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米国国防総省ナノテクノロジープログラム 2006 の概要 その1

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米国国防総省ナノテクノロジープログラム 2006 の概要 その1
NEDO海外レポート
NO.986,
2006.10.4
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海外レポート986号目次 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/986/
【ナノテクノロジー特集】
米国国防総省ナノテクノロジープログラム 2006 の概要
その1
米国国防総省(DoD)は、戦闘員および戦闘システムの能力の将来の向上を目指して、
革新的なナノテクノロジー研究取り組みを成功裡に支援する長い歴史を持っている。
国防総省高等研究計画局(DARPA)、海軍研究局(ONR)、陸軍研究局(ARO)そして空軍
科学研究局(AFOSR)などの DoD は、1980 年代以来、寸法が 1 ミクロン以下の科学技
術を進めることに注目した多数の研究計画を立ち上げてきている。
そして、過去数年の科学的なブレイクスルーおよび進歩は、ナノテクノロジーが、
化学生物戦争防御、戦闘機器重量の減量、プラットホームや兵器の高性能材料、高性
能情報技術、エネルギーおよびエネルギー材料そして無人機や小型衛星などの将来の
戦闘のための膨大な数の重要な面に影響する潜在性を実証している。
ここでは、米国国防総省ナノテクノロジープログラム 2006 年の報告書概要を、今回
はその1として第 1 章を紹介し、以降、その2として第 2、3 章、その 3 として第 4、
5 章を紹介していく予定である。
目
次
I. 米国国防総省ナノテクノロジープログラム概説
A. 長期的課題とプログラム目標
B. 課題と目標達成にあたっての進展
(II.) 資金提供レベルの現状と提案の評価
(III.) 米国国防総省内および国家ナノテクノロジーイニシアティブ機関との調整
(IV.) 有効な技術移転経路
(V.) プログラム活動への助言
(VI.) 参考文献
I. 米国国防総省ナノテクノロジープログラム概説
米国国防総省は、国家安全保障任務の必要性を満たすために、研究・開発活動を支
援する歴史を持っている。ナノサイエンスとナノテクノロジーにおける研究の支援が
この取り組みに含まれている。
米国国防総省は、1980 年代の初めに、1 ミクロンをはるかに下回る電子機器に取り
組む、超サブミクロン・エレクトロニクス研究(USER:Ultra Submicron Electronics
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Research)プログラムを立ち上げた。
国防総省国防高等研究事業局(DARPA)は、1990 年代の初めに、超高速で超高密度な
電子機器やチップならびに微小フォトニックデバイスに取り組む、超エレクトロニク
スと超フォトニクス(ULTRA:Ultra Electronics and Ultra Photonics)と呼ばれるプロ
グラムを立ち上げている。
同 時 に 、 海 軍 研 究 局 (ONR)は 、 界 面 の ナ ノ 構 造 に 関 す 研 究 加 速 イ ニ シ ア テ ィ ブ
(Accelerated Research Initiative)を立ち上げた。また、陸軍研究局(ARO)では、ナノ
サイエンス大学研究イニシアティブを立ち上げている。
1990 年代中頃に、ONR は、ナノ構造化コーティングプログラムを開始し、また、
DARPA は、重要なナノテクノロジー要素を持つバイオ−情報−マイクロ・コンピュー
ティングに注目したバイオシステム・シミュレーション(SIMBIOSYS:Simulation of
Bio Systems)プログラムを立ち上げた。
1990 年代中頃以来、米国国防総省は、長期的な基盤での基礎研究資金提供に関して、
ナノサイエンスを、6 つの戦略的研究領域(SRA:Strategic Research Areas)の 1 つで
あると確認している。
2003 年会計年度国防認可法(National Defense Authorization Act)の 246 条では、
2004 年、2005 年、2006 年および 2007 年会計年度の国防総省(DoD)内のナノテクノ
