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ドーピング検査におけるGC/MSを用いた スクリーニング法

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ドーピング検査におけるGC/MSを用いた スクリーニング法
LAAN-A-MS026
SHIMADZU APPLICATION NEWS
島津アプリケーションニュース
●GC/MS
M243
No.
GASCHROMATOGRAPHY MASS SPECTROMETRY
ドーピング検査におけるGC/MSを用いた
スクリーニング法
Screening Technigues in Doping Analysis by GC/MS
スポーツドーピングはフェアプレーに反する行為であり,
しかも選手の健康や社会的にも悪影響を及ぼすことから,
β-遮断薬(スクリーニング番号7)の分析に利用されて
います。
WADA(World Anti-Doping Agency)の規定に基づいて
スポーツドーピング検査が行われています。
本アプリケーションニュースでは,WADAの公認検査
機関である株式会社三菱化学ビーシーエル様のご協力に
Table 1にスポーツドーピングのスクリーニング方法を
示します。四重極型のGC/MSは,難揮発性薬剤(スクリ
より得られました,難揮発性薬剤(スクリーニング番号2)
の分析例をご紹介します。
ーニング番号2)
,利尿剤(スクリーニング番号5)および
Y. Sakamoto
Table 1 スポーツドーピングのスクリーニング法分類
Classification of Screening Methods in Sport Doping Analysis
スクリーニング
番号
分析上の分類
薬剤の例
分析装置
1
揮発性薬剤
アンフェタミン
GC-NPD
2
難揮発性薬剤
コカイン代謝物
GC/MS (Scan)
3
熱分解物質
デキサメタゾン
Q-TOF LC/MS
蛋白同化ステロイド類
テストステロン
GC/MS (SIM)
低濃度蛋白同化剤
スタノゾロール
GC/HRMS (SIM)
5
利尿剤
フロセミド
GC/MS (SIM)
6
代謝性ステロイド製剤
アンドロステンジオン
GC/C/IRMS
7
β-遮断薬
メトプロロール
GC/MS (Scan)
8
ペプチドホルモン
EPO, hCG
EIA, イムノブロッティング
4
■分析方法
尿試料
Analytical Procedures
スクリーニング番号2の前処理フローをFig.1に,
GC/MSの分析条件をTable 2に示します。
前処理では,尿5 mLに6Mの塩酸を添加し,105 ℃で30
分加温することにより加水分解を行います。ジエチルエー
6M塩酸を添加し,加水分解
ジエチルエーテル洗浄
加水分解物(水相)
内部標準添加
pH調整(9.6±0.1)
無水硫酸ナトリウムで塩析
ジエチルエーテル抽出
窒素気流下で乾固
残 渣
テルで洗浄後,水相に2-メチル-2-プロパノールと内部標準
メチルオレンジ/アセトニトリル/TFA溶液添加
MSTFAを溶液の色が黄色になるまで添加し,
80 ℃で5分間加温
物質を添加し,pHを9.6±0.1に調整後,ジエチルエーテル
で抽出します。抽出液は純窒素ガスで乾固し,メチルオ
レンジ/アセトニトリル/TFA混合溶液を添加後,MSTFA
を溶液の色が黄色になるまで添加し,80 ℃で5分加温しま
す。そこにMBTFAを添加し,80 ℃で10分加温することに
よってN-TFA-O-TMS誘導体化を行います。
MBTFAを添加し,80 ℃で10分間加温
誘導体化試料
GC/MS分析(Scan)
Fig.1 スクリーニング2の前処理フロー
Pretreatment Flow for Screening Method No.2
Table 2 分析条件
Analytical Conditions
Model
Workstation
Column
-GCInj. Temp.
Column Temp.
Carrier Gas
Linear Velocity
Injection Method
Split Ratio
: GCMS-QP2010
: GCMSsolution Ver2.5
: DB-5 15 m × 0.25 mm I.D. df=0.25 µm
: 280 ˚C
: 100 ˚C (1 min)-16 ˚C/min-300 ˚C (2 min)
: He (Constant Linear Velocity Mode)
: 51.8 cm/sec
: Split
: 11:1
-MSInterface Temp.
