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1999(日本語Pdfファイル)
2000.L2.1.1
製油所設備の汚れ防止・除去システムの研究開発
(汚れ防止・除去システムグループ)
根岸第401研究室 ○堀井秀之 森隆史 青木大輔 水上博文 牧芳彦 福地正
金井宏樹 坂本章 笹田清 宮田浩之 川口俊郎 藤巻信一
佐藤和行 三浦晃 桑原淳 園田悟 松根繁樹 寺田進亮
森岡憲一郎 寺野博 市川明
市原第401研究室 玉川忠 川口博冨 伊藤彗 前田良二 村上哲也 久保真弘
吉川忠芳 川平洋司 小池一栄 穐山義廣 井川吉男
佐々木一郎 菱山俊雄
1.試験研究の内容
石油精製業界各社は、安全性の向上、コストダウンに向けて鋭意検討中である。その
中で、製油所設備においては、省エネルギー対策の実施と共に、連続運転時間(ランレ
ングス)の延長がクローズ・アップされている。
現在、連続運転の長期化に対して最も大きい阻害要因となっているのが、精製過程で
生じるスケール・スラッジ等の汚れに起因する機器・配管等の閉塞・熱交換率の減少等
である。本研究では、これら汚れに対する対策として、汚れ分析、監視(モニタリング)、
抑制(防止)、除去(クリーニング)の項目について研究開発を実施し、それらの技術を
組み合わせた製油所設備の汚れ防止・除去システムの確立を図る。
1.1 汚れ発生要因の分析・成分詳細分析
原油にNaOHを添加すると汚れが発生する現象より、原油中の汚れ成分のひとつとい
われるアスファルテンに着目し、HClやNaOHを添加した場合の汚れの挙動を調査す
ることを目的とした。そこで水中の微粒子の挙動調査に使われている電位差滴定法を用い
て、アスファルテンが酸、塩基から受ける影響の調査を検討する。
一方、汚れの発生が顕著である石油精製設備から、実スケールの採取を行い、その成分
特性を詳細に分析するとともに、付着・分布特性を明らかにする。
1.2 汚れ発生傾向監視システム開発
(1) タンクスラッジ計測
大型貯油タンク内のスラッジ堆積状況について、その量と分布を、超音波を用い
て測定することを目的とし、その超音波測定装置を製作し、実際タンクへの適用に
向けて検討を行う。
(2) 熱交換器のモニタリングシステム
熱交換器の汚れを定量的に評価する値として、総括伝熱係数・圧力降下を用いる
こととし、汚れが顕著である実設備の熱交換器を選定し、その部分の正確な総括伝
熱係数を算出し、その変化を把握する。また、監視技術について、従来の1対1の
ケーブル計装と比較してフレキシブルな対応が可能である、無線伝送やフィールド
バスといった新規伝送技術を利用した簡易計装システムについて比較検討を行い、
石油精製装置へ適用・評価する。
1.3 汚れ抑制技術開発
(1) 残油脱硫装置プロダクトオイル・ランダウン系用のファウリング抑制剤
従来から検討、研究されている原油予熱系のファウリングとは異なり、高温高圧
かつ冷却過程で発生する残油脱硫装置プロダクト・ランダウン系(以降、RDS
R
/D系と称す)のファウリングに焦点を当て、そのファウリングに対して、実装置
での運転条件を再現することが可能な試験装置を製作して、各社のファウリング抑
制剤を評価し、実機に適用する。
(2) 汚れ付着防止機器(水系)
循環水で冷却する熱交換器に、汚れ付着防止機器(静電気式、電磁場式)を設置
し、その熱交換器チューブの汚れ状況調査や付着物の成分分析などを行うことによ
り、汚れ付着防止機器の性能を評価する。
(3) 汚れ付着防止器具(油系バネ式)
汚れが顕著であり、連続運転に支障をきたす実設備の熱交換器を選定し、その熱
交換器チューブ内に汚れ付着防止器具(油系バネ式)を設置し、そこの汚れ状況(伝
熱性能)の経時変化を監視し、汚れ付着防止器具の性能を評価する。
(4) 汚れ付着防止装置(油系電磁気式)
原油予熱系のファウリング評価用の試験装置に、電磁気的汚れ防止装置を設置し、
原油のファウリング変化を分析し、汚れ付着防止装置の適用の可能性を検討する。
(5) 加熱炉管のコーキングシミュレーション
ある特定の加熱炉を用いて炉内部の燃焼,熱流動,輻射熱伝熱解析、及び加熱管
内部の熱量流動解析を実施し、加熱炉のヒートスポット、管内流動からコーキング
発生の可能性について解析・検討をする。
(6) 脱塩装置の能力増強
原油中には、多少の差はあるが、塩分および金属等の不純物質が含まれており、
それらが、熱交換器、加熱炉の加熱部に沈積し伝熱効果を減少させたりまた腐食の
原因となるため、脱塩装置により脱塩処理する必要がある。原油予熱系に設置され
る脱塩装置は、原油に水を加えて攪拌混合し、高圧電場下で再分離させる電気脱塩
法が広く用いられている。
そこで、原油予熱系並列2系統に対し、一系統のみ脱塩装置を増強(電極3段、
ディストリビュータ2段)し、従来型(電極2段、ディストリビュータ1段)と比
較する。監視項目は脱塩装置前後の原油中の塩分・SS分、原油予熱系最終熱交で
のU値、差圧である。
1.4 汚れ除去技術開発
(1)プラント薬品洗浄技術
現状のデコンタミネーション技術は、無機系の汚れを除去する能力が無く、その
ため、適用後もスラッジ等の汚れが残留する。
(イ)水系薬品洗浄によるスラッジの排出
現状の水溶性薬剤によるデコンタミネーション技術の一つであるライフガード
処理(以降LG処理)に、スラッジ排出性を持たせるように強化改良を行い、試
験装置にてその排出性の向上効果を確認し、実設備を用いて、その改良した効果
