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旋削加工の基礎知識
旋削加工の基礎知識 チェックシート 旋削加工の基礎知識 切削加工 鉛筆の削りと金属の削りの違いが説明できる。 のメカニ ズム 旋削加工と転削加工の違いが説明できる。 切削条件 3 つの切削条件を説明できる。 切削速度を説明できる。 送り速度を説明できる 回転数を求める式を説明できる。 旋削工具 送りとノーズ R から理論面粗さを計算できる。 旋削で使用される工具材種について説明できる。 工具の種類について説明できる。 工具各部の名称について説明できる。 すくい角について説明できる。 逃げ角について説明できる。 切れ刃角について説明できる。 切削抵抗 切削抵抗の 3 分力を説明できる。 背分力の影響を説明できる。 構成刃先 構成刃先について説明できる。 構成刃先を防ぐ手法を説明できる。 切削油剤 切削油剤の効果について説明できる。 水溶性、不水溶性切削油剤の使い分けができる。 切りくず 切りくずの形を説明できる。 理想的な切りくずの形を説明できる。 被削材の 被削性について説明できる。 材料特性 ─ 14 ─ 技量水準 1 2 3 4 スコア 切削加工のメカニズム 切削加工のメカニズム 切削とは、JIS B 0106:1996「工作機械−部品及び工作方法−用語」による と「切削工具と工作物とを相対運動させて削ること」となっている。 それでは、リンゴの皮を剥いたり鉛筆を削ることは同じ切削と呼べるだろう か? リンゴの皮は、剥いたリンゴに合わせてつなげれば元の形に戻る。ま た、鉛筆の削りくずも反りなどはあるが、長さはほぼ同じでつなぐことができ る。しかし、金属の切りくずは、元の状態とまったく異なる。長さは短く、厚 さは切込み量よりも厚くなる。では、なぜこのようになるのだろうか。 金属の切削加工は連続したせん断作用により行われる。回転する工作物は工 具によってせん断力を受け、せん断ひずみによって大きく変形して、せん断面 に沿って滑りを起こし、切りくずとなる(図 1) 。 図 2 において、平行四辺形 ABCD が切削の進行により、せん断変形し A’ B’C’D’になり、移動する。これが連続的に短時間に生成されていると考 えることができる。切りくずの厚さはせん断角で決まり、切込み量 t1 と切り くず厚さ t2 の割合を切削比(Ch)と呼び、せん断角(φ)は次の式で表される。 切り込み 回転方向 回転方向 1 せん断面 C 切りくず D 厚さ 工作物 φ 切りくず γ B 工作物 2 A C’ せん断面 D’ B’ A’ 工具 工具 図 1 せん断作用 図 2 連続したせん断作用 ─ 15 ─ Ⅰ.旋削加工の基礎知識 工作物回転 刃は 1 枚 写真 1 旋削加工 複数の刃 工具回転 写真 2 転削加工 Ch = t1 / t2 tan φ= Ch × cos γ/(1 − Ch × sin γ) 切削は大きく分けて 2 つに分類される。 ・旋削加工(写真 1) 旋盤での加工が主で、回転している材料に工具を当て動かすことにより必要 な形状・精度に加工する方法で、基本的には丸い部分を形成するのに用いられ る。工具は主に 1 枚の刃物で構成され、主に連続切削となる。 ・転削加工(写真 2) フライス加工が主で、回転している工具を固定した工作物に当て動かすこと により必要な形状・精度寸法に加工する方法で、様々な形状の部品を形成する のに用いられる。工具は主に複数の刃で構成され、断続切削になる。断続切削 では工作物への刃物の入りと抜けが繰り返され、振動が工具寿命や仕上げ面に 影響する。 ─ 16 ─ 切削条件 切削条件 工具と工作物の間には 3 つの相対的運動が関係し、これを切削条件と呼ぶ。 切削条件は、工作物の寸法精度、仕上がり面、工具寿命など多岐にわたり大き な影響を与え、適切な条件を選択する必要がある。 切削速度 切削速度(m/min)は、工具が 1 分間に工作物を何m削り取るかを示して いる。旋盤の場合は、工作物の回転によって与えられるものになる。回転は 1 分間当たりの回転数で設定されるが、回転中心軸と工具の刃先距離によって必 要な回転数は異なる。 回転数は以下の式で求める(図 1) 。 m 図 1 切削速度 ─ 17 ─ Ⅰ.旋削加工の基礎知識 = 1000× π× Vc:切削速度(m/min) Dm:直径(mm) π:円周率 分母のπ× Dm は円周の長さ(mm)となる。分子の Vc は(m/min)で分 母の mm と単位が合っていない。そのため分子に 1,000 を掛けて単位をmmに 合わせている。 切削速度が速いほど切削効率は良くなるが、工具の寿命は短くなる。 送り速度 送り速度(mm/rev)は、工具が 1 回転当たりに進む距離を示している(図 2) 。 切削を行う時に、工具を移動していかなければ切削を進めることができな い。移動する距離が大きいと切削能率は良くなるが、切削面は粗くなる。超 硬、サーメットなどのインサート方式の工具では、刃先の欠損を防ぐため、刃 1 回転 送り 図 2 送り速度 ─ 18 ─ 切削条件 先をころしている部分(ランド)があるので最小切込み量には注意が必要とな る。 切込み量 切込み量(mm)は、工作物の中心方向へ食い込ませる距離になる(図 3) 。 切込み量も大きくすると切削能率は良くなるが、大きな力が必要となる。刃 先のコーナー半径によって変化するが、切込み量が少ないと背分力が大きくな 回転 切込み 図 3 切込み量 り、びびりの原因となる。 ☆ ☆ 切削速度・送り速度・切り込み量は、工作物の材質、工具の材質、種類など によって異なり、適切な値の目安がある。工具メーカーのカタログを参照する とよい。 ─ 19 ─ Ⅰ.旋削加工の基礎知識 旋削工具 バイト各部の名称 旋削作業に主として用いられる工具を一般的にバイトと呼び、作業の目的に 応じて様々な形状、材質のものがある(図 1) 。一般的なバイト各部の名称は 図 2 のように呼ばれている。 ・おねじ切りバイト おねじ加工用のバイト ・右片刃バイト 外径切削および 端面切削用のバイト ・ヘール突切りバイト 外径溝加工および 突切り用のバイト ・真剣バイト 外径切削用のバイト ・穴ぐり荒バイト 内径荒切削用のバイト 図 1 バイトの形状 ─ 20 ─