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SW橋梁 - 土地改良測量設計技術協会

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SW橋梁 - 土地改良測量設計技術協会
第4章
-55-
S W 橋梁
-56-
第4章
SW橋梁
新 技 術 名
新技術担当
新技術の区分
実 施 局 の
総 合 評 価
SW橋梁
中国四国農政局
徳島県徳島農林事務所
○
従来技術改良
先進的技術
(製品)
新技術番号
H13-08
都道府県名
徳島県
有
その他
特許・実用新案の有無
SW橋梁は地元産出木材を主材料として鋼板で補強した橋梁上部工型式であ
る。耐久性・施工性に優れ、自然環境の保全に有効な施策・工法であり、早期
に普及すべき技術である。
4.1 新技術の概要
4.1.1 新技術導入のポイント
(1) 従来の木橋の欠点を改良克服し、木材を主材料とした橋梁上部工型式。
(2) 杉材等の木材を使用した集成材と鋼材を組み合わせて強度を確保しているため、歩道橋
だけでなく鋼橋やコンクリート橋と同様一般橋梁(A,B活荷重等)に対応可能である。
(3) 自重が軽量であり、プレハブ式に組み立てていくため架設工期が短縮でき、かつ耐震性
に優れている。
(4) 木と鉄が主材料であるためリサイクルが可能であり、地元産出材を多用できることから
間伐材問題の解消や地域活性化につながる。
(5) 外観は木橋と同じで人と自然に優しい景観となる。
4.1.2 新技術の概要
SW橋梁(Steel stiffened Wooden Bridge)は、平成9年に北海道大学の渡辺昇名誉教授
と秋田大学の薄木征三教授により、車道木橋の弱点克服の決め手として開発された橋梁上部
工型式である。主桁は、木の集成材を鋼材で挟んだ構造になっており、鋼床版・地覆・高欄等
をプレハブ式に組み立て施工するため、軽量で施工性・耐震性に優れた工法である。
徳島農林事務所では県営中山間地域総合整備事業いっきゅう地区において新設の農道橋
(杉の木1号橋 B=5.2m,L=19.0m,A活荷重)としてSW橋梁の採用に踏み切り、H12 年5月、世
界に先駆けて完成させた。農業農村整備事業においては、環境との調和が叫ばれるなか、自
然環境の保全に有効な施策・工法であり、早期に普及すべき技術である。
4.1.3 新技術の特徴
SW橋では先駆的な技術がいくつも含まれており、「杉の木 1 号橋」を例としてその適用技
術の特性を「徳島農林事務所 耕地 1 課課長 吉田良治氏」の技術レポートより整理する。
(1) 近年性能が向上し、コストダウンしているエポキシ樹脂系の接着剤の有効活用
主桁における杉集成材と補強用鋼材との接着、主桁と鋼床版との縦リブによる接着、集
成材地覆とデッキプレートとの接着、集成材地覆への御影石の貼り付け、高欄の鋼角パ
イプの上への杉ラミナーの貼り付け、ゴム支承における下部コンクリートと支承の鋼下
板との接着、さらにゴムと鋼上下板との接着、主桁と端横桁との接着、被覆木板の接着
等があり、各部材間の接合は原則として、強力なエポキシ樹脂系の接着剤を活用して、
優れた施工性を獲得している。
-57-
ファ
ファ
側面
下部
「http://winda7.ce.tokushima-u.ac.jp/tarda/bridges/inside/katsuura/」より
-58-
(2) 上部工の架設をプレハブ方式にして施工の合理化
主桁、端横桁、鋼床版、高欄、地覆、伸縮装置、排水装置等の上部工の各部品について
は、適当なサイズ化を図り、全て工場製作にした。現場においては、それらを短期間に組
み立てるプレハブ方式を採用して、施工の合理化を図っている。とりわけ、上部工におい
て、コンクリートを使用していないため、型枠工等の仮設も不要で、工費・工期面で有利
である。しかも、現場施工に先立ち、工場での仮組が可能で、今回も工場仮組により、寸
法等の確認・調整を行っている。
(3) 上部工の軽量化によるコスト縮減と耐震性
従来から、もっとも重量構造物である主桁・地覆を杉の集成材(コンクリートの 1/6 の
