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いま写真に 注目するわけ

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いま写真に 注目するわけ
ISSN 0919-7265
2001年
4月発行
50
no.
特集
いま写真に
注目するわけ
外国語教育における
文化理解の素材としての
写真の魅力
海外の小中高校の日本語クラスで
子どもたちに日本の文化について話すとき、
彼らがきまって関心を抱くのは、
同世代の日本の若者の日常生活や文化です。
そういうとき、日本の若者のありのままの
日常を写した写真があったら、どんなにか
教室の話題も豊かになることでしょう。
しかし、美しい風景や伝統的な
日本文化をとらえた写真はあっても、
現代に生きる若者たちの表情や動きを
とらえた写真はなかなか手に入りません。
ましてや無償で教材として使用できるものは
少なく、ほとんどの海外の日本語教師にとっては
探すこと自体が至難の業なのです。
海外の小中高校の日本語クラスが
望んでいる写真とはどんなものか、
現在有力な手段となってきている
インターネットを使った写真提供には
どのようなことが考えられるのか。
本特集では、こうした問題を検討すると同時に、
「写真」
そのものが持つ魅力、
初等中等教育の外国語教育における
効用を考えてみたいと思います。
シリーズ
ことばは楽しい!2 p.8
ラトヴィア語
見る聞く考えるやってみる授業!2 p.10
体験してこわさを実感
素顔の高校生u p.16
いろんな所に行って、
いろんな人に接して
たくさんのことを吸収したい。
TJFの事業 p.12
「第4回高校生の生活フォトメッセージ
コンテスト」入賞作品決定
「文化を取り入れた日本語の授業
アイデアコンテスト」新たな展開へ
「2000年度第2回通常理事会・
評議員会」報告
事業報告(2001年1・2・3月)
国際文化フォーラム通信 no. 50 2001年4月
身近な日常生活を写し出す写真の力
CIS Heinemann Publishing 日本語コンサルタント
スー・バーナム(オーストラリア
ヴィクトリア州)
最近のことですが、日本語の初級クラスの教師が生徒に、教科
た。ひどい場合には、学習者に、学習対象としている言語文化圏
書に出てくる写真の中でどの写真が一番気に入ったか尋ねてみ
の人たちを、まるで異星人であるかのように
「鑑賞」
させていました。
たところ、最後列の席に座っていた生徒が間髪を入れず手を挙
幸い今では、外国語教育に携わる人は、文化を
「背景」
から救
げ、
「マサルが冷蔵庫をのぞいている写真!」
と言いました。この
い出し、正当に取り扱おうとしています。多くの教師やテキストの
素早い反応にちょっと驚いた教師が、どうしてその写真が好きな
執筆者は、言語と文化の境界を意図的にぼかし、一方を学ばず
のかと聞くと、その生徒は
「だって、僕も学校から帰ったらそうす
して他方を学ぶことは不可能であるという考え方に立っています。
るもの。冷蔵庫に直行するんだ!」
と答えたということです。
意味のある文化的内容を欠いた言語は、本物のことばではありま
この生徒は意識することなく、最近の
「文化」
のとらえ方にみられ
る本質的な特徴をついていたのです。現代の教育では、写真は
せん。そして、本物のことばを身に着ける一番いい方法は、文化
をその対象とする言語で語ることです。
ごく普通の生活を送っている人々の日々の現実、つまり身近なこ
とを見せるために使われています。特に外国語教育の初級段階
つくりものでない本物の文化との接触
では、対象とする文化のエキゾチックな面を強調するより、学習
現在広く使用されている教科書は、写真を言語教育の基本的
者自身の文化との類似性に重点を置く教え方が主流になってき
なツールとしています。実在する人物の生活を写した写真で構成
ています。最初に学習の対象となる文化の親しみやすい面を見
した物語が、学習者を対象とする文化の中に引き込んでいきま
せておいたほうが、後に学習者がその文化の異質な要素に接し
す。家庭や学校での生活、あるいは友人とのショッピング、クラブ
たとき、それを受容しやすいからなのです。
活動、修学旅行など、学習者とほぼ同世代の日本の若者の普段
の生活がありのままに写し出されています。そこには日本文化をこ
