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Title 中国長江デルタ地域の自動車部品産業に関する研究 : 浙江省と

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Title 中国長江デルタ地域の自動車部品産業に関する研究 : 浙江省と
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中国長江デルタ地域の自動車部品産業に関する研究 : 浙江省と上海市を事例として
陳, 傑(Chen, Jie)
慶應義塾経済学会
三田学会雑誌 (Keio journal of economics). Vol.105, No.3 (2012. 10) ,p.499(217)- 516(234)
Journal Article
http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00234610-20121001
-0217
「
三田学会雑誌」
105 巻 3 号 (2012 年 1 0 月)
中国長江デルタ地域の自動車部品産業に関する研究
—
浙江省と上海市を事例として—
陳 傑
(初稿受付2012 年 10 月 1 6 日,
査読を経て掲載決定2012 年 12 月 3 日)
部 品 企 業 数 は す で に 3 ,0 0 0 社 を 突 破 し , 生産
6 ,0 0 0 億 元 を 突 破 し た 。 ま た 税 関 の 統 計
に よ る と ,2 0 0 2 年 以 来 ,毎 年 の 中 国 自 動 車 部
額は
はじめに
中国自動車産業は急速に発展している。
品の輸出額は自動車製品輸出額全体のおよそ
⑶
70 % を 占 め て き た 。 自 動 車 部 品 産 業 は 中 国 全
2 0 1 1 年 ,中 国 の 自 動 車 生 産 台 数 ,販 売 台 数 は
⑴
ともにアメリカを抜き,世 界 1 位 と な っ た 。
体 の 自 動 車 産 業 に お い て は ,大きなウェイト
このような大量生産,大量販売の体制を背後
を占めている。
から支えているのは自動車産業の裾野部分に
中国国内の自動車部品の生産地の分布から
位置する部品産業にほかならない。2 0 1 0 年,
統 計 上 で は , 中 国 国 内 の 自 動 車 部 品 •二 輪 車
見れば, 自動車部品の一大産地は長江デルタ
⑷
地 域 (
上海市,浙江省,江蘇省)で あ る (
図 1 )。
( 1 ) 中 国 汽 車 工 業 協 会 の 統 計 デ ー タ (h ttp ://w w w .caam .o rg .cn 2 0 1 2 年 1 月 1 5 日閲覧) によると ,
2 0 0 9 年中国新車生産台数と販売台数はそれぞれ 1,379 万 台 と 1,364 万台であり,それに対して,2009
年アメリカ新車生産台数と販売台数はそれぞれ 5 7 1 万 台 と 1 ,043 万台である。2 0 1 0 年中国新車生産
台数と販売台数はそれぞれ 1,826 万 台 と 1 ,806 万台であり , それに対し , 2 0 1 0 年アメリカ新車生産
台数と販売台数はそれぞれ 7 7 4 万 台 と 1,159 万台である。2 0 1 1 年中国新車生産台数と販売台数はそ
れ ぞ れ 1 ,841 万 8 ,9 0 0 台 と 1 ,850 万 5 ,1 0 0 台であり , 2 0 1 1 年アメリカ新車生産台数と販売台数はそ
れ ぞ れ 1 ,350 万 台 と 1 ,278 万台である。
⑵
『中国汽車工業年鑑 2 0 1 1 年版』 による。
⑶
『中国汽車産業発展報告 2 0 1 1 年版』 p. 2 1 3 による。
⑷
『中国汽車工業年鑑 2 0 1 0 年版』 によると , 2 0 0 9 年 , 中国国内自動車部品の生産額が 1 位の地域は
浙江省(
979.75 億 元 ) , 2 位 は 上 海 市 (802.36 億 元 ) , 販 売 額 が 1 位 の 地 域 は 浙 江 省 (956.69 億元 ) ,
2 位 は 上 海 市 (860.22 億 元 ) である。
—
217
(4 9 9
) —
図
1
•
中 国 自 動 車 オートバイ部品生産額トップ
10 地域
( 億元 )
1 ,0 00 -
800
600
400
200
0
2004
2005
2006
2007
圜 天 津 圖 吉 林 省 ■ 上 海 □ 江蘇省■浙江省
2008
2009
( 年)
□ 安徽省□ 山東省S 河南省□重慶皿四川省
出 所 :『中 国 汽 車 年 鑑 各 年 版 』 に よ り , 筆 者 作 成 。
特に
200 7年から生産額の首位の座を争って
こ と で ,示 唆 さ れ た こ と を 検 討 し ,本 稿 を 締
きた浙江省,上 海 市 は そ の 生 産 額 が 非 常 に 大
めくくる。
きい。 しかし, こ の 後 の 先 行 研 究 で 紹 介 す る
よ うに, 同 じ 長 江 デ ル タ 地 域 に お い て も ,外
資との合弁でO
第
1節先行研究のレビュー
E M 部 品 (組付け部品) を主に
生産している企業(
以下,外資主導型部品メー
中国の自動車部品産業に関する研究の多く
カーと呼ぶ)が 多 数 存 在 す る 上 海 地 域 と ,地場
は完成車メーカーと部品メーカー間のサブラ
系民営企業を主体とし,主に自動車補修用部
イ ヤ ー シ ス テ ム に 注 目 す る も の が 多 く ,純粋
品を生産している企業(
以下,地場系部品メー
な部品産業そのものに注目し, その中身を詳
カー) が 多 い 浙 江 省 地 域 は 製 品 ,担 い 手 ,販
し く 分 析 す る も の は い ま だ に 少 な い 。 中国の
売市場などの面で大きく異なる性質を持つ産
自動車部品産業に着目し, さらに新車用の組
地である。
付け部品(
O
E M 部品) を 生 産 し て い る 企 業
本 稿 で は ,こういった差異を念 g頭に置きなが
と補修用部品を生産している企業の差異を意
ら,主 に現 地で 行 っ た 企 業 か ら の イ ン タ ビ ュ ー
識 し な が ら , そ れ ぞ れ 考 察 し た の が 関 •池 谷
調 査 を 基 に ,上 海市と浙江省に立地している
部 品 生 産 企 業 事 例 を 取 り 上 げ ,比 較 の 視 角 か
[2 0 0 8 ]と 東 [2 0 0 8 ]である。
関 • 池 谷 [ 2 0 0 8 ] は, 上 海 汽 車 工 業 集 団 を
ら,企 業 レ ベ ル の 発 展 と 経 営 戦 略 の 姿 を 描 き
有 す る 上 海 地 域 で ,大きな完成車メ ーカ ーの
つつ,部品メーカー間でも大きな差異が存在
立 地 に よ り ,多 く の 地 元 金 属 加 工 企 業 が サ ブ
す る こ と を 明 ら か に す る 。 さ ら に , こういっ
ライヤーに変身し, 内陸地域の企業も上海市
た企業のまったく異なる発展パターンを見る
に 集 積 し て く る よ う な 「求 心 力 」 が 働 い て い
—
218
(5 0 0
) —
る現象を描いたほか,上海で大きな自動車産
の か , も し そ う で あ れ ば ,こ の 「
高 度 化 」の中
業 集 積 が で き た こ と で ,周 辺 の 江 蘇 省 や 浙 江
身 は 一 体 ど の よ う な も の な の だ ろ う か 。 これ
省 で も ,自 動 車 部 品 企 業 の 発 展 が 促 進 さ れ る ,
ら の ^■ 連 の こ と に つ い て 検 討 す る こ と が 本 稿
い わ ば ,「
遠 心 力 」 も働いていることに言及し
の 問 題 意 識 の 1 つ で も あ る 。 具 体 的 に は ,第
た。 さ ら に 自 動 車 部 品 企 業 の 生 産 体 制 は 重 層
1
に, そ も そ も 上 海 な ど の 地 域 で の 外 資 合 弁
的な色合いを深め始めたという興味深い一言
^
⑸
を残した。
企 業 が ,韓 国 企 業 の よ う に , 先 進 国 企 業 と の
こ う い っ た 現 象 の 紹 介 に と ど ま ら ず ,一 歩 進
部品 製 造 子 会 社 に 吸 収 さ せ , 自身の力を強化
ん だ 形 で ,「自 動 車 部 品 企 業 の 高 度 化 」 をキー
し, さ ら に 合 弁 企 業 で の 自 主 開 発 権 , 経 営 権
ワ ー ド に し た 東 [ 2 0 0 8 ] で は , こ の重層的な
を 取 り 戻 そ う と し て 必 死 に 努 力 し ,高度化し
色 合 い の 実 態 解 明 に 重 点 を 置 き , 中国の自動
たのか。第
車 部 品 メ ー カ ー の 高 度 化 の パ タ ー ン を 2 つに
という外在の要因のおかげで,短期間で技術
分 類 し た 。 つ ま り , 1 つ は ,上 海 市 や 広 州 市
の キ ャ ッ チ ア ッ プ を 実 現 し た こ と が 1 つの高
に立地し てお り,外 資企 業と の合 弁で 成立 し
度化だと言えるならば,地場系企業が自力で
た部品企業の「
外 資 主 導 に よ る 成 長 」で あ る 。
遂げた高度化の中身は一体どのようなものな
も う 1 つ は ,浙 江 省 に 立 地 し て お り ,補 修 部
のだろうか。
合 弁 で 技 術 を 身 に つ け ,すぐに傘下の韓国系
品 生 産 か ら ス タ ー ト し た 部 品 企 業 の 「地 場 企
第
2
に,外 資 合 弁 企 業 が 外 資 の 支 援
1 の問題点について, 中国自動車産業に
業 主 導 に よ る 成 長 」で あ る 。特に後者の地場
関する研究では, 中国企業が外資系企業との
企業の事例を挙げ,その発展のプロセスを詳