ロ ジ ー プ ロ グ ラ ム に 関 す る 年 次 報 告 書 を 国 防 研 究 技 術 局 長 (DDR&E: Director of
Defense Research and Engineering)に提出することを求めている。これらの報告書は
下記を含まなければならない:
(1) プログラムの長期的な課題および特定な技術的目標の概説、およびその課題を満た
すため目標の達成に向けてなされた進展、
(2) プログラム活動を支援する資金提供レベルの妥当性を含んで現状と提案された資
金提供レベルの評価、
(3) 国防総省内、他の省庁および国家ナノテクノロジー・イニシアティブとの活動の調
整の概説、
(4) プログラムの活動の結果として確立した効果的な技術移転経路範囲の評価、および、
(5) 出現する国家安全保障の要求を満たす追加プログラム活動の勧告。
21 世 紀 ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー 研 究 開 発 法 (一 般 法 108-153)は 、 全 米 科 学 技 術 協 議 会
(NSTC)が連邦政府ナノテクノロジー研究開発のための戦略計画を準備することを求
めている。この指示に応じて、NSTC のナノスケール科学・工学・技術(NSET)小委員
会は、米国国防総省の重要メンバーが参加して、2004 年 12 月に次の 5∼10 年間 NNI
の指標となると予測される、最新の国家ナノテクノロジー・イニシアティブ(NNI)戦略
計画を準備した。
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NNI 戦略計画に記述された投資戦略は、NNI の全体的な目標の遂行に重要な投資領
域へ関係する 7 つの主要課題の投資カテゴリー、すなわちプログラムコンポーネント
エリア(PCA)を識別し定義している。これらの 7 つのプログラムコンポーネント領域
は、また米国国防総省投資の包括的な分類を構成しているので、国防ナノテクノロジ
ー研究開発プログラムの 2006 年の概説はこれらの PCA によって体系化される:
PAC#1. 基本的ナノスケール現象とプロセス
PAC#2. ナノ材料
PAC#3. ナノスケールデバイスとシステム
PAC#4. ナノテクノロジーの計測研究、計測学および標準
PAC#5. ナノ製造
PAC#6. 重要研究施設と機器の取得
PAC#7. 社会的要因
A. 長期的課題とプログラム目標
米国国防総省は任務指向型の機関であるので、そのナノテクノロジープログラムは、
他の連邦機関と相違して、プログラム活動は科学的・技術的業績と米国国防総省への
潜在的な関連性に同時に取り組んでいる。
これらのプログラムの全体的な技術的目標は、およそ 1∼100 ナノメートルの寸法の
物質についての理解および制御性を開発することである。そこでは、物理的、化学的
および生物学的な特性は、個々の原子、分子あるいはバルク材料と、基本的な面や価
値の面において異なるであろう。米国国防総省関連の全体的な目標は、戦闘員や戦闘
システムの能力を向上させる斬新な応用を可能にするために、ナノメートルの寸法で
のユニークな現象を発見し開発することである。
7 つのナノテクノロジープログラムコンポーネント領域の各々の特定長期的課題お
よびプログラム目標を以下に記述する。
PCA#1 基本的ナノスケール現象とプロセス
NNI の長期的課題:
ナノスケールで生じる物理的、生物学的および科学工学の新しい現象に関連する基
礎的知識の発見と開発。ナノスケール構造、プロセスおよび機構に関連する科学的工
学的原理の解明。
DoD のプログラム目標:
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・戦闘員や戦闘システム能力の突破口となる利点を可能にするための新しい現象およ
びプロセスを発見すること。
・特有なナノ構造の合成、特性評価および組み立てのための強健な戦略の開発。
・革命的な触媒、捕集剤、添加剤およびセンサーへのナノ構造の応用を探求する。
・先端的固体発電、冷却および熱管理のための、高性能の熱電気装置、熱電子装置お
よび光起電力装置の開発に関連づける時に、個々のナノワイヤーおよび 2 次元およ
び 3 次元ナノ構造のフォノンおよび電子輸送の基本的様相を解明する。
PCA#2 ナノ材料
NNI の長期的課題:
斬新なナノスケール・ナノ構造化材料の発見、長さ寸法の分類及び界面相互作用を
