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電子顕微鏡観察 - So-net

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電子顕微鏡観察 - So-net
電子顕微鏡観察
1)電子顕微鏡とその種類
岩石や鉱物の薄片を観察する偏光顕微鏡(透過,反射)を含めて、通常の光学顕微鏡は試
料に可視光線をあてて透過光または反射光を光学レンズで拡大し観察する。これに対し、電子
顕微鏡は光(電磁波の一種)の代わりに電子(電子線)をあて、磁場の電子線に対するレンズ効
果を用いて拡大する顕微鏡である。電子顕微鏡には大きく分けて以下の2種類がある。
透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)
試料に電子線をあて、それを透過してきた電子のつくる像を観察する。試料の構造や
成分の違いにより、どのくらい電子線を透過するかが異なるので、場所により透過して
きた電子の密度が変わり、これが像となる。電磁コイルを用いて透過電子線を拡大し電
子線により光る蛍光板にあてて観察したり、
フィルムや CCD カメラで写真を撮影する。
試料を透かして観察することになるため、できるだけ薄く切ったり、電子を透過するフ
ィルムの上に塗り付けたりして観察する必要がある。
走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)
磁場の電子線に対するレンズ効果を利用することは TEM と同じである。試料に電子
線をあて、そこから反射してきた電子(または二次電子)から得られる像を観察する。
走査型の名は、試料に電子線を当てる位置を少しずつずらしてスキャン(走査)しなが
ら顕微鏡像が形づくられることからきている。
電子は検出器に集められ、コンピュータを用いて2次元の像が表示される。試料の表
面の形状や凹凸の様子、比較的表面に近い部分の内部構造を観察するのに優れている。
観察対象が導電性のないものの場合、電子線をあて続けると表面が帯電してしまい、反
射する電子のパターンが乱れる。そのため観察対象の表面をあらかじめ、導電性を持つ
物質で薄くコーティングしておく必要がある。このコーティングは通常の形態の観察に
は金(Au)蒸着が、観察と合わせて EPMA により化学組成の分析を伴う場合は炭素(C)
蒸着が行われる。
なお、EPMA(Electron Probe X-ray Microanalyzer)は走査型電子顕微鏡を1台ないし
数台合体し、エネルギー分散法(EDS)または波長分散法(WDS)と呼ばれる方法で試
料に電子線をあてて微小部分の化学分析を行うものである。したがってこれらの分析を
行う時は(研磨薄片のことが多いが)走査型電子顕微鏡観察を行っていることにもなる。
電子顕微鏡(SEM)日本電子製 JSM-T100
2)電子顕微鏡観察の長所と弱点
金の蒸着装置(イオンスパッタリング)
電子顕微鏡の長所として、光学顕微鏡に比べてはるかに高い分解能が得られることが
強調される。どんなに精度の良い光学レンズ群の組合せによる光学顕微鏡でも、その拡
大能力には限界があって、それは光の波長そのものに起因する。光学顕微鏡の分解能 d
と光の波長λとの間には
d=
0.61λ
n sinα
という関係がある(ここで n はレンズの屈折率,αは入射光線の開き角,n sinαは通常
1.5 程度)
。可視光の波長は短い波長でも 0.4μm であるから、光学顕微鏡の分解能は 0.2
μm程度が限界であり、それより微細な構造を見分ける方法の1つとして電子顕微鏡が
20 世紀前半に開発された。このうち走査型電子顕微鏡(SEM)は以下のような特徴をも
つ。
すなわち、分解能が高く、焦点深度が光学顕微鏡に比べて著しく大きい。その理由は、
走査電子プローブとして極めて細いビームを用いるためで、凹凸激しい試料表面であっ
ても、ほぼ全面に焦点が合う。また、観察のための試料作成は一般に TEM に比較して
簡単であり、岩石・鉱物,金属,半導体などの試料は、レプリカの作成の手間なしに金
や炭素蒸着を行えば、そのまま観察できる。試料の各部に電位差があるとそれを電位差
コントラストとして観察できる。
岩石・鉱物などを観察する場合には電子顕微鏡観察の弱点も把握しておく必要がある。
それは、電子顕微鏡観察(SEM)では偏光顕微鏡観察とは異なり、試料の形態の情報し
か得られないことである。微化石の観察ではその形態が決めてなので、その種類を決定
できるが、鉱物の場合は同じような形態をもつ鉱物が無数に存在する。そのため岩石・
鉱物の電子顕微鏡観察では偏光顕微鏡観察やX線粉末回折を併用して、含まれる鉱物の
見当をつけておく必要がある。
Et
Et
・6
・5
10μ
コンクリート中に生成したエトリンガイト
Mg2+ と CO2 を含む水から結晶したダイピンジャイト
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