合弁によって, 自動車製造技術における急速
し く 紹 介 し た 。 し か し,結 論 か ら 見 れ ば , ど
なキャッチアップを実現したとするものが多
うも異なる道を通った2 種類の中国自動車部
い。 このような合弁への評価が適切かどうか
品企業が同じような「
O
E M 部 品 供 給 」といっ
は, 真 剣 に 考 え る 必 要 が あ る 。 そ こ で , この
た高度化の到達点に辿り着いたと主張してい
外資主導型の完成車メーカ一の成長に疑問を
るように読み取れる。
投 げ か け た の は 陳 [2 0 0 0 ]と 肖
(7)
(8)
(6)
関
東
であ
る。 い ず れ も 完 成 車 メ ー カ ー を 対 象 と し た 議
では, こ の 「
高度 化」 が本当に実現された
(5 )
(6 )
(9)
[2000 ]
• 池 谷 [2008] p . 172 より。
[ 2 0 0 8 ] での高度化は, 自動車完成車メーカーに O E M 部品を供給して, 開発にまで參画でき
るようになることである。つまり, 同氏は①外資系自動車メーカーが部品国産化規定を遵守するため
に,地場の補修部品企業に技術や生産管理の指導を行い,当該部品メーカーは部品の品質や納期が自
動車メーカーの水準を満たすような部品メーカーまで発展するパターンと,②自力で補修部品企業と
して独自に技術の蓄積を積んだ後に O E M 部品の生産に參入する企業の発展パターンとを同じものだ
と認識しているように見える。実際には,両者が生産している O E M 部品はまったく異なるものであ
り, それぞれの発展の方向も違うことを本稿で主張する。
(7 )
上 山
[2009] ,広島大学大学院総合科学研究科 • 山 崎 [ 2 0 1 0 ] などが挙げられる。
—
219
(5 0 1
) —
論であるが, 肖
[2 0 0 0 ] で は , 中 国 側 企 業 の
主 体 的 な 意 思 決 定 が 弱 ま る 点 に つ い て ,「この
第
2 節外資主導型自動車部品企業
影 響 は ,完 成 車 メ ー カ ー 以 外 , 部 品 メ ー カ ー
に も 及 ぼ し て い る 」 と 指 摘 し ,外 資 主 導 型 の
通 常 , 産 業 の 発 展 方 向 と し て ,技術の高度
部 品 企 業 の ケ ー ス に お い て も , 同じような問
化に伴う製品内容の高度化の方向が想定され
題が広がることを危惧した。
ている。 このような方向に沿った形で成長を
(10)
の 問 題 点 に つ い て ,筆 者 の 現 地 調 査 の
遂げた「
3 大 グ ル ー プ 」は ま さ に 典 型 的 な 例 で
結果によれば,地場系部品企業が主に補修用
ある。 これらの企業はいずれも外国の自動車
の 部 品 を 生 産 し て い る 一 方 ,一 部 の 企 業 で は ,
メーカーと中国の国有企業とが折半出資して
補 修 部 品 生 産 技 術 の 延 長 線 上 で ,生 産 規模 が
作 ら れ た 合 弁 企 業 で あ り ,外国の完成車メー
小さい商用車などマイナ一な分野へO
カ ー か ら の 技 術 支 援 に よ り ,製造 技 術 や 生 産 管
第
2
EM 部
品 も 供 給 し て い る 。 こ こ か ら 見 れ ば , これら
理 な ど の 面 に お い て ,大 き な 進 歩 が 見 ら れ た 。
の企業の発展の方向性が外資合弁企業と大き
こ ういっ た 変 化 は完 成 車メ 一 カ ー だ け で な く ,
く異なる可能性が高い。
外 資 合 弁 部 品 メ ー カ ー で も 見 ら れ た 。完成車
こ の 2 つ の 問 題 意 識 を 踏 ま え て ,以 下 で は ,
メ ー カ ー の 合 弁 会 社 が 操 業 開 始 後 , 中 国政府
上 海 市 と 浙 江 省 に 立 地 す る 企 業 ,換 言 す れ ば ,
がさらに「
部 品 国 産 化 政 策 」,「
部品産業強化政
外資主導型部品メ一カーと地場系部品メ一カー
策 」な ど の 部 品 産 業 育 成 の 方 針 を 打 ち 出 し ,外
の 経 営 実 態 を 詳 し く 分 析 す る こ と に よ っ て ,答
資 系 完 成 車 メ ー カ ー に ,部品の現地調達が強
えを探っていく。
い ら れ る よ う に な っ た 。 しかし,そ の 当 時 ,完
成車メーカーの製造要求を満たせる部品企業
が ま だ 少 な か っ た た め ,完 成 車 メ ー カ ー の 呼
び か け に 応 え る よ う に , ボッシュやデルフア
⑶
陳
[ 2 0 0 0 ] では,上 海 V W の事例を取り上げ,外資主導型企業の代表格の実態を解明した。 同書
W の取締役会も執行管理会も中国人とドイツ人が定員の各半分を占めていた。 中国側
には,「
上海V
の中国人社長(
総経理)は経営の主導権を持たなかった。企業の研究開発,生産企画管理, 品質保証
などの生産技術部門及び営業,販売,財務等の重要な経営活動については, ドイツ人の取締役と部長
クラスの中間管理層が実際の権限を持っていた。 したがって,資 本 金 50
% を持ったドイツ V W が,
W の経営組織の主導権を抑えていたと言える」p. 8 4 とある。
[2000] p. 2 2 では,「合弁企業の中国側は,実質上従属的な立場に転じ, 自主開発権や経営管理
上海V
(9 )
肖
権が弱められ, さらに喪失する可能性さえある。結果として, 中国乗用車メーカーも,多国籍自動車
企業の世界各国に点在する他の子会社と同じように,あくまでも巨大企業の世界戦略中の一生産拠点
に過ぎない位置にある。 さらにこの影響は,完成車メーカー以外,部品メーカーにも及ぼしている」
と厳しく指摘した。
( 1 0 ) 渡 辺 [2004] p. 5 1 より。
( 1 1 ) 上海汽車工業集団,第一汽車集団,東風汽車集団を指す。
—
220
(5 0 2
) —
1 .
イなどの欧米大手部品メ一カーが相次ぎ中国
上海菲特尔莫軸瓦有限公司)
に進出し始めた。 こういった部品メーカーの
① 概 況
進出にあ た っ て , 一部独資形態を採る場合も
この企業は上海市の比較的中心部である閘
あ るが, 多 く の 企 業 は 規 制 に よ り , 地元の国
北 区 に 立 地 し て お り ,す で に 6 0 年 余 り の 歴 史
有 企 業 と 合 弁 で 事 業 を 開 始 し た 。特 に , 計画
を 持 っ て い る 。新 中 国 成 立 後 の 1 9 5 5 年
経済期から自動車製造関連企業を多数抱える
自 強 内 燃 機 動 力 機 械 廠 ,溶 茂 汽 車 材 料 製 造 廠 ,
上海地域では,外資系部品企業との合弁事業
張裕機器鉄工所の3 っの私営工廠が合併し,
が多数生まれ , 多くの国有部品企業を発展さ
公 私 聯 営 の 上 海 軸 承 廠 を 成 立 し た 。 当時の従
せた。
業 員 は わ ず か 1 3 0 人 で , ベアリングやバルブ
8 月,
な ど を 生 産 し て い た 。 1 9 5 6 ~ 1 9 6 0 年 の 間 ,20
その過程の主役である上海汽車工業集団は
2 0 年の 発 展 を 経 て , す で に 1 3 カ国および地
域 ,合 計 3 0 社 余 り の 外 資 系 部 品 企 業 と 合 弁 •
社 余 り の 私 営 小 規 模 工 場 を 吸 収 合 併 し , 従業
員は
3 8 6 人 ま で 増 え た 。 その後,上海合金軸
技 術 提 携 関 係 を 持 ち ,8 0 社 余 り の 外 資 合 弁 部
瓦廠ゃ上海粉末冶金廠など数回名称が変更さ
品メ一 カ ー を 設 立 し た 。 2 0 0 9 年 ,上 海 汽 車 エ
れたが, 197 9 年正式に上海軸瓦廠となった。
業集団は傘下の30社 の
O E M 部品メーカー
1 9 8 0 年 さ ら に 上 海 汽 車 軸 瓦 廠 , 1 9 9 1 年に上
を束ね, そ の 統 括 会 社 で あ る 「
華域汽車系統
海 内 燃 機 鋼 墊 廠 を 吸 収 合 併 し た 。 1 9 9 0 年時点
股 份 有 限 公 司 」 を 新 設 し た 。 以 下 で は , この
で の 工 業 生 産 額 は 1 ,6 0 6 .1 万 元 , ベ ア リ ン グ
統 括 会 社 の 傘 下 の 2 社を取り上げ,企業の外
ブ ッ シ ュ の 生 産 量 は 7 2 1 .3 万 枚 で あ っ た 。 早
資 合 弁 成 功 事 例 と し て 紹 介 す る ほ か , 上海市
い時期からすでに上海汽車工業集団のサブラ
(12)
の
1 社の国有企業の合弁失敗事例も紹介する。
イャー兼直属部品企業となっていた。2 0 0 0 年
外資との合弁の本質はどのようなものなのか
1 月 に 上 海 汽 車 工 業 集 団 の 40 % の出資とフエ
デ ラ ル モ ー グ ル の 60 % の 出 資 で , 合 弁 企 業
について示す。
となった。 主 な 製 品 は 依 然 と し て エ ン ジ ン 用
こ れ ら の 企 業 を 見 る こ と で , 中国部品企業と
ベアリングブッシュ, スラストワッシャーで
ある。
工 場 内 に は 5 本の自動車エンジン用べアリ
( 1 2 ) 華域汽車系統股份有限公司は 2 0 0 9 年 5 月に設立された上海汽車工業集団傘下の自動車部品企業統
括会社である。2 0 0 9 年 1 2 月 3 1 日時点で,総 資 産 2 7 5 億元,従 業 員 2 万人強を有しており,最大の
株主は上海汽車工業集団である。主な業務内容は自動車部品の研究開発,生産販売であり,具体的に
は自動車の内外装飾部品,金型,機能部品,電子部品,熱加工部品,新エネルギー関連部品の 6 つの
部品製造分野の業務をカバーしている。 同社の傘下には後掲表 1 でリストアップされた 2 0 社の外資
