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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅

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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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失読における短呈示下の処理障害に関する研究(
Abstract_要旨 )
林, 敦子
Kyoto University (京都大学)
1999-03-23
http://hdl.handle.net/2433/181865
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
氏
名
蒜
し
手
義
(
人 間 ・環境 学)
学 位 (専 攻 分 野 )
博士
学 位 記 番 号
人
学 位 授 与 の 日付
平 成 11年 3 月 23 日
学位 授 与 の要件
学 位 規 則 第 4 条 第 1項 該 当
研 究 科 ・専 攻
人 間 ・環 境 学 研 究 科 人 間 ・環 境 学 専 攻
学位 論 文 題 目
失 読 にお け る短 呈示 下 の処 理 障 害 に関す る研 究
論 文 調 査 委 員
教 授 大 東 祥 孝
博
第
55 号
(
主査)
論
文
内
教 授 山 梨 正 明
容
の
要
教 授 江 島 義 道
旨
本論文は,失読症 にお ける読みの処理障害の機構 を,主 として短呈示 とい う条件 下で解 明す るこ とを 目的 としてい る。
全体は 6章か らな り,第 1草 「
研 究の背景」 ては,検索の対象 となった失読の臨床 的位置づ け, とりわけ失語性失読,純
粋失読,失読失書 についての概説 を行 うとともに,失読症状 を呈す る症例 での短呈示下での先行研究の展望がな されてい る。
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mpl
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c
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t
"な過程 と意識的意図的処理 としての "
e
xpl
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c
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"
その うえで,短呈示 とい う条件が,非意識的 自動的処理 としての "
な過程のそれぞれ と, どの よ うに関わってい るかについて考察 を行 ってい る。そ して,本研究が, 1) 単語や文字刺激 を短
時間呈示す ることによって,臨床 的水準では明瞭 に把握 され ない よ うな軽度 の失読症状 を抽 出 しうるか否 かを検討 し, 2)
その よ うに して捉 え られた失読症状 の,単語 ・文字 レベル にお ける構造的特徴 がいかな るものであるかを明 らかにす ること
を,主た る 目的 としてい ることが示 され てい る。
第 2章では,軽度 の失語症者 1
4例 を対象 に,単語 の系列的短呈示後の語嚢判断 (
プ ライ ミング課題) と通常呈示後の意味
選択課題 を行 うことで ,i
mpl
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c
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条件 下の単語 間の意味的関連把握 の検討 を行 い,結果 的 に,従来の一般 的見解 と
は異 な り,i
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i
t
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c
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tとい う処理 が必ず しも分離せず,両者 か相互 に影響 を及 ぼ しあ う場合 のあることを明 らかに し
てい る。
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xpl
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c
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t
"課題 に焦点 を絞 り,軽度 の純粋失読,失読失書の症例 を
第 3章では,前章の結果 を うけて,短呈示 にお ける "
対象 として,文字列音読のための認知閥 (
音読できる短呈示時間の闇値).
を測定 し,純枠失読例 と失読矢書例では,語嚢性,
文字数の認知閥に及 ぼす影響 が異 なることを示 し,回復 して軽度 となってはい るが主観 的にはなお 「
読み に くさ」 を訴 える
失読症例 においては,臨床的水準では明 らかでない ものの,短呈示 とい う負荷状況の もとでは,発症 当初 の失読型 に類似 の
構造 をもった障害 を露呈 しうる場合 のあることを明 らかに した。
さらに第 4草では,失読失書例 に対 して,文字列 を一文字づつ継 時的に短呈示す る とい う方法 を用い,単語 ・非単語 (
請
嚢性),文字種 (
平仮名 、片仮名、漢字),文字数 ,を操作 してその影響 ・を検討 し,第 3章で行 った よ うな同時呈示では明
らか とな らない文字種 による違い を抽 出す ることに成功 してい る。 これ は,継 時的呈示 とい う短期記憶要因を負荷す ること
によって,音韻処理 のな され方の違いが よ り明確 になった結果 と考 え られ るが,本研究では, これ までほ とん ど実証的 には
確認 され ることのなかった,平仮名 を片仮名 の処理 の違 いが明 らかに され てい る。
そ こで第 5章では,失読失書例 にみ られた文字種 の処理 の違い, とりわけ平仮名 ,片仮名 の処理 の違い を, 1文字の レベ
ル て調べ ることを 目的 として, 2文字 (
平仮名 一平仮名 ,平仮名 一片仮名 ,片仮名 一片仮名 、片仮名 一平仮名) を継 時呈示
I
SI
)が短い場場 (
I
S1
-0, -2
0
0ms
して音韻照合課題 (
同 じ音か否かの判断) を行 わせ た ところ,文字呈示 の時間間隔 (
e
c
),平仮名 一片仮名条件 の場合 に他 の場合 に比 して反応 時間が有意 に遅 くなることか兄い だ され,平仮名 と片仮名 の処理
が同 じではな く,急速 な音韻処理 を要求 され るよ うな状況下では,平仮名 の音韻処理が よ り強 く障害 され てい る可能性 が示
