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「昭和リース」進化論

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「昭和リース」進化論
企業のニーズに応え続ける「昭和リース」進化論
塩川哲也(しおかわ・てつや) ゼロックス・コーポレーション 在日代表
1959(昭和 34)年 3 月 25 日生まれ。京都大法学部卒、ハー
バード大経営大学院修士課程修了(Master of Business
Administration)。83 年 4 月、三井物産入社。2000 年 1
月、GE キャピタル・ジャパン入社、事業開発マネージャー。
05 年 12 月、GE フリートサービス副社長。06 年 12 月、
Xerox Corporation に入社、現職。
特 別 対 談
清谷清弘(きよたに・きよひろ)
昭和リース株式会社 代表取締役副社長
1955(昭和 30)年 5 月 10 日生まれ。慶応義塾大商学部卒。
80 年 3 月三井リース事業入社。2005(平成 17)年 3 月、
新生銀行入行、昭和リース代表取締役副社長兼副社長執行
役員。07 年 4 月、
新生銀行コンシューマーアンドコマーシャ
ルファイナンス本部長。09 年 6 月、昭和リース代表取締役
副社長兼副社長執行役員営業本部長(現職)
。
SPECIAL CONVERSATION
サービスの多様化で経済を活性化する
Xerox Corporation
塩川 哲也氏
昭和リース株式会社
清谷 清弘
世界中から注目されているアベノミクスの成長戦略。その成果は未だ判
然としない状況だ。日本経済の将来への不安は、中堅・中小企業が鍵
を握ると言われている中、ビジネスをサポートするサービスに取り組む
企業であるゼロックス・コーポレーション在日代表・塩川哲也氏をお迎
えし、バブル経済崩壊から現在、そして未来の日本経済を語り合う。
01
1
バブル経 済崩壊からアベノミクスまでを振り返る
清谷:日本経済は、今まさに未来へ向け
た期間は、御社にどのような影響を与えた
この 20 年で日本では、お客様の環境が
て経済構造の再構築を諮っている状況に
とお考えですか。
大きく変わりました。お客様は、
「どうすれ
あります。そのような中で、あらためてバ
塩川:米国ゼロックスおよび富士ゼロック
ばオフィスのコストが減らせるか」、
「効率
ブル経済崩壊後を振り返ってみることは、
スは、創業以来ゼログラフィー(電子写真
化できるか」ということをお考えになるよ
今後の成長戦略を考えるうえで重要かと思
技術)を中心とした、複写機本体および
うになり、加えてデバイスの進化が顕在化
うのですが、
「失われた 20 年」と呼ばれ
消耗品の販売を柱としてきました。しかし、
してペーパーレス化が進みつつあります。
清谷:確かにビジネスモデルの根本を揺る
だったと言えます。たとえば取扱商品につ
戦略〟でしょう。
がすほど、お客様のニーズは変化したと言
いては、リース・割賦だけでなく、レンタ
清谷:私も同感です。中堅・中小企業のお
えますね。
ルから各種金融商品までとその幅を広げて
客様の多くは〝更新需要〟がほとんどです。
塩川:お客様の元へお伺いしますと、コス
きました。今後は、オフバランス化できる
新たな設備投資や新規事業の開拓・展開
ト削減や効率化を求め、事務作業やビジ
オペレーティングリースや、メンテナンス
というところまでは至っておられないのが
ネス環境の全般、あるいはその一部分を
付きリースなどの取り扱いを、さらに拡大
現状だと思います。安部首相は 2013 年 5
そっくり引き受けてもらえるところはない
していきたいと思っています。
月 17 日の日本アカデメイア講演「成長戦
か、という声をいただくようになりました。
塩川:現在の米国ゼロックスでは、売上高
略第 2 弾スピーチ」で、これからの国際
そこで米国ゼロックスでは、こうしたビジ
の約 55%をサービス分野が占めるように
競争で勝ち抜くためには企業の大胆な投
