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憧れのブエノスアイレス 中村伊知哉@LANTIC【第26回】 1/3 ページ 中村

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憧れのブエノスアイレス 中村伊知哉@LANTIC【第26回】 1/3 ページ 中村
中村伊知哉@LANTIC【第26回】
1/3 ページ
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ケット
憧れのブエノスアイレス
中村伊知哉@LANTIC【第26回】
2001年1月29日
ニューヨークからパリ、ブエノスアイレスまで、最近の日記をコラージュする。
ニューヨークにて:IT下落で得した連中は
2000年、Nasdaqは半値に、ネット系130社が倒産、うち75%がB2C、その多くがプロモーション
頼りの商売、これに対し老舗の小売りがeビジネス化を完成。まさに1年前の予測どおりじゃ
ないか。
でもたくさんの人が損したらしい。もうけたのは金融と弁護士だけだという話だ。そうだ、彼ら
には見えていたのだ。
京都にて:Campにヨーヨー・マが来る!
ヨーヨー・マさんが関西のCampに来て、子供のワークショップをしてくれそうだという情報。誠
意と熱意を示せばやってくれるもんだ、というか、こちとらカネがないから怖いもんナシでぶつ
かれる強みあり。
デジタル用語辞典:
検索
かつてヨーヨー・マさんは、私と同様メディアラボの客員としてハイパーチェロの開発に携わっ
ていたが、試作品をラボで披露していたところ、日本から来た客が「あんたチェロうまいやん
か」と肩たたいて、同席していた皆の度肝を抜いたという。
周囲があわてて、この方をどなたと心得る、ヨーヨー・マさんなるぞと注意したところ、その客、
玩具業界の人なのだが、当時ヨーヨーがはやっていて、「ヨーヨーマンいうんか。多芸なやっ
ちゃ。おもろい。こんど日本きたら連絡くれや」と、肩ぱんぱん叩いたという。
※ ヨーヨー・マ(友友馬):世界的な評価を受けるチェリスト。パリ生まれの台湾系中国人で、7歳のとき一
家とともに米ニューヨークに移住。現在は米国国籍を持つ。昨年、時価10万ドル以上のチェロをタクシー
に置き忘れたが、レシートを持っていたおかげでタクシーが特定でき、手元に戻ってきたというニュース
が報じられる。その際、「Take your receipt!」(レシートを忘れずに!)という名言を残した。
※ Camp:関西文化学研都市「けいはんな」内に今春のオープンを予定する、全く新しいスタイルのこども
ミュージアム。MITメディアラボや世界各地のチルドレンミュージアムと協力し、子供向けのワークショップ
やインターネットミュージアムを運営していく予定。公式サイトはhttp://www.camp-k.com/ 。
パリにて:フランス文化の奥底を知る
国際通信経済研究所のアルタンス女史と科学産業都市「ラ・ビレット」を訪問。科学と戯れる
巨大サイト。関西に作るCampと共同ワークショップできないか交渉。そして現代美術の拠点
「ポンピドーセンター」を訪問。いつも過激な先端サイト。
パリに来るたびこの二ヵ所を訪れる。日本にも欲しいなあと思う二ヵ所。いずれも国の事業
だ。国家が文化の先端を引っ張っているところがフランスである。
※ ラ・ビレット:パリ19区のラ・ビレット公園(PARC de la Villette)内に位置する、世界最大級の科学施設。
50ヘクタールの敷地に展示施設、国際会議場、図書館、プラネタリウムなどを備えている。“ジェオード”
という巨大な水晶玉のような建物が有名で、ルーブル美術館のピラミッドよりもカッコイイ。1000円程度の
入場料で一日中遊べるのでオトク感も高い。公式サイトはhttp://www.la-villette.com/ 。
ボストンにて:世界と接続されたオヤジ
http://www.upsidejapan.com/upside/column/article/2001/01/29/622257-000.html
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ラボの玄関先の芝生でウェアラブル研究チームのおじさんに会う。
「肩についてるチップを触ってくれ、オレのこの熱いチップを触ってくれ」。うん熱い。「いまここ
に、このチップに、オレの肩に、誰かがいるんだ」。無線でつながってるの? 「オレ全体がイン
ターネットに接続されてるんだ。常時接続だ」
そのチップにメールが届くの? 「このチップはオレのサーバだ。オレの全てがここにある」。じ
ゃボクがおじさんのホームページ見てる時って、その肩にアクセスしてるってこと 「そのとお
りだ。バーチャルと身体とが結合しているんだ」。熱いね。クールだね。
「そうしてオレは今からリアルな本屋に行くのであった」。と言い残しておじさんはスキップしな
がら本屋に向かったのであった。
ブエノスアイレスにて:総てを受け入れる街
憧れのブエノスアイレス。放浪のさいはてにたどりつく町。20年前、ボ・ガンボスを結成するま
え、Kyonに藤沢嵐子のLPを聴かされて以来、本場でバンドネオンを聴きたいと願っていた、
その夢。かつて欧州大陸の人々が、異界に故郷を建設しようとした、その夢。
路地裏の古アパートにかかる洗濯物、プロパンガスを運ぶクルマのフォルム、前歯の欠けた