含んだナノ材料特性の包括的な理解の開発、目標特性を持ったナノ構造化材料の制御
したやり方での設計や合成を可能にする。
DoD のプログラム目標:
・ナノ構造化材料を利用する素子の量子輸送特性に関するプロセス制御の提供に必要
な高精度ナノ構造合成技術の開発。
・設計ナノ構造の廉価な合成や鋳型のために、生物学的なまた生物学的に着想された
プロセスの利用。
・合成材料や生物学的自然発生材料との間の相互作用を制御し利用すること。
・局所拡散反応、反応速度、光学的特性および電気的特性を向上させるナノスケール
アーキテクチャの開発。
PCA#3 ナノスケールデバイスとシステム
NNI の長期的課題:
革新の創成あるいは既存のデバイスやシステムを改善するために、ナノスケール科
学技術の原理の応用、向上した性能や新しい機能性を達成するためにナノスケール材
料やナノ構造化材料の取り込み(システムやデバイスはそれ自体この寸法に制限され
ないことに注意)。
DoD のプログラム目標:
・戦闘員や戦闘システムの能力を進めるため、革命的な装置やシステムを提供するた
めにナノテクノロジーのブレイクスルーを利用。
・向上した放電率やエネルギー密度の電池、 高エネルギー密度コンデンサー、 熱電
エネルギー直接変換などの電気化学電源応用、燃料電池触媒および電極構造に関係
するナノスケール動作についての詳細な理解の確立。
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・米国国防総省関連技術へ科学的発見の移行を加速するために、国防総省応用研究開
発コミュニティに関与すること。
・国防研究技術局々長(DDR&E)電子装置諮問グループ(AGED:Advisory Group on
Electron Devices)と 連携 するた めに 、米海 軍は 、空母 技術 (CARTECH: Carrier
Technology )、潜水艦技術(SUBTECH:Submarine Technology)および水上艦技術
(SURFTECH:Surface Ship Technology)プログラム、米国陸軍の研究開発技術コマ
ンド(RDECOM:Research, Development and Engineering Command)ナノテクノ
ロジー統合生産チーム、そして、空軍研究所ナノ科学技術戦略技術チームの技術開
発計画を取り纏め、未来のプラットホームの可能性と必要性を調査する。
PCA#4 ナノテクノロジーの計測研究、計測学および標準
NNI の長期的課題:
特性評価、測定、合成および材料、構造、装置およびシステムの設計のための次世
代計測を含むナノテクノロジー研究および商業化を進めるために必要とされるツール
の開発、用語、材料、特性評価と試験および製造の標準を含む標準の開発。
DoD のプログラム目標:
・先進ナノテクノロジー基盤材料およびデバイス開発のためのブレイクスルー次世代
計測の開発。
・磁力顕微鏡を拡張し、強健な単一スピン測定デバイスを可能にすること。
・国防ミッションで使用される革新的なセンサーへ新しい計測能力を提供すること。
PCA#5 ナノ製造
NNI の長期的課題:
ナノスケール材料、構造、デバイスおよびシステムのスケールアップした、信頼性
ある、コスト効率の高い製造を可能とする、超小型化したトップダウンプロセスおよ
び非常に複雑化するボトムアップあるいは自己組み立てプロセスの開発と統合化。
DoD のプログラム目標:
・軍用品へのナノテクノロジーの導入を導き監視すること。
・米国国防総省の小企業革新研究(SBIR:Small Business Innovative Research)/小企
業 技 術 移 転 (STTR : Small Business Technology Transfer) お よ び 製 造 技 術 部 会
(MANTECH:Manufacturing Technology)プログラムへナノ製造を導入する適切な
機会の識別。
・ナノワイヤーや特別に興味ある無機材料アレイの鋳型として、ウイルスや関連する
構造の使用を含み、生物学から引き出された教訓を利用して、個々のナノ構造の合
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成、生成および組み立てを可能にすること。
・ナノ構造化バルク材料への手頃な製造方法の開発。
PCA#6 重要研究施設と機器の取得
NNI の長期的課題:
研究施設の設立、重要な機器の取得およびナノスケール科学、工学および技術、研