合弁企業を含め,合 計 3 0 社の企業が入っている。
(13) 2 0 1 1 年 9 月 6
日に行った,上海菲特尔莫軸瓦有限公司銷售部副経理沈素平氏からの聞き取り調査
による。
—
2 2 1 (5 0 3 ) —
ングブッシュ生産ライン, 1 本のディーゼル
エンジン用べアリングは寸法の精度に対する
エンジンのベアリングブッシュ生産ラインが
要求が高く,ディーゼルエンジン用ベアリン
あ り ,従 業 員 数 は 4 2 0 人 で あ る , 当 該 工 場 は
グ は 素 材 に 対 する要求が高い。 さらにそれぞ
T S 16949 , ISO 14000, IS O 1 8 0 0 0 1 等
れ車種のエンジンの規格の違いも加わり,エ
の 認 可 を 取 得 し た 。生 産 工 場 の ほ か ,上海南
ンジンのベアリングはそれぞれのエンジンに
匯 区 に は 部 材 会 社 も 設 置 さ れ て お り , ベアリ
対 応 す る 形 で 生 産 を 行 っ て い る た め , ベアリ
ン グ ブ ッ シ ュ 用 の 材 料 を 生 産 し , これは原材
ングブッシュ間の汎用性はほとんどない。つ
料の現地調達率をアップさせるためである。
まりブッシュ工場は,常に数百ないし数千種
さらに,工 場 以 外 ,上海の金橋加 工区 では ア
類の高品質のベアリングブッシュを生産しな
ジ ア 太 平 洋 技 術 セ ン タ ー を 設 け ,工場生産を
ければならない。
すでに
こういった多様性に富む製造技術が要求さ
技術開発の面においてサポートする体制を整
えた。 ベ ア リ ン グ ブ ッ シ ュ メ ー カ ー の 中 で は ,
れ る も の づ く り は ,前 身 で あ る 上海軸瓦廠で
上海菲特尔莫軸瓦有限公司は国内最大の企業
は な か な か で き な い こ と で あ っ た 。 フエデラ
で あ る た め , 多 く の 完 成 車 メ ^一カ^一と取引を
ル モ ー グ ル と の 合 弁 で ,企 業 の 生 産 技 術 水 準
行 っ て い る 。現 在 の 顧 客 と し て は , 国 内 主 要
は 大 き くアップされた。具体的にはアメリカ
な ガソリンエンジンメーカー, デイーゼルエ
側が提供した先端設備で,生産ラインが再配
ン ジ ン メ ー カ ー , 機 械 工 業 関 係 企 業 , 国内の
置 さ れ ,昔の半自動化から全自動化に変わっ
完成車メーカーである。具体的には第一汽車
た。 さ ら に 生 産 管 理 も ア メ リ カ の 工 場 並 み の
集 団 ,上 海 汽 車 工 業 集 団 ,奇 瑞 , 中 華 ,三 菱 ,
水 準 で 実 施 さ れ る た め ,現 場 従 業 員 が 減 少 し ,
江淮などが挙げられる。
生 産 効 率 と 品 質 が 高 め ら れ た 。 また, 市場供
②合弁後の変化
給においては,製品のブランド力も増強され
合弁によってこの企業にもたらされた変化
た。 ア メ リ カ 本 土 で は す で に G
M
のサプライ
は 大 き い 。 こ の 変 化 を 述 べ る 前 に , まずブッ
ヤ ー で あ る フ エ デ ラ ル モ ー グ ル は , 中国市場
シュという部品の特徴を簡単に見てみよう。
においても,そのサプライヤー関係を受け継
ブッシュの特徴を 一 言 で ま と め る と ,多様性
ぎ,上 海 G
である。 ブッシュはエンジンの種類によって,
ブッシュサプライヤー企業でもある。
M
の有力なエンジン用ベアリング
サ イ ズ と 材 料 が 違 う 。 具 体 的 に は , ガソリン
また, こ う い っ た 変 化 の 背 後 に ,実際にア
の エ ン ジ ン 用 ベ ア リ ン グ は 小 さ く , ア ルミ合
メリカ側が経営の主導権を握っていることが
金 で作られ, 回転速度が速く, 瞬間爆発力が
人 事 組 織 構 造 か ら 興 味 深 く 読 み 取 れ る 。 同社
大き い。 これに反し, ディーゼルエンジン用
の総経理(
社長) は ア メ リ カ 人 で あ り ,営 業
ベ ア リ ン グ は 大 き く ,銅 合 金 で 作 ら れ ,回転速
販 売 ,ア フ タ ー サ ー ビ ス 部 門 (
部長は中国人),
度 が 遅 く , 耐 久 性 に 優 れ て い る 。 こういった
財務
性 能 の 要 求 に 応 じ て ,生 産 に お い て ,ガソリン
理 す る 。 副 総 経 理 は 中 国 人 が 担 当 し ,秘 書 ,法
—
222
(14)
(5 0 4
) —
•
• サ プ ラ イ 部 門 (部長はアメリカ人) を管
律事務,P
R
を占め,V
関 係 ,社 内 会 計 監 査 お よ び 政 策
W
傘 下 の 独資企業S IT
E C H と肩
を並べる存在である。
研究などを管轄する。人事行政部署では,経
理 と ス タ ッ フ は 全 員 中 国 人 で あ り ,人 事 管 理 ,
②
組 織 と シ ス テ ム ,O
合 弁 で ,上 海 延 峰 江 森 有 限 公 司 は J
J T および福利厚生の4 つ
合弁後の変化
C I と同
の 部 門 を 担 当 す る 。技 術 経 理 は ア メ リ カ 人 が
じような高品質のシートが作れるようになり,
担 当 し , プ ロ ジ ェ ク ト •コ ー デ ィ ネ ー シ ョ ン ,
先 端 設 備 や 技 術 支 援 は も ち ろ ん の こ と , JC I
製 品 設 計 ,生 産 計 画 ,品 質 管 理 お よ び 生 産 工 場
による
を管轄する。結 局 合 弁 後 の 同 社 の 生 産 管 理 -
いう生産管理体系の導入や製品開発能力の向
技 術 開 発 権 •経 営 管 理 権 が ア メ リ カ 本 社 の 手
上は最も注目すべきところである。
に握られ,現 地 と の 関 わ り の 深 い 部 門 の み ,い
わゆる人事やマーケティングなどの部門は中
国側が担当している。
2 .
①
(15)
Jo h n so n O p e ra tin g S ystem (JO S )
と
まずはJO
S の 導 入 に よ っ て ,大 量 か つ 多 品
種 の シ ー ト を J I T で 生 産 • 供給することが可
能となった。 自動 車 の エ ン ジ ン タ イ プ (
4気
筒 , 8 気筒など), 内 燃 機 関 や シ ー ト ベ ル ト の
タ イ プ ,前 輪 後 輪 ,素 材 (
革 ,布など ) ,すべて
上海延峰江森有限公司
の 組 み 合 わ せ が あ る た め , 1 つの車種につき
概況
上海延峰江森有限公司の前身は上海延峰汽
2 0 0 ぐ ら い の 規 格 が 存 在 し て い る 。 こういっ
車内飾件廠で, この企業が上海汽車工業集団
た 生 産 シ ス テ ム の 導 入 で , 大量多種のシート
の持ち株会社(
当時持ち株比率は 49 % ) であっ
でも柔軟な生産供給が可能となった。
た。 そ の 後 ビ ス テ オ ン と 合 弁 し ,「
上海延峰偉
ま た , 製 品 開 発 能 力 の 向 上 も 見 ら れ た 。延
世 通 汽 車 飾 件 系 統 有 限 公 司 」 という合弁企業
峰江森はもともと完成車メーカーの設計図で
となり, さ ら に 1 9 9 7 年に ジョ ンソ ンコ ント
は , 貸 与 図 方 式 で 生 産 し て い た が , J C I 本部
ロールズ(
以 下 JC I ) と再合 弁 し ,上 海 延 峰 江
からのエンジニアの技術指導を受けながらも,
森有限公司を立ち上げ,上海延峰偉世通汽車
現地のスタッフは自前のデータベースを構築
飾 件 系 統 有 限 公 司 が 60
% の株
し, 設 計 技 術 が 蓄 積 さ れ , 最 近 の 中 国 需 要 に
式を 保 有 し て い る 。 この企業は主に自動車用
合わせる形で,承認図方式生産にシフトしつ
の シ ー ト ア セ ン ブ リ , 部 品 ,発 泡 材 , カ バ ー ,
つ あ る 。各 完 成 車 メ ー カ ー に と っ て , 主 要 戦
枕などを一貫生産しているシートメーカーで
場となっている中国では, 乗用車の内装部品
あ る 。 2 0 0 8 年 時 点 で は ,年 間 売 上 は 1 7 6 億元
が中国消費者の嗜好に合う現地化は非常に重
に達し, 上 海のシートメーカーのニ強の一角
要 で , そ の 中 で は シ ー ト も 不 可 欠 な 1 つであ
(14) 2 0 1 1 年 9 月 6
% , J C I が 40
日に行った,上海菲特尔莫軸瓦有限公司銷售部副経理沈素平氏からの聞き取り調査
の際に頂いた社内報による。
(15) 2 0 0 8 年 8 月 2 7 日に行った上海延峰江森座椅有限公司常務副総経理呉可氏へのインタビュー調査に
よる。
—
223
(5 0 5
) —
る。 上 海 G
M
系統有眼公司に委託している。 シートの部分
4 億 元 弱 ,年 間 売 上 は 4 億 元 強 ,従業員数は
1 ,0 0 0 名 余 り で , そ の う ち 技 術 者 は 1 7 2 名で
あ る 。上 海 篷 垫 廠 は 現 在 2 つの工場を持って
は 延 峰 江 森 が 受 託 し ,人 体 工 学 の 原 理 の 下 で ,
おり,旧工場は上海市の中心地である「
盧湾
中国人の体に合わせて, シートの幅などを調
区」 に立地している,現 在 「
盧 湾 区 」 におけ
整し, 車内空間を広く演出するなどの設計を
る 唯 一 の 生 産 型 の 企 業 で も あ る 。新 工場は上
してい る 。
海 市 の 郊 外 に 立 地 し て い る 。工 場 は 2 0 0 3 年
は, ビ ュ イ ッ ク 車 種 の 内 装 の 中
国市場向けの生産は上海延峰偉世通汽車飾件
IS O 9 0 0 1 ;2000
3 .