「文化」の学習で写真が果たす役割の変化
とさら美化したり、神話化したりしようとする姿勢は見られません。
つい最近まで、外国語教育の教材の中で使われる写真の役割
現実に即していればいるほど、いい写真なのです。最近は、ポー
は、言語の文化的背景を例示することでした。ここで重要なのは
ズをとったものや、紋切り型の写真は敬遠されるようになりました。
「背景」
ということばです。言語学習のどの段階でも、主要な学習
今の生徒は、紋切り型の写真ではなく自然な写真を好むようにな
内容は言語、それも文法が中心でした。
「文化」
は、言語の学習
っています。そういう写真に接することによって、つくりものでない、
(ものと考えられていた)
背景にすぎず、文法の学習に
に彩りを添える
本物の文化に触れることができるのです。
苦しんでいる生徒にわずかながら息抜きの機会を与えるという、
いわば副次的な役割しか
「文化」
には与えられていませんでした。
2
学習者の視点
そのため、使用される写真は、例えば金閣寺や富士山の写真な
では、これまで使われてきた写真、 例えば寺院や祭りのような
ど、学習対象である言語文化の象徴となっている有名な建造物
写真はもう重要な役割を失ってしまったのでしょうか。答えはむ
や自然の写真ばかりで、しかもその多くは人物のまったく写ってい
ろん否です。そうした写真も、人間味を加えることによって、今の
ない写真でした。
学習者に対して訴求力をもつようになるのです。大阪城の写真を
写真に対するこうした姿勢は、
「文化」
をどう解釈すべきかというこ
取り上げるのは大いに結構なことです。しかしそれが、絵はがき
とと表裏一体をなしています。以前は、文化といえば、歴史的、地
のようなきまりきった写真ではなく、例えば、修学旅行で大阪城
理的な面に焦点を当て、エキゾチックな面をことさら強調していまし
を訪れた日本の生徒を中心に据えた写真であれば、学習者は、
国際文化フォーラム通信 no. 50 2001年4月
日本の修学旅行を身近に感じることができるのです。色彩に溢れ
いる都市のなかで自分の行きたい所を探したりするのです。
た熱狂的な日光の祭りの写真も是非教科書に入れてもらいたいも
このように写真は、語学学習における、話す、聞く、読む、書
のです。しかし、今の学習者が最も好むのは、紋切り型の祭りの
くのどの作業にも生の材料を提供してくれます。視覚教材の強み
写真ではなく、例えば、祭りの仮装行列に参加している鎧姿の男
は、学習者が文法にこだわることなく自分が語る中身に集中でき
性が赤ん坊にミルクを飲ませている写真であったり、ティーンエー
るという点です。そうすることで、生徒と教師の間のコミュニケー
ジャーが行列を離れてお好み焼きを買っている写真なのです。
ションはより自発的で自然なものになり、生徒の動機づけも強く維
優れた教材用の写真を撮る写真家なら、顕在している文化に
持されるようになるのです。
焦点をあてるのでなく、その写真を使用する学習者のことも考慮
にいれて撮るのではないでしょうか。学習者の視点に立ってもの
写真に対する需要の高まりとインターネット
をみようとすることは歓迎すべきことです。できれば、生き生きとし
外国語の教師も学習者も、写真を
「読む」
能力は、以前よりも
た、ユーモアのある写真であってほしいと思います。よそいきの
遥かに高い水準に達しています。そして多くの人が写真を重要な
表情をした
「舞妓さん」
のありふれたポートレートよりも、舞妓さん
情報資料として積極的に利用したいと考えています。現在、多く
たちがプリクラで撮った写真を見ながらクスクス笑っている写真
の日本語教育関係者が新しい写真データバンクをウェブサイト上
のほうがいいのです。
に創設しようとしていますが、それも語学教育におけるこうした潮
流の反映なのです。これが実現すれば、それらの有益なサイトに
自然で自発的な学習環境を生み出す視覚教材
アクセスしてさまざまな質の高い写真を教材の一部として授業に
写真は、言語学習のための貴重な視覚的環境を提供してくれ
使う教師も出てくるでしょうし、また生徒自身にそれらのサイトにア
ます。学習者は写真を通じて、絶えず対象とする文化の生活を
クセスさせ、そこに載っている写真を彼らの課題の中に取り込む
具体的にイメージすることができます。レストランのショーウインド
よう助言する教師も出てくるでしょう。