ネス・アウトソーシングのご要望に応える
なりました。今やゼロックスは〝サービス
資が必要だとし、その後押しとしてリース
ためにACSという企業を傘下に収めて対
でリードし、テクノロジーでドライブする
の活用について言及されました。歴代首相
応することにしたのです。必要な場合は、
企業〟に進化したと言えるでしょう。
が、自ら「リース」という言葉を公で口に
リスクがあっても前に進まなければなりま
清谷:安倍政権発足からもうすぐ 2 年にな
したのは、
この時が初めてのことです。リー
せん。日本でも
「変わらなければいけない」
ろうとしています。さまざまな経済政策が
スを用いながらの戦略的な設備投資は、
という意識が確実に芽生えたのは、バブ
打ち出されてきましたが、塩川様はどのよ
成長のために有効な手段であることが広く
ル経済の崩壊がきっかけだったように思い
うに評価していらっしゃいますか。
認められた瞬間だったと思います。
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ます。
塩川:アベノミクスの三本の矢(金融政策・
塩川:リースを活用した新しい仕組みを政
清谷:リース業界でもまったく同じことが
財政政策・成長戦略)のうち、2 本目まで
府主導で導入するということですから、大
言えると思います。従前からのリース事業
は成果を上げたと思っています。海外投資
いに期待したいですね。
は言わば基本の〝き〟で、お客様のニーズ
家の目も再び日本に向きつつありますが、
に即したサービス面の強化が立ち直りの鍵
何と言っても、ポイントは 3 本目の〝成長
02
昭和リース
進化論
企 業のニーズは、 ツールの開発・供 給だけでは満たせない
清谷:さて、そもそもアベノミクスが必要
就業経験から感じることですが、グローバ
するようになりました。こうした精力的な
となったのは、バブル経済の崩壊から「失
ルスタンダードと比較すると日本は何かと
姿を目の当たりにしますと、日本企業の未
われた 20 年」という混迷期を過ごしてき
時間がかかりすぎます。たとえば企業のリ
来は明るいと思えてきます。
たからですが、
そこから学んだことは何だっ
ストラクチャリング。海外では文字通り大
塩川:私も、これからの日本の企業は本当
たと思われますか。
鉈を振るうわけですが、日本では小刻み
の意味でグローバルな戦いが必要になって
塩川:私は、バブル経済の崩壊は企業が
に 3 度、4 度と行います。日本独自の就業
くると考えています。
抱えていたリスクをきちんと認 識できな
システムを、病を負った人の身体に見立て
清谷:そのような中で、富士ゼロックス様
かった、認識していたけれども適切に処理
るならば、手術の回数は少ないほうが身体
と当社の業務提携は実に 30 年以上も前
できなかった、あるいは処理するのを躊躇
への負担も少ないものです。
に遡ることになりますが、この業務提携に
してしまったがために起きたのではないか
塩川:しかし、これからの時代を生きる私
より、どのようなメリットをお客様にご提
と思っています。バブル崩壊から私たちが
たちは、悲観的な結果論だけではいけま
供できているとお考えでしょうか。
学ぶべき最大の教訓は、
「痛みは、先延ば
せんね。冷静且つポジティブな考察で何か
塩川:富士ゼロックスのサービスを導入い
ししてはいけない」ということではないで
を得たいものです。
ただく際、お客様の多くはファイナンスを
しょうか。
清谷:おっしゃるとおりです。バブル経済
含めてご検討されますから、専門家である
清谷:私もそう思います。これは海外での
崩壊によって整備されたことは大きく2つ
御社と常に協働できる関係にあることはた
あったように思います。一
いへんありがたいことです。お客様にとっ
つは「情報化社会の発達」
ても、ワンストップで事案を検討していた
です。IT の 波は あらゆる
だけるという点で、大きなメリットをご提
業 界に押し寄せ、データ
供できていると思います。また、中堅・中
を活用し利 益を生むこと
小企業のお客様は、富士ゼロックスが重
