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6月度報告へ - けやき倶楽部
けやき倶楽部 グループ学習活動記録 (221回) 文 学 ・芸 術グループ 世話人:山田 恂 記録:山田 恂 日 時 参加者氏名 (以下敬称略) 活動内容 平成27年(2015)6月27日(土) 午後1時30分∼4時30分 場 所 千葉大薬学部百周年記念館 (以上9名) ・ ビデオ鑑賞会 『エリック・サティを聴く』 NHK制作「サティのうた」、その他、音楽CDを使って ・ いちど聴くとなぜか耳にまとわりついて離れない不思議なサティ、その生涯の物語りである。 世間から貧乏紳士と揶揄されたサティは相反するものを内包していた。裕福な家庭に生まれたが幼くして英 国人の母親と死別、地方の祖父母に預けられてカソリックに再洗礼、そして魅了された教会のパイプオルガ ンの音は、中世的で内省的な暗い面を醸成させた。祖母の死でパリに移るが、成長して学校や親などの様々 なしがらみから解放された青年期、下町のモンパルナスで生活するようになって、現代的で大衆的な明るい 面を発揮する。物語はそれぞれを黒サティ/白サティと名づ付けて構成している。 ・ また生涯ただ一度の恋も紹介している。その恋はみじかいものだった。サティは死の間際に「あの手紙は・・・」 と呟いたというが、その手紙とは、投函されることのなかった彼女宛の34通の手紙だったのだろうか。 ・ フランスのサティ研究家オルネラ・ヴォルタ女史は「ドビュッシーの音楽は偉大だが、ある時代の音楽である。 しかしサティの音楽は時代を超えて存在している」と語っている。ジャン・コクトオも言葉をかえて「サティは鍵 穴のようなものだ」と、鍵さえ持っていればいつでも開いてくれるのだ。 展覧会 ・ おりしも来月から東京渋谷の東急文化村 ザ・ミュージアムで「エリック・サィとその時代展」が開催されるが、 そのチラシにマン・レイの言葉が載っている、「眼を持った唯一の音楽家」。サティの音楽・生き方が当時の前 衛美術家達の眼におおいなる刺激をあたえて創作意欲を搔き立てたのであろう事がみてとれる。 概 要 合 評 ・ (A)音楽でも絵画でも○○主義・派というのは後世がグループ化して名付けた枠組みであって、例えばサティ は自身を現代音楽の先駆者とも異端児だの変わり者だとも思っていなかったはず。総じて芸術は後世の評価 に委ねられる宿命を負う、ということだろう。坂口安吾の言うとおり、芸術への精進は前衛性の追求であり、そ れをサティはファルスとして賛美し得なかったようだが、文学を含めた芸術家はそう生きざるを得ないところに いる。そんな必死の想いとは裏腹に「ジムノペディ」や「グノシェンヌ」には原始に通じる静かな癒やしがある。 ・ (B)心地よいあの楽曲がなぜあの時代に生まれ得たのか? 時空 を超えて響いてくる心地よい彼のリズム。既成からの自由と個の世界がひろがっている。 ・ (C)サティの生涯を通して唯一の女性がユトリロの母親だなんて、初めて知りました(私生児として生まれた)。 ユトリロの母親って自由奔放な生き方をしてたらしいが、その交友関係はかなり広いですね。先日、損保ジャ パン美術館で彼女の絵を観てきましたが、絵の方は平凡でした。 ・ (D)サティ―が元々、古典的教会音楽を愛していたことを再認識して、初期作品「サラバンド」を聴くと,「ジムノ ペディ」の曲想の謎が解けてくる。かつ、ドビユッシー、ラヴェルが、彼の音色に魅了された理由も納得した。 ・ (E)【異端児】社会的な常識などを無視して奔放に生きる人(日本国語大辞典)、正統派に属さず独自の活動 をする人。常識にとらわれず自由奔放に行動する人(広辞苑) なるほど、彼は常識を持たず奔放に生きた人物なのか。しかしそれがどうしたというのか。人は彼は己の芸術 的価値を自ら下げているとでも言いたいのだろうか。いやそうではないだろう。むしろ人は彼の非凡な才能を 認めているのだ。訴えかけ引き込まれずにはいられない彼の音楽(性)を・・・。だから人は彼に「もっとこっちを 向いて」「大衆の話にも耳を傾けて」という時代の要請に答えて欲しいのだ。しかし彼はそれを意に介さない。 つまり彼の意識にはコンプライアンスの概念が存在しない。(注・法令順守と訳するのはおかしい。時代の要請と すべき) 人はとかくレッテルを貼りたがる。普通ではない常識的ではない人には特に。そうしないと安心でき ない。 【異端児】不真面目な人、不道徳な人、不誠実な人、倫理観のない人・・・ではない.眠気まなこながら映像に 気がいって(魅せられたとはいいがたく)、音楽は右から左であった私。そんな私のことを人は不真面目!とは 言うものの、異端児(者)とは決して言わない。 ・ (F)文芸グループに入会してよかった! 名前を聞いて作家、画家、音楽家くらいの判別はできても作品や 人物については何も知らないというのがほとんど。サティもそうでした。とても上手くまとめられたNHKのビデオ で彼の生涯等を知ることができました。何十回も聞いていたのに曲名も知らなかったジムノペディ、今回初め て聞いて虜になったグノシエンヌ。おかげさまで楽しめる音楽の領域が広がりました。 ・ (G)何年前の事だろう、高橋アキの演奏をFMラジオで聴いたのが初めてだった。世の中にはなんと不可思 議な音楽があるものだ、奇妙な音の運びはどこか古代的で異国的だった。それから間もなくコマーシャルでも 取り上げられ、それが耳につくようになってきて遠ざけていた。しかししばらく聴いていないと気になってくる。 この時のサティ・ブームは実は2度目で、日本に最初に紹介されたのは大正ロマン華やかりし頃、新しもの好 きの坂口安吾など”ファルス!”と誉めそやし、自身とダブらせていた事を知ったのはかなり後になってから だ。今回改めて思った事がある、サティは時代の特異点ではなかったのかと。 次回例会 ・ 日 時:平成27年7月25日(土) 午後1時30分より4時30分まで ・ 内 容:読書会 「伊集院静の流儀」の『親方と神様』文春文庫 ・場 所: 千葉大薬学部百周年記念館 ・担 当: IA 次々回例会 ・ 日 時:平成27年8月22日(土) 午後1時30分より4時30分まで ・場 所: 千葉大薬学部百周年記念館 ・ 内 容:映画鑑賞会 『たそがれ清兵衛』 山田洋次監督、真田広之・宮沢りえ主演