男のしわ。闇。街灯。この街、予想どおり、どこもかしこも場末だ。リスボン、マドリード、ニー
ス、ローマ、アテネ、天王寺をモザイクにした裏町。
大成功して、もうどうでもよくなったら、ここに来ればいい。大失敗して、もうどうでもよくなった
ら、ここに来ればいい。そういうスポットが世界のどこかにあると思えれば、無敵だ。ネットの
空間もそうありたい。
※ ボ・ガンボス:'88年に久富隆司(どんと)、永井利充、岡地曙裕、Kyonの4人で結成。米南部のブルース
をベースに様々な音楽ジャンルをミックスしたスタイルが特徴で、ライブを中心に一部で熱狂的な人気を
誇る。'95年に解散。中心的存在だったどんとは、2000年1月にハワイにて急逝。そのどんとは京都大学
で中村伊知哉氏の2年後輩、Kyonは2年先輩にあたる。
東京にて:エセIT人の見分け方
早稲田にて特別講義。IT系の文化人や学者のニセモノの見分け方について。IT革命って言
葉つかう人ってだいたいニセモノなんだよね他。
中国からの留学生が質問。中国がデジタル大国化するなか、アメリカとのはざまで日本はど
うするのか。そのとおりだ。それが問題だ。質問はそうでなければいけない。すまん。答えは
持ち合わせていない。
ちかごろ質問といえば、B2Cで成功するにはとか、通信キャリアの国際戦略はとか、そんなハ
ウツーものみたいなどうでもいいことが多かったので、スカッとした。
ラスベガスにて:21世紀アメリカは負ける!?
勝ち体験ほど怖いものはない。日本は80年代の勝ち体験のせいでアメリカのデジタルに惨
敗した。同じことが90年代に勝ち体験を積んだアメリカにも起こる。既に危機は露呈してい
る。危機をどう乗り切るかが今アメリカに問われている。それを体感しないのが勝ち体験の怖
さなのだ。
アメリカは、固定系PCインターネットで勝った。だが、移動体やテレビやロボットや家電のユビ
キタスで勝つ見込みはない。アメリカは銅線インフラで勝った。だが、無線や光で勝つ見込み
はない。アメリカはハリウッドやウェブコンテンツで勝った。だが、P2Pを生む大衆の創造力で
勝つ見込みはない。どうするアメリカ。がんばれアメリカ。これが今の課題だ。
※ P2P:プレイステーション2 パワード。なんてモノはソニーは作ってなくて、“ピア・ツー・ピア”の略。個人
のパソコン同士をネットで結ぶことで、中央集権的なサーバーを必要としない巨大な分散システムを構築
できる。
マイアミにて:日本のテレビはアメリカじゃ見られない
21世紀の元旦だというのに、マイアミの空港で悶々としておる。数え直しはもうとっくに済んだ
し、明日から仕事だし、オレンジボウルにもヘンテコなアールデコ建築にも興味はないし、シ
リコンバレーで成功したビリオネアーが構える別荘なんてのにはもっと興味ないし、だからこ
http://www.upsidejapan.com/upside/column/article/2001/01/29/622257-000.html
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んな場所に用はないのだが、ニューヨーク方面が天候不順につき足止め。
復旧までに72時間を要するとのこと。キャンセル待ちで殺気だつ乗客たちと、カウンターでむ
やみに偉そうにしている航空会社のバカモノどもとが罵りあうなかで、紅白もなくお雑煮もな
く、情緒あふれる謹賀新年、染之助染太郎にオメデトウゴザイマスウと言ってもらいたい。
覚悟を決めて、電源と電話ソケットを探し、しばしオンラインに逃避する。年賀メールが届いて
いる。坂本龍一さんから、テレビ見たよ出てただろって。フジテレビが年末にメディアラボの紹
介するって言ってたやつだと思うんだが、ボク見てません。
中村伊知哉
プロフィール
マサチューセッツ工科大学 客員教授
'61年生、京都市出身。京都大学経済学部卒。
在学中はロックバンド“少年ナイフ”のディレクターで活躍。
'84年、郵政省入省。'93年からパリに駐在し、'95年に帰国後は郵政大臣官房総務課課長補
佐を務める。'98年、郵政省を退官し、(株)CSK特別顧問に就任。同年、マサチューセッツ工
科大学 客員教授に就任。
著書に『インターネット,自由を我等に』(アスキー出版局)などがある。趣味は、ずばり“メデ
ィア”。
ホームページ:http://www.media.mit.edu/~ichiya/jpn.htm
(C)Hajime Anzai
ある一ヵ月間のドタバタ日記(12月28日) (http://www.upsidejapan.com/upside/column...)
かぞえ直しが続くあいだに(11月28日) (http://www.upsidejapan.com/upside/column...)
オレの声が聞こえたか高橋(10月25日) (http://www.upsidejapan.com/upside/column...)
カッコワリーってモンダガ(10月4日) (http://www.upsidejapan.com/upside/column...)
Re率となんじゃこりゃ度(9月25日) (http://www.upsidejapan.com/upside/column...)
中村伊知哉@LANTIC【連載リスト】 (http://www.upsidejapan.com/upside/column...)
(中村伊知哉)
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