究開発を実施するための米国の科学インフラストラクチュアの開発、支援ならびに増
強活動、進行中の重要な施設およびネットワークの運用。
DoD のプログラム目標:
・ 国 防 大 学 研 究 計 測 プ ロ グ ラ ム (DURIP : Defense University Research
Instrumentation Program)による先進ナノサイエンス計測を提供すること。
・ナノサイエンス研究に貢献できる米国国防総省の施設や計測器の提供。
PCA#7 社会的要因
NNI の長期的課題:
ナノテクノロジーによってもたらされた健康および環境への潜在的リスクの同定お
よび軽減。設計ナノスケール材料、ナノ構造化材料あるいはナノテクノロジー基盤デ
バイスおよびそれらの副産物に対する人間、動物あるいは環境への暴露からの結果を
含む。 学校、学部課程プログラム、技術訓練および社会の広がりへ、関連するナノテ
クノロジー記事の展開。
DoD のプログラム目標:
・未来のナノテクノロジー基盤応用を利用する戦闘員の健康および安全性を保証する
こと。
・水、空気および宇宙環境に対する物理化学的な特性評価および毒物学を可能にする
こと。
・未来の国防の必要性を満たすために必要とされる熟練した労働力を保持できる学際
的な教育組織を可能にする投資戦略の保持。
・ナノテクノロジーの国防利用からの環境や健康へのあらゆる反する影響を評価し回
避し緩和すること。
B. 課題と目標達成にあたっての進展
7 つのナノテクノロジープログラムコンポーネント領域の各々で説明された、長期
的課題および目標を達成する際の重要な進展がなされている。米国国防総省ナノテク
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ノロジープログラムの各々の領域における具体的な成果を以下にリストアップする。
PCA#1 基本的ナノスケール現象とプロセス
このプログラムコンポーネントエリア(PCA)における米国国防総省研究は、特に、
個々のナノ構造の合成、特性評価、特性あるいは組み立てに取り組む、国防総省投資
カテゴリー6.1 基礎研究の研究計画だけを含んでいる。
プログラムの成果:
・電子スピンと電子運動の間の相対論的カップリング(スピン軌道結合)が、非磁性半導
体薄膜中の上向き電子スピンと下向き電子スピンの分離をもたらすことができると
いう、初めての直接証拠を確立した。この結果は、未来の電子スピンに基いた装置
を劇的に単純化することができる。
・ナノ結晶のドーピングメカニズムについて説明する初めての理論を開発し、ナノ結
晶ドーピングを可能にする方法を提案。
・カーボンナノチューブ表面の分子吸着相の電場分極による斬新な化学物質検出およ
び分子吸着について説明する新しい物理理論を発見。
・光収穫素子への潜在的な応用のためにヘリカルアミラーゼと結合した斬新な光−電
気活性ドナー−受容体の連鎖発色団の合成。
・オリゴヌクレオチド成分から 3 分鎖 DNA 分子が設計され組立てられた、個々のナ
ノ構造の指図された配置を可能にするためのモデルシステムを構成できる。
PCA#2 ナノ材料
このプログラムコンポーネントエリア(PCA)における米国国防総省研究は、国防総
省投資カテゴリー6.1 基礎研究および 6.2 応用研究のナノテクノロジー研究計画を含ん
でいる。
プログラムの成果:
・バルクおよび薄膜ブロック共重合体鋳型の機能性ナノ粒子の指示組み立てを実証。
・選択的浸透性材料システムの生産のためにナノ構造化ブロック共重合体が、微細孔
ファイバーの直立する膜に統合された。
・反バクテリアで反菌の表面を作るためにポリウレタン被膜のナノ設計添加剤の自己
集合を開発し実証した。
・向上したエネルギー吸収特性を持つナノ加工繊維材料を作るために有機繊維のプラ
ズマ改良が考案され実証された。
・300pm/V を越える非線形係数を持った初めての非線形光学有機ポリマー材料を開発。
コンパクトで高速なフェーズアレイレーダーおよび光ジャイロスコープへの莫大な
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潜在性を提供する。
・半導体媒質中の光減速によって全光学バッファーを実証した。全光スイッチングシ
ステムの非常に有効な技術を構成する。
・従来のエネルギー設計より何桁も反応的な Al/KMnO4 の新しいナノエネルギー基盤
設計を開発した。
・可視光線を捕える整列した多層カーボンナノチューブのアレイから反射強度ローブ
