Comments
Description
Transcript
認定特定非営利活動法人桜ライン 311(岩手県陸前高田市)
No.3 認定特定非営利活動法人桜ライン 311(岩手県陸前高田市) ウェブサイトや SNS、会報誌を通じた活動の理念や活動状況の発信により、支援のネットワークの 拡大と継続した関係の維持を実現。桜の植樹に加え、普及啓発、政策提案事業へ活動を展開。 東日本大震災における津波の最大到達点への桜の植樹事業(平成 24 年度 新しい公共支援事業) 東日本大震災における津波の最大到達点への桜の植樹事業及び啓発事業 (平成 25 年度 NPO 等の運営力強化を通じた復興支援事業) 東日本大震災を教訓とする減災意識啓発と長期存続を目的とした組織基盤強化事業 (平成 26 年度 NPO 等の運営力強化を通じた復興支援事業) 1 団体の概要 平成 23 年 10 月に任意団体として発足し、平成 24 年春に特定非営利活動法人となり、平成 26 年 春に認定特定非営利活動法人を取得している。東日本大震災で津波が襲った地域にいた多くの人々 の悔しい気持ちを後世に伝え、同じ悔しさを繰り返すことのないように、今回の津波の到達ライン を桜の木を植樹することで明らかにするとともに、防災、減災について、今回の被災地だけでなく、 全国に意識喚起することを目的として、桜の植樹事業、普及啓発事業、政策提言事業を行っている。 2 活動開始年度 平成 23 年度 NPO 法人設立年度 主な活動分野 桜の植樹、普及啓発、政策提言 所在地 岩手県陸前高田市高田町大隅 93-1つどいの丘商店街9号 電話 0192-47-3399 E-mail [email protected] URL http://www.sakura-line311.org/ 代表者 岡本 翔馬 スタッフ数 常勤(有給)5名 事業規模 約 3,615 万円(平成 25 年度) FAX 会員数 平成 24 年度 - 13 名 活動内容 設立以降、陸前高田市内約 170km に渡る津波の到達点をつなぐように 10m おきに桜を植樹し、桜 のラインをつくることで、今後津波の恐れがある時には、その桜ラインより上に避難するように後 世の人々に伝承していくよう、植樹活動を行っている。植樹会は、活動の趣旨に賛同する企業や個 人が植樹ボランティアとして参加する形で開催するとともに、地元の中学・高校とも開催しており、 未来のまちづくりの中心となる若者の防災・減災への意識を高める機会となっている。また、植樹 ボランティアとして参加した方々が苗木の生育状況の観察に再訪し、植樹する土地を提供した地権 者の方との交流が始まるなど、植樹を通した市外や県外とのつながりの創出にもつながっている。 普及啓発事業では、津波の怖さ、備えの重要性を子孫の世代まで風 化させないため、全国各地で講演を行ったり、大学・高校等の教育機 関における講演やパネルディスカッションへ参加するなど、積極的に 活動を行っている。 植樹活動や普及啓発事業に参加した人達からは、 「次の世代や被災 地域以外に住む人達が同じような苦しみや悔しい思いをしないよう、 『桜ライン 311』の活動の趣旨を伝え続け、 『命を守る桜ライン』の 桜の植樹の様子 26 完成までのこの活動に参加したい」、 「これからも引き続き『後世に伝える大切な活動』をお手伝い したい」との声をいただいている。 加えて、国や県・市や様々な団体と情報交換を行いながら、桜並木をそれぞれの地元におけるま ちづくり計画へ活用しようという提案を行う等、よりよいまちづくりへの連携や協働のあり方を検 討している。 3 活動の特徴 (1)活動の中で見られた工夫や活動が上手く進んだポイント ●SNS やウェブサイト、会報、復興イベント・講演等を通じた活動の理念や考え方、活動状況の情 報発信 桜の植樹に参加するきっかけは人それぞれであることから、広く受け入れを行っており、 Facebook などで募集を行う際も、参加者を限定することなく広く受け入れている点を打ち出して いる。そして、実際に植樹に参加いただいた際に、当団体のスタッフや土地の地権者と話し、災 害について考える機会を持っていただくという植樹会のプログラム構成としている。津波の到達 ということがどういうことかは、実際にその場に立ち、話を聞かないと理解しづらいため、現地 で得られるその気づきを全国の人に知っていただく場として、植樹会を開催している。 植樹ボランティアの募集や支援企業・団体に対しては、寄附金の額や支援いただいている期間 に関わらず、公平に対応することを基本としており、コミュニケーションを図ることで継続した 理解を得られるように努めている。活動は拡大したが、関係が遠くなってしまったということの ないよう、Facebook などの SNS やウェブサイト、マンスリーサポーター用の会報誌「とびゃっこ 通信」(半年に1回発行)や活動報告会の開催等により、活動の状況や理念を発信し、活動の見 える化を図っている。 また、復興イベントや講演等において、団体 としての PR を積極的に実施しており、実際に 顔を合わせて団体の想いを伝える取組にも力 を入れている。 植樹会の様子 活動報告会の様子 マンスリーサポーター会員の会報誌「とびゃっこ通信」 27 ●マンスリーサポーター制度 平成 25 年に開始したマンスリーサポーター制度は、クレジットカードで毎月定額の寄附を行 える制度であり、現在 60 名ほどの登録がある。金融機関の窓口で手続きを行う必要がなく、支 援のしやすい仕組みとなっている。会員には、年次活動報告書(年1回)および会報誌を通じて、 植樹ボランティア募集などをはじめ様々な情報やメッセージを届けるとともに、特典として会員 番号を印字したオリジナル会員証の発行を行っている。 