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M&A・競争法ニュースレター
(2013 年 12 月号)
M&A における非競争条項に対する規制
ロシア規制当局がガイダンスを発表、EU では非競争条項が
引き続き監視の対象に
2013 年 12 月号 | 東京オフィス
近時の刊行物
非競争条項は、買収契約や合弁事業(「JV」)契約でよく利用されて
おり、当事者にとってはビジネス上極めて重要な意味を持つことがあり
ます。しかしながら、そのような規定が正当とされる範囲を超える場合
は、競争法上重大な問題を引き起こすおそれがあり、ひいては、当該
規定が執行不可能となり金銭的制裁が課されるリスクにつながることも
あります。例えば、欧州委員会は今年初頭に、非競争条項に合意した
ことにつきスペインの電気通信会社 Telefónica およびポルトガルの
電気通信会社 Portugal Telecom に対して合計 7900 万ユーロの
制裁金を賦課しました。
さらに、ロシアの競争当局(「FAS」)が今夏、JV における非競争の
取決めに関するガイドラインを発表したことは、EU の域内外の規制
上記ガイドのハードコピーをご希望の場合
当局が依然として非競争条項に注目していることを物語っています。
は、こちらまでご連絡ください。なお、英文
そのため日本企業においても、ロシアと何らかのつながりを有する
のみでのご用意となります。
契約を締結する場合には、このガイドラインおよび FAS のアプローチ
を理解しておく必要があります。また、EU に影響を及ぼす可能性が
関連リンク
ある契約に関して EU がどのような見解を取っているのかについても、
>
Herbert Smith Freehills
理解しておく必要があるでしょう。
>
Our global M&A practice
>
Our competition, regulation
and trade practice
>
Our Tokyo office
∨
EU 競争法
∨
ロシア競争法
∨
結語
∨
問い合わせ先
EU 競争法
背景
一般論として、現実の、あるいは潜在的な競争事業者間の非競争協定は、欧州連合の機能に関する条約(「TFEU」)第 101 条に定めが
ある反競争的な協定の禁止および/または EU 加盟国の国内法上の同等の規定に違反する可能性があります。
Page 1
もっとも、欧州委員会(および各国の競争規制当局)も、M&A において買主が対象事業
の価値を完全に実現するためには非競争条項が必要になることもあるという認識に立ち、
範囲および期間が適切に限定されている非競争規定は、取引に必要なものとして
M&A ニュースレター
バックナンバー一覧
TFEU 第 101 条に基づき正当化されることもある、と認めています。
2013 年 11 月号
概して、一般的には、以下のすべてに該当する非競争規定であれば(これは、欧州
委員会の「付随的制限(ancillary restraints)」に関する 2005 年のガイダンス に記載の
ファイナンシャル・インベスターからの
投資対象購入:日本の買主が取引を
行う際の留意事項(第二部)
とおり)、正当化されるでしょう。
2013 年 10 月号
•
売主のみを対象としており、
•
有効期間が取引完了後(のれんが譲渡される場合は)2 年または(のれんおよび
ファイナンシャル・インベスターからの
投資対象購入: 日本の買主が取引を
行う際の留意事項(第一部)
ノウハウが譲渡される場合は)3 年以内に限定され、
2013 年 9 月号
対象事業が取引完了前に商品/サービスを提供していた地理的範囲(または、
次はアフリカか?アフリカで日本
企業を待ち受ける M&A のリスクと機
会
1
•
既に参入準備のための投資を行っていた場合は、参入を予定していた地理的範囲)
に限定され、かつ
2013 年 8 月号
•
対象事業が取引完了前に取り扱っていた商品/サービス(開発の進んだ段階に
あるものを含む)に限定されるもの。
勧誘禁止条項および秘密保持条項についても、同様のアプローチが適用されます。
欧州委員会は、JV に関する取決めについても同様に、共同支配をする親会社と JV と
日本企業の M&A:中国商務部に
よって企業結合取引が長引く可能性
は?