①
と ISO
• TS16949 ;1999
品質
管理システムの認可を取得した。
上海篷垫廠
概況
主 な 製 品 は 皮 革 の シ ー ト カ バ ー ,乗 用 車 用
上 海 蓬 垫 廠 は 1 9 7 2 年 に 設 立 さ れ , 当 時は
ツ ー ル バ ッ グ , フ ッ ト マ ッ ト , ヘッドレスト
上海市「
盧 湾 区 」の 重 点 企 業 の 1 つ で あ っ た 。
セ ッ ト ,泥 除 け ,シ ー ト カ バ ー な ど で あ る 。 生
設立の4 年 後
(1976 年)か ら は 「上 海 SH 760 」
産 ラ イ ン は ウ レ タ ン 造 形 ラ イ ン , 生地カット
という乗用車用のシートを一貫生産していた。
ラ イ ン ,縫 製 ラ イ ン か ら な っ て い る 。 年 間 生
上海篷垫廠は中国で最初にウレタンフォーム
産量はおよそ6 0 万台分である。
を シ ー ト の ク ッ シ ョ ン 材 と し て 使 用 し , シー
②
トの軽量化,製 造 の コ ス ト ダ ウ ン を 実 現 し た 。
タ チ エ ス と 合 弁 会 社 を 立 ち 上 げ た が , 当初
合弁後の変化
さらに, 当 時 日 本 , ドイツから最新鋭のミシ
見込んでいた上海や近隣地域からの自動車用
ン な ど を 購 入 し ,設 備 投 資 を 積 極 的 に 行 っ た 。
シ ー ト の 受 注 が 達 成 で き ず ,稼 働 率 が 低 く 業
生 産 技 術 が 認 め ら れ ,1 9 8 8 年 上 海 大 衆 汽 車 有
績 が 低 迷 し て い た た め ,結 局 タ チ エ ス は 合 弁
眼公司のサブライヤーとなり, 上記の延峰汽
企 業 か ら の 撤 退 を 決 め た 。 そ の後 ,上 海蓬垫
車内飾件廠とともに, サンタナとパサート向
廠 は ,依 然 シ ー ト メ ー カ ー と し て 生 産 を 継 続
け の シ ー ト を 設 計 開 発 , 生 産 し , シートの国
しているが, その中身はすでに大きく変化し
産 化 に 大 き く 貢 献 し た 。 1 9 9 5 年 ,上 海 篷 垫 廠
た。 2 0 0 8 年 筆 者 が 現 地 調 査 し た と き の 光 景 を
は日本のシートメーカーであるタチエスと手
紹介しよう。
を組み , 「
上 海 泰 晔 汽 車 座 椅 有 眼 公 司 」 という
上海蓬垫廠浦東新区にある新工場は建屋が
しての成長の青写真が描かれたが,2 0 0 3 年,
2 棟 あ り ,縫 製 工 場 の 入 っ て い る 建 屋 が 通 常 ど
おりに稼働していた。1 階ではシート用生地
タチエスはこの合弁会社から資本を撤収した。
のカットがコンピュータプログラムで行われ,
上海蓬垫廠は,2 0 0 8年時点で固定資産は
1 台 2 0 0 万元の ア メ リ カ 製 の 機 械 が 3 台ある。
合 弁 会 社 を 作 り , シート一貫生産メーカーと
(16) 200 8 年 9 月 1 1 日に行った上海垫廠副工場長鄭志方氏,品質管理办公室主任黄健氏へのインタビュー
調査による。
—
224
(5 0 6
) —
年 間 お よ そ 5 0 万台分のシートカバーのセッ
い う 車 種 の シ ー ト を 設 計 開 発 , 生 産 し , サブ
トが 加 工 さ れ る 。 工 場 建 屋 の 2 階 に は 縫 製 エ
ライ ヤー とな った 。最 初 の 生 産 技術 はほ とん
ど 自 主 開 発 で あ っ た が ,上 海 V
程 が あ り , ミ シ ン 台 が ず ら り と 並 び , ミシン
W
の乗用車の
1 台 に 作 業 員 が 1 人 就 い て い る 。 ミシンは
生産が軌道に乗り,サンタナより高級な乗用
ドイツ製と中国製があり, カバーの構造や生
車 が 次 々 と 生 産 さ れ 始 め た た め , より先進的
地によって扱うミシンが異なっている。1 階
な シ ート製造技術が要求され,上海篷垫廠の
から生地が台車で届けられ, それを縫製工程
製 造 技 術 は す で に 後 れ を 取 っ た 。 同じ苦境に
の 作 業 者 た ち が そ れ ぞ れ 取 り に 行 き , 自分の
追 い 込 ま れ た 延 峰 汽 車 内 飾 件 廠 は 1 9 9 4 年に
と こ ろ に 持 っ て い っ て 作 業 を 始 め る 。 ミシン
ア メ リ カ の ビ ス テ オ ン 社 と 合 弁 し ,海外の設
台
は
2 0 0 台 程 度 あ り ,作 業 す る 班 は 1 4 あ っ た 。
備 と 技 術 を 積 極 的 に 受 け 入 れ た 。 ほぼ同じ時
スと の 合 弁 会 社 で あ る 。規 模 は 小 さ い が ,シー
1 9 9 5 年 に ,上 海 篷 垫 廠 も 日 本 の タ チ ェ ス
社 と 合 弁 企 業 を 作 っ た 。 しかし,2 0 0 3 年 7 月
トの専門工場としておおよその設備は備えら
にタチェスは, 中国の上海篷垫廠との合弁会
れている。パイプ材を加工し,ベンダーや溶
社 で あ る 「上 海 泰 曄 汽 車 座 椅 有 眼 公 司 」 のタ
接 機 を 利 用 し て フ レ ー ム に す る 。ベンダーの
チ ェ ス 持 ち 分 を 上 海 篷 垫 廠 に 売 却 し た 。 その
一部はN
裏 に は , タ チ ェ ス の 戦 略 が 中 国 に 合 わ ず ,結
期の
縫製工場の隣にある建屋はかつてのタチエ
C 機 で 自 動 化 さ れ て い る し ,溶 接 機
もロボット溶接機が4 台ほど工場内に置かれ
局上海でG
M
や
VW
のサプライヤーになれ
ている。 また,立派なウレタ ンの 造形 ライ ン
ず ,取 引 が で き な か っ た こ と , また他の地域
も設置され, プレス機によって金属部品も作
に供給したくてもそれぞれ地域ごとに地元に
ることが可能な, シートの一貫生産ラインエ
取引先があるので,地元政府も地元企業保護
場 で あ っ た 。 しかし, 工 場 で は シ ー ト 生 産 に
の 方 針 で 供 給 す る こ と が で き な い の で , 仕事
関してはほとんどのラインが動いていなかっ
が な く な っ たことも大きい。 これは上海篷垫
た。 ウ レ タ ン の 造 形 ラ イ ン が ゆ っ く り と 動 い
廠の大きなターニングポイントとなった。
て い たの と,工 場 の空 いた 敷地 を使 って 輸出
結局上海篷垫廠はシートの一貫生産メ一カー
向 け の カ バ ー の 生 産 を 行 っ て い る だ け で ,後
から転落し, シートカバー生産に集中するよ
はベンダーも溶接機もほこりをかぶっていた。
うになった。 この企業はかつて新鋭設備を有
ウ レ タ ン の在 庫は ,す で に 黄 ば ん で お り , も
し, シ ー ト の 一 貫 生 産 メ ー カ ー と し て の 発 展
はや使うこともできない状態であった。
の 可 能 性 が 十 分 あ っ た に も か か わ ら ず ,合弁
す で に 紹 介 し た よ う に ,上 海 篷 垫 廠 は 1976
相 手 の 戦 略 の 見 誤 り に よ っ て ,市場の開拓が
年から「
上 海 」という乗用車用 の シ ー ト を 一 貫
で き ず , さ ら に ラ イ バ ル 企 業 に 先 行 さ れ ,今
生産していた。 1980年 代 上 海 大 衆 (
VW ) が
はカバー生産という労働集約的な作業を行う
中国に進出し,国有企業である上海篷垫廠は
工場となってしまった。 また取引関係から見
政 府 の 指 示 に 基 づ き ,上 海 V
れ ば ,特 に 前 に 紹 介 し た 延 峰 と は , ほぼ同じ
W
のサンタナと
—
225
(5 0 7
) —
図
2
V W ) と 上 海 通 用 (GM)
上海大衆(
のシ一卜部品サプライヤ一関係図
上海大衆(
VW ) 上海通用
(GM)
シート
生地 、二次サプライヤーの指定
上海延锋江森座椅有限公司
(SJIC)
iA
注文、指示
1
シートカバー
r
上海篷垫廠
出 所 :現地調査の聞き取りにより、筆者作成。
出自を持ち,サンタナのシート開発にともに
メーカーも地元の乗用車メ一カーのみに納入
携わる協力企業かつライバル企業であったが,
し てい る こ と で あ る 。 これは, シート自体の
現 在 完 全 に T IE R
価格あたり体積が大きく ,輸 送 コ ス トが大きい
1 サ プ ラ イ ヤ ー か ら T IE R 2
のサプライヤーとなった(
図 2)。
(17)
という商品の特性から由来するものである。
簡単に言うと, シート生産は最も国産化され
4.