比重)にすることによって、上部工の軽量化が実現でき、その分、下部工のコンクリート
量が節減され、コスト縮減になると共に、耐震性が飛躍的に向上している。
(4) 維持管理の原則不要
集成材、被覆木板等のラミナーについては、防腐処理(タナリス CuAz を使用)を行って
いる。また主桁については、鋼床版の屋根に覆われ雨水から保護されているため、建築分
野における集成材と同様の条件で、腐食の心配はない。従って、高欄等の被覆木板につい
ては、直接風雨にさらされているため、30 年程度の耐用年数かと思われるが、貼り替えは
容易である。主桁については、特別な要因が加わらない限り、100 年以上の耐用年数が期
待できると考えている。従って、維持管理については通常の舗装の補修程度で、特別には
必要ないものと思われる。
(5) 循環型社会に適合した環境保全型の工法
地元の杉という再生可能な自然の素材を活用しており、リサイクルも簡単でコンクリー
トのように廃材処理に困ることもない。また、鋼材の部分が被覆木板により覆われている
ため、見た目は木橋と同じで、人に優しい橋梁景観になっている。
(6) 中山間地域の活性化に役立つ工法
本橋の建設に当たり、約 100 本の地元の杉の間伐材を切り出し、利用することができた。
このことは、地元の木材を本格的な土木用構造材に利用する道づけができたことを意味し、
SW橋の普及により、杉等の間伐材の新たな販路開拓に繋がり、地場産業の育成、林業の
活性化、ひいては中山間地域の活性化に役立つと考えている。
開発者の渡辺 昇氏の実験データについてはベイマツが主流であったが、平成 11 年 6 月
14 日筆者が渡辺氏に連絡を取り、県産杉利用の可能性を確認すると共に、地元の杉の利用
を決断することによって、本SW橋を地域振興型の橋梁工法として出発させることができ
たと考えている。
杉の木一号橋は、中山間地域の小さな一つの農道橋に過ぎないが、この架設の意味する
ところは、コンクリートを取り巻く環境が何かと厳しい中で、新たな時代性に応えている
と言え、橋梁技術史上画期的なものと言えよう。
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4.2 新技術に適合する現場条件
SW橋はコンクリート橋や鋼橋などの一般橋梁と同等であるため、適合する現場条件として
の制約はない。しかし、その特性を考慮した場合の最適な現場条件は次の通りと考えられる。
(1) 外観は木橋であるため、自然景観にマッチする環境
(2) 地場産業としての木材が活用可能な地域
(3) 林間、農村空間、都市空間、公園など人とのかかわりの深い全ての環境
4.3 設計の考え方
(1) SW橋型式
鋼床版桁橋(SW桁橋)
鋼補強床版橋(SWスラブ橋)
単純桁橋、単純床版橋
連続桁橋
(2) 床版構造、型式
桁橋の場合は鋼床版を基本とし、その理由は次の通り。
・軽量化
・排水性、雨水からの主桁の保護
・集成材との接着性
・リサイクル材としての鉄の優位性
・ブロック化、プレハブ化への対応への容易性、施工性
鋼床版は、デッキプレートを縦リブ及び横リブで補剛し、舗装を施した型式が一般的であ
り、主桁又は床組の一部として設計することも考慮する。SW橋の床版は「耐候性鋼材黒
皮つき裸仕様」を用いる場合が多く、設計手法は「道路橋示方書Ⅱ鋼橋編 8.4 鋼床版
H14.3」を準用する。
(3) 主桁
主桁はSW橋の主要部材で、集成材を鋼板で補強した構造部材の総称としており、設計
法は「道路橋示方書Ⅴ鋼橋編 10 章鋼桁 H14.3」を準用する。断面性能は鋼材と集成材の
複合部材として扱い、断面形状と弾性係数に応じて曲げ剛性(EI)を集成材に換算して設
計することが一般的である。
(4) 付属品
1) 舗装
車道の場合アスファルト舗装が多い。歩道では各種舗装材料の中から周辺環境にマッ
チしたものを選択する。
2) 地覆・高欄
地覆は軽量化を図るため集成材を用いるのが良い。車道の高欄は設計速度に応じた強
度が要求されるため、鋼製とせざるを得ないが、地覆とマッチした木材を貼り付けた化
粧を施すのが良い。
3) 排水装置
一般橋梁と同様排水性を確保しSW桁保護のため欠かせないものである。