ーに飾ってある料理のクローズアップ写真におもわず唾を飲みこ
こうしたサイトに集められた画像や写真の多くは、高度なテクノ
んだり、たくさん並んだ映画のポスターを見ながらどの映画が面
(そしてユーモア)
ロジーと人間味
をあわせ持っており、必ずや若い外
白いかと考えたり、東京の公共広場の写真に写っている時計を
国語学習者にとって魅力的なものになることでしょう。現代の外
見ながら時刻を日本語で表現する練習をしたりします。また、写
(authenticity)
国語学習、異文化学習のキーワードは
「本物
」
という
真に写っている駅名を読みながらひらがなの練習をしたり、いろ
ことです。そしてほとんどの若い学習者にとって、
「本物」
とは、身
いろな絵文字や標識の意味をさぐりながら、目の前に提示されて
近な現実の日常生活を意味しているのです。
スー・バーナム著、
日本語教科書『いま』1、2
CIS Heinemann Publishing(1998、2000)
3
国際文化フォーラム通信 no. 50 2001年4月
「写真」
のもつ可能性を生かす授業
東京外国語大学助教授
荒川洋平
「写真を使った外国語教育」
については何を今さら、という思い
を持つ方がほとんどでしょう。しかし、
「ではなぜ写真か?」
と改め
設備や使用時間の制限のなさ、電気機器と比べて特別な知識が
不要であること、壊れないことなどの利点もあります。
て問いかけられると、多くの教師が
「見た目の楽しさ→異文化理解」
という公式を答えるにとどまってしまうようです。ここでは写真を用
いることの意義と実際の授業での役立て方を再考してみます。
自由な連想と自己表現を導く
教師が掲げた写真に学習者が関心を持ち、経験を思い起こし
たのなら、もう写真は単なる見せ物ではありません。いかなる写真
学習者の個々の経験を引き出す
抑揚のない説明や、単調なドリルのくりかえしほど、
「つまらない」
であっても(人物がいればなおさら)、それはカメラマンが外界から切り
取ったものです。見る人は、写真撮影の前後にどんなことがあっ
授業はありません。
「つまらなさ」
とは、言い換えれば
「学習者が授
たのか、この切り取られた写真の外にどんな風景があるのか、と
業と自分とのつながりを見出せないこと」
です。そうした授業では、
いったことなどを自由に連想することができます。それは、きわめ
学生たちの関心を引きつけることができるせっかくの写真も、学生
て高度な心の編集作業です。この作業に
「ことば」
が関わってくる
にとってはただ提示されただけの教材で、
「息抜き」
の役割しか果
ことは言うまでもありません。外国語の授業であれば、文型(=論理)
たしません。
の枠組みを用いて学習者たちが自己表現するまで、あと一歩だと
たとえば、ある先生が日本のクリスマスの風景を学生たちに提示
いえます。
したとします。学生たちは何を思うでしょうか。ある学習者はそこに
並んだケーキを見て、それと自分の家のケーキを比べたかもしれ
授業での実践的な役立て方
ません。また、ある学習者は失恋した経験を思い出したかもしれ
スペースがないため個々の事例について論じることはできません
ません。前者はクリスマスに関しての
「祝祭」
「ごちそう」
といった共
が、まとめとして実践的なことに少し触れておきます。まず、写真と
同体レベルの経験であり、後者はきわめて個人的な経験です。い
いう強い力を持つ教材を教師が十分にコントロールすることです。
ずれにせよ、一枚の写真を通じて学習者が個々の経験を授業に
そのためには、写真の提示が
「意味のある積み上げ」
の一部であ
持ち込んだといえます。外国語の授業では、このように学習者の
るべきです。また、学習者が対象文化に対して持っているイメージ
個々の経験を学習に生かす工夫をすべきです。
は、教師が考えているよりはるかに多様です。その知識、理解の
足並みをそろえるのに写真は有用ですが、見えているものだけで
学習者の関心を喚起する
それならビデオを見せれば、と言う先生も多くいるでしょう。しか
ば、写真に写っているものの使途や、写っている人びとが交わして
し、ビデオ教材を使用して、ある場面・ある事物を解説する場合、
いるであろう会話を想像させ、話をさせることができます。また、そ
ビデオをポーズボタンで静止させることが多いはずです。動画は時
こから思い起こされる自分たちの文化について語り合うことによっ