ができるようになった企業
点をおいているマーケットでもありますが、
と、そうではない企 業の
その点ではとりわけ昭和リース様がお持ち
差が大きく開きました。も
のソリューションとの協業が上手く作用して
う一つは、
「グローバル化」
いると考えています。
です。日本の中堅・中小規
清谷:当社にとっては、エンドユーザー様
模の企業でも海外へ進出
はもとより、富士ゼロックス様のようなメー
お客様との
契約締結は、
ゴールではなく
スタートです。
2
企業のニーズに応え続ける「昭和リース」進化論
様への綿密なヒアリングを徹底しました。
ダープラットフォーム」は、メーカー・販
結果として、同システムでの成約率は格段
なツールをご提供し、サービスの質を向上
売会社様の営業担当の方に、案件情報を
に向上し、エンドユーザー様にもよりスピー
できるかということになります。
入力していただくだけで自動的に与信判断
ディーに両社のサービスをご提供できるよ
そのひとつとして、富士ゼロックス様には
やリース料率を提示でき、契約書の作成ま
うになりました。
従来「ベンダープラットフォーム」というシ
でワンストップで行えるというウェブサービ
塩川:フェイス・トゥ・フェイスで話し合っ
スです。しかし導入当初は、御社の営業
たときにこそ、
本当のニーズや一歩先のサー
担当者様に、与信判断やリース料率の確
ビスが顕在化するのだと思います。IT だけ
認のためシステム自体はお使いいただける
の進化では限界があり、
そこにコミュニケー
ものの、契約にまでは至らないケースがほ
ションの C が入る〝ICT〟こそが重要と考
とんどでした。
えています。
塩川:確かにそうだったようですね。
清谷:最終的にお客様のよりよいビジネス
清谷:原因の一つに、当社の営業担当者
環境の整備に貢献するためにも、サービス
と御社の担当者様とのコミュニケーション
の基本である人的な要素に立ち返り、常に
が、システムを構築したが故に希薄になっ
業務の見直しを行っていかなければならな
てしまったことがあると考えました。そこ
いことを痛感したケースでした。その節は
で、各地域の販売会社様にトップセールス
塩川様にもご尽力をいただき、たいへん感
を行うと同時に、全社統一の方針に基づ
謝しております。
中堅・中小企業の発展なくして
ステムをお使いいただいています。
「ベン
カー・販売会社様に対しては、いかに便利
日本経済の未来はないのです。
カー・販売会社様も大切なお客様です。
メー
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き、現場での迅速な対応と、営業担当者
03
サービスの可能性は多様化し、拡 大化し、そして進化する
清谷:今、経済政策のひとつとして「規制
れまでやってこなかった分野の開拓という
現や、事業者の多くが中小企業である「介
緩和」が注目されていますが、守られ続け
のは、難しいことではありますが、さまざ
護」
、再生可能エネルギーを柱とする「環
た業界というのは、いずれ衰退してしまう
まな変化を楽しんでいける環境を自分たち
境」
、
情報セキュリティを含めた「ソフトウェ
可能性が大きいと考えています。
の手で創りだすには、絶好の機会ではな
ア」等の新規分野への取り組みにも注力し
塩川:やはり、自分たちの足で立つことを
いかと考えています。
ていきます。そして、数多くの中古機器と
目指さなければいけない、
ということでしょ
清谷:それでは最後に、御社が今後、注
接しながら培ってきた〝中古価値の目利き
うか。
力しようとお考えの分野や事業についてお
力〟を活かした「中古機器の販売」へと、
清谷:そう思います。自分たちで生きてい
聞かせいただけますか。
着実に歩みを進めたいと考えています。
くための強みを見つけていかなければなり
塩川:お客様やマーケットのニーズの変化
塩川:とても興味深いお話です。中堅・中
ません。当社で言えば、中堅・中小企業
を考えますと、
「サービスとソリューション
小企業の発展なくして日本経済の未来はな
のお客様からの期待にお応えするために、