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4) 伸縮装置
一般鋼橋に準じた性能のものを利用する。雨水等の浸入に対して水密性を有するもの
とする。
5) 支承
支承には「反力分散方式のゴム支承」を用い、支承に「変位制限構造のアンカーバー」
を併用することにより落橋防止措置とする。
(5) 下部構造
「道路橋示方書Ⅳ下部工編 Ⅴ耐震設計編 H14.3」による
(6) その他
橋梁は、その管理主体が定める基準等によって設計を行うもので、例えば小規模農道
にかかる橋梁であれば土地改良事業計画設計基準「農道」基準書に準じることになる。
4.4 設計のフローチャート
SW橋の設計は、従来からの橋梁設計に準じて行うことができるが、SW橋は、基本的には、
「2主桁鋼床版桁橋」であるから、道路橋示方書・鋼橋編の「8.4 鋼床版」を準用する。
開
始
橋梁諸元(橋長、幅員等)の決定
橋梁型式(SW橋)選定
木材と鋼材との複合構造の応力計算により断面算定
複合構造としての主桁と鋼床版の設計
付属品(継手、排水、高欄、支承、舗装等)の設計
下部工の設計
終
了
-61-
4.5 設計に当っての留意事項(渡辺 昇名誉教授資料による)
(1) 各種道路橋の構造特性の比較(支間 18m、B 活荷重の場合)
次の図 1 から図 4 までを比較して、SW 橋を採用する。
【図 1】PC橋(コンクリート製の主桁と床版)
コンクリートは重く脆いから、地震に不利
である。プレテンPC橋は連続桁形式にで
きないから、走行性が悪い。橋を架け替え
る場合、リサイクルができず、産業廃棄物
になる。わが国の1年間のコンクリートの
産業廃棄物は約 7000 万トンに達する。
【図 2】HBB 橋(鋼製主桁とコンクリート製床版)
コンクリート床版は 10 年足らずで亀裂が
発生し、維持費がかかる。連続桁形式にし
た場合、中間橋脚位置の負の曲げモーメン
トにより、コンクリート床版に引張り亀裂
が発生する。
コンクリートは産業廃棄物になる。
【図 3】木橋(木製の主桁と床版)
木橋は軽いから、地震に有利である。木は
ぬくもりがあり、自然と人にやさしいか
ら、公園などによい。木製床版は痛みやす
く、橋面排水性がよくないから、雨水が木
製床版を汚染し、維持費がかかる。木材だ
けの木橋は強度が弱いから、長支間の橋は
設計できず、工費も非常に高い。
【図 4】SW橋(SW主桁と鋼製床版)
主桁に国産のスギやカラマツの間伐材が
使えるので木材の地場産業に貢献する。外
観は木橋であるから、ぬくもりがあり人と
自然にやさしく、素材が木と鉄であるか
ら、リサイクルができる。床版の鋼床版は
耐荷力が抜群で、橋面排水性がよいから、
100 年の寿命が期待でき、全体がプレハブ
式に設計されているので、現場施工が簡単
で速い。連続桁形式に最適で走行性がよ
く、コンクリート橋の3分の1の重さなの
で、地震に有利で、下部工費も安く、従来
のPC橋に比べて 10%程度総工費が安い。
SW橋は木主桁が鋼材で補強されており、
床版が鋼床版なので、B 活荷重対応で、長
支間の橋が設計できる。
注:SW橋とは、集成材の桁を、サンドイッチのように、
リブつき鋼板で上下から挟んで補強しようとした桁の
ことで、Steel stiffened Wooden beam(鋼補剛木桁)の
略称である。木部材と鋼部材はエポキシ樹脂接着剤によ
って接着され、ボルトは1本も使わないから、接着の応
力伝達は滑らかである。
-62-
(2) 工費の検討
SW橋の概算工事費は、次のとおりである。
上部工費は、材料費、工場製作費、工場管理費、現場への運搬費、現場架設費、現場工
費、排水装置費、伸縮装置費、支沓費、高欄費、舗装費、一般管理費のすべてが含まれて
いる。
この図で、支間長 20m、総幅員 7.2m のSW橋の場合は、(18 万円/m2)×(20m)×
(7.2m)=2592 万円、プレテンPC橋の場合は、(21 万円/m2)×(20m)×(7.2m)=3024 万円で
ある。
(3) 設計手法について
SW橋の設計・製作・架設などについては、道路橋示方書・鋼橋編や耐震設計編を用い、