2013 年 7 月号
の間の非競争義務が取引に「付随」するものとみなされる場合があることを認めています。
インドと二国間関係を強化-インドで
の M&A 実施について
ただし、当該義務は一般的に JV 契約の対象となっている商品/サービスおよび地域に
2013 年 6 月号
限定され、また、その期間は適切に(通常は JV の存続期間に)限定されていなければ
オーストラリアのアグリビジネス
および農業地への外国投資
なりません。
このような非競争に関する制限が EU 競争法上の規範に照らして正当とみなされるか
否かの判断は、当事者による「自己評価」に委ねられており、欧州委員会に届け出ること
はできません(すなわち、同委員会が企業結合規制に関する手続の一環として制限の
東京オフィスのニュースレター
内容を審査し、見解を述べることはありません)。
東京オフィスでは、定期的に以下
Telefónica/Portugal Telecom
欧州委員会が Telefónica に 6690 万ユーロ、Portugal Telecom には 1230 万ユーロの
制裁金を賦課するとした 2013 年 1 月の決定は、事業者が上述した範囲を超える非競
争条項に合意した場合のリスクを浮き彫りにしています。
の各分野に関するニュースレター
も発行しております。配信を
ご希望の場合は、下記よりご希望
の分野を明記の上、こちらまで
ご連絡ください。
この事案における非競争規定は、Telefónica が(以前 Telefónica と Portugal Telecom
•
紛争回避
•
建設関連
•
知的財産・テクノロジー、
メディアおよびテレコミュニケ
ーション
•
エネルギー・インフラ・工業
•
ラテン・アメリカ*
欧州委員会は、この非競争協定は当該買収取引に関係のない地域を対象としており、
•
競争法*
Vivo をめぐる取引に付随するものではないと判断し、(実際には実施されたことはないと
•
雇用法*
の共同支配下にあった)ブラジルの携帯電話事業者 Vivo に対する Portugal Telecom
の持分を買収した 2010 年の取引の一環として合意されたものでしたが、問題となった
非競争規定は、当事者らがスペインおよびポルトガルにおいて互いに競争しない
(すなわち、互いの「地元市場」に参入しない)ことを定めていました。同規定の有効期間
は 2010 年 9 月から 2011 年末までとなっていましたが、欧州委員会が調査を開始した
後の 2011 年 2 月に当事者によって破棄されていました。
いう当事者の主張にもかかわらず)「目的による」TFEU 第 101 条の重大な違反を構成
する、という結論に至りました。
* 不定期発行
当事者は当該決定について EU 普通裁判所に上訴しており、判決が待たれています。
Siemens/Areva
また最近では、欧州委員会が JV における非競争の取決めについて精査した事例もあります。欧州委員会は、2012 年 6 月に Siemens
および Areva による確約と引き換えに、かつて両社が原子力発電所の JV に関連して合意し、JV 契約の終了後も長期にわたって効力を
1
集中に直接関連し必要とされる制限に関する委員会告示(2005/C56/03)。
Page 2
有することを定めた非競争条項が(期間を同じくする秘密保持条項と併せて)TFEU 第 101 条に違反しているかを問題としていた調査を
打ち切りました。
欧州委員会の予備的評価では、当該条項は JV の範囲外である「非中核」商品をも対象としており、取引に付随するものではなく、一見
したところ TFEU 第 101 条に違反する、と判断されていましたが、これを違反と認める決定には至らず、当事者らが非競争条項の存続
期間を取引の終了後 3 年に限定し、かつ JV の「中核」商品のみを対象とする修正を行うことに合意したことと引き換えに調査を打ち切り
ました。さらに秘密保持条項についても、非競争条項と同じ効果を持つ限りにおいて修正が必要であると判断されました。
ロシア競争法
背景
最近までは、FAS がどのような状況において非競争条項が反競争的な協定を禁止する国内法(「競争保護に関する」ロシア連邦法の
第 11 条)に違反すると判断するかについて、ほとんど不透明な状態でした。この禁止規定の適用範囲には、ロシア国内の競争に影響を
