落後の
個配
基準価額
別前
分配落後の
元の
個別元本
本
この「普通分配金」に対する課税方法
は、「単位型公募株式投資信託の期中分
配金」(第Ⅳ章縡[2]①117ページ参照)と全
く同じであり、税率20%(所得税15%、住
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縡
投
資
信
託
の
種
類
と
課
税
関
係
④
中途換金 (解約、買取、償還)した
① 分配金等は利子所得
公社債投資信託の分配金や解約時の利
とき
前記[2]③と同様です。
益の課税上の取扱いは、公社債の利子の
場合と同様です。
特定株式投資信託の分配金を受け取
したがって、分配金受取時に一律20%
ったときおよびその受益証券を譲渡し
(所得税15%、住民税5%)の税率による源
⑤
泉徴収が行われ、20% (所得税15%、住
たとき
Ⅳ
縡
投
資
信
託
の
種
類
と
課
税
関
係
「上場投資信託」(ETF=株価指数等に連
民税 5% ) の税率による申告分離課税が
動するように運用される上場投資信託で、東
適用されます。また、申告不要を選択す
京証券取引所や大阪証券取引所に上場されて
ることもできます。
います) は、税法上は「特定株式投資信
託」とされ、上場株式に対する課税方法
とほぼ同様の取扱いとなります。
したがって、譲渡益に対する税率は、
20%(所得税15%、住民税5%)です。
分配金に対しては、20%(所得税15%、
住民税5%) の税率による源泉徴収のみ
② 受益証券を換金したとき
公社債投資信託の受益証券を買取請求
により換金する場合の課税関係は、上場
株式等の譲渡と同様に、20%(所得税
15%、住民税5%)の税率による申告分
離課税が適用されます。
で納税が終了 (申告不要) することにな
っています。また、総合課税又は申告分
離課税を選択することもできます。
なお、「上場不動産投資証券(J−REIT)」
③ MRFと税金
MRF(マネー・リザーブ・ファンド)は
追加型公社債投資信託で、証券総合口座
の税制も、上場株式と同様の取扱いとな
等の決済機能を担うファンドです。毎日
っています(ただし、配当金については配
決算を行い、収益分配金は1か月分をま
当控除が適用できません)。
とめて税金20%が控除 (所得税15%、住
民税5%の税率による源泉徴収) されたあ
[4]公募公社債投資信託と税金
と、原則として毎月最終営業日に自動的
公社債投資信託も、単位型 (ユニット
に元本に再投資されます。解約も毎営業
型) と追加型 (オープン型) の2つに分
日可能ですが、即日引出し (キャッシン
けることができます。
グ)も可能です。
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第Ⅳ章 投資信託と税金
[5]会社型投資信託と税金
[6]上場不動産投資証券(J−REIT)と
会社型投資信託は、諸外国において広
く普及している株式会社形態の投資信託
です。
税金
不動産投資証券は、土地や賃貸不動産
等で運用し、売却益や賃料等を原資とし
投資法人は投資主を募集し、投資証券
て投資家に分配を行う会社型投資信託で
(株式会社制度における株券に相当します)
す。賃貸収入をベースに収益が分配され
を発行します。投資証券を購入した投資
るので、安定的で比較的高い配当が狙え
家は、その投資法人の投資主になるとい
るものです。
うことになります。
上場している不動産投資証券の譲渡に
投資証券には、投資家の請求に応じて
対する課税関係は、基本的には、上場株
払戻しをするオープン・エンド型と、そ
式等と同じで、平成15年1月1日から申
の投資証券が存続する限り払戻しをしな
告分離課税に一本化されました。
いクローズド・エンド型 (通常は、証券
分配金への課税方法も、上場株式等の
取引所に上場され、
その市場で売却できます)
配当課税と同様です(第Ⅱ章縱79ページ参
があります。
照)。 ただし、配当控除は適用できませ
公募型でオープン・エンド型の会社型
ん。
投資証券 (税法上は特定投資法人といいま
す)から受ける配当は、税法上は契約型
公募株式投資信託と同様の取扱いとなっ
ています。
これに対して、公募型のクローズド・
エンド型の会社型投資証券では、国内株
式の譲渡益に対する課税と同様に、売却
部分は申告分離課税扱いとなり、配当部
分についても、国内株式の配当と同様に
課税されます(ただし、配当控除の適用は
ありません)(第Ⅱ章縱79ページ参照)。
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J−REITと配当控除 配当控除
は、法人税と所得税が二重に課税
されることに対する調整としての
性格をもっています(第Ⅱ章縱[1]
④83ページ参照)
。
しかし、一定の要件を満たす投
資法人が、利益の大部分 (配当可
能所得の90%超)
を分配する場合は、
法人税は課税されません。
つまり、J−REITの分配金には
Ⅳ
二重に課税されないことから、配
当控除が適用されないのです。
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課
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〈まとめ〉
〈源泉(特別)徴収税率〉
平成16年1月1日
20%( 所 15% 住 5%)
公社債投資信託
期中分配金
解約・償還益 20%
公募株式投資信託
平成26年1月1日
20.315%( 所 復 15.315% 住 5%)
(源 泉 分 離 課 税)
20.315%
( 所 復 15.315%
10%
10.147%
住 5%)
( 所 7% 住3%)
( 所 復 7.147% 住 3%)
( 所 15% 住 5%)
申告不要
又は総合課税
(源泉分離課税)
源泉徴収の対象
平成25年1月1日
申告不要
総合課税又は
申告分離課税
〈住民税は配当割〉
〈住民税は利子割〉
期中分配金
期中分配金・解約(償還)益
Ⅳ
平成21年1月1日
所 =所得税、 復 =復興特別所得税、 住 =住民税
〈注1〉平成25年から平成49年までの間は、
源泉徴収された所得税の金額に対して2.1%の復興特別所得税が上乗せされます。
〈注2〉譲渡(買取請求)益の平成16年1月以後の課税関係については、
「上場株式等」
と同様(国内公募株式投資信託は、
平成16年
10月から特定口座での受入れが可能)。
〈平成21年から解約価額=譲渡収入とみなされ解約差益は譲渡益扱いに〉
解約価額
解約価額
取得価額 みなし譲渡損失
個別元本
みなし
譲渡収入
配当所得
取得価額
個別元本
みなし
譲渡益
譲渡所得
買取価額
譲渡益
譲渡所得
取得価額
みなし
譲渡収入
譲渡収入
(解約請求)
(買取請求)
平成21年から
(平成20年12月まで)
解約価額>個別元本
〈注1〉個人が公募株式投資信託を解約した場合、
のときでも配当所得とされないため、
源泉徴収されません。
とされていました。
〈注2〉解約差損は改正前から「みなし譲渡損」
同じ扱い、
損益通算可
公募証券投資信託の換金(解約・
償還・買取)
による損益
●20%の税率の適用
(平成26年以後)
●譲渡損失の繰越控除
●譲渡損と上場株式等の配当所得・利子所得との損益通算
上場株式等の譲渡損益
※なお、
平成20年までは、
公募株式投資信託の解約(償還)
による利益は配当所得として課税が行われていたため、
上記とは異なる取
扱いとなっていました。
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