Comments
Description
Transcript
H21-JA022 超高分解能電子顕微鏡に組み込める小型走査型電子
装置利用支援 H21-JA022 超高分解能走査型電子顕微鏡に組み込める 小型走査型プローブ顕微鏡の開発 III Development of a compact scanning probe microscope installable into an ultra-high resolution scanning electron microscopy III 谷 正安 Masayasu Tani フジ・インバック(株) Fuji-imvac Inc. インレンズ方式の超高分解能電界放射走査型電子顕微鏡(SEM)のホルダー内に収まる小型のペンシ ル型走査型プローブ顕微鏡(SPM)を開発し、その応用拡張のための呈示実験を継続した.ナノスケー ルの分解能を持つ2つの顕微鏡(SEMとSPM)の機能を活用して、微小接点の形成の観察実験をした. We developed a compact pencil-type scanning probe microscope (SPM) that is installable into a rod-like sample holder for an ultra-high resolution in-lens field-emission scanning electron microscope (SEM). We demonstrated experiments to fabricate micro and nano contacts between a tip and a flat surface sample of Si using the powerful capability of in-situ observation with this combined instrument. 背景:現在、シリコン(Si)を代表とする半導体 デバイスの微細化は10nmレベルに達しようとし ている.また、電子デバイスのさらなる高集積 化・高機能化を求めて、Siのみならず1分子デバ イスへの期待も高まっている.今後とも、ナノテ クノロジーの進展が止むことはないであろう.こ の状況の中で、ナノテクノロジーとして、トップ ダウン技術のみではなく、ボトムアップ技術に対 応した周辺装置・技術のさらなる飛躍が切に求め られている.期待されている先端技術の一つは、 ナノスケールの分解能をもつ観察・物性評価技術 であろう.素子の数値的な評価はもとより、目で 見えないようなナノスケールの現象をあたかも 目で見ているようにし、また手に取れるようにし て理解を深めることは、ナノテクノロジーに関わ る科学者・開発者・技術者にとって大変貴重な知 識資産となる.その代表格の一つは、走査型プロ ーブ顕微鏡(scanning probe microscope (SPM))や 走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope (SEM))である.現在、2つの顕微鏡法は広く普 及しているが、ナノスケールの空間分解能をもつ 顕微鏡技術は今後ともますます発展し、その応用 は様々な分野へ広がって行くであろう. 目的:本研究開発の目的は、ナノサイエンス・ナ ノテクノロジー分野で活用できる複合型電子顕 微鏡を開発し、多様な分野への応用を提供するこ Fig. 1 Schematic of an ultra-high resolution field-emission SEM combined with a pencil-type SPM. とである(Fig. 1).その一つとして、超高分解能 インレンズ式電界放射走査型電子顕微鏡の試料 ホルダー(外径8mmのパイプ状)内に、走査型ト ン ネ ル 顕 微 鏡 ( scanning tunneling microscope: STM)・原子間力顕微鏡(atomic force microscope: AFM)に必要なすべての機構(数mmにわたる3 次元での粗動位置あわせの機能を含めて)が収ま る小型ペンシル型SPMを完成させた(Fig. 2).こ の複合型顕微鏡によって、観察部位のシームレス なズーム観察、SPM探針の状態確認や先鋭化加工、 SPMで観察・計測・操作したい部位へSPM探針を 近づけること、SPM探針によるナノ力学操作の SEMによる超高分解能“その場”観察などが簡便 に行える.そこで、呈示実験の積み上げを行う. 実験方法:本研究で用いた電子顕微鏡は、インレ ンズ方式の超高分解能電界放射走査型電子顕微 鏡(SEM、日立ハイテクノロジーズ社製S-5200、 冷陰極電界放射電子源、最高分解能: 0.5 nm、EDX による分析機能付き、BSE/STEM機能付き)であ る.この顕微鏡の試料導入は、汎用の透過型電子 顕微鏡(TEM)と同じ方式のサイド・エントリー タイプで、外径8mmのパイプ状試料ホルダーの先 端内部に試料を取りつけ、ロードロック機構を通 してパイプ状試料ホルダーごと電子顕微鏡の側 面から挿入する.ペンシル型SPMはこのホルダー 内に入るように製作してある(ピエゾ素子を使っ た慣性駆動機構をパイプ内に挿入し、走査用のチ ューブスキャナーもパイプ内の先端に取りつけ た).粗動として、パイプ内で許される数mmの範 囲をxyz3次元方向に移動できる.スキャナー先 端には試料保持具(2電極付き)が取りつけてあ る.この2電極を利用してSiウェハー片に通電す れば、Si片を高温(電流0.5A程で500℃程度)にで きる.また、Wワイヤーでフィラメントを作製し て通電すれば、1400℃以上に加熱しながらSEM像 を観察できる.STM動作時は金属などの電気伝導 性探針を試料に対向するように取りつける.原子 間力顕微鏡として動作させるときは、チューニン グ・フォーク型水晶振動子の先端に探針を取りつ け、試料と対向させる.そして自励発振回路を用 いて、この探針付水晶振動子の固有振動で微小振 幅発振をさせる.この方式は、チューニング・フ ォークの共振周波数が探針と試料間の相互作用 によってわずかに変化するのを高感度で検出す る非接触型と呼ばれるもので、適切な条件を実現 すれば、原子分解能が得られる. 結果と考察:今回、汎用AFM探針として利用され ているSi針の先鋭化のための予備実験を行った. Siウェハーを破断して得られた鋭利な角をもつSi 破材を探針保持具に取り付けた.そして、対向し て設置したSiウェハーにペンシル型SPMの機能を 使って接近させた.そのときのSEM像をFig. 3に示 す.探針が接近した試料表面でハレーションが観 察された.これは、探針が接近した試料表面領域 をSEMの電子ビームが走査しているときに、試料 から発生する2次電子が探針に突入し、その電子 励起で探針からさらなる2次電子が放出された ためである.この状態からSi探針をさらに押しつ け、ナノサイズからマイクロサイズの接触を作り、 Si探針先端の変化を観察した.加熱したSi基板へ の接点形成の予備実験として成果を上げた. Fig. 2 Photos of a developed pencil-type SPM. The outer diameter of the tubular holder is 8 mm. Fig. 3 SEM image of an in-situ observation of a Si tip approaching a Si wafer. まとめ:インレンズ方式の超高分解能SEMのホル ダー内に収まる小型のペンシル型SPMを利用し て、Si針を対象として、見たいところを狙って、 見て、測って、触って、操作する呈示実験を行っ た. 論文発表状況・特許状況 なし 参考文献 なし キーワードとその説明 走 査 型 プ ロ ー ブ 顕 微 鏡 : scanning probe microscope (SPM)は、原子スケールで鋭い探針を 試料表面に nm ほどに接近させて、試料と探針の 間で授受されるトンネル電流、力などが一定にな るように探針−試料間距離を制御しつつ、探針を 試料面に沿って機械的に走査して試料表面の凹 凸を原子スケールでなぞるように描きだす顕微 鏡の総称である.