の強化」ということになろうかと思います。
いのですから、私たちはしっかりとそのサ
どのようなサービスをご提供できるのか、
この点を強化しどう収益を上げていくかが
ポートをしていきましょう。
ということになると思います。お客様との
大きなポイントになっていくはずです。将
清谷:御社との協業を深める余地もまだま
契約締結は、ゴールではなくスタートです。
来的に米国ゼロックスでは収益の 2/3 を
だあると感じています。今後とも手を携え
そういった見地に立てば、これまで社内に
サービス分野からとすることを目標にして
てお客様に貢献してまいりましょう。本日
蓄積されてきた経験やノウハウの中に、必
います。
はありがとうございました。
ずやお客様にお役に立てることが見つかる
また、お客様のグローバル化がさらに進む
はずだと思うのです。たとえばお客様同士
ことが予見できますので、そうしたお客様
の橋渡しをすることや、事業承継でお困り
のお役に立ちたいと考えています。
昭和リー
のお客様へのご提案、事業計画に合わせ
ス様はどのようなビジョンを描いていらっ
たオフィス環境の整備など、中堅・中小企
しゃるのですか。
業様にこそ有用なサービスをご提供できる
清谷:当社は、従来強みを持っている建設
昭和リースと考えています。一方で、こうして考えて
進化論 みると、私の若いころとは、営業の現場も
機械に関しまして、老朽化したインフラの
大きく変わって、難しくなったなと思います。
新しい整備など、これまでの経験やノウハ
塩川:そうですね。しかし、若い世代の方
ウを活かし一層の強化を図っていきたいと
には、このチャレンジングな状況を、ぜひ
考えています。同時に、
動産担保融資
(ABL)
面白いと感じてもらえたらと思います。こ
のスキームによる新しい融資の可能性の実
3
修繕や、2020 年の東京五輪へ向けての
昭和リース
進化論
論
これからも「進化」を続けていくために
営業組織の再編を実施
加速度的に変化する時代において、より機
営業部門)の両輪にて、営業活動を行って
いては、それぞれの分野の新しいビジネス・
動的かつ柔軟にお客様のご要望にお応えし
まいりました。
商品の開発をはじめ、ビジネスパートナーと
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ていくべく、当社では 2014年10月1日付で
今般の組織改正では、これまで以上に競
の一層の連携強化、各エリア営業部門の営
営業組織の大規模な改正を実施しました。
争力のあるビジネスや、当社の強みを活か
業支援を主なミッションとします。また、当
従来当社では、エリア別に幅広い商品・
した商品の開発を推し進めていくことを趣旨
社が従来強みを持つ分野である建設機械
サービスをお客様にご提案する部門(東日
として、専門営業部門および配下の各部を
営業部、機械設備営業部の両部については
本、
西日本、
名古屋の各エリア営業部門)と、
廃止し、新たに「次世代ビジネス推進部門」
部門に属さない独立部とし、より経営に近
業界専門性の高いファイナンスソリューショ
として再編することとしました。
い組織として、意思決定のさらなる迅速化
ンを全国のお客様にご提案する部門(専門
「次世代ビジネス推進部門」の各部につ
を図ってまいります。
〔従来〕
〔 2014 年 10 月 1 日〕
〔 概 要 〕
次世代ビジネス統括部
機械設備営業部
環境・エネルギービジネス部
専 門 営 業 支 援 室、 環 境 エ ネ ル ギ ー 営 業
介護・医療ビジネス部
部、FAS 営 業 部、 ア ミ ュ ー ズ メ ン ト 営
建設機械営業部
専門営業部門
ヘルスケア営業部
ベンダーファイナンス営 業 部
環境エネルギー営 業 部
アミューズメント営 業 部
不動産リース営業部
次世代ビジネス推進部門
情報機器営業部
ICT ビジネス部
① 専 門 営 業 部 門、 お よ び 同 部 門 内 設 置 の
部、 ヘ ル ス ケ ア 営 業 部、 情 報 機 器 営 業
業 部、 不 動 産 リ ー ス 営 業 部、 ベ ン ダ ー
