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文学・芸術1月度報告

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文学・芸術1月度報告
 けやき倶楽部 グループ学習活動記録 (216回) 文 学 ・芸 術グループ
世話人:山田 恂 記録:山田 恂
日 時
参加者氏名
(以下敬称略)
平成27年(2015)1月31日(土) 午後1時30分∼4時30分
場 所 千葉大薬学部百周年記念館
以上 6名
活動内容
・ 芸能鑑賞会 落語 桂枝雀『つる』・『貧乏神』NHK録画、解説『落語について』
概 要
・ 落語鑑賞は、これまでの美術・音楽・映画といった芸術の範囲を拡大して芸能までひろげた企画の、初めて
の試みである。
・ 鑑賞したヴィデオは、NHK「夢のような、夢のような」の録画で、亡くなった桂枝雀の7回忌にあわせて作られ
たものである。弟子たちの思い出話に加え、生前の公演『つる』と『貧乏神』が収録されている。
・ 上映に先立ち、会員のなかでも取り分け落語に造詣の深いYs氏に「落語について」の題目で話をお願いし
た。用意された資料は表もふくめ15ページにわたる大部なもので、落語に関する基礎的な事項が盛り込ま、
たいへん有意義であった。
内容は落語の名称に関することにはじまり、落語の歴史、江戸と上方の相違、各種流派のこと、そして現代に
おける落語界の状況、さらにネタの難易度から、落語の構成(マクラ・本題・落ち)や小道具・仕草にいたるま
で細かく説明があり、最後に落ちの分類まである。
・ 桂枝雀は大学を1年で退学し、端正で古典的な語り口の米朝の最初の内弟子となる。当初の地味でおとなし
い落語から一転、闊達な語りと大仰な仕草をともなう独自の落語で人気を得、爆笑王の異名をとる。その一
方、師匠譲りの学究的な面もあり研究も熱心で、従来行われていた落語の分類では視点が必ずしも統一され
ていないとし、笑いがどこで起きるかという点に着目し、独自に「ドンデン」「謎解き」「へん」「合わせ」の4つの
型に分類した。 しかし
宿痾ともいえる鬱病から逃れることができず、59歳で他界する。これからどのように展開していくか、期待され
ていただけに、まことに惜しい人を亡くしたものである。
・ 今後も年に一度くらいは落語など、芸能も例会の鑑賞に加えたいと思う。
合 評
・ (A)枝雀の落語は面白くて大笑いしました。
常に体のどこかが動いているような身振り手振り、回りすぎる滑舌の賑やかな喋り方はいかにも関西風な味わ
いですが、サービス満点といった喋りの後ろにすごく真面目な人柄が透けて見えました。そこが枝雀の魅力、
一端を覗えたように思います。
寄席でライブの落語を聞きたくなりました。
・ (B)落語は好きで前は寄席に聞きに行きました。最近は志の輔だけ、寄席というよりも劇場で聞いています。
桂枝雀は一度生で聞いたと記憶していますが、リズム感というか、テンポが速い、体、特に手の使い方が絶妙
です。今回ビデオを見ても芸に確かなものが掴めているように思えますが、当の本人は何か不満や不安を感
じていたのでしょうか。早く亡くなり惜しですね。
落語の鑑賞も楽しめる企画だと思いました。又いつか他の名人芸も聞いてみたいです。
・ (C)桂枝雀の落語をじっくり聞いたのは、今回が初めてでした。だからこの落語家のどこが素晴らしいのか、
どこが天才的なのかよくわからない。
観客の様子を見ていると噺家の一挙一動に湧いていたが、これらはこの噺家に慣れ親しんでいることからくる
反応であるなあとうらやましく思いました。
私自身からいうと可笑しいところもありましたが、関西弁に抵抗もあったせいか、特に面白かったという感激は
ありませんでした。
・ (D)悲劇 喜劇 ファルス 落語は喜劇である。ファルスとまじりあうところもあるが。落語はカンディンスキーの様な抽象
ではない、ルネマグリットの超具象・スーパーリアリズムである。『頭山』、『死神』その他、しかりである。落とし噺である
以上当然《落ち》がある。枝雀の4分類は、言えば緊張と緩和、ここにはファルスがある。
天才談志(という人が多い)は、落語そのものに対して「落語とは、人間の業の肯定である」との見解を常々表
明していたが、晩年は「イリュージョン」という独自の域に達したと自認していた。「イリュージョン」とは、業の域をさら
に高め、新しいおもしろさを見いだそうというものである。人間の業の肯定はファルスと重なる。
安吾は述べている、「私は時々落語をきいて感ずるのであるが、恐らく文学として読むに堪えないであろう愚
劣なものが、立派な落語家によって高座で表現されると、勝れた芸術として感銘させられる場合がある。(中
略)ファルスとは、人間のすべてを、全的に、一つ残さず肯定しようとするものである(FARCEに就いて)」
最後に、チェホフも、妻とのやり取りでファルスに言及している。
・ (E)桂枝雀の落語は過剰なほどの語りと仕草の危ういバランスの上に成り立っているといってよい。それは壊れ
る寸前でかろうじてとどまっていて、余人の及ぶところではない。
子供のころの楽しみの一つがラジオを聴くことだった。自分専用のラジオを手に入れてからはなおさらで、布団
の中に持ち込んでは耳をすり寄せ、ひとり密かな悦楽に耽ったものだ。子供向けの連続ドラマ「鐘の鳴る丘」や
「笛吹童子」「紅孔雀」、やがてそれに浪曲や歌謡曲、そして落語が加わる。
そんななか落語を聴いていて不思議に思ったことがある。演者の声がラジオから聴こえてこないのに客がクスク
ス、ゲラゲラ、笑い声だけが聴こえてくるのだ。どうやら客は演者の仕草を笑っているらしいことが分かり、落語は
聴くだけではなく観るものでもあったのだ。その後、テレビが登場してそれは叶えられ、実演を観るのはさらに
後、上京して寄席を知ってからであった。落語が語りと仕草の絶妙の芸であることを実感する。
次回例会
・ 日 時:平成27年2月28日(土) 午後1時30分より4時30分まで
内 容:読書会 チェーホフ作 『櫻の園』 新潮文庫
・場 所: 千葉大薬学部百周年記念館
・担 当: Y
次々回例会 ・ 日 時:平成27年3月28日(土) 午後1時30分より4時30分まで
内 容:読書会 宮城谷昌光作 『花の歳月』 講談社文庫
・場 所: 千葉大薬学部百周年記念館
・担 当: Tk
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