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胃腸薬
胃腸薬 A.最初の情報提示 45 歳の男性。仕事で大きなプロジェクトを任されたが、思うようにはかどらず、 たばこやお酒の量が増えてしまった。最近、頭痛、腹痛、吐き気、胃のもたれた感じ、 食欲不振などを感じている。頭痛に対しては家にあった頭痛薬イブ A 錠を服用し、 改善したが、むしろ腹痛や吐き気、胃がもたれた感じなどは、悪くなったような気が して、胃腸薬をさがしている。 B.症状に関する最初のSGD この患者について、討論してみよう。また、上記に加えてどのような患者情報を聞き取 る必要があるだろうか。重要と思われる項目を 5 項目あげてみよう。 例: 1)併用薬 (病院/OTC) とその使用状況、 2)医療機関受診の有無/基礎疾患、 3)腹痛の状況(種類、程度、部位)、 4)飲酒・喫煙・嗜好品などの具体的な状況、 5)既往歴(過去の類似症状の有無) <患者のより詳細なシナリオ> (最初から学生には提示せず、上記の最初のSGDで提出さ れた項目についてのみ、以下から学生に提示する。) 喫煙:以前は 2〜3 日で 1 箱程度だったが、最近は 1 日で 1 箱すってしまうこともあ る。 飲酒:週 3〜4 回程度。一回ビール中ジョッキ 3 杯または焼酎 2 合程度 嗜好品:コーヒー(ブラックで一日平均 5〜6 杯)。味の濃い食べ物が好き。 身長 168 cm 体重 71 kg。一昨年に、会社の健診で血圧が高いと言われ、近医よりアム ロジン錠 5 mg 1 錠 を 1 日 1 回朝食後に服用。朝食を抜くことも多い (週 2 回程度) が、朝のコーヒーは欠かせない。アムロジンは食事を取らない時でも、きちんと服用して いる(コーヒーで)。その他の疾患及び服用薬はない。健康食品は特に使用していないが、 時々疲れを感じた時に家にある総合ビタミン剤を服用する。 アレルギー歴、副作用歴で特筆すべきものはない。 また、肝機能、腎機能もいずれも正常である。 症状としては、上記以外の症状は特にない。すなわち嘔吐、吐血、下血、便秘、腹部膨 満感、急に差し込むような痛み、などはない。食後に腹痛や吐き気を感じることもあるが、 空腹時の方が症状は強い。腹痛も、我慢できないほどの痛みではない。 これまでにも、胃もたれや腹痛を感じたことはあったが、1〜2 日で治っていたので特に 気にしていなかった。今回は、3〜4 日程度たっても症状が改善してこないのでちょっと気 にしている。 (疾患としては、ストレスおよび NSAIDs によるびらん性胃炎を想定している。 ) 17 C.Advisory Questions (または途中で出す課題) 1) 腹痛を訴える疾患にはどのようなものがあるだろうか。その症状、鑑別法は?また、 中でも、特にすみやかに受診勧奨を行うべき疾患にはどのようなものがあるだろうか。 2) 適切な OTC を選択する以外に、患者さんに薬物治療や生活習慣の観点からアドバ イスすべきことはないだろうか。 3) 患者さんが訴えている症状以外に関して、症状の有無を確認すべきものはないだろ うか。 4) 本症例では、受診勧奨の必要性についてはどう考えたらよいだろうか。 5) OTC の胃腸薬で注意すべき薬物相互作用について、考えてみよう。 6) 選択した OTC で特に注意すべき副作用は? D.医師への受診勧奨を行う必要のある症例 1)OTC の選択 制酸剤、H2 ブロッカー又はその合剤もしくは両者の組み合わせ 例: 大正胃腸薬 Z(ラニチジン塩酸塩、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウ ム、水酸化アルミナマグネシウムの配合剤) 2)服薬指導 ・ 規則正しく服用し、3 日程度経過しても改善の傾向が見られない場合、または症状が 急速に悪化した場合には、受診勧奨。 ・ 重大な副作用として、アナフィラキシーショック、スティーブンス・ジョンソン症候 群、中毒性表皮壊死症、肝障害、腎障害、血液障害の前兆症状を説明し、前兆症状が 見られた場合には服用を中止して速やかに受診するよう指導。 ・ 必要に応じて、他剤(例えばニューキノロン系抗菌薬など)との相互作用について説明。 ・ 服用中の頭痛薬については、頭痛が軽快しているようであれば中止し、やむを得ず服 用する場合は、可能な限り食後に服用するようにアドバイス。 ・ アムロジンについても、朝食を取らずに服用すると消化器系の有害作用が現れること があるので、少しでも良いから食物や牛乳などを摂取してから服用するように指導。 3)その他の生活指導 ・ コーヒー、アルコール、たばこについては消化器症状に悪影響を及ぼすので、可能な 限り減量するなどの対処をとるとよい。 ・ ストレスが胃炎の原因となる可能性について説明 ・ 同様の症状が繰り返す場合や慢性化する場合、下血・吐血、腹部痛などが顕著な場合 には、慢性的に消化性潰瘍を生じている可能性もあるため、受診勧奨とする。 E.模範的回答例(医薬品の選択、服薬指導など) ・ 重度の痛みがあるケース(内臓穿孔、膵炎、腎結石、胆石症など) ・ 突然に痛みが発症したケース(内臓穿孔、腎結石など) ・ 安静により緩和し、体動により悪化する腹痛(腹膜炎など) ・ 激しい下痢や嘔吐を伴うもの(感染性胃腸炎、食中毒など) ・ 心窩部又は臍周囲から右下腹部の痛みと悪心、嘔吐、食欲不振、微熱(虫垂炎)など 18