ファイナンス営業部、バイセル営業部、
FAS ビジネス部
ストラクチャード営業部を廃止。
インフラ産業ビジネス部
進部門を新設。
ベンダーファイナンスビジネス部
② 営 業 本 部 の 傘 下 に、 次 世 代 ビ ジ ネ ス 推
ま た、 同 部 門 内 に 次 世 代 ビ ジ ネ ス 統 括
部、 環 境・ エ ネ ル ギ ー ビ ジ ネ ス 部、 介
護・ 医 療 ビ ジ ネ ス 部、 I C T ビ ジ ネ ス
ストラクチャード営 業 部
グローバルビジネス第一部
ビ ジ ネ ス 部、 ベ ン ダ ー フ ァ イ ナ ン ス ビ
FAS 営業部
グローバルビジネス第二部
バイセル営業部
専門営業支援室
営業本部
動産マネジメントビジネス部
建設機械営業部
機械設備営業部
部、 F A S ビ ジ ネ ス 部、 イ ン フ ラ 産 業
ジ ネ ス 部、 動 産 マ ネ ジ メ ン ト ビ ジ ネ ス
部、グローバルビジネス第一部、グロー
バルビジネス第二部を新設。
③建設機械営業部と機械設備営業部を、 部門に属さない独立部として設置。
【取締役兼常務執行役員 次世代ビジネス推進部門長 後呂 康輔】
この度の組織改正は、当社が「お客様から
の両分野については、社会全体が大きな課題
選ばれる」企業となるための体制作りの一環
と直面している領域でもあり、今後の最大注
として行ったものです。ファイナンス面だけで
力分野と位置付けています。
なく、お客様がお持ちの経営課題をさまざま
中堅・中小企業のお客様にとって、最も身
な角度から解決していくためのソリューション
近で、最も信頼のおけるパートナーとなれるよ
をご提供するべく、当部門が中心となり、商品・
う、新たな組織体系のもと、営業活動に邁進
サービスの一層の充実化に取り組みます。
してまいります。今後ともお引き立てのほど、
特に「環境・エネルギー」および「介護・医療」
よろしくお願いいたします。
4
見たい!聞きたい!知りたい!
〝強い企業〟を探検する!
あらゆる逆境を味方にし、
年商30億円まで成長した秘密に迫る!
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Wa
業界屈指の先進技術と、新発想のファンドリービジネスで
印刷業界を駆け抜ける
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株式会社ウエマツ
代表取締役社長
福田 浩志氏
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■外的要因をはねつける社長の信念
日本の印刷業は、オールドエコノミー
実践で印刷業界を牽引する企業がある。
戸田市へ移転・集中させることになる。
の最たるものと言われている。印刷事業
それが株式会社ウエマツだ。
だ が 移 転 を 決 定 し た 2008 年 に は、
は基本的に受注産業であり、構造不況の
株式会社ウエマツの創業は 1958 年 3
リーマンショックが起きた。世界的な経
煽りを受けやすい。2013 年度の印刷業
月。東京都豊島区で中古の印刷機1台か
済不況は日本経済をひと飲みにした。し
界規模(主要対象企業 27 社の売上高計)
らの創成だった。時代は高度経済成長期
かし代表である福田浩志社長は〝景況に
は 3 兆 7,615 億円。これはバブル景気
にあり印刷事業は順調に成長。後継者の
影響されない会社への進化〟という強い
に湧いた 1991 年度の半分にも満たない
いない印刷会社への M&A や、近隣の土
決意のもと、工場の移転と、後にウエマ
42.1% に相当する額でしかない(1991
地を譲り受けながら工場は次第に拡大し
ツの特長のひとつとなる最新印刷機の導
年度:8 兆 9,286 億円)。
ていった。しかし地域の宅地化による物
入を推し進めた。そしてさらに、社内に
しかし、このオールドエコノミーであ
流の限界などの理由から、工場を埼玉県
おいても大きな改革を断行する。