-1
07
3-
された。
以上のよ うな実験,考察をふまえ,第 6章では本研究の総合的考察か行 われている。そ こでは, 1)短呈示 とい う実験的
単語 ・非単語) と文字数効果 の関係, 3) 文字種, とりわけ
手法についての意義, 2) 失読症例 を通 して得 られた語嚢性 (
平仮名 と片仮名 の処理過程の差異, 4) 文字種 と脳 の処理部位 との関係, 5) 文字種による時間的処理の差異,などが論 じ
られ,結論的には,A)欧米語、 日本語 といった文字体系の差異 を越 えた普遍的な障害のパ ター ン
(
「
逐次読み 」
"
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e
t
t
e
r
-
byl
e
t
t
e
rr
e
adi
ng"か 「
全体読み 」 "
g
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balr
e
adi
ng"か)が存在す ること, B)継時呈示 とい う手法によって,文字種に
よる (とりわけ平仮名 と片仮名 のそれぞれ に)固有の処理障害が存在す ること,C
)臨床的水準では明 らか とな らない側面
が,短呈示 によって顕在化す る場合があ り, これ らは患者 の 「
主観的な」訴 えに呼応 してい る可能性が高 く,今後,治療的
なアプローチを開発 してゆ くうえで も有効な知見 とな りうること,な どが指摘 されている。
論
文
審
査
の 結
果
の
要
旨
本学位 申請論文は,軽症失読症の患者 か短呈示下において示す読み障害の様 々なパ ター ンを多角的に検討 し,単語 ・文字
レベル における読みの処理障害の構造 を解明す ることを試みた ものである。
本研究が 目的 とす るところは,単語 ・文字 を同時的,継 時的に短呈示す ることによって,主観的 自覚的には残存 している
ものの臨床的検索では明瞭に とらえられない程度の軽症失読症状 を分離抽 出 し,その構造的特徴 を明確 にす るとともに,そ
うした研究 を通 して,読みの処理機構の認知神経心理学的基盤 を追求す ることにある。
9世紀後半以降すでに数多 くな されてお り,相 当の知見か蓄積 されてきてい るが,これ
失読症状その ものの臨床的分析 は 1
を短呈示下で検索す るとい う手法は,比較的最近になって始 められたものであ り,そ うした条件下での失読症状 については,
なお未知の部分 を多 く残 している領域である。 申請者はまず、第 2章において,短呈示その ものが有 している重要な問題の
mpl
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c
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t
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e
xpl
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c
i
t
課題の関連性 を調べ ることか らは じめ,意識 に上 らない 自動的過程であるi
mpl
i
c
i
t
な課題 と意識
一つであるi
化 されて行 われ るexpl
o
c
i
t
な課題 とを軽症 の失語性失読患者 1
4
名 を対象 として施行 し,両課題 の成績の間に一定の並行的関
連性のあることを兄いだ した。 これまでの類同のい くつかの研究は,両課題が分離 して存在す ることを示唆す るものが多かっ
たが, 申請者 の発見は,巧妙な検査バ ッテ リーを作成すれば,必ず しもそ うとはいえない場合があることを指 し示す重要な
知見 と考 えられ る。
この よ うな結果 をふまえ,申請者 は,短呈示下の "
e
xpl
i
c
i
t
"な失読症状の分析- と向か う。具体的には,比較的軽症の,
純枠失読症,失読失書症 の患者 を対象 として,各症例 の読みの認知閥を測定 し,語嚢性 (
単語 ・非単語),文字種 (
漢字,
平仮名,片仮名)の及 はす影響が症例 ごとに有意 に異なっていることを兄いだ し,かつそのパ ター ンが,それぞれの病型の
発症 当初の臨床的特徴 に類似 してい ろことを発見 した。つま り,臨床的には もはや症状が消失 しているよ うにみ えても,短
呈示 とい う負荷状況の もとでは, もとの病態に類似 した障害構造
(
「
逐次読み」 と 「
全体読み」)を示す場合があることを示
したわけであ り,かつ,そ うした所見が、 「
主観的にのみ」み とめ られ るよ うにみえる病態 に対応 している可能性 を指摘 し
たことは,短呈示下の所見の意義 をよ り明確 にす る視点を提供 していると言 ってよい。
さらに申請者 は,認知閥の測定の際に用いた単語の同時呈示 とい う方法 を, 1文字 ごとに継 時呈示す るとい う手法を用い
ることによ り,短呈示の効果 を探索 し,失読失書の症例 において,同時呈示では明 らか とな らない文字種による処理の差異
を明確 に示す ことができた。具体的には,継時呈示 とい う短期記憶要因を負荷す ることによって,これまでほ とん ど実証的
には確認 され ることのなかった,平仮名 と片仮名 の処理 に差のあることを認知実験心理学的に明 らかに した, と言える。
第 5章の実験 によって,申請者は,平仮名 と片仮名 の処理の違いをより鮮 明に抽出す ることに成功 した といえるであろ う。
す なわち,失読失書症 の症例において,平仮名 と片仮名 を組み合わせて継時的に呈示 して音韻照合 をさせた場令,文字呈示
間隔か短い場合 には,平仮名 -片仮名 の順で呈示 した場合 に有意に反応時間が遅 くなることを発見 したことは,両文字種の
処理 において条件 によって一定の非対称 を示す場合があ り, これは,両文字種の急速な音韻処理の され方が明 らかに異なっ
てい ることを示す,きわめて注 目に値す る結果であると言 える。
以上のよ うに,本研究は,短呈示 とい う条件下において,一方で,文字体系によらない失読 の普遍的構造 (
逐次読み と全
体読み) を明 らかにす るとともに,他方 において, 日本語 に特有の平仮名 と片仮名 とい う異なった文字種の間に,処理障害
-1
074-
において相違 の存在す ることを発見す る, とい う特記すべ き内容 を含 んでお り,独創性 に富むす ぐれた論文である とい うこ
とができる。 こ うした結果 は,失読 に対す る認知的な治療方法の開発 に とって も有力 な知見 と考 え られ,人間 ・環境学専攻,
環境情報認知論講座 の 目的 とす る ところにも沿 うものである。
よって,本論文 は博士 (
入関 ・環境学) の学位論文 として価値 あるもの と認 める。 また,平成 11
年 1月2
8日,論文 内容 と
それ に関連 した事項 について試 問を行 った結果,合格 と認 めた。
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