系列という流れから逃れることはできないし、学習者も教師も始め
て、自分たち自身の文化の理解を互いに深めることもできます。写
から終わりまで集中していることはできません。一方、静止画の写
真は
「おしゃべりな静止画」
ですから、写真だけに語らせないで、
真は時系列から自由であるため、動画と比べて学習者の関心を喚
写真によって学習者を語らせること、そこに教師の力量が問われて
起しやすいことは確かでしょう。
くると思います。
もちろん、写真には、取り扱いの簡便さ、整理・保管のしやすさ、
4
なく、そこに見えていないものを語る力も写真にはあります。たとえ
国際文化フォーラム通信 no. 50 2001年4月
日本語教師たちの声──写真の効用
絵カードをはじめ、ビデオ、写真パネルなどさまざまな形態の
視覚教材がある中で、初等中等教育の日本語教師はなぜ
「写真」
3. 疑似体験が学習をサポートする
本来、言語や文化の学習に不可欠である
「人と人とのであい」
を使おうとするのだろうか。TJFが出版物やホームページで紹介
を、写真を使って疑似的に演出することにより、学習は現実に即し
してきた小中高校生の写真について、現場の教師はどう思って
たものになり、また意味のあるものとなる。特に同じ世代の人間が
いるのか、その声を紹介しながら、写真使用の利点をいくつか
写っている場合には、その生き生きとした表情や生活に、親近感を
あげてみたい。
抱き、感情移入がしやすくなる。
生徒たちはとても喜んで日本の小学生の男の子の生活を紹
1. 文字では伝えきれない内容を伝える
介する写真を見ました。その写真を使って日本文化について話
写真は文字を使わずに情報を伝達することができる。外国語
しあったり、日本語での会話もしたがりました。実際に日本人に
教育では、学習者にとってなじみのない物や現象を扱うことが
会う機会はめったにないのですが、写真を見てからは、友だち
多く、ことばで説明するよりも、写真を見せて説明したほうが有効
ができたみたいな気分になって、日本語の勉強に前より熱心に
である。
取り組むようになりました。給食を食べている男の子の写真を
写真は教材として効果的だと考えています。理由は次のとお
見て、まるでその子になったように食べる仕草をする生徒もいま
りです。1. 静止画像は文字による説明よりずっと強く見る者の
した。こういうことを通じて、例えば
「食べる」
ということばを自
感情に訴える。
「百聞は一見にしかず」
といいますね。2. 写真を見
然に教えられることがわかりました。
せることによって、事物や習慣や考え方の違いについて活発な討
論ができます。
【リン・セスラー・シュメリング、アメリカ、クロヴィス・グローヴ小学校】
【清水りつ、アメリカ、シェイラー・エアリア高校】
4. 固定観念を改めさせる
2. 視覚的刺激は学ぼうという意欲を高める
また、写真はことばではなく、視覚イメージで情報を伝達するた
生徒の自発的な表現意欲は、視覚的な刺激によってもたらされ
め、受け手がすでに持っている固定観念や先入観と結びつくこと
ることが多い。つまり、生徒は、その場にいるかのように感じ、そ
も多い。それを逆に利用して、そのことに気づかせるアクティビティ
れまで見たことのない事物や状況を見ることにより、尋ね聞いてみ
も行うことができる。
たい、それと比較しながら自分のことを話してみたい、書いてみた
いという意欲をもつ。
アメリカの高校生が日本の高校生に抱いている思いこみや固
定観念を多少なりとも改めさせるために、私たちは写真を使いま
写真は学習により豊かな刺激を与えて、生徒は新しい状況の
す。教室での討論でいちばん多かったのは、日本の高校生にも
なかで学んだことを使ってみようという意欲を確実にもつようにな
いろいろな人間がいるということがわかった、自分たちに似てい
ります。
【メアリ・グレイス・ブラウニング、イギリス、カウンティ中高校】
るところがたくさんある、という意見でした。
【リチャード・ケニア、アメリカ、フランクリン高校】
写真教材
「であい」
TJFでは、7人の日本の高校生の人物像と生活を、写真とテキ
目的としています。7人の自己紹介やメッセージがはいった冊子、
ストで表現した写真教材
「であい」
を今秋11月に完成させる予定
一日の生活を紹介した約 200 枚の写真シートと、そしてCD-