Ion Source Temp.
Scan Range
Scan Interval
: 300 ˚C
: 200 ˚C
: m/z 50-550
: 0.5 sec
No.M243
■ドーピング検査のレポートフォーマット
Sports Doping Test Report Format
ドーピング検査をより正確にかつ迅速に行うために,
GCMSsolutionでは,レポート出力用のアイテムをキャ
成分毎の結果を見やすく配置したレポートが必要です。
ンバスに貼り付け,自由に編集することができます。し
例えば,薬物とその代謝物のクロマトグラムを並べて表
たがってドーピング検査で求められるレポートを容易に
示したり,全成分を少ない枚数のレポートにコンパクト
作成することができます。(Fig.2)
に収めるなどの工夫が必要です。
Amphetamineとp-OH-Amphetamine
およびMethamphetamineとp-OH-Methamphetamineは薬剤と
代謝物の関係であり、クロマトグラムを並べることにより簡単
に結果を確認することができます。
Fig.2 レポート画面
Report Creation Screen
WADAはデータの信頼性を確保するために様々な確認
めにControl,Drug Free UrineおよびBlank試料を分析す
試験を要求しています。GC/MSの感度確認として,
る必要があります。Fig.3にGCMSsolutionのレポート機能
MRPL(Minimum Required Performance Limit)が定めら
を用いて出力したこれらの試料の確認試験結果を示します。
れており,スクリーニング番号2では0.5μg/mL(ストリ
それぞれの成分のターゲットイオンと,識別用イオンの
キニーネのみ0.2μg/mL)と設定されています。*1 この
マスクロマトグラムを,上下に並べて表示することで,
他にも,前処理法や装置ブランクの信頼性を確保するた
成分の有り無しが一目で判断できます。
Direct Standard
MRPL
Control
Drug Free Urine
Water Blank
Pethidine
Pethidine
Pethidine
Pethidine
Pethidine
保持時間 : 6.736
保持時間 : 6.736
保持時間 : 0.000
保持時間 : 0.000
保持時間 : 0.000
m/z : 218.00 Area : 695183 m/z : 218.00 Area : 221332
m/z : 218.00 Area : 0
m/z : 218.00 Area : 0
m/z : 218.00 Area : 0
218 112,618
218 18,849
218 24,384
218 6,864
218
363,029
247 379,438
1,285,509
7.0
247 23,939
7.2
7.0
247 10,124
7.2
7.0
247 5,734
7.2
7.0
247
7.2
7.0
7.2
Codeine
Codeine
Codeine
Codeine
Codeine
保持時間 : 10.929
保持時間 : 10.930
保持時間 : 10.928
保持時間 : 0.000
保持時間 : 0.000
m/z : 313.00 Area : 221473 m/z : 313.00 Area : 110979 m/z : 313.00 Area : 260355
m/z : 313.00 Area : 0
m/z : 313.00 Area : 0
313 61,172
313 198,720
313 41,642
313 6,523
313
481,630
371 610,707
1,631,849
11.0
371 1,543,791
11.0
371 36,573
11.0
371 7,276
11.0
371
11.0
Fig.3 ドーピング検査での確認試験結果例
Example of Report Format for Sports Doping Test
引用文章
*1 : MINIMUM REQUIRED PERFORMANCE LIMITS FOR DETECTION OF PROHIBITED SUBSTANCES - WADA Technical Document TD2004MRPL
*掲載データは薬事承認された装置で採取したものではありません。
初 版 発 行:2007年3月
分析計測事業部
応用技術部
※本資料は発行時の情報に基づいて作成されており,
予告なく
改 訂 す ること が ありま す 。改 訂 版 は 下 記 の 会 員 制 W e b
Solutions Navigatorで閲覧できます。
https://solutions.shimadzu.co.jp/solnavi/solnavi.htm
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