構造用製材や構造用集成材については、JASの規格を用いるので、特別な指針や示方書
は必要ない。
(4) 問い合わせ先
SW橋には集成材や接着剤や現場溶接などの最新のハイテクが駆使されており、設計にお
ける応力計算法も高度な「木と鋼の複合構造力学」を使うので、北海道大学の渡辺 昇名
誉教授に、次の E メールで相談するとよい。
[email protected]
(5)特許について
SW橋の特許権者は、渡辺 昇氏と(株)シビル設計コンサルタントにあるので、SW橋の
設計、製作、施工などの業務の実施にあたっては、事前に特許権者の承諾を得る必要があ
る。H15.12.15 現在確認したSW橋関連の特許・実用新案は以下の通り。
1)特開 2000-289008 発明の名称「鋼補剛木桁」
2)実用新案登録第 3072134 号 考案の名称「鋼板補強木床版合成桁橋」
3)
〃
第 3043089 号 考案の名称「鋼板補剛接着継手構造」
4)
〃
第 3036460 号 考案の名称「鉄筋・鋼板補剛木桁を用いた鋼床版木橋」
5)
〃
第 3043084 号 考案の名称「鋼板で補剛した木桁・木柱・木ラーメン」
http://www.ipdl.jpo.go.jp 特許電子図書館
-63-
4.6 設計に必要な各種設計数値の考え方
(1) 主桁の断面定数
SW橋の主桁は木の集成材を鋼材で接着補強した複合部材として扱っている。エポキシ
樹脂系の接着材を使用することにより、接着強度は集成材よりも大きいため、断面形状と、
鋼材と集成材の弾性係数比から集成材の断面性能に換算して設計を行うことが一般的で
ある。
(2) 鋼材
主桁補強鋼板、鋼床版は「道路橋示方書Ⅱ鋼橋編 H14.3」に準ずる。
鋼床版下面等の露出する部分は、維持管理上から塗替えが不要とされる耐候性鋼材SMA
400W 黒皮付裸仕様を用いる場合が多い。
弾性係数
Es=2.1×106 kgf/cm2=2.0×105 N/mm2
(3) 集成材
SW橋で使用する材料は構造用集成材を用いる。
「(社)日本農林規格協会(JAS)」で定められている他「木質構造規準同解説 建築学会」、
「木橋設計施工の手引き(財)日本住宅木材技術センター編著」があり、ここでは最新の
ものとして「H13 国交省告示第 1024 号」により許容応力度が定められた資料を添付する。
集成材の許容値の例を示す。
1)杉の木 1 号橋
設計に当たり、地元上勝杉の集成材強度確認を H11.10 月北海道大学にて実施して決定。
2)八丁平つなぎ橋
北海道産カラマツを用いた集成材を使用
杉の木 1 号橋
つなき橋
上勝杉の集成材(2級)
繊維
方向
の許
容応
力度
北海道産カラマツ
純圧縮
70 kg/cm
2
75 kg/cm2
純引張
65 kg/cm2
70 kg/cm2
曲げ
95 kg/cm2
105 kg/cm2
9 kg/cm2
10 kg/cm2
70000 kg/cm2
80000 kg/cm2
せん断
ヤング係数
(4) 設計施工の参考論文
次の 2 題を添付する
1)平成 13 年度農業土木学会中国四国支部講演会にて論文発表「SWスラブ橋の設計・製作・
架設・載荷試験について」
2)「平成 14 年度土木学会 北海道支部論文報告書第 55 号「八丁平つなぎ橋の設計・製作・
架設について」
-64-
主に生産される集成材の強度(標準集成材)
長期許容応力度(下記の数値に1.1/3を乗じた数値)
短期許容応力度(下記の数値に2/3を乗じた数値)
種別
規格種類
E120‐F330
異等級構成
(対称構成)
ベイマツ、ダフリカカラマツ等
E105-F300
ベイマツ、ダフリカカラマツ等
E105-F300
ヒノキ、ヒバ、カラマツ等
E95-F270
ベイツガ等
E95-F270
エゾマツ、スプールス、オウシ
ュウアカマツ等
E75‐F240
スギ、ベイスギ等
E110-F315
異等級構成
(非対称構成)
ベイマツ、ダフリカカラマツ等
E100-F285
ヒノキ、ヒバ、カラマツ等
E90-F255
ベイツガ等
E90-F255
エゾマツ、スプールス、オウシ
ュウアカマツ等
E80-F240
エゾマツ、スプルース等
E70-F255