小括
る必要のある部品で,地元企業にとって外資
と合弁し,事 業 を 拡 大 し レ ベ ル ア ッ プ す る 絶
事 例 で 紹 介 さ れ た よ う に ,技術の進歩がな
か な か 図 れ な い 国 有 企 業 に と っ て ,先 端 生 産 技
好のチャンスである。
術を有する外資企業との合弁は技術のキャッ
上 海 延 峰 江 森 有 眼 公 司 は ,外 資 合 弁 企 業 な
チアッ プ が 速 や か に 実 現 さ れ ,生産も軌道に
らではの十分な資金を利用し,先端の技術設
乗 せ る こ と が で き る 。上 海 菲 特爾莫軸瓦有眼
備および優れた経営ノウハウも積極的に導入
公 司 の 例 か ら 見 れ ば ,既存の技術基盤の延長
し, 高 品 質 の 製 品 の 生 産 が 可 能 と な っ た 。 上
線 上 で の さ ら な る 発 展 を 目 指 し ,外 資 と の 合
海
弁 で ,外 資 の 技 術 力 ,設 備 ,資 金 力 ,ブランド
まざまな自動車メーカーにシートを納入して
力 を 存 分 に 活 用 し ,柔 軟 な 多 品 種 大 量 生 産 が
お り ,有 力 な 独 立 系 の シ ー ト メ ー カ ー に ま で
で き ,既 存 の 上 海 V W ,
成 長 し た 姿 が 見 ら れ た 。 このように,合弁企
G M 販路をベースに,
VW
と上海G
M
を ベ ー ス に , その他のさ
より広域的な販路開拓を着実に進めている。
業は短期間に生産規模を拡大することができ
シートメーカー2 社のまったく違う合弁事
るだけでなく,外 資 側 の 経 営 管理への直接參
業 の 展 開 事 例 を 紹 介 し た が ,シ ートの取引構造
加 に よ っ て ,近 代 的 な 管 理 に よ る 生 産 の 効 率
の特 徴 と し て は ,乗 用 車 メ ー カ ー が 基 本 的 に は
化や製品の品質向上も図れる。
次 の 上 海 篷 垫 廠 の 事 例 で 見 た よ う に ,外 資
地 元 の シ ー ト メ ー カ ー か ら の み 調 達 し ,シート
( 1 7 ) 丸 川 • 高 山 [2005] p. 258
—
226
(5 0 8
) —
表
1
華域汽車系統股份有限公司傘下の外資合弁企業リス卜
中 国 側 の持ち株比率(
%)
華域汽車系統股份有限公司傘下の外資合弁企業
上海延峰偉世通汽車飾件系統有限公司(自動車用装飾部品, シートアセンブリ)
50
上海天合汽車安全系統有限公司(自動車用シートベルト,エアバッグ)
50
上 海 小 糸 車 灯 有 限 公 司 (自動車用ランプ)
50
申 雅 密 封件有限公司(自動車用パッキン)
38
上海法雷奥汽車電機雨刮系統有限公司(
ウ ィ ン ド • シ ー ル ド • ワイパ)
45
上海恩坦華汽車門系統有限公司(自動車用ドア)
40
上 海博澤汽車部件有限公司(自動車用ドア• シート)
40
上海三電貝洱汽車空調有限公司(自動車用エアコン)
38.5
上 海 大 陸 汽 車 制 動 系 統 (自動車用制動システム)
49
上 海釆埃学転向機有限公司(自動車用ステアリングシステム)
49
上海科尔本施密特活塞有限公司(自動車用ピストン)
50
上海法雷奥汽車電器系統有限公司(トランスミッション)
50
上 海納鉄福伝動軸有限公司(
動力伝達装置)
35
上海菲特尔莫古軸瓦有限公司(
ベアリングブッシュ,スラストワッシャー)
40
上海菲特尔莫複合材料有限公司(
ベアリングブッシュ生産用材料)
40
亜普汽車部件有限公司(
オイルタンク)
34
上海貝洱熱系統有限公司(ラジェ一夕)
50
上海薩克斯動力総成部件系統有限公司(
クラッチ)
50
上海皮尔博格有色零部件有限公司(
シリンダブロック)
50
華東泰克西汽車鋳造有限公司(自動車用鋳造部品)
25
出 所 :『中国汽車年鑑各年版』 により, 筆者 作 成。
系企業の撤退により, たとえ新鋭設備を有し
8 社 にすぎず, 中国側は実質上従属的な立場
ていても,地元企業自らのノウハウで再稼働
に あ り , 自 主 開 発 権 や 経 営 管 理 権 が 弱 い 。結
することでさえ困難である。先行研究で提起
局 合 弁 後 の 企 業 の 生 産 管 理 • 技 術 開 発 権 •経
され た問 題点 のよ う に,外資合弁側の技術を
営 管 理 権 が 外 資 企 業 の 手 に 握 ら れ ,現 地 と の
身 に つ け , す ぐ に 自 身 の 力 を 強 化 し ,合 弁 企
関わりの深い部門のみ,いわゆる人事やマー
業 の 自 主 開 発 権 , さらには経営権を握るよう
ケテイング部門は中国側が担当している。 こ
に必死に努力し,高度化したのかという問い
う い っ た 「出 銭 不 出 力 」 の 合 弁 の 性 格 に よ っ
に対する答えはここで若干示唆されたかもし
て, こ の 華 域 汽 車 系 統 股 份 有 眼 公 司 は 生 産 管
れない。成 功 事 例 の 2 社を有する華域汽車系
理 統 括 会 社 よ り ,投 資 会 社 の 性 格 の 方 が 強 い 。
統股份有眼公司の傘下各外資合弁企業の持ち
さらに, この表から見れば, 1 台の車を構成
株比率から見ると(
表 1),合 弁 企 業 の 中 国 側
する重要な機能部品の生産はほとんどこれら
の 持 ち 株 比 率 が 50 % に 達 し た 企 業 は わ ず か
の 合 弁 企 業 で 行 わ れ ,傘 下 に は 同 じ 機 能 部 品
(18)
(18)
「
お金のみ出すが,力は出さない」 という意味で, 中国の合弁側企業が生産には積極的に參加して
いないことを指している。
—
227
(5 0 9
) —
を生産する中国系の部品企業は存在していな
占 め て い る 。 そ の う ち , 年 間 売 上 が 1 億元を
い 。合 弁 を 通 し て , 中 国 系 部 品 企 業 が 事 実 上
超 え る 企 業 は 3 3 社 も あ る 。2 0 0 9 年の自動車
外 資 系 企 業 に 身 売 り さ れ ,外 資 系 企 業 か ら 得
部 品 工 業 販 売 収 入 は 2 5 0 億 元 ,輸 出 額 は 4 .3 億
られた技術や生産管理の手法をフイードバッ
ドルに達した。 2 0 1 0 年 の 工 業 販 売 収 入 は 310
クできる主体がなくなった。結 果 と し て , こ
(20)
億 元 , 輸 出 額 は 5 .4 億 ド ル に 達 し た 。
ういった合弁企業は,外資企業の世界各国に
玉 環 県 は 現 在 , 全 県 の 自 動 車 •オ ー ト バ イ
点 在 す る 他 の 子 会 社 と 同 じ よ う に , あくまで
部 品 の 生 産 加 工 企 業 は 合 計 2 ,0 0 0 社 余 り 存 立
も世界戦略中の一生産拠点にすぎない位置に
しており, 従 業 員 の 数 は 合 計 5 万人余りであ
ある。外 資 と の 合 弁 で ,営業収入が急速に伸
る。 2 0 1 0 年 の 自 動 車 部 品 産 業 全 体 の 生 産 高 は
び る一方,外資との合弁による高度化はあく
ま で も 合 弁 企 業 の 高 度 化 で あ り , 中国系部品
一
(
19)
企業の高度化とは言えない。
で は ,外 資 合 弁 で な い 発 展 の 仕 方 は , 中国
3 3 0 億 元 ,前 年 度 と 比 べ て 42 % の 増 加 を 実 現
し, 全 県 の 工 業 総 生 産 高 の 33 % 以 上 を 占 め ,
そ の う ち ,直 接 輸 出 額 は 4 .8 4 億 米 ド ル に 達 し
21)
た。
の部品企業にとってありうるのか。以下では,
以下では, 玉環県と瑞安市の代表的な企業
地 場 系 部品企業のもう1 つの高度化について,
を
1 社ずつ取り上げ,紹介しよう。
事例を取り上げながら分析する。
1 .