を評価する。また、他の薬品による洗浄についても評価する。
(ロ)油系薬品洗浄によるスラッジ排出
前項(イ)において使用した薬剤は水溶性であり、従って適用後は多量の排水が
発生する。そこで油溶性の洗浄剤についても評価を実施する。
(ハ)薬剤によるデガッシング
定期消火点検時において、スチームパージを実施した後でもハイドロカーボン、
H 2 S及びNH 3 ガス濃度が高く、入槽に時間を要する機器に対し、消臭剤処理を
組み合わせたデコンタミネーション技術を適用し、その除去性を評価する。また、
他の薬品によるデガッシングについても評価する。
(ニ)泡を利用した洗浄
石油精製設備において、ベッセルやタンクを薬剤により洗浄する場合、構造上
洗浄したい範囲に対し、多くの液量を必要とする。そこで泡を利用した洗浄方法
を検討した。
(2) タンク薬品洗浄
現在、原油タンク、重油タンク底部にスラッジが堆積しており、タンク開放によ
る清掃時に、そのスラッジ除去のために、長期間に及ぶ清掃工程が必要となってい
る問題がある。さらに加えて、今後の原油事情から良質原油の減少による原油内の
スラッジ増加の懸念や、貴重な資源である油分の廃棄物処理、大気への有害物排出
等の問題も抱えている。そこで、タンク内部のスラッジを人手によらず、タンク洗
浄装置を用いて洗浄する技術を検討し、実機へ適用する。
また、堆積スラッジを短時間で洗浄し、同時に含油成分を回収するスラッジ分離
装置付きのタンク洗浄装置の導入の検討を行った。
2.試験研究の結果と解析
2.1 汚れ発生要因の分析・成分詳細分析
ラボ試験では、油中にHCl,NaOHを添加すると2層に分離するので界面活性剤
を添加し、ガラス電極を非水溶媒用の電極に交換したが、アスファルテンに起因すると
思われる様な変曲点等の有用な情報は得られなかった。
そこで電位差滴定に変わる手法として、ゼータ電位測定によるアスファルテンの分散、
凝集状態の調査を検討した。原油中にコロイド分散しているアスファルテンがHClや
NaOHを添加する事により不安定になり、凝集、合体する事で汚れ成分として析出す
るといわれているため、アスファルテンコロイドのゼータ電位とその粒径分布を測定す
る事で、その分散、凝集状態を知る事が可能であると考えている。
また、本年度は常圧蒸留装置2装置、減圧蒸留装置2装置、流動接触分解装置2装置、
残油脱硫装置1装置から付着物の採取を行い、付着量測定及び成分分析を行った。ただ
し、減圧蒸留装置、流動接触分解装置、残油脱硫装置についてはデータ数が少なく解析
については、常圧蒸留装置についてのみ実施した。スケール付着量の結果を図2−1に
示す。スケール付着量はいずれも原油予熱系の特に脱塩装置下流側に集中する傾向が確
認された。運転温度とスケール付着量を比較すると昨年同様、運転温度が高いほどスケ
ール付着量は増加することが分かった。またスケール分析の結果を図2−2に示す。強
熱減量成分(ignition loss=I.L.)については運転温度200℃まで温度が高くなるに
伴いその含有率が高いのは原油中にコロイドとして存在していたアスファルテンが加熱
されることで凝集し、汚れとして沈着するからと考える。また、運転温度200℃以上
は強熱減量成分が減少傾向であるが、この温度域では炭素自体の含有率が低下しており、
逆に鉄分が増加していること、スケール中の水素と炭素のモル比(H/C比)が200℃
付近で急激に低下しないこと、炭素以外の強熱減量成分(T-S、H,N)の低下が認めら
れないことからアスファルテンがコーキングするのではなく、硫化鉄が増加するためと
推定される。ただし、鉄分の含有率は最大でも30wt%程度と少なく、この原油予熱系に
おいて問題となる汚れは強熱減量成分であると言える。
運転温度とスケール成分の関係(常圧蒸留装置)
160
原油予熱系A系
原油予熱系B系
No.1 サイドリフラックス 系
O/H 系
AR ジェネレータ 系
120
100
Fe2O3(A装置)
I.L (A装置)
Fe2O3(B装置)
I.L (B装置)
Fe2O3(C装置)
I.L (C装置)
Fe2O3(D装置)
I.L (D装置)
90
80
70
60
含有率(wt.%)
80
60
40
50
40
30
20
20
1基目(出)
3基目(出)
2基目(入)
3基目(入)
12基目(出)
3基目(入)
11基目(出)
デソルター
6基目(出)
7基目(出)
8基目(出)
9基目(出)
10基目(出)
11基目(出)
0
1基目(入)
5基目(入)
デソルター
6基目(出)
7基目(出)
8基目(出)
9基目(出)
10基目(出)
スケール付着量(mg/cm2)
140
10
0
0
50
100
150
200
運転温度(℃)
250
300
図 2-1 常圧蒸留装置のスケール付着量 図 2-2 運転温度とスケール成分の関係
350
400
2.2
汚れ発生傾向監視システム開発
(1) タンクスラッジ計測
(イ) 従来のタンクスラッジ測定
従来は、錘付きの巻尺を多数のタンク屋根板の貫通部より内部におろして、ス
ラッジに到達した高さを測定し、スラッジ高さ、分布、残スラッジ量を求めてい
る。残スラッジ量については、後述の超音波法と比較する必要があるためこれま
での概略算出方法よりも精度の高い方法を検討し、各測定点を頂点とする三角柱
の体積の総和を計算する方法で求めることとした。
(ロ) 超音波を用いたタンクスラッジ計測装置
測定装置として、超音波を使用する漁船等に搭載されている魚群探知機と同じ
