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走査電子顕微鏡
139 最新表面科学講座(第 VIII 講) J. Jpn. Soc. Colour Mater., 86〔4〕,139 – 144(2013) 走査電子顕微鏡 宮 木 充 史 *,† * ㈱日立ハイテクノロジーズグローバルアプリケーションセンタ 神奈川県川崎市高津区坂戸 3-2-1 かながわサイエンスパーク R&D ビジネスパークビル C 棟 1F(〒 213-0012) † Corresponding Author, E-mail: [email protected] (2012 年 9 月 28 日受付; 2013 年 1 月 4 日受理) 要 旨 走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,以下 SEM)は分解能や信号検出技術の向上を目指してさまざまな改良が加えられて 進歩してきた。近年ではサブナノメーターに迫る分解能やさまざまな信号情報を選択的に検出する機能を有した装置も実現されてお り,応用分野は拡大しつつある。本稿では,SEM の基本的な原理と装置構成について解説し,最新の装置による高分子材料などの機 能性材料の観察例を紹介する。 キーワード:走査電子顕微鏡,二次電子,反射電子,透過電子,リターディング法,白金触媒,黄酸化鉄顔料,カオリナイト,フ タロシアニンブルー 1.はじめに 走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,以下 SEM) は光学顕微鏡と比較してはるかに高い分解能と深い焦点深度を 有し,比較的簡便に使用することができるため幅広い分野で利 用されている。SEM が登場してから 50 年以上が経過している が,現在でも基本性能の進歩による分解能の向上や信号検出技 術の多様化が進められており,応用分野もさらなる広がりを見 せている。今回は,SEM の基本原理と装置構成の解説に加え, 最新の信号検出技術を有する装置による観察事例を紹介する。 2.SEM の原理と装置構成 2.1 SEM の原理 真空中で電子線を試料に照射すると,二次電子(Secondary Fig. 1 Signals produced from sample. Electron,以下 SE),後方散乱電子(Backscattered Electron,以 下 BSE),オージェ電子,X 線,蛍光,吸収電子,透過電子 。 (Transmitted Electron,以下 TE)などの信号が発生する(Fig. 1) SEM ではおもに表面情報を有するSEが像情報形成に用いられる。 一般的な SEM の構成を Fig. 2 に示す。まず,電子源で発生し た電子線は電子光学系(電子銃,電磁レンズ)によって加速, 集束され,偏向コイルにより X-Y 二次元走査される。試料表面 から放出された SE は検出器により捕集され,信号増幅後にデ 〔氏名〕 みやき あつし 〔現職〕 ㈱日立ハイテクノロジーズグローバルアプリ ケーションセンタ 〔趣味〕 工作,育児 〔経歴〕 平成 16 年東京農業大学大学院農学研究科, 博士前期課程修了。 Fig. 2 − 17 − Configuration of SEM.