第
3 節地場系自動車部品企業
浙江正裕工業有眼公I
f
① 概 況
正 裕 工 業 有 眼 公 司 は 1 9 8 6 年 に 設 立 さ れ ,玉
中国 自 動 車 補 修 部 品 の 産 地 と 言 え ば ,浙江
環県をはじめ, 浙江省の嵊州と寧波北侖にも
省の瑞安市と玉環県の右に出るものはほとん
工 場 が あ る 。 工 場 の 建 築 延 べ 面 積 は 2 6 ,6 0 0 平
どない。 ゆ え に ,瑞 安 市 は 「中 国 自 動 車 •オ ー
方 メ ー ト ル で あ り ,主に生産している製品は自
トバイ補 修 部 品 の 都 」,玉 環 県 は 「中国南方最
動 車 用 の シ ョ ッ ク ア ブ ソ ー バ ー で あ る 。 2010
大の自動車部品工業基地」 と称されている。
年 調 査 時 点 で は , 9 つ の シ リ ー ズ ,合 計 7,000
瑞 安 市 に 関 し て は ,2 0 1 0 年時点では市内自
種 類 以 上 の シ ョ ッ ク ア ブ ソ ー バ ー を 年 間 750
動 車 •オ ー ト バ イ 部 品 の メ ー カ ー が 合 計 1,554
万 本 生 産 し て お り ,2 0 0 9 年 の 販 売 収 入 額 は 3.5
社 あ り ,瑞 安 市 製 造 業 企 業 数 全 体 の 約 25 % を
億元に達し, 中国国内の最大のショックアブ
( 1 9 ) 事例として取り上げた 2 社以外にも,2 0 0 8 年 9 月筆者が上海小糸車灯有限公司を訪問した際にも,
経営と技術の主導権は日本人副総経理の二人にあると聞いた。2 0 0 8 年 9 月上海小糸車灯有限公司副
総経理宮沢健治氏,仁藤勝司氏へのインタビュー調査による。
(20) 2 0 1 1 年 3 月 6 日,瑞安市汽摩配協会章金木秘書長へのインタビュー調査による。
( 2 1 ) 『中国汽車工業年鑑 2 0 1 0 年版』 p . 1 5 5 による。
(22) 2 0 1 0 年 8 月 2 5 日に行った浙江正裕工業有限公司常務副総経理陳候輝氏へのインタビュー調査によ
る。
—
228
(5 1 0
) —
ソ ー バ ー メ ー カ ー と も 言 わ れ て い る 。 製品の
自分の技術を生かし,製造できる可能性があ
97 % は 輸 出 で あ り ,主 に ア メ リ カ , ヨーロッ
る と 考 え ,こ の 業 界 に 進 出 す る こ と を 決 め た 。
パ に 輸 出 さ れ て い る 。製品の多くは海外の補
しかしながら,当時鄭氏はショックアブソー
修 部 品 市 場 で 売 ら れ て い る ほ か , 少量であり
バーが自動車部品の中でかなり製造技術が難
ながらも,湖 南 省 に あ る 「
長 豊 集 団 」および
しい部品であることすらわかっていなかった。
「
一 汽 紅 塔 雲 南 汽 車 製 造 有 眼 公 司 」のトラック
当時の台州にショックアブソーバーメーカー
用ショックアブソーバーのO
は
E M 部品も供給
してい る 。
1 社 も な く ,參考にできる先行 企 業 も な か っ
た。 結 局 , 形 が 非 常 に 近 い 部 品 が 製 造 で き て
2 0 年 余 り の 成 長 を 経 て ,正 裕 工 業 は 浙 江 省
も,機 能 の 面 で は 雲 泥 の 差 で ,全然売れなかっ
のハイテク企業, 国家品質検査免除企業など
た。 しかし, そ の 後 , 鄭 氏 は 専 門 技 術 を 持 つ
の称号を得た。 同社は技術センターを設け,
エ ン ジ ニ ア を 招 聘 し , リ バ ースエンジニアリ
国際自動車工業の発展のニーズをしっかり受
ングを徹底化するために誤差なく正確に寸法
け 止 め ,「内 聯 外 引 」 (
国内の研究機関との提携,
を測定した。 さらに素材成分も検査機関に依
外国の先進的な技術の導入) と い う 方 針 の 下 で ,
頼 し ,分 析 す る こ と に よ っ て ,ようやく夏利の
自動車用のショックアブソーバーに関する新
シ ョ ッ ク ア ブ ソ ー バ ー を ほ ぼ 100 % コピーす
技 術 ,新 素 材 ,新 構 造 の 応 用 研 究 を 常 に 行 い ,
る ことに 成 功 し た 。製 造経 験 の 欠 如 で 合 格 率
す で に 月 間 100種類余りの新製品の研究開発
が わ ず か 6 割 で あ っ た が ,売 り 手 市 場 で あ っ た
能 力 を 備 え て い る 。具 体 的 に は ,正裕工業は
夏利の補修部品市場で常に品不足が続いてい
国外の有名ショックアブソーバー企業の製品
た た め ,企 業 が 存 続 す る こ と が 可 能 と な っ た 。
情報を常 に ア ッ プ デ ー ト し , 国外企業の製品
その後,玉環県の関連加工産業などの産業
に 対 す る 破 壊 実 験 (リバースエンジニアリング)
チ ェ ー ン が 完 備 し て い る こ と と ,創 業者が玉
を頻繁に行い, 自ら技術や情報の蓄積を行っ
環 出 身 で あ る こ と も あ っ て ,玉環県で同社を
ている。 また,大 学 生 の イ ン タ ー ン 基 地 な ど
立 ち 上 げ た 。最初 はレ ベ ル が 低 い 部 品 を 生 産
を設立し, 中国の清華大学,浙江大学との産
していたため,主 な 市 場 は 国 内 の 「
汽 配 城 」,
学 共 同 研 究 に も 力 を 入 れ ,数多くの新製品の
いわばローエンドの国内アフターマーケット
開 発 に 成 功し た 。企 業 は す で に シ ョ ッ ク ア ブ
であった。 その後,国内市場における競合者
ソ ー バ ー 製 造 分 野 に お い て は ,1 4 の 技 術 特 許
が 次 第 に 増 え ,市 場 の 秩 序 も 乱 れ ,企業 の 熾 烈
と 1 つの外観特許を取得している。
な 価 格 競 争 ,代 金 の 支 払 い 遅 延 な ど の 問 題 に
1 9 8 6 年に創業者鄭連松氏は国有企業から独
悩まされた結果, 同社は海外の補修部品市場
立 し , 広 州 で 商 売 し て い た と き に , ショック
へ シ フ ト し ,海外 への 部 品 輸 出 が 同 社 の ド ル
アブソ一バーの市場需要は大きいという情報
箱 と な っ た 。 さらに,「
企業の急速な規模拡大
を聞き,杭 州 で 「
夏 利 」という車種用のショッ
により,着 実 な 技 術 の 向 上 」を目指し,2 0 0 0 年
ク ア ブ ソ ー バ ー を 購 入 し ,分 解 し て 分 析 し た 。
から, 同社の生産体制はさらなる大きな転換
—
229
(5 1 1
) —
製 品 の 海 外 販 売 先 構 成 は ,欧 米 43 % ,アジア
期 を 迎 え た 。企 業 は 補 修 部 品 市 場 の 市 場 シ エ
27 % ,中 南 米 20 % ,オ ー ス ト ラ リ ア 5 % ,そ
の 他 5 % と な っ て い る 。販 売 網 の 構 築 に お い
ては,正 裕 工 業 は 積 極 的 に 「
3 + 6 戦 略 」 を遂
行 し て き た 。 上 海 を 中 心 に , 国 内 で は 3 つの
販 売 拠 点 を 作 り , さ ら に 海 外 で は 6 つの販売
アを確保しながら, これまで蓄積した技術力
と資金力を生かし, 国 内 の O
E M 市場に進出
した。 す で に 述 べ た よ う に , 現 在 正 裕 工 業 は
国内の長豊集団,ー汽紅塔などにトラック用
の
O E M 部品を供給している。
②経営の特徴
拠 点 を 作 る こ と で あ る 。販 売 網 を 構 築 す る と
当 社 の 経 営 の 特 徴 と し て は , まず部品生産
同 時 に ,正 裕 工 業 は 一 方 で は ,2 0 0 2 年頃から
に お い て 柔 軟 な 生 産 方 式 を 採 っ て お り , 部品
自社ブランド製品の確立にも大きく力を入れ
の核心的な部分の設計と製造工程とアセンブ
た。 目下,正 裕 工 業 の 輸 出 製 品 の 20 % は自社
リ の工程 を 社 内 に 置 き ,そ れ 以 外 の メ ッ キ ,プ
ブランド「
U N IC O R N 」 「A D D 」 の部品 で あ
レス, 表 面 処 理 の 工 程 は 地 元 の 企 業 に 外 注 し
る。 こ の ブ ラ ン ド は す で に 世 界 3
ている。 ショックアブソーバーの製品品質に
録 さ れ て い る 。 また, 自 社 ブ ラ ン ド の 知 名 度
関 して,2 つ 重 要 な 指 標 が あ り , それは騒音
を上げるため,毎年国内外の国際自動車部品
とオイル漏れである。 品質を高めるため, オ
の見本市に參加している。
イル漏れ等の問題が頻繁な地元産のシールを
使 わ ず , す べ て 輸 入 品 を 使 用 し , コス ト は 国
内の企業より5~10
2.