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ることを〝強み〟に変え、独自の発想と
戸田工場の主役、
「印刷機」
。こ
の印刷機(三菱重工製)では、
菊全判の片面 6 色 + 片面 4 色の
多色印刷が一回の印刷でできる。
刷版データを直接焼き付ける
「CTP(コンピュータ・トゥ・プ
レート)」。一般的な印刷物では
CMYK4 色分(シアン、マゼンタ、
イエロー、ブラック)作られる。
入庫した紙を収める「ラック倉
庫」
。660 パレット・550 トン
まで収容可能。入出はオンデマ
ンドで完全自動化されている。
5
こちらの印刷機(アキヤマ・イ
ンターナショナル製)は両面 5
色ずつの印刷が可能。
「水なし
印刷機」だから環境にも優しい。
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<会社概要> 株式会社ウエマツ
代表取締役社長 福田 浩志
資
設
本
金 1 億 4,000 万円
立 1958 年 3 月
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役 職 員 数 182 名
本 社 所 在 地 東京都豊島区
南長崎 3-34-13
■オンリーワンで、ナンバーワンに
まず、企業としての『経営方針』を明
ばず、各 ISO 規格の取得や第 12 回経済
て会得し、いちはやく印刷業界に取り入
確にした。取引先を大手・中堅の優良印
産業大臣賞の受賞など、第三者からの高
れることを決断した。そして、社員との
刷会社に絞り、ファンドリービジネス(受
い評価もカタチとなった。
関係づくりや、社員同士の関係づくりの
託製造専門事業)に特化した。これはと
さらに特筆すべきは、同社の社員研修
方法もまた、外資系企業での就労経験が
もすると下請けと理解されるが株式会社
である。
「リーダーシップミーティング」
大きく影響しているように思えてくる。
ウエマツの場合、それは全く違う。言う
と名付けられたこの研修の参加要件はた
しかし福田社長は、未だ充分ではない
なれば〝奥受け〟なのである。発注者で
だひとつ。
〝リーダシップを持っている
と考えている。一人ひとりにウエマツら
ある印刷会社でも届かない高いクオリ
者〟のみである。社歴、職域、肩書、年
しさが本当に浸透するには時間の経過も
ティの提供を、最新機器の積極導入で実
齢などは一切不問。それゆえ、役員から
必要なのだと。それを端的に言うなら『企
践している。
届くその招待状は、いまや社員にとって
業文化』ということになるだろう。製品
もうひとつは、『社員の意識改革』だ。
大きな誇りとなっている。
に現れている〝ウエマツだからできるこ
好ましくない習慣を改めた。工場だから
これら独自の発想の原点は、福田社長
と〟が、社員一人ひとりにも根付いたと
この程度でいい、という意識を捨てさせ
の経歴にあるだろう。前歴は、海外の半
き、株式会社ウエマツは盤石の時を迎え
た。異議には耳を傾け、自らその意図の
導体企業を担当する外資系証券マンだっ
る。そしておそらくそれは、遠い未来の
説明にまわった。やがて社員の意識は高
た。そこでファンドリービジネスについ
日の話ではない。
まり、製品クオリティの向上は言うに及
柱 や 壁 面 に 施 さ れ た「 防 響 設
備」
。大型印刷機が隣接設置され
ているが、大声を張り上げる必
要のないほど静音化されている。
印刷物は熟練の担当者が「目視
でチェック」
。戸田工場内の蛍
光灯は全て、色調が正しく見え
る調光用蛍光灯になっている。
燦然と輝く「Thanks Card」。
互いに感謝の思いを伝えあう。
社員同士の活気あるコミュニ
ケーションもウエマツの特長だ。
印刷物の「最終チェック」。一眼
レフカメラ 4台で同時撮影し解
析する。印刷データとの差分が
無いことを高い精度で確認。
※本誌『SL SCOPE Vol.7』は、株式会社ウエマツ様にて印刷いただきました。
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