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クリエイタ・バンク・プロジェクト
C C C I R E P O R T する「情報提供者課金モデル」に クリエイタ・バンク・プロジェクト より、事業として成立するかどう プロジェクト紹介 かを検証することである。 実験目的とするクリエイタ・バ ンクの仕組みを図1に示す。著名 CCCIは、1995年7月の発足当 ド・ウェブ)ページに掲載する方 なクリエイターの代表秀作を集め 時から、インターネットが世界に 法もあるが、クライアントに来て たページや、広告・印刷業界関連 広がる売り手と買い手が直接結び もらうのは難しい。そこで、専門 のイエローページやリンク集など つくことを可能にし、特にモノや 店街のような集積にすることで解 を持つ総合的なWWWサイトの中 情報の流通面に大きな影響を与え 決しようという方式である。さら にこのシステムを持つことを構想 ると考えていた。また、そこでど に、インターネットでは検索シス したが、実際には当該システムに のような新しいビジネスが可能に テムなどにより、紙媒体にはない 関連するページだけのサイトを構 なるのかにも関心を持っていた。 利便性を高めることもできる。 築しての実験となった。 加えて、フェーズ2(1997年度) 今回紹介する「クリエイタ・バ 第2の目的は、このサービスが ンク・プロジェクト」は、1996年 データバンクへの登録者、すなわ では、DB(データベース)シス 度から97年度にかけて、NRI野村 ちクリエイターから登録料を徴収 テムに、当時はもちろん1999年末 総合研究所を中心とする企業チー ムで実施された。この実験プロジ 図1 クリエイタ・バンクの仕組み(未実現分を含む) ェクトには2つの目的があった。 第1に、各種アート、デザイン 分野のクリエイターと、広告・印 刷業者などのクライアントとを取 り持つマッチングシステムをイン ターネット上に構築することであ る。一般に人脈や専門紙誌・年鑑 などに頼ることが多いといわれる ところを、巨大なクリエイターの データバンクにより、クリエイタ ーには売り込みの場を、クライア ントには希望の発注先を探す場を 提供しようというものである。 クリエイターが独自に代表作な どを自分のWWW(ワールドワイ 90 知的資産創造/2000年1月号 国内外のクリエイター (開設当初は平面画系) イラストレーター フォトグラファー グラフィックデザイナー ファインアーチスト パッケージデザイナー エディトリアルデザイナー アートディレクター テキスタイルデザイナー 登録 申し込み WWW 「クリエイタ・バンク プロジェクト」チーム 国内外の クライアント 検索 マルチメディアDB WWW 一般企業 各種団体 登録 申し込み (フェーズ 2 以降) インダストリアルデザイナー 発注情報 インテリアデザイナー の提供 服飾デザイナー 作曲家・作詞家・アレンジャー コピーライター シナリオライター フラワーアレンジャー その他芸能系アーチスト ⋮ プロフィール コンタクト先 作品サンプル 静止画 動画 3D(QTVR) テキスト 音声 他 広告代理店 (CD-ROM) デザイン制作会社 出版社 仲介依頼 印刷会社 各種プロダクション ⋮ 直接交渉 納品 注)3D(QTVR):3次元クイックタイム・バーチャルリアリティ、DB:データベース、WWW:ワール ドワイド・ウェブ サイバー社会基盤研究推進センター(CCCI)は、サイバー社会とその基盤に関する研究などを推進・支援するために、慶應義塾と野村総合研究所が共同で1995年7月に設立した非営利組織です でも珍しいWWW−DB連携システ ーを対象に、アート関連企業や学 ムによる画像検索機能の実装を試 生も対象とするローカルなクリエ モニターは、阪神地区の広告・ みたことは特筆に値しよう。 イタ・バンクの構築、運営を行っ 印刷事業者や作品登録クリエイタ フェーズ1:1996年度 た(登録は無料)。 ーに依頼し、21件の回答を得た。 ができないようにした。 国内外に提携先を多数持つアー システム面では、先述の画像検 トエージェンシーと協力して国際 索機能の他、作家や作品の属性で 的なクリエイタ・バンクを構築し、 テキスト検索する仕組みも用意 が半数弱あるが、「あまり満 内外のクリエイター約80人の作品 し、そのために作品の索引体系の 足していない」など否定的な をWWW上で実験的に公開した。 作成も行った。 意見も35%あり、満足度が十 主な結果は以下のとおりである。 ● 類似画像検索に肯定的な意見 募集はアートエージェンシーの 登録募集活動は阪神地区に限定 会員に対し無料招待と有料に分け し、1997年4月にWWWサイトを て行ったが、結果的に登録要綱の 公開すると同時にダイレクトメー 的な意見はなかったが、クリ 請求は無料招待のクリエイターか ル、ポスター掲示、置きビラ、8 エイターや作品の多さ、付加 らが大半であった。登録料の水準 月からは学生対象の作品コンテス 情報サービスなどが有効性を は類似紙媒体などの掲載料からみ トなどを展開したが、98年 2 月末 高めるとの指摘が多かった。 て妥当と思われるものだったが、 で登録数は41件にとどまった。無 有料登録への抵抗が感じられた。 料にもかかわらず、登録数は予想 との間に仕事が発生した場合 一方、クライアントに想定され をはるかに下回り、最終目標であ に課金する、成功報酬型課金 る広告・印刷業界の約15団体にヒ るクリエイターとクライアントを 方式が望ましいとするものが アリング調査を行い、以下のよう 取り持つ場をプロデュースするに 半数以上を占めた。 な結果が得られた。 は至らなかった。 ● ● バブル崩壊後、経済的な理由 モニターアンケート 分に高いとはいえない。 ● ● クリエイタ・バンクへの否定 クリエイターとクライアント 本実験を総括すると、第1の目 的はある程度達成できた。また、 から、国内の、また若いクリ 1997年12月∼98年1月に、画像 第2の目的である情報提供者課金 エイターにニーズが移った。 検索システムの有効性の評価、ク による事業性検証では、事業成立 対面での打ち合わせが必要な リエイタ・バンクの具体的な問題 には課題が多いことがわかった。 ので、ローカルで密度の濃い 点、ユーザーの要望などを明確に データベースが望ましい。 し、改めて事業性を評価する目的 フェーズ 2:1997年度 でモニターアンケートを行った。 1996年度の結果を踏まえ、阪 著作権上の問題から、画像検索 神・淡路産業復興推進機構からの システムの評価には特別に許可を CCCIに関するお問い合わせ、インター ネットによる情報閲覧などは下記へお願 いいたします。 野村総合研究所CCCI事務局 電話(045)336−7810(直通) 委託事業である神戸アーチストバ 受けた作品1000点などを収録した 電子メール [email protected] ンク開発実証事業と連携し、阪神 モニター専用ページを設置し、ID、 ホームページ 地区を拠点に活動するクリエイタ パスワードにより一般のアクセス http://www.ccci.or.jp/ccci_home.html C C C I R E P O R T 91