原理を用いた装置を開発した。貯油タンク内のスラッジ高さを短時間で、広範囲
にわたり測定するものである。(図2−3参照)
図2−3 タンクスラッジ計測システム概要図
なお、実際に原油タンクで測定する前にその性能を評価するため小型の仮設タ
ンクに水を漲り、ブロック、土嚢等の障害物を底部に置いて試験を行った。方法
としては直径 2.5m、高さ 3.0m程度の円筒形タンクに水を漲り、ブロック等を
浸漬させて測定した。
測定の結果、高さ 50cm の対象物については精度よく表示することができた。ま
た数値表示画像においては最小 10cm 単位まで測定対象物を分解表示することが
できた。実際の原油タンクスラッジ測定においては充分な精度であると言える。
(2) 熱交換器のモニタリングシステム
簡易計装システムについては、無線計装システムは検討の結果、精製プラント
導入に耐えうるものがないため、フィールドバス方式を採用した。設置対象とし
ては汚れの監視を行っているフルフラール装置の原料油予熱系熱交換器とした。
今回構築したフィールドバス方式はマルチベンダー、電気/光フィールドバスの
混在、伝送器数量16台(電気式8台、光式8台)等複雑なシステム構成にも関
わらず、現在順調に稼動しており、プラントへの適用も十分可能であることが分
かった。今後はこれを用いて、熱交換器の伝熱特性や圧力の変化を長期にわたり
監視していく予定である。
2.3
汚れ抑制技術開発
(1) 残油脱硫装置プロダクトオイル・ランダウン系用のファウリング抑制剤
RDS R/D系用ファウリング生成試験装置を用い二種類のファウリング抑制
剤の効果を比較した結果、その優位性の把握ができることが分かった。実機につい
ては、過去に注入実績のある抑制剤を注入し経過監視中である。
(2) 汚れ付着防止機器(水系)
循環冷却水に関する平成10年度の評価結果では、炭酸カルシウムやシリカの付
着を抑制できるという知見を得たため、今年度は循環冷却水側の汚れが顕著な熱交
換器に適用し(図2−4参照)、スケール分析(設置前)と総括伝熱係数(U値)につ
いて評価を行った。表2−1に同機器の下流熱交換器に付着しているスケールの成
分分析結果(汚れ付着防止機器設置前)を示す。また、比較としてテストクーラー
に設置したチューブの分析結果も示す。テストクーラーにおいて、付着防止機器の
設置により、Si や Ca の質量割合が減少している。実プラントにおいても設置前は
Si,Ca,Mg が存在し、今年度の設置により減少が期待される。なおU値については、
運転に入って間もないため、長期にわたり継続監視していく予定である。
蒸留塔の塔頂油
流量計
コンデンサー
循環冷却水
クーリングタワー
レシーバー
図2−4 水系汚れ防止機器設置箇所
表2−1 循環冷却水側チューブ内スケールの成分分析(mass.%)
成分
実プラント
汚れ防止機器設置前
1.96
20.6
2.55
11.3
4.62
2.71
56.26
Fe
Si
Ca
Mg
Al
Zn
その他
モニタークーラー
汚れ防止機器設置前
32.7
34.6
5.4
21.6
0.1
1
4.6
モニタークーラー
汚れ防止機器設置後
59.9
0.1
0.1
0.1
5.2
0.3
34.3
(3)汚れ付着防止器具(油系バネ式)
対象熱交換器は、汚れが著しく、連続運転に支障をきたす常圧蒸留装置原油予熱
系の並列2系統の最終熱交換器とし、一方は非装着、もう一方は装着して、総括伝
熱係数:U値を監視した。また、設置後約 250 日経過したところで、より振動しや
すい(バネ定数の小さい)付着防止器具に変更した。結果を図2−5に示す。付着
防止器具を装着している方が、U値の低下が小さい傾向にあり、特に変更後はU値
低下がさらに小さかった。これは、変更後の付着防止器具のバネ定数を小さくした
ことで、プロセス流体の流動によるバネの振動が起きやすくなったためと推定され
る。一方、変更前の付着防止器具の破損は約 250 日の使用で 3,640 本中 4 本であ っ
た。同器具は両端固定型であり、また最終熱交の最終パスには設置しなかったため、
破断しても下流に流されることはなく、配管や加熱炉等の閉塞を防止できた。
1
H10年器具:無
ばね定数=15.2 N/m
H10年器具:有
相対U値(運転開始時=1)
0.8
H11年器具:有
0.6
ばね定数=19.6 N/m
0.4
未装着
0.2
流量補正120,000BD、BTM収率30%
0
0
50
100
150
200
250
300
運転日数 日
図2−5 付着防止器具の効果(熱交換器の総括伝熱係数の経時変化)
(4) 汚れ付着防止装置(油系電磁気式)
電磁気的汚れ防止装置の評価にあたり、原油予熱系を模擬した加熱タイプのファ
ウリング生成試験装置を製作、使用した。ファウリング生成試験装置は、原油試料
を加圧下、一定流量で循環し、ヒーターチューブの出口原油温度が一定になるよう
に外面から加熱を自動制御する。ヒーターチューブ内に発生した汚れの付着量、付
着速度と試料油中のアスファルテン含有率を比較した結果を表2−2に示す。平成
10年度と同様、油の電磁気的処理は汚れ抑制と汚れ促進の相反する結果が得られ、
それがアスファルテン含有率と相関があることが認められた。実運転では多種の原
油を処理するため常にアスファルテン含有率が少ない状態ではなく、またアスファ
ルテン含有率のわずかな変化で汚れ抑制から促進へ変化する。したがって原油予熱
系では電磁気的方法よりは、付着防止器具(バネ式)や一般的に用いられている薬
品による汚れ抑制が望ましいと考える。