% 高くなる。
0 カ国で登
(23)
瑞立集団
①
概況
また,正 裕 工 業 は 量 産 部 品 だ け で な く ,多
瑞立集団は専門的に自動車部品を生産する
品種少量の部品,いわば特注品の供給も可能
代 表 的 な 瑞 安 市 の 民 営 企 業 で あ る 。 1 9 8 7 年に
であり, これは部品生産上におけるもう1 つ
現社長の張暁平氏が瑞安市北門頭で「
瑞安市
の 特 徴 で あ る 。特 注 品 の ニ ー ズ に 応 え る た め
紅 旗 汽 配 廠 」を創立した。 そ の 後 ,十 数 年 の 事
に, 正 裕 工 業 の 技 術 者 は 小 ロ ッ ト 生 産 専 用 の
業 拡 大 に 伴 い ,2 0 0 4 年
迅 速 設 計 • 製造ブラットフォームを構築した。
安汽車零部件有眼公司がアメリカのナスダッ
こ の プ ラ ッ ト フ ォ ー ム が 構 築 さ れ て 以 来 ,新
ク に 上 場 し ,温 州 で は 初 の 海 外 上 場 を 達 成 し
製 品 の 納 期 が 大 幅 に 短 縮 さ れ , 生 産コストも
た企業となった。
7 月瑞立集団傘下の瑞
大 き く 低 減 し た 。現 在 ,正 裕 工 業 は 毎 日 7 0 種
現 在 ,企 業 の 資 本 金 は 2 .5 億 元 ,従 業 員 は
類 か ら 1 0 0 種 類 の 迅 速 な 新 製 品 の 設 計 • 生産
3 ,0 0 0 人 , 工 場 の 敷 地 面 積 は 4 3 0 ムー
( 約 2 8 万平方メ ー ト ル ) 余 り で ,建 築 延 べ 面
積 は 1 6 万 平 方 メ ー ト ル で あ る 。企 業 は す で
が可能となっている。
さらに,市 場 戦 略 に 関 し て は ,正裕工業の
合 計
(23) 2 0 1 1 年 3 月 7
日に行った中国瑞立集団総経理陶保健氏,総裁アシスタント•行政監査馮乾存氏へ
のインタビュー調査による。
—
230
(5 1 2
) —
に IS O /T S 1 6 9 4 9
,ISO 14001 ,O H SA S18001 ,
内で部品の研究 , 開発, 設計, 生産を一貫し
A A A 級 国 家 標 準 化 良 好 行 為 , 計量測定シス
て行い,完成車メーカーへ部品の提案ができ
テムなどの品質, 環境, 生産安全システムに
るようにな った 。 そ の 理 由 は 2 つ あ っ た 。第
関 す る認定を取得している。現 在 , 企業の主
1
な 製 品 は 自 動 車 の エ ア •ブ レ ー キ , 油 圧 式 ブ
と で あ る。 完 成 車 と 部 品 の 同 時 開 発 を 行 う こ
レ ー キ な ど の 制 動 部 品 で あ る 。瑞 立 集 団 は 自
と に 固 執 し , い わ ゆ る デ ザ イ ン •イ ン を 実 現
動 車 用 の 補 修 部 品 を 生 産 し て い る ほ か , 中国
した。 同 時 に , 最 高 品 質 の 部 品 を 完 成 車 メ ー
第一汽車集団,東 風集団 ,上海汽車工業集団
カ ー へ 供 給 することを保証するため, 瑞立集
な ど 6 0 社 余 り の 国 内 ト ラ ッ ク ,バスメーカー
団は業界最先端の検査設備と実験室を導入し,
O E M 部品を提供する実績も有している。
2 0 1 0 年の上場企業の瑞安汽車零部件有眼公
司 の 年 間 売 上 は お よ そ 6 億 ド ル で あ る 。 企業
の 製 品 の 60 % が 国 内 O E M 市 場 に 供 給 さ れ
に
に完成車メーカーと常に戦略関係を持つこ
生産された製品の品質確保を徹底化している。
第
2
に, 海 外 市 場 へ の 進 出 に よ る 技 術 の レ べ
ルアップである。海外のアフターマーケット
への部品供給によって, 国際市場の需要を把
ており, 国内外のアフターマーケットは残り
握 し , いち早く世界中の最も先進的な製品の
40 % を 半 々 で 占 め て い る 。 そ の う ち の 輸
情 報 を 入 手 で き る よ う に し て い る 。現 在 , 海
出 製 品 は 主 に ヨ ー ロ ッ パ , ア メ リ カ , 日本の
外市場へ供給されている部品の半分は顧客が
車種に対応する補修部品である。
サンプルを持參する形での開発依頼によるも
の
②経営の特徴
ので,海外市場で積み重ねた開発経験と製造
生産に関しては,瑞立集団は異なる市場に
技術をO
E M 部 品 生 産 に 生 か し , 企 業 は 「提
それぞれ適する部品生産方式を採っている。
案 型 企 業 」 に 変 身 し た 。例 え ば , 中国解放汽
瑞立集団は中国国内アフターマーケットの補
車 有 眼 公 司 の 第 5 代目のトラック車種である
修 部 品 供 給 か ら ス タ ー ト し た が , 中国自動車
「
J 5 」の エ ア •ブ レ ー キ シ ス テ ム の 中 の 2 0 個
主 流 市 場 の 情 報 と 状 況 を 把 握 す る た め ,O E M
の 部 品 の う ち , 1 7 個 は 瑞 立 集 団 が 提 案 し ,供
部 品 生 産 も 拡 大 し つ つ あ る 。瑞立集団の理念
給したといった実績を持っている。
としては, O
E M 部 品 の 生 産 を 通 し て , アフ
補 修 部 品 生 産 に お い て は ,アフターマーケッ
ターマーケット向けの補修部品の生産品質の
ト向けの補修部品に要求されるのは高い汎用
性 で あ る 。 中 国 で も , 海 外 で も , 自動車 の 車
向上を促進することである。
O E M 部 品 生 産 に お い て は ,最 初 の 頃 ,完成
種 が 増 え る 一 方 で , これは企業の生産組織に
車メーカーの要求に準じる部品の開発生産が
と っ て は , 大 き な チ ャ レ ン ジ で あ る 。 この問
できるかどうかが大きな問題となったが,現
題 を 解 決 す る た め に , 企業が率先してアメリ
在瑞立集団が完成車メ一 カ ー に O
E M 部品供
カ市場輸出向けの補修制動部品に着手し,補
給メーカーとして承認されるまで, 技術水準
修 部 品 の 基 本 構 造 を 統 一 化 す る な ど ,インター
を向上させ, 大 き な 成 長 を 遂 げ た 。現在自社
フェース上の改造によって,汎用性をアップ
—
2 3 1 (5 1 3 ) —
させた。 なぜなら, アメリカは車種体系がシ
使用されるバスのメーカーへのO
E M 部品供
ン プ ル で 部 品 点 数 は 少 な く , 自 動 車 メーカー
給 を 実 現 す る こ と に よ り , その後の補修部品
間で部品の共通化が進んでいることもあり,
の 持 続 的 な 供 給 も 可 能 に な る た め ,バス用の
易 で あ る か ら で あ る 。 そ の 後 ,企 業がアメリ
O E M 部品の収益性は高いこと。
ト ラ ッ ク 用 O E M 部 品 に 関 し て は , すでに
カ市場輸出向けの補修部品の汎用化改造の経
述べたように, 中国解放汽車有眼公司などに
験 と 技 術 を 利 用 し ,現 在 他 の 地 域 へ の 輸 出 補
供 給 す る 実 績 が あ る ほ か ,バ ス 用 O
修部品および国内向けの部品の生産に関して
に 関 し て は ,す で に 鄭 州 宇 通 ,中 通 客 車 ,アモ
も,標 準 化 , シ リ ー ズ 化 さ せ つ つ , アフター
イ金龍,丹 東 黄 海 な ど の 国 内 大 手 バ ス メ ー カ ー
マーケット向けの汎用補修部品の全体の割合
へのO
を増やしている。補 修部 品市 場向 けの 部品 の
修部品も中国国内の各大手公共交通公司に多
汎 用 性 を 高 め る こ と に よ っ て ,設計も部品の
く使 用 さ れ て い る 。 2 0 0 8 年 瑞 立 集 団 が 生 産 し
基 本 仕 様 も 統 一 化 さ れ る よ う に な り , 開発コ
たバス用補修部品は中国都市公共交通協会か
ス ト が 大 幅 に 低 減 で き る の み な ら ず , 一国あ
ら 「
公共交 通 推 薦 ブ ラ ン ド 」 と認定された。
補 修 部 品 の 生 産 ,輸 出 品 目 の 把 握 は 比 較 的 容
E M 部品
E M 部 品 納 入 実 績 が あ り ,バス用の補
このように,瑞立集団は補修部品の生産品
るいは一地域の市場変動が発生した場合でも,
生産のぶれが他の市場で吸収できる。
目 の 多 様 性 を 保 ち な が ら ,一 方 で 汎 用 化 開 発 ,
標 準 化 生 産 を 行 っ て い る 。 そ の 結 果 , 国内外
さらに,市 場 開 拓 の 面 に お い て は ,よりニッ
チなターゲット市場の選定も瑞立集団の1 つ
2 つの補修部品市場のニーズを確実に満たせ,
の特徴である。
これらの市場で蓄積された技術と資金は企業
瑞立集団が現段階で生産しているO
EM 部
の 次 世 代 事 業 展 開 の 基 盤 と な っ た 。 同社はそ
品は, 中国国内完成車メーカーの量産セダン
の 技 術 を 十 分 に 生 か し ,企 業 に と っ て 利 益 を
タ イ プ の 乗 用 車 用 部 品 で は な く , ほとんどト
最大化できるニッチなO
ラ ッ ク •バ ス 用 の 制 動 部 品 を 中 心 と す る も の
した。
E M 部品市場に進出
である。 同社がセダンタイプ乗用車の制動部
3.