パターンを実証した。太陽エネルギー変換および光通信での新しい概念の基礎を提
供する。
PCA#3 ナノスケールデバイスとシステム
このプログラムコンポーネントエリア(PCA)における米国国防総省研究は、特別な
デバイスに密接に結びついた国防総省投資カテゴリー6.1 基礎研究および 6.2 応用研究
と 6.3 先端技術開発のナノテクノロジー研究計画を含んでいる。
プログラムの成果:
・原型 TNT センサーの感度向上のために、ナノ構造化ポリマーが作られ、光子バンド
ギャップ・ファイバーオプティクスに統合された。
・マイクロ機械チャネル中の種々の流体の層流を使用して、光を導きスイッチングす
るための斬新な機構を開発した。これらの流体光回路の構造および機能が、流体タ
イプや流量の変化により容易に変更できることを可能にする。
・末梢神経サイトへ移植することができ、中央神経系あるいは末梢神経系から人工器
官へコマンドを読み送信するために、スパイク検出アルゴリズムを可能とする、斬
新な神経トランスポンダーを開発した。
・化学物質の勾配に対して反応を特定し容易に視覚化することにより、微生物相互の
また細胞間内部での通信を制御する設計生物学調整回路を実証した。遺伝要素が設
計することができ、細胞間の信号経路を調整するための生物学回路を構成するため
に使用することができることを実証する。
・カーボンナノチューブ・スピニング技術を使用して作られた機械的に強健で、非常
に電導性があり、非常に大きな表面積の電極に基いて機械的仕事に直接炭化水素燃
料を変換する油圧アクチュエータ・システムを実証した。
・向上した強健性および耐用年数を持った拡張可能なデバイスアーキテクチャの確率
論的検出信号の読取りを可能にするために、シリコンのマイクロ組み立て構造中の
タンパク質イオンチャネルを統合する実現可能性を実証した。
・バイオ機能性磁気ナノロッドとマイクロホールセンサを使用して、単一あるいは数
分子程度の受容体リガンド結合の力学を調べるために配列基盤プラットホームを開
発した。
・初めての内蔵型の完全機能性光起電力ファイバーが、ナノ複合材料光起電力技術に
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基き作られた、ユニークな光起電力織物を可能にする。
・斬新な小型のホールセンサが、バイオ機能を持った磁気ナノロッドを捕えて動かす
ために組み立てられた。
PCA#4 ナノテクノロジーの計測研究、計測学および標準
このプログラムコンポーネントエリア(PCA)における米国国防総省研究は、大学研
究イニシアチブ学際的研究プログラム(MURI:Multidisciplinary Research Program
of the University Research Initiative)の研究計画(6.1 基礎研究)およびこれらの特定
のトピックに関する他の重要な研究を含んでいる。
プログラムの成果:
・米国国防総省は、単一電子の検出が可能な、これまでで初めての磁気共鳴力顕微鏡
(KRFM)の開発を支援し、劇的に未来のセンサー開発に影響を与える単一核スピン検
出を目標とする新しい大学研究イニシアティブ学際的研究プログラムを立ち上げる
基盤を形成した。
・凝縮体からの少数原子の誘導光子散乱によって各凝縮体の位相を調べる新しい技術
を持った 2 つのボーズ=アインシュタイン凝縮体の相対的位相の連続サンプリング
を実証した。この結果は、慣性航法装置で加速度および回転を検知する原子干渉法
技術の使用に大きな可能性を提供する。
・高度発光素子のための量子ドットの光放出とダイナミクスを測定するために、新し
い光学走査トンネル顕微鏡および光学的ナノプローブ計測器を開発した。
・熱的 DPN(tDPN)法の発明。これにより素子片を加熱することにより基質上にナノ
構造を直接蒸着するか描くことが可能。
PCA#5 ナノ製造
このプログラムコンポーネントエリア(PCA)における米国国防総省研究は、ナノ製
造に注目した MURI 研究計画(6.1 基礎研究)およびこの特定のトピックの他の重要な
研究を含んでいる。ナノ製造に取り組む個々の研究努力は、主として、他の PCA(つま
りナノ材料およびナノスケールデバイスとシステム)に集中している。
プログラムの成果:
・成長速度およびナノチューブ密度を向上させるために、特定のキャリヤガスの追加
により、多重層カーボンナノチューブ(MWNTs)の成長条件を最適化した。
・6nm ハーフピッチ・レジストラインおよび 0.04μm2 SRAM セル金属層への拡張ナ