マンスリーサポーター制度のチラシ ●顔を合わせることで、支援者との関係を維持 寄附が主な収入であることから、支援企業・団体等との関係の維持を重視している。そのため、 電話・メールによる連絡のみならず、イベント、打合せなどの際に必ず顔を合わせるよう心がけ ている。震災から3年以上が経過する中で、支援をいただいている企業・団体等に対し、当団体 が貢献できる点が明確でないと関係性が継続していかないと考え、関わりの深い会社等へは年に 1度必ず訪問し、活動報告とあいさつを行っている。人として、また団体としてのコミュニケー ションを密に行うとともに、個人の支援者に対しても、ウェブサイトや会報誌等による情報発信 等を通じて顔の見える組織形態であり続けることを意識している。 28 (2)成長プロセスにおける特徴 事業実施前 平成 23 年 10 月~ 任意団体として発 足 難民支援協会、いた ばし災害支援ネッ トワークより、NPO 運営の部分で支援 を受け、3者共催で 事業を開始 事業実施中 平成 24 年度 平成 25 年度 平成 26 年度 特定非営利活動法 人の認定を受ける 認定特定非営利活 動法人の認定を受 ける 桜の植樹事業を開 始 桜の植樹事業を 継続 活動報告会や講 演などの、普及啓 発事業を展開 普及啓発事業を継 続 桜を活用したまち づくりの提案など、 政策提案事業を開 始 政策提案事業を継 続して展開 (3)事業実施の各段階における関係主体との関連 関係主体との関連 実 施 前 ( ~ 平 成 桜ライン 311 (任意団体) NPO運営を 支援 23 認定 NPO 法人 いたばし災害支援 年 度 ) 難民支援協会 ネットワーク 実 施 中 ( 平 成 24 ~ 26 年 度 ) 陸前高田市 大学・NPO 等 協力 協力 連携 認定特定非営利活動法人 地方自治体 桜ライン 311 (全国) (平成 26 年秋に認定取得) 支援企業・団体・ 個人 29 普及 啓発 寄附、活動への 参加などの支援 4 活動の成果 ◎活動の周知 平成 25 年度末時点で、2,136 人の植樹ボランティアの参加を得て、169 箇所 679 本の植樹 を行っている。そのほか、全国各地で行う講演や復興イベントでの PR により、当団体の活 動が広く知られる状況に至った。 ◎活動の初年度に多くの媒体で紹介されたことが、支援の拡大のきっかけに 活動の初年度に、多くの媒体で活動内容を紹介いただいたことから、いろいろな企業・団 体より声掛けをいただき、講演・イベント等を実施するに至った。また、植樹ボランティア として参加した方が東京でのイベントを企画して呼んでくれるなど、ボランティアのネット ワークが支援の拡大につながっている。 ◎桜の植樹から、桜を軸としたまちづくり、普及啓発にシフト 平成 24 年度は、桜の植樹をメインとした活動であったが、時間が経過し、世の中や支援者 のニーズが変化する中で、普及啓発による防災・減災や桜を軸としたまちづくりに活動がシ フトしている。普及啓発事業としては、当団体の代表である岡本氏が全国で公演を行ってお り、累計で 75 回(平成 27 年2月現在)を実施するまでに至っている。 <事業を通じて得た定量的な成果> 事業を通じた成果 復興イベント 参加者数 講演開催数 平成 23 年度 平成 24 年度 平成 25 年度 平成 26 年度 - 640 人 1,900 人 - 2,540 人 22 回 30 回 169 箇所 679 本の植樹 2,136 人の植樹ボランティアの参加 23 回 75 回 - - 桜の植樹 5 - 累計 活動の継続に向けた課題と今後の展望 (1) 活動の継続に向けた課題 ◎地域人材の育成 植樹した桜は、地域のものとして根差していなければ、風化して本来の目的が忘れられて しまうこととなる。風化させないためにも、桜の管理を地域の人に任せていく仕組みが必要 である。普段は地域の人に管理してもらい、何かあった際に桜ライン 311 に連絡が入る仕組 みとするよう、地域での管理におけるリーダーとなる人材の育成を、講座開催等により5~ 10 年をかけて行っていくことを検討している。現在も管理を行うことができる人材が4名い るが、これらの人材を 50 名ほどに拡大していくことが次のフェーズと捉えている。 ◎寄附以外の収入源の確保 当団体の活動の趣旨から、事業化により収益を得て植樹を行うという考えはないが、寄附 が続かなくなった場合の組織の存続に向けて、寄附以外の収入源の確保を考えていかなけれ ばならない。桜のオーナー制度を希望する声が寄せられていることもあり、桜のオーナー制 度の導入などを検討していく必要がある。 30 (2)今後の展望 ◎長いスパンでの取組 津波の到達地点への植樹は、復興に向けた土地の利活用の方向性が決まらないと、土地の所有 者の了承を得ることが難しく許可が下りにくい実情があるため、長い時間をかけて徐々に取り組 んでいく。 陸前高田市として、また地域として津波の到達点に桜を植えていくという方向性が示されれば、 賛同いただける方も多くなると考えており、できるだけ早くそのフェーズにたどり着くことが重 要と感じている。 ◎活動形態に適した法人格の取得 団体設立当初より認定 NPO 法人の取得を予定して、計画どおりに準備を進めたことにより、早 い段階での取得が実現した。認定 NPO 法人の取得は、これからの寄附者に対する税制優遇と、今 まで寄附してくれた人に対する御礼、また団体として社会的責任を果たしていることについての 説明責任という、大きな3つの意味合いを有している。 現在の団体としての活動形態には NPO 法人が適していると考えているが、活動に応じて適した 法人格が変わってくるため、適宜必要な法人格を取得し、組織を運営していく。 31