表2−2 電磁気的汚れ防止装置評価試験結果
試料油A
試料油B
試料油C
試料油D
試料油E
チューブ汚れ付着量
mg
電磁気的
電磁気的
処理無
処理有
54.2
6.2
45.9
37.4
28.3
16.8
13.2
10.6
81.8 127.6
チューブ汚れ付着速度
mg/cm 2/month
電磁気的
電磁気的
処理無
処理有
10.0
1.1
8.4
6.9
5.2
3.1
2.4
1.9
15.0
23.4
汚れ付着
抑制率
%
アスファルテン
含有量
wt/wt %
89
18
40
21
(増加率)
56
1.5
1.6
1.7
1.6
1.9
注意)アスファルテン含有量4.2%の試料油で試験したが、電磁気処理前の循環ポ
ンプ部で汚れにより作動できなくなり、試験ができなかった。
(5) 加熱炉管のコーキングシミュレーション
シミ ュレ ー ショ ン対象の加熱 炉 は室 蘭 分室 の間 接 脱硫装置の チャージ ヒー ター
で、箱型・水平加熱管・ウォールバーナーである。プロセス流体の通油量を 20,000BD,
32,000BD,40,000BD の3条件について、それぞれの炉内燃焼条件、管内流動条件か
ら流体中の重合物の堆積速度・堆積量を繰り返し計算で求めた。図2−6に通油量
20,000BD での加熱炉管外面の熱流速分布、図2−7に加熱炉管長さ方向のコーキン
グ発生量を示す。入口側(上側)から6,7,8本目の加熱管のコーキング量が多い
のは、熱流速が大きいためである。表2−3に各運転条件ごとの 2 年連続運転での
コーキング発生量合計を示す。通油量が低く、入・出口温度の高い 20,000BD の運転
条件が他の条件に比べて多くコーキングする可能性があることが分かった。このシ
ュミレーションによりコーキング発生状況を解析・検討することが可能であること
が分かった。
6,7,8
本目
W/m 2
図2−6 加熱炉管外面の熱流速分布(通油量 20,000BD;シミュレーション)
単位面積当りのコーキング発生量
運転時間
17280 時間
15120 時間
12960 時間
10800 時間
8640 時間
6480 時間
4320 時間
kg/m2
2160 時間
図2−7 加熱炉管長さ方向のコーキング発生量(シミュレーション)
表2−3 各運転条件ごとの 2 年連続運転でのコーキング発生量合計(シミュレーション)
通油量
プロセス流体入口温度
プロセス流体出口温度
コーキング発生量
40,000 BD
382 ℃
414 ℃
1.477 kg
32,000
372
392
0.577
BD
℃
℃
kg
20,000
390
427
4.162
BD
℃
℃
kg
(6)脱塩装置の能力増強
※運転条件は以下のとおりである。
処理原油油種:南方原油、PGM、ALM
通油量:120,000BPD(A 系統:60,000BPD、B 系統 60,000BPD)、温度 128℃
混合弁差圧:A 系統=150 kPa、B 系統=100 kPa
表2−4に脱塩前後の原油中の塩分水泥分、SS分等の結果を示す。脱塩装置の
電極を2→3段、ディストリビュータを1→2段にすることで、脱塩原油中の水分、
水泥分、SS分を減少させることができることが分かった。今後もデータの採取を
継続する予定である。なお、処理原油が低塩分原油であったため、脱塩原油中の塩
分は A,B ともに同程度であった。また、マッドウォッシュは、排水中のSS分が低
いため(A,B 系共に 8.7mg/L)、その効果は不明である。高SS原油処理時もしくは
運転終盤に効果を発揮するものと考える。
運転開始して間もないため A,B 系統のU値の優位性は認められなかった。今後も
長期にわたり監視していく必要がある。B 系統の方が脱塩後原油中の水泥分、SS
分が多く、これらが汚れとなって熱交換器に付着堆積し、U値が低下すると推定さ
れる。また差圧の変化についても、A 系で 0.09MPa→0.10 MPa、B 系統は 0.08 MPa →
0.08MPa とほぼ変化が無かった。
表2−4 脱塩前後の原油中塩分・水泥分・SS分等の変化
(南方原油 4 回と PGM,ALM 各 1 回の計 6 回の平均値、SS 分は PGM,ALM の2回の平均値)
系 統
名
A系
B系
2.4
能 力
増強
○
×
塩分 ppm
脱塩前 脱塩後
6.45
2.9
6.45
2.4
水泥分 vol%
脱塩前 脱塩後
0.05
0.05
0.05
0.17
水分 vol%
脱塩前
脱塩後
0.075
0.058
0.075
0.39
SS 分 ppm
脱塩前 脱塩後
81.5
32.0
81.5
43.5
汚れ除去技術開発
(1) プラント薬品洗浄技術
(イ) 水系薬品洗浄によるスラッジ排出
(a) 重質油分の溶解性向上の検討
油分除去効果の強化策については、S/D 操作で行う軽油循環工程に着目し、よ
り重質の油を速やかに溶解させるため、その軽油中に芳香族炭化水素系溶剤を添
加することを検討した。
先ず、その効果を検証するため、試験を実施することとした。試験は、模擬ス
ラッジを調整し、これに対して「軽油循環無し」、「軽油循環実施」、「軽油循環+
溶剤添加」の3条件で浸漬処理し、その後それぞれに対し、水をベースとしたL
G処理を実施することで油分の除去効果を比較した。
なお、軽油に添加する芳香族溶剤は高沸点型芳香族溶剤を使用し、蒸留温度の
異なる2種類(芳香族溶剤①159∼171℃,芳香族溶剤②183∼202℃)を比較する
とともに、その添加濃度を変えて、油分の除去性を評価した。