及ぼす一切の合意が含まれ、違反した場合は EU 競争法と同じく、制裁金および当該規定が無効となるリスクが生じます。
2013 年 8 月に FAS は、どのような場合に JV における非競争の取決めが有効と判断され得るのかについてのガイドライン(「本ガイド
ライン」)を発表しました。この点、本ガイドラインでは、EU で取られている立場と異なり、FAS が当事者に対して FAS の審査を仰ぐために
非競争の取決めを届け出ることを奨励しており、注目に値します(これには最長で 50 暦日かかる可能性があります)。
実質的評価
現在、本ガイドラインは、JV 契約、すなわち(JV 企業が設立されるか否かを問わず)資産のプールおよび事業リスクの分担を伴う契約に
関連して結ばれた非競争の取決めのみが対象とされます。FAS は、真正な JV 契約が存在するかどうかを検討する際、当事者の持分が
それぞれの出資額に比例しているか否かに着目します。なお、本ガイドラインの対象となるのは、公表されている JV 契約に限られます。
本ガイドラインによれば、以下に該当する非競争の取決めは、FAS により有効とみなされる可能性があります。
•
JV パートナーに課される、JV の商品と競争する商品を製造または販売してはならないという義務
•
JV 企業が新たな事業機会を模索するための優先権
•
JV パートナーに対する勧誘禁止義務
評価に関わる要素には、以下が含まれます。
•
非競争の取決めは JV の当事者が事業を行っている市場を超えて適用されるか
•
非競争の取決めは JV の目的に一致しているか
•
当該取決めは JV の当事者らによる機密情報の交換を伴うものか
•
非競争の取決めの期間は「投資回収」期間に最長で 2 年間を足した期間を超えるか
•
JV の当事者の市場シェア、および当該取引の競争促進効果の有無
本ガイドラインは、FAS がロシア競争法に基づいて非競争条項を評価する際にどのようなアプローチを取るのかを明らかにするものであり、
当事者が自己評価を行なう場合や、FAS の審査を受けるために非競争の取決めを届け出るべきかを判断する上で参考になるでしょう。
もっとも、本ガイドラインは、適用対象が JV に係る取決め、それも公知となっている非競争の取決めに限定されており、十分とは言えま
せん。
進展中の動き
現在、ロシア議会では、競争法令に関するいわゆる「第 4 次反独占パッケージ(Fourth Antimonopoly Package)」について審議が
行なわれています。採択されれば、ロシアの企業結合規制法の適用範囲は JV に拡大され、JV も他の M&A 取引に適用される FAS に
よる事前承認手続の対象となります。こうした背景に照らすと、本ガイドラインは、ロシアにおける JV や非競争の取決めをめぐる法的環境
を一新するための第一歩なのかもしれません。
結語
上述した動きが示すように、非競争をめぐる取決めは、EU の域内のみならず域外においても競争当局の中心課題となっています
(シンガポールをはじめとした他の当局でも、ここ数ヶ月間で非競争の取決めの審査が増えていると報告されています)。こうした情勢は、
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JV や他の M&A 取引の当事者が、複数の法域にまたがる企業結合の規制に係る義務がどのように取引に適用され、また世界各国の
競争法がどのように関連する取引契約に適用されるのかについて考慮すべきことを意味しているといえるでしょう。
非競争条項に対する FAS のアプローチは必ずしも EU のアプローチに沿うとは限らないため、ロシア競争法の適用を受ける契約に
ついては、別途ロシア競争法の専門家による精査が必要です。
ハーバート・スミス・フリーヒルズでは、ロシアおよび EU・アジア太平洋全域において本稿で取り上げた問題に関するご質問・ご相談を
承っております。ご質問等ございましたら、本稿記載の問い合わせ先までご連絡ください。
問い合わせ先
ジェイムス・ロビンソン
パートナー
グレアム・プレストン
パートナー
外国法事務弁護士
T +81 3 5412 5404
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外国法事務弁護士
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