ノインプリントリソグラフ法は、現在の光学的パターン製造能力を劇的に越える。
・分離された半導体間の光干渉性結合への新しいアプローチを可能とする、光-熱-屈折
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(PTR)ガラスでの厚いブラッググレーティングを実証。
・高度位置決め精度および低欠陥率の 30 ナノメートル未満の分子エレクトロニクスク
ロスバーアーキテクチャを可能とする、ナノインプリントリソグラフィーに基いた
製造アプローチを開発、記憶素子と論理素子の高密度でコスト効率の高い製造を可
能にする。
・始動時のシード密度として、正確に同じ電気的・熱的特性を持った SWNT の大きな
プールへ、始動時の単層カーボンナノチューブ(SWNT)シード密度の拡大を実証し、
様々な電子機器の SWNT の可能性を大幅に増加させた。
・ナノエレクトロニクス回路のナノチューブナノワイヤー製造への優れた応用を持っ
た位置決め鋳型として、整列した表面 DNA を使用することにより、SWNT 組み立
ての単純なアプローチを実証。
・インスタント食品用のナノ複合材料食品バッグが、低密度ポリエチレン/モンモリロ
ナイト被膜ケイ酸塩を使用して開発された。また、複合化とフィルム押出し試験は
パイロット規模に移行した。
PCA#6 重要研究施設と機器の取得
このプログラムコンポーネントエリア(PCA)における米国国防総省研究は、大学で
の ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー 機 器 の た め の 国 防 大 学 研 究 計 測 プ ロ グ ラ ム (DURIP: Defense
University Research Instrumentation Program)グラント(6.1 基礎研究)、ナノテクノ
ロジー研究専用棟のための軍用建設(MILCON:Military Construction)、およびこれ
らの特定のトピックに取り組む他の重要な努力を含んでいる。
プログラムの成果:
・世界に比類ない海軍研究所のナノ操作・特性評価施設の開発と設置を完了した。
PCA#7 社会的要因
このプログラムコンポーネントエリア(PCA)における米国国防総省研究は、ナノテ
クノロジーに基づいた応用および製造の健康および安全性に焦点を置いた MURI 研究
計画(6.1 基礎研究)を含んでいる。
プログラムの成果:
・生活環境でのヒトの健康へのナノ材料/ナノテクノロジーの潜在的な影響に取り組み、
かつこの分野の他機関との協力に触媒作用を及ぼすために、ナノテクノロジーとそ
の環境影響に関する特別な会議が、戦略的環境研究開発計プログラム(SERDP:
Strategic Environmental Research and Development Program)の年会で開催され
た。
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以下、次号に続く
参考資料:
1. Basic Research Plan, Director of Defense Research and Engineering, February
2003.
2. Joint Warfighting Science and Technology Plan, Office of the Deputy Under
Secretary of Defense (Science and Technology), February 2003.
3. Defense Technology Area Plan, Office of the Deputy Under Secretary of Defense
(Science and Technology), February 2003.
4. National Nanotechnology Initiative, Research and Development Supporting the
Next Industrial Revolution, 2004.
5. The National Nanotechnology Initiative Strategic Plan, December 2004.
(出典:http://www.nano.gov/html/res/DefenseNano2006.pdf)
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