試験の結果、表2−5に示すように軽油に芳香族溶剤を添加した場合、他の仕
様に比べてよりLGでの油分除去効果が高くなることが分かった。これは、スラ
ッジ 中に 含 まれ る重質の油が よ り低 粘 度で 比重 の 軽い軽質の 油に置換 され るた
めと考えられる。また、軽油に添加する芳香族溶剤の濃度が高いほど油分除去効
果は高くなることが分かった。そこで実設備では蒸留温度の低い芳香族溶剤(①
159∼171℃)を軽油循環中に 20wt%添加することとした。
表2−5 軽油循環における芳香族溶剤の添加濃度と油分除去率について(ラボ実験)
仕 様
軽油処理無し(LG処理のみ)
軽油処理
軽油+芳香族溶剤①20wt%
軽油+芳香族溶剤②20wt%
油分除去量(g)
14
21
30
29
油分除去率(%)
46
70
100
97
(b) 実設備への適用と結果
実設備適用に当たっては、その対象を減圧蒸留装置の汚れの多い Charge 系およ
び BT’M 系とした。また、本設による軽油循環中に前項(a)で決定した芳香族溶剤
を添加し、その後、仮設設備を接続して双方の系を循環することとした。なお、
この時加熱炉および精留塔については循環系統から除いた。洗浄方法を表2−6
に示す。
機器開放の結果の一部を図2−8,9に示すが、昨年と比較し、チューブ側、
シェル側のいずれも油分、スラッジともに低減し、仕上りは向上した。特にチュ
ーブ内の汚れについては、ほぼ完全除去に近い仕上がりとなった。また、シェル
側に おい て も全 てのチューブ 間 で目 通 しが 可能 で あり汚れの 残留も僅 かで あっ
た。シェルカバー内および、流れに対しデッドスペースとなるチューブバンドル
のフローティングヘッド側下部には若干のスラッジの残留が認められたが、熱交
換に大きく寄与する部位ではないため問題ないと思われる。一方、洗浄中の臭気
異常は認められなかった。
表2−6 減圧蒸留装置 Charge/BT’M 系洗浄方法(実績)
工 程
薬品仕様
軽油循環
芳香族溶剤
①20wt%対軽油
LG処理
排泥処理
(1 回目)
排泥処理
(2 回目)
LG-1600 1.0wt%対水
LG-3000 0.5wt%対水
排泥処理剤 1.0wt%
排泥助剤 A 0.1 wt%
排泥処理剤 1.0wt%
排泥助剤 B 0.02 wt%
温度(℃)
184∼200
(フラッシャー BT’M 温度)
対水
対水
対水
対水
時間(h)
7
78∼92
8
常 温
2
常 温
1
図 2-8 BT’M 系 H/E チューブ内面 図 2-9 CHARGE 系 H/E チューブ外面
今回の結果から、本工法にて十分に汚れを除去することが可能であることが分
かった。ただし、軽油処理中にその温度が添加した芳香族溶剤の蒸留範囲以上に
なってしまったこと、シェルカバー、チューブバンドル外面のフローティングヘ
ッド側へのスラッジ残留等、改善すべき点がまだ残されていると言える。
そこで、現在さらに汚れへの浸透性、重質油に対する溶解除去性の優れた軽油
処理仕様を検討中である。これにより、水ベースでの洗浄仕様の簡素化および合
理化が可能となり排水総量を低減出来るものと考えている。
さらに今回は、工程の都合上止むを得ず発生した排水の全量を構外持ち出し処
理としたが、現在、この排水を仮設備で完全に処理することについても併せて検
討中である。発生する排水は、とくにCOD,T−Nがともに高く、薬品添加処
理では双方の低下が難しい。そこでイオン交換樹脂を使用して処理することを検
討している。ラボ試験の後、実際の洗浄の際に使用する樹脂塔の詳細設計まで行
う予定であったが、現在、ラボ試験の結果CODについて排水基準値 50mg/l に
対し、35∼40mg/l と、かろうじて達成するにとどまっており、実際に適用するに
あたって不安が残る結果である。現在、CODを低下させるための仕様を継続試
験中である。
(c) 脱塩装置洗浄について
室蘭分室の脱塩装置2基と循環ポンプ、仮設のスラッジキャッチャー・タンクを
組み合わせて循環ループを確立して、廃液の COD の低いULI社Zyme−Fl
ow薬品を薬品注入し、洗浄液による循環洗浄を行った。洗浄により、約33%
のスラッジ排出ができたが、全量排出までには至らなかった。原因としてはスチ
ームや窒素による攪拌が不十分であったこと、スラッジキャッチャーでの能力不
足による洗浄液からのスラッジ除去が不十分であったことがあげられる。脱塩装
置内部のノズルを洗浄用に増強するなどのハード面での対応、スラッジキャッチ
ャーの能力向上が必要となることが分かった。脱脂は十分なされており、また入
槽時問題となるガスは検出され、デコンタミネーション,デガッシングは良好で
あった。
(d) 薬品の再利用について
室蘭分室で行った脱塩装置の洗浄廃水に洗浄能力が残っていたことから膜分離
処理を行うことで薬品の再利用について検討した。洗浄排液から膜分離処理して
回収した薬品をラボ実験にて評価した結果、新品薬品:回収品=1:3の割合で
通常の洗浄能力が期待できることが分かったため、川崎分室の脱塩装置について
適用した。その結果、デコンタミネーション,デガッシングに関して室蘭分室で
の脱塩装置と同程度の仕上がりにするには新品薬品を追加する必要があり、結果
的には新品薬品:回収品=1:2程度となった。また、川崎分室での洗浄排液を
分析した結果、洗浄能力が残っておらず残留スケールの方に吸着していることが分か
った。これは、必ずしも洗浄排液からの薬品回収ができないことを意味しており、