品を製造する技術を持っているにもかかわら
ず, あえて參入しない理由は3 つある。第
1
小括
事 例 で 見 た よ う に ,第
2 節で紹介した企業
に,瑞 立 集 団 は ト ラ ッ ク の 補 修 部 品 生 産 か ら
と 違い, こ れ ら の 企 業 の 技 術 の 獲 得 は 外 資 企
起 業 し た た め , トラック部品製造に関する技
業の支援などに頼ることなく, 国内外の市場
術の蓄積があり, この分野では優位に立って
で の 補 修 部 品 を 供 給 し ,市場競争の試練を経
い る こ と 。第
2
て, 自 ら 蓄 積 し た も の で あ る 。
に, ト ラ ッ ク •バ ス 用 の 補 修
部 品 は ニ ッ チ な 市 場 で あ り ,完成車メーカー
こういった補修部品の生産技術を用いて補
か ら の コ ス ト ダ ウ ン の 圧 力 が 少 な く ,競 合 相
手 も 比 較 的 少 な い こ と 。第
3
メジャーな乗用車のO
に,公 共 交 通 に
—
修部品の生産を中核部分として維持しながら,
232
(5 1 4
) —
E M 部品市場ではなく,
比較的に生産規模の小さいニッチなO
EM 部
資企業の支援がなければ, 中国側の企業は通
品市場への參入を狙っている点が, 地場系補
常通りの操業が厳しくなる可能性が示唆され
修部品メーカーを出自とする企業の大きな特
た。 ゆ え に ,外 資 主 導 型 の 合 弁 企 業 は 確 か に
徴であろう。
高度化したが, 中国系企業の高度化だとは言
以 上 の よ う に ,「地 場 企 業 」の 発 展 の テ ン ポ
は 比 較 的 に 遅 い が ,O
えないであろう。
E M 部 品 市 場 ,補 修 部
第
2
に,補 修 部 品 企 業 の 出 自 を 持 つ 地 場 系
品市場, さらに国内外市場をまたがる形で展
部品メーカーは外資主導型の発展でなく, 自
開することで, 中国自動車部品企業ならでは
分 自 身 で 経 営 戦 略 を 決 め ,技 術 を 蓄 積 し ,主
の発展の方向性と柔軟性が見られる。
体 的 な 成 長 を 遂 げ た 。補修部品から操業を始
め た 地 場 系 補 修 部 品 企 業 は ,創 業 当 初 か ら ,国
内外のアフターマーケットをターゲット市場
終わりに
とし, 市 場 納 入 条 件 が 比 較 的 に 低 い 国 内 市 場
本稿では, 同じ長江デルタ地域にある上海
へ の 部 品 供 給 で 資 金 を 蓄 積 し た 後 ,海外市場
市と浙江省の自動車部品企業の経営実態を分
に積極的に進出した。海外顧客からの部品開
析 し て き た 。上 記 の 論 述 を 踏 ま え て ,次の点
発 依 頼 に よ っ て ,常に世界最先端の製品を入
が結論として指摘できる。
手で き, この部品のリバースエンジニアリン
第
1
に,外 資 と の 合 弁 に よ り , 中国の 部 品
グを通して,その製作技術を構造と材料両面
メーカーが短期間で技術や生産管理の面にお
か ら 研 究 し ,積 極 的 に 先 進 技 術 を 学 ん で い る 。
ける キ ャ ッ チ ア ッ プ が 実 現 で き る が ,こういっ
第
3
に,補 修 部 品 企 業 の 出 自 を 持 つ 地 場 系
た 合 弁 に よ る 発 展 は ,外 的 要 因 に よ る も の で ,
部 品 メ ー カ ー の 発 展 か ら , 中国の自動車部品
中 国 企 業 が 外 資 企 業 の 技 術 を 吸 収 し , 自らの
産 業 発 展 の 異 質 な 方 向 性 が 見 ら れ た 。事例で
内的な力に転換したとはまだ言い難い状況で
見 た よ う に ,外 資 主 導 型 部 品 メ ー カ ー と 異 な
ある。事 例 で 見 た よ う に ,地 元 の O
E M 部品
り, こ れ ら の 企 業 の 高 度 化 の 道 は 技 術 の 高 度
メーカーは外資との合弁で,短期間のうちに
化に伴う製品内容の高度化という道ではない
生産規模を拡大することができただけでなく,
よ う で あ る 。彼 ら は 主 体 的 に 外 国 や 他 社 の 技
外 資 側 の 経 営 管 理 へ の 直 接 參 加 に よ っ て ,近
術 を 取 り 入 れ な が ら も ,部品の品質向上のみ
代的な管理による生産の効率化や製品の品質
追 求 す る 方 向 で は な く ,事 例 で 見 た よ う な 補
向 上 も 図 れ る 。 し か し , も う 一 方 で ,合 弁 後
修 部 品 の 汎 用 性 を 高 め る 設 計 •製 造 や 小 口 ッ
の 企 業 の 生 産 管 理 • 技 術 開 発 権 •経 営 管 理 権
トの特注品ニーズ向けの設計プラットフォー
が 外 資 企 業 の 手 に 握 ら れ ,現 地 と の 関 わ り の
ムの構築など,最終製品の汎用性の向上や設
深い部門のみ,いわゆる人事やマーケテイン
計
グ部門は中国側が担当していることが分かる。
量に低コストでさらに迅速に作ることが実現
そ の 結 果 ,上 海 蓬 垫 廠 の 事 例 で 見 た よ う に ,外
できた。 このようにややローエンド的な国内
—
233
(5 1 5
• 生 産 工 程 の 簡 易 化 を 通 し て ,補 修 部 品 を 大
) —
肖威(
2 0 0 0 ) 『中国自動車産業の経営構造分析』
外の補修部品市場の大量の需要に応えるよう
な技術革新と, ニ ッ チ な O
晃洋書房。
E M 部品新市場に
関満博• 池 谷 嘉 ー (
2008 ) 『中国自動車産業と
參入するにあたって必要とされる市場開拓能
日本企業』新評論。
陳晋(
2 0 0 0 ) 『中国乗用車企業の成長戦略』信
力 と 技 術 応 用 能 力 の 蓄 積 こ そ が , こういった
山社。
地場系部品メーカーの高度化の方向であろう。
陳傑(
2012 ) 「中国自動車補修部品企業の発展
—
浙 江 省 温 州 市 • 瑞立集団の事例研究」
『中小企業学会論集 3 1 号』 同友館。
そ れ ゆ え ,中 国 自 動 車 部 品 産 業 を 見 る 際 に ,
単 純 に 部 品 メ ー カ ー の 高 度 化 を 「O
E M 部品
東茂樹(
2 0 0 8 ) 「自動車部品産業の成長——
地
場中小サプライヤーの高度化」(
今井健一-
供給」 と定義するという単線的な見方では不
丁可編 『
中国産業高度化の潮流』所収)ア
十 分 で あ る 。上 記 の よ う に , 中国自動車部品
ジア経済研究所 , p
産業においては, まったく性質の異なる部品
p . 117 〜 150 。
広島大学大学院総合科学研究科編• 山崎修嗣責
メ ー カ ー が 多 数 存 在 し て い る た め , 中 国自動
任編集(
2 0 1 0 ) 『中国の自動車産業』丸善
車 部 品 産 業 を 見 る 際 に は ,複 線 的 な 視 角 が 必 要
株式会社。
丸川知雄• 高 山 勇 一 (
2005 ) 『グローバル競争
で あ る 。特 に 本 稿 で 取 り 上 げ た 補 修 部 品 メ ー
時代の中国自動車産業』蒼蒼社。
渡辺幸男(
2004 ) 「温州の産業発展試論一
カ ー を 出 自 と す る 地 場 系 部 品 メ ー カ ー は ,外
自
• 国内 完 結 型 •国 内 市 場 向 け 産 業 発 展 ,
その意味と展望」 『
三田学会雑誌』 9 6 巻 4
立
資主導型部品メ一 カーとはまったく違う発展
の道を歩んでおり, このような異質的方向へ
号。
『
中国汽車零部件工業史』編 集 部 (
1994 ) 『中国
の発展にも注目すべきである。
汽車零部件工業史』。
『
中国汽車工業年鑑』編 委 会 編 各 年 『中国汽車
(経済学研究 科 後 期 博 士 課 程 •
工業年鑑』 中国汽車技術研究中心•中国汽
車工業協会。
経済学部奨励研究員)
上海汽車戦略研究中心• 上海社会科学院部門経
済研究所編(
2011 ) 『上海汽車産業発展報
告
参 考 文 献
2 0 1 1 年』上海社会科学院出版社。
国務院発展研究中心産業経済研究部• 中国汽車
工業学 会 •中 国 大 衆 汽 車 集 団 (
2011 ) 『中国
上山邦雄編著(
2009 ) 『巨大化する中国自動車
汽車産業発展報告』社会科学文献出版社。
産業』 日刊自動車新聞社。
大阪市立大学生産システム研究会(
2003 ) 『自
参 照 HP :
動車メ一 カ一及び関連部品メ一 カーを中心
中国汽車工業協会:h ttp ://w w w .caam .o rg .cn
とする中国企業の生産システムに関する実
(2 0 1 2 年 1 月 1 5 日閲覧)
態調査』。
—
234
(5 1 6
) —
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