です。これは、海外で日本語を学ぶ中高校生が、実在する7人
ROM2枚(関連写真も追加した写真ファイルと動画や音声を使って主人公の肉
の主人公との疑似的な出会いを通じて、主人公の人間性や日常
声や生活場面を紹介したもの)
から構成されています。主に米国をはじ
生活の様子に触れながら、日本語や文化の学習を進めることを
めとする英語圏の日本語教育実施校に寄贈される予定です。
5
国際文化フォーラム通信 no. 50 2001年4月
データベース型写真素材集の開発とこれから
パデユー大学外国語外国文学科準教授・外国語教育メディアセンター長
畑佐一味(米国
インディアナ州)
インターネットの普及に伴いネット上で写真集などが簡単に閲覧で
を増やすことはいたって簡単になりました。そこで、本プロジェクトで
きるようになりました。しかし、素晴らしい写真がたくさん見られるにも
は日本の知人の協力を得て、写真を投稿してもらうことで数を増やし
かかわらず、これらの写真の多くは著作権の制限があり、たとえ教育
ていくことを計画しています。その場合、投稿者が一つのテーマに絞
目的であっても自由にダウンロードして二次利用することはできません。
った写真を撮ってくださると、いわゆる
「日本紹介の写真」
にならず、
こうした状況を打開するために、最近教育目的であれば使用制
より面白いものができると考えています。テーマは物でも文字でも特
限がない日本語教育用写真素材集がいくつか開発されています
定のトピックでも何でも構いません。日本人としては学習者に見せた
(http://www.sla.purdue.edu/fll/JapanProj/Resources/AVresources.htmlで
くないようなマイナスイメージの写真も出てくるかもしれませんが、それ
素材集のリストを閲覧できます。リスト外で利用できるものがあればお知らせください)
。
(小文字のculture★注)
の一部ですから、それなり
も日本社会または文化
素材集の開発が増えた背景には、デジタルカメラやスキャナの普及
(実際それを教室で使うかどうかの判断は教師に任せます)
。た
に意味があります
で誰もが簡単に写真を公開しやすくなったことがあります。
だし、人物の顔がはっきり分かるような写真はプライバシーや肖像権
の問題もありますので、十分に気をつけていただく必要があります。
検索方法に工夫を
写真素材集の多くは写真を単純なリストの形で羅列しているため、
Webに載せることを目的として撮影する場合は、あまり高解像度
の画像は必要ありません。コンピュータ画面できれいに見えれば
数が増えると使い勝手が悪くなるという欠点があります。そこでコレク
(800×600ピクセル程度)
十分です。ファイルサイズも小さくてすみますし、
ションをデータベース型にし、必要なものを検索できるようにすると使
カラープリンタできれいに印刷できますし、OHPシートも作れます。
いやすくなります。例えば、パデュー大学の
「ライセンスフリー日本語
(サンプル画像)
ただし、複数の写真をサムネイル
でリスト表示するとき
(
(http://tell.fll.purdue.edu/jphotos p. 7上参照)
教育用写真ギャラリー」
は、小さい別ファイルを作って表示した方が、待ち時間が短縮され
もワシントン&リー大学の氏家氏のコレクションと統合した結果、総
ユーザーがいらいらしなくてすみます。
数が700枚余りとなりました。そこで、これを契機に、写真集をデー
また写真だけでなく、音声やビデオファイルを加えてマルチメディ
タベース型に改造し、図書検索のようにキーワードなどを使って必要
ア・データベースにしていくとより効果的でしょう。たとえば、
「ポタポタ」
な写真だけを呼び出せるようにしました。
を検索すると、蛇口から水が少しずつもれている音声入りビデオが
写真の検索方法は3 種類あります。はじめの二つは“ food ”、
提示されるといった具合です。
“traffic”などといった英語のキーワードと、
「食べ物」
「交通」
といった
従来は情報の受信者だった人を気軽に情報発信源にしてしまう
日本語のキーワードです。そして三つ目は写真の中に写っている日
のがインターネットのパワーです。この力は潜在的情報発信者数を
本語の文字です。例えば、
「日」という漢字を検索すると「日本」や
飛躍的に高めました。したがって、一般の人が草の根的に作った
「日曜日」
に関する写真が提示されます。また、特定の片仮名や平
いろいろなモノの中からいいモノを選び出し、それを束ねてより大き
仮名と関連付けされた写真を探すこともできますから、文字探しの
なモノを作っていくのがインターネットには向いているのではないかと
ようなゲームを作ることもできます(写真は教育目的であれば、どのように使って
考えています。これには何ができるか分からないという面白さもありま
いただいても構いません。ただし、発表されるときには出典を明記してください)
。
す。さあみなさん、デジカメでどんどん写真を撮ってWWWにアップ
ロードしましょう。
投稿で広げる写真の数と多様性
冒頭でも述べましたように、デジタルカメラなどの普及で写真の数
6
★注:小文字のculture
(“small c culture”)とは、文学・芸術などの「高尚文化」を
意味する“big c culture”に対して、
「日常生活文化」を指す。
国際文化フォーラム通信 no. 50 2001年4月
インターネットで探そう
日常生活の写真!
キッズ・ウェブ・ジャパン:
小中高校のクラス、
学校生活、行事を
紹介している。
http://www.jinjapan.org/
kidsweb/school.html
パデュー大学「ライセンスフリー日本語教育用
写真ギャラリー」
:右上の画像は「食べ物」に
関する検索結果の画面の一部。
ロジャー&マリリンズ・
フォトツアー・オブ・トーキョー、ジャ
パン:制作者自身が
7日間東京を旅したときの
写真をイラスト、音、感想
なども交えて紹介している。
http://tell.fll.purdue.edu/jphotos
http://www.artisandevelopers.
com/web/tokyo/
TJF Photo Data Bank オープン!
TJFでは、かねてより海外の初等中等教育レベルの日本語・日
語学教育で写真を使用する目的はさまざまですが、海外の小
本文化教材になるテキスト、画像、音声をホームページ上で提供
中高校の日本語教育を支援するTJFとしては、若者の関心を引き
し、コンピュータを利用した教材作成を支援してきましたが、
付けるような
「個人」
の素顔や生活場面を写した写真を、外国語
2001年5月30日に新コーナー「TJF Photo Data Bank」を開設す
教育・文化理解教育での利用を考慮に入れながら集めていきた
ることになりました。このデータバンクは、日本の小中高校生の生
いと考えています。
活文化をテーマに、日本の高校生自身が写した写真やTJFが撮
教育利用の観点から作られたサイトが非常に限られている現状
影した写真などで構成されます。まず約1,000点を公開しますが、
において、インターネット上で写真を探すことは、教師たちに貴重
写真の数は順次増やしていく予定です。
な時間を浪費させかねません。TJF Photo Data Bankは、教
写真は日本語教育や国際理解教育など教育目的かつ非営利
目的での使用に限り、使用料なしで自由に使用することができま
師たちの意見を聞きながら、そうした時間を少しでも短縮できるよ
うに改善を図っていきたいと考えています。
(ただし、教科書等の出版物に載せる場合は、TJFの許可が必要です)
す
。利用
にあたっては、TJFねっとに会員として登録し、IDを取得していた
だく必要があります。また撮影者の著作者人格権および被写体の
プライバシー保護のため、会員登録を通じ、使われる方の所属
(縮
や連絡先を確認させていただきます。写真はすべてサムネイル
小判のサンプル画像)
で表示され、カテゴリーごとに写真を探すことが
できます。さらにキーワードを入力して目的の写真を即座にリストア
TJF Photo Data Bankの
イメージ画像。
ップすることも可能です。
インターネット上には、一見、日本紹介に役立ちそうな写真が多
く載っていますが、教室で見せるには小さすぎたり、細かいところ
にピントが合っていなかったり、芸術を追い求める余りエキゾチッ
クすぎたり、使用料が高すぎて二次利用できなかったり、また、
風景ばかりで実際にそこで生活している人の気配を感じることが
できなかったりする場合が多いのが現状です。
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