膜分 離処 理 費用 等を考慮する と 実装 置 への 適用 す るとコスト アップと なる こと
が分かった。
(ロ)
油系薬品洗浄によるスラッジ排出
洗浄 液の ベ ース 油 に 芳香 族 分 の 多 い L CO を用 い 洗浄 薬品 (ソフ タ ー ド 工 業
(株)製 HKS-101)を 2.0wt%の割合で注入し、洗浄液温度 130℃で循環洗浄を行っ
た。また循環は、洗浄液の加熱に用いた熱交換器(スチームジェネレータ)の上流
に汚れの多い熱交換器があったため、通常の流れとは逆の循環で洗浄を行い、洗
浄効果の向上をねらった。
洗浄対象の熱交換器のうち、汚れの多い熱交換器3基について抜き取りで開放
し、洗浄後の状況を調べた。
(a)エアーフィンクーラーについて
通常、ヘッダーの両側にスケールが堆積しており、一部チューブの閉塞に至っ
ているが、今回は、ヘッダー内、チューブ内にはスラッジがほとんどなく、チュ
ーブ内見通しは良好であった。
(b)遊動頭型多管式熱交換器について(図2−10,11参照)
チャンネル内面、フローティングカバー内面、チューブシート面には、例年ス
ラッジが付着、堆積していたが、今回はほとんどなく、洗浄効果が認められた。
しかし、チューブ内の層状スケールは完全除去することができず、約 33%付着し
ていた(熱交換器の各パス3本の抜き取り検査)。層状スケールは油分(n-ヘプタ
ン溶分)20∼10%,コーク前駆体(キノリン溶分)70∼80%で、 炭素量も高くコー
クアップが進んだスケールである。このようなコークアップの進んだスケールは、
付着を防止する技術にて解決することが良いと考える。
(c)洗浄廃油の処理、洗浄中の臭気について
洗浄により発生した廃液は主に油であるので、原油に混ぜて常圧蒸留装置にチ
ャージしたが、洗浄廃油による汚れ発生等の装置の異常は認められなかった。特
殊な廃油処理を必要ないことを確認した。また、洗浄中の臭気発生はなかった。
図 2-10 油系薬品洗浄後のチャンネル内部
図 2-11 油系薬品洗浄後のチューブ内
(中央の円環状白いのが層状スケール)
(ハ) 薬剤によるデガッシング
石油精製設備では定期点検のための装置開放時にスチームパージを実施しても、
なお、有害ガスが高い濃度で残留し、清掃作業のための入槽が困難になる機器があ
る。特に、水素化精製装置の高圧または低圧セパレーター等では、内部にリアクタ
ー内で発生したアンモニア、硫化水素が、プロセス油からのハイドロカーボンガス
とともに高濃度で残留するため、入槽作業が可能になるまでに、多くの時間を要し
ている。
(a) 昨年の結果
昨年の実験および実証試験により、セパレータ内部の硫化水素ガスは除去可能
であるが、コンクリートライング中にしみ込んだアンモニアが除去されずに残留
するため、処理後、再発生することが分かった。このアンモニアを除去するため
には、ライニング中に消臭剤をしみ込ませる必要があるが、コンクリートライニ
ング中に消臭剤をしみ込ませる方法として、検討の結果、消臭剤に界面活性剤を
含有するLGを併用し、表面張力を小さくして浸透性を高める方法と、消臭剤そ
のものを気化させて拡散・浸透性を高める二通りの方法が考えられた。
(b) 消臭処理方法の検討
そこで、市販のコンクリートブロックを使用し、ビーカーレベルにて模擬試験
することとした。また、この時昨年と同様の方法も実施し、その効果を比較検証
した。試験の結果、表2−7のとおり消臭剤を気化させた仕様が 17 時間後の再
発生量も極めて低く、最も高い効果を示した。
表2−7 コンクリート試験片に対するLG及び消臭処理結果(ラボ実験)
試 験 名
アンモニア浸漬後
LG処理後
消臭処理後
17時間静置後
アンモニアガス濃度(vol.ppm)
消臭剤+界面活性
消臭剤溶液に浸漬
剤溶液に浸漬
7,000
1,800
240
2,000
7,000
1,800
600
1,900
消臭剤気化
7,000
1,800
10
80
(c) 実設備への適用と結果
実装置適用に当たっては消臭処理工程で消臭剤を気化させることとした。検討
の結果、気化方法としては装置内部に継続的に蒸気を注入し、そこへ消臭剤を添
加する方法を採用した。
ハイドロカーボンについては、処理前は高い値で検出されたが、LG処理によ
り約 1/10 まで低下した。また、消臭処理後更に低下し、マンホール開放直後に
はLG処理前の 1/1,000 となった。
なお、マンホール開放翌日に内部のガスを測定したところ、いずれのガスも検
出されなかった。さらにその後、3 日間継続的に測定したが、いずれのガスも再
び増加する傾向は認められず、良好な結果であったと言える(表2−8参照)。
表2−8 高圧セパレータのLG及び消臭処理の工程別ガス分析結果(実績)
工 程
ガス濃度測定結果(vol.ppm)
アンモニア
硫化水素
ベンゼン
ハイドロカーボン
LG処理前
220
Trace
Trace
12,000
LG処理後
1.5
Trace
Trace
1,500
消臭処理後
Trace
Trace
100
マンホール開放直後
Trace
Trace
Trace
10
マンホール開放翌日
Trace
Trace
Trace
Trace
マンホール開放2日目
Trace
Trace
Trace
Trace
マンホール開放3日目
Trace
Trace
Trace
Trace
7.0
(d) 常圧蒸留装置廃水ストリッパー系、減圧蒸留装置オフガストリーター系の蒸気洗浄(室蘭分室)
