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原発性肺クリプトコックス症の 2 症例の検討 画像所見の立場からの見解

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原発性肺クリプトコックス症の 2 症例の検討 画像所見の立場からの見解
真菌症フォーラム 第 8 回学術集会
P-10
クリプトコックス・トリコスポロン
原発性肺クリプトコックス症の 2 症例の検討 画像所見の立場からの見解
○成田裕介 1、檜田直也 2、猶木克彦 2、岡本浩明 2、国兼浩嗣 2、渡辺古志郎 2
(1JR 東京総合病院呼吸器科、2 横浜市立市民病院呼吸器科)
クリプトコックス症は、悪性腫瘍、AIDS、糖尿病などの日和見感染症の 1 つとして発症する続発性と、
基礎疾患の認められない健常人に発症する原発性とに分類される。Cryptococcus neoformans による感染
症は、通常の深在性真菌症とは異なり、必ずしも宿主の免疫不全を伴わない場合にも発症する特徴があ
る。菌体周囲に多糖からなる厚い莢膜が存在するため、経気道的に吸入され肺胞に到達した C. neoformans は、肺胞マクロファージによる貪食殺菌に抵抗しながら肺胞を充満するように増殖する。宿主の
細胞性免疫によってその増殖様式は異なると言われている。
肺クリプトコックス症の胸部 X 線写真所見として免疫能が保たれている時には単発ないし多発結節影が
多い。AIDS や血液悪性腫瘍患者、抗癌剤、免疫抑制剤やステロイド剤投与中の患者に起こる続発性の
場合には、T 細胞の減少や機能低下に伴い多彩な像を呈する症例が報告されている。Khoury らは免疫
不全の有無で画像所見を比較し、免疫不全のない群では限局性の結節影が多く、免疫不全の群ではむし
ろ結節影は少なく、空洞や浸潤影など多彩であったと報告している。また日高らは免疫不全患者での病
理所見と画像所見を検討しており、それによると結節影を呈した症例の病理所見は Granulomatous
pneumonia であり、浸潤影は Histiocystic pneumonia であり、間質性の陰影は Intercapillary cryptococci であり、肉芽腫が強いほど結節影を、弱いほど浸潤影を呈すると報告されている。原発性でも浸潤影
を示すのが 15-20 %と言われている。最近の仮説としては、原発性クリプトコックス症では Th1 サイト
カインや防御型ケモカインが産生され、リンパ球やマクロファージを中心とした防御型の組織反応が起
こるのに対し続発性クリプトコックス症では非 Th1 反応(Th2 優位)を示すと言われている。
C. neoformans の莢膜の厚さの異なる株で厚い強毒株では Th2 反応優位であり、薄い弱毒株では Th1 反
応優位を示すことが言われている。本症例では株による鑑別は行っていないが、IgE(RIST)高値で
RAST 陽性の症例では結節影より浸潤影主体の陰影を示し、IgE 正常例では結節影が見られたことから、
明らかな免疫機能低下を認めない場合でも気管支喘息を始めとする何らかのアレルギー素因があれば
IgE もしくは Th2 細胞によりサイトカインが産生され Th2 に関わる免疫機構がなんらか働くことが推測
される。
症例 1
症例: 36 歳男性、主訴は微熱、乾性咳嗽。
既往歴:特記事項なし。
現病歴:生来健康、H16 年 8 月下旬より微熱、乾性咳嗽出現。25 日近医受診し、胸部 X 写真にて左下肺
野に浸潤影を認め LVFX 処方される。2 週間内服するも改善せず、9 月 7 日当科紹介。
現症:左下肺野背側に coarse crackle 聴取。その他異常所見なし。
検査所見: WBC 8700 と軽度増加も認めるも炎症所見は陰性であった。
IgE 577IU/ml と高値(RAST :植物花粉・ダニ強陽性であった。
感染症は HIV も含めすべて陰性であった。
(その他検査所見参照)
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一般演題(ポスター発表)
画像所見:胸部 X 線写真:左下肺野に斑状の浸潤影と右下肺野に結節影あり。
胸部 CT :左 B8、9 に広がる air bronchogram を伴う辺縁不整の浸潤影と右下葉に多発結節影を認めた。
胸水や縦隔・肺門リンパ節腫大は認めなかった。
経過:画像的に肺癌による肺内転移も否定できず。気管支鏡施行し、経気管支肺生検にて多核を有する
ランゲルハンス型巨細胞を認め、巨細胞内には円形物質を認め、グロコット染色にて黒色円形のクリプ
トコックスを認めた。血中クリプトコックス抗原 512 倍と高値を示し、原発性肺クリプトコックス症と
確定診断した。FCLZ 200mg/日内服開始し、画像所見も改善した。血中クリプトコックス抗原も陰性化
し、6 ヶ月で投与終了とした。
症例 2
症例: 31 歳女性、主訴は咳嗽。
既往歴:特記事項なし。
現病歴:生来健康、H.17 年 12 月下旬より咳嗽出現。H.18 年 1 月になっても改善しないため 2 月 2 日前医
受診。胸部 X 線写真にて異常陰影を指摘され 2 月 8 日当科紹介となる。
現症:特記事項なし
検査所見: WBC 8970 と軽度増加も認めるも炎症所見は陰性であった。
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一
般
演
題
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ー
発
表
︶
真菌症フォーラム 第 8 回学術集会
IgE 53IU/ml と正常範囲であった。
感染症は HIV も含めすべて陰性であった。
(その他検査所見参照)
画像所見:胸部 X 線写真:右下肺野に腫瘤影あり。
胸部 CT :右 S10 に径 40mm 大の辺縁不整の腫瘤影を認めた。
経過:画像的に原発性肺癌の疑いあるため気管支鏡施行。しかし明らかな有意な所見は得られず。
VATS も考慮したが、血中クリプトコックス抗原 8 倍と陽性を認め、画像所見上も否定できないため臨
床診断にて原発性肺クリプトコックス症と診断した。
FCLZ 100mg/日開始した。画像所見も改善し、6 ヶ月で投与終了とした。
血中クリプトコックス抗原も陰性化した。
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