上記系統を対象にS/D操作でのスチーミング工程において、その系統へ洗浄薬
品を注入し気化させて蒸気洗浄を行った。その結果、廃水ストリッパーでは、洗浄
終了後のマンホール開放後、入槽禁止となるガスは検出されず良好であった(マン
ホール開放前の最終サンプリング結果:H 2S=3.5ppm、ベンゼン 1ppm 以下、LEL(爆発
下限界)0%、洗浄当初:H 2S=300ppm、ベンゼン 1ppm 以下、LEL5%)。オフガストリー
ター系はマンホール開放前の最終サンプリングでは入槽禁止となるガスは検出され
なかったが、アディップオフガストリータードラムについては残留した硫化鉄スケ
ールから残存していた硫化水素が検出され、直ちに入槽できなかった。つまり蒸気
洗浄工程の前に、系外にスラッジを排出するか、スラッジと洗浄液を十分に接触さ
せる必要があることが分かった。一方、スチーミング工程に薬品を注入したことで、
臭気が発生し洗浄を一時中断したことから、臭気対策も重要な課題であることが分
かった。
(ニ) 泡を利用した洗浄
石油精製設備において、ベッセルやタンクは表面積に対して容積が大きく、満水
にて薬剤洗浄する場合は、非常に多くの液量を必要とする。
従って、これらの装置をできるだけ小さな液量で洗浄するため、泡を利用した洗
浄を検討した。泡の性質上、液体の様に循環ができないため、具体的な対象として
まず前項で述べた灯油水素化精製装置の高圧セパレータのアンモニアガス除去を
考えた。当初ラボ試験を実施し、パイロット規模での試験を実施する予定であった
が、現在までにラボ試験で、良好な結果が得られておらず継続試験中である。
(2)タンク薬品洗浄
(イ) 循環洗浄方法
タンク内の液体を効率良く攪拌・循環させる方法にバターワースマシンを用い
る方法があるが、今回の洗浄対象タンクには同装置が設置されていないので、以下
のような対策を取った(図2−12参照)。
①タンク屋根板にタンク内に向けて洗浄用噴射ノズルを仮設設置し、タンク内の
液体を噴射させる。
②噴射ノズルは、噴射量 160kl/時の機器4基を設置し1基づつ噴射させる。
③薬品の注入は仮設循環ポンプの入口から行う。
④洗浄液の加熱は、既設のヒーターコイルを用いる。
洗浄薬品は油でも水でも洗浄効果のある薬品で、仮に廃水が発生したときでも
COD 等が低いものを選定した。
(ロ) 洗浄対象タンクについて
油種:製油所内のスロップ油(石油精製プラント内スロップ油+原油タンクのスロップ油)
タンク容量:24,400m 3 〔寸法形状:内径 44.500m、高さ 18.090mH(1,555 m 3/m)〕
タンク形式:フローティングルーフ型、加熱方式:ヒータコイル
洗浄時のタンク内溶液の量:約 10,730m 3(液面高さ=約 6.90m)
薬品使用量:6.4m 3 、使用薬品:Zyme-Flow 薬品
(ハ) 洗浄による油分回収について
洗浄温度は平均 33∼60℃、循環流量は 160m 3/時、洗浄ノズル1箇所の洗浄時
間は約 1.5 時間、総循環時間は約35時間であった。
洗浄の結果、ハードスラッジ,ソフトスラッジともに減少した。洗浄中のサン
プル採取の状況をみると油分と水と無機物(主成分:硫化鉄)がきれいに分離し
た。表2−9にタンク洗浄によるスラッジ量の変化を示す。スラッジ量は検尺に
よるスラッジ高さから三角柱法にて算出した。その結果、洗浄前 300.7m 3 が 141.7m 3
に減少でき、通常のタンク清掃であれば産業廃棄物として処理されるスラッジを
大幅に削減できることが確認できた。またスラッジ分析から油分回収量は
81,600kg、油分回収率 53.9%、特にハードスラッジのような固形分からの回収率
は 77.7%と高いと推定される。一方、洗浄中浮屋根上での有害ガスの発生は認め
られなかった。
ヒーターコイル
ルーフサポートの貫通 穴 、マンホールより洗 浄 用
による加熱
噴射ノズルを挿入し、洗浄液を噴射する。
屋根板
満液(油分+水分+薬品)
タンクスラッジ
タンク内溶液(油分+水分+薬品)
仮設ポンプ
薬品注入
図2−12 タンク薬品洗浄の循環フロー概要図
表2−9 タンク洗浄によるスラッジ量の変化
ス ラ ッ
ジ
洗浄 前スラ
ッジ体積
洗浄 後スラ
ッジ体積
減少 体
積
ソフト
ハード
合計
m3
129.3
171.4
300.7
m3
103.5
38.2
141.7
m3
25.7
133.2
158.9
洗浄前スラッジ
中推定油分質
量
×10 3kg
62.3
89.1
151.4
減少したスラッ
ジ 中 の 推 定 油
分質量
×10 3kg
12.4
69.2
81.6
推定油分回
収率
wt/wt %
19.9
77.7
53.9
注)スラッジ堆積量は三角柱法で計算し、スラッジ中の油分は洗浄前の分析結果を用いた。
(ニ) タンク洗浄装置について
一方タンク洗浄装置については、具体的には、アメリカ3I社の Supermacs、
およびPSC社の HP-2000 について調査を開始した。これらは、タンク横のマン
ホールから槽内に挿入して、自走しながら高圧で洗浄液を噴射してスラッジ等を
粉砕溶解し、連続的に槽外に排出するものである。スラッジ分離装置は、遠心分
離により油分、洗浄液、スラッジを分離するものである。
ところが、Supermacs は、数年前に既に日本国内に導入されたが、日本の道路
事情にあわず、移動に制限を受けていること、タンクサイトのマウンドを乗り越
えられないため、そばに近寄れず、使い勝手が悪いことが判明した。さらに、油
水分離性能も日本のきびしい排水規制に対応できない模様である。
HP-2000 に関しては、基本的構成が Supermacs と同様で新規性が見いだせない
こと、および日本で稼働するためには、新たに消防関係公的機関による静電気対
策審査を必要とし、その判定に相当期間を要する見込みで、導入検討を断念する
に至った。
3. 試験研究の成果
3.1 汚れ発生要因の分析・成分詳細分析
常圧蒸留装置の汚れは、原油予熱系の脱塩装置下流に集中していることが数値デ
ータにより明らかになった。その原因が原油中に存在するアスファルテンが加熱さ
れることで凝集し汚れとして沈着することを裏付けることができた。
3.2 汚れ発生傾向監視システム
仮設小型タンクを用い水中での性能評価を行った結果、タンク底部においた障害
物を探傷することができた。
3.3 汚れ抑制技術開発
(1)
RD S R /D 系用ファウリ ン グ生 成 試験 装置 を 用いてファ ウリング 抑制 剤の
評価ができることが分かった。
(2)
付着防止器具(油系バネ式)の使用により熱交換器の伝熱性能が向上した。また、
同器具が破断しても設置方法の工夫により配管等の閉塞を防止できた。
(3)
原油予熱系に対する電磁気的汚れ付着防止装置は、油中のアスファルテン含有率
のわずかな変化で汚れ抑制から汚れ促進に変化するため、多種の原油を処理する実
機への適用は難しいことが分かった。
(4)
加熱炉管のコーキングシミュレーションによりコーキング発生を解析・検討する
ことが可能であることが分かった。
(5)
並列2系統の原油予熱系のうち、一方の脱塩装置を増強することで、脱塩装置で
の汚れ成分除去と下流熱交換器の汚れ状況(伝熱特性)の関係を監視,比較できる
ようになった。
3.4 汚れ除去技術開発
(1)
事前の軽油循環処理中に芳香族溶剤を添加することで、その後の水系薬品洗浄に
おいて、熱交換器の洗浄効果が大幅に改善されることが分かった。
(2)
脱塩装置の薬品洗浄は、デガッシングについてはよい結果が得られるが、スラッ
ジ排出に関しては満足のいく結果ではなく、脱塩装置内の攪拌方法,スラッジ排出
方法について検討が必要であることが分かった。また洗浄後廃液中の残存する洗浄
成分量は洗浄対象により異なるため、必ずしも薬品再利用はできないことが分かっ
た。
(3)
残油 脱硫 装 置プ ロダクトオイ ル R/ D 系熱 交換 器 のチューブ 内層状ス ケー ルは
コーク前駆体が多く含まれておりさらにチューブに固着していることから、現段階
では薬品洗浄による無開放化は難しいことが分かった。
(4)
消臭 剤を 気 化さ せる方法で水 素 化精 製 装置 高圧 セ パレータの コンクリ ート ライ
ニング中に染み込んでいるアンモニアガスが良好に除去できた。一方プラントのデ
ガッシングについては、スラッジが機器内に残っている場合はデガッシングが不十
分になる場合があること、臭気対策が必要であることが分かった。
(5)
製油所内のスロップ油タンクを対象に薬品による循環洗浄を検討した。実タンク
の洗浄の結果、堆積スラッジを洗浄前の約半分に減容化することができた。
4. まとめ
汚れ防止・除去に関する各要素技術について、実験室レベルでの検討・評価、及び実機
への一部適用を行い、それらの有効性,問題点を明らかにすることができた。また現在評
価中の技術もあり継続した監視評価により、さらなる改善,改良を行う必要がある。以下
に今後の課題を示す。
4.1 汚れ発生要因の分析・成分詳細分析
原油中でのアスファルテンコロイド粒径測定は光が透過しないので、軽油等の留
分油にバルク層を変更する必要があると思われる。今後、試験方法を具体化する。
また、引き続きの実スケールの分析を実施する。
4.2 汚れ発生傾向監視システム(タンクスラッジ計測)
この超音波測定装置を開発するに当たり「装置の防爆化」が課題として挙げられ
る。本装置は当然のごとく電気機器であり、可燃性ガスが継続的に発生する原油タ
ンク内にこの装置を適用する為には防爆構造でなければならない。従って高電圧を
印加する超音波送受波器は油入防爆、その他については耐圧防爆構造とし、(社)産
業安全技術協会の防爆認定を取得中である。認定取得後、実際のタンクスラッジ計
測と、従来法との比較検討を行う。
4.3
汚れ抑制技術開発
(1) 汚れ付着防止機器・器具による抑制技術
長期間使用における性能の経時変化のデータをさらに蓄積し、汚れ抑制効果の確
認をする。
(2) RDS R/D系に対するファウリング抑制剤の検討
上記 系熱 交 換器 に見られるコー クア ッ プし たス ケ ールを洗浄 によって 除去 する
こと困難であることから、スケールが付着しないようなラボ実験で選定したファウ
リング抑制剤を実機に注入し、その効果を評価する。
4.4 汚れ除去技術開発
プラント薬品洗浄技術
・さらに蒸留点の高い芳香族溶剤の使用、および芳香族溶剤に助剤を加えることに
よる溶解力の増強。
・デッドスペースのスラッジ、チューブ内層状スケール除去性の向上検討。
・デガッシングについては、工法をできるだけ簡素化することで、同程度の仕上が
りを維持しつつコスト削減に努めていく。例えば、今回の消臭処理は蒸気注入中、
直接蒸気中に消臭剤を添加したが、この方法であれば、ハイドロカーボンガスも
この工程で除去できると推定される。従ってLGの低濃度化等、LG処理を簡略
化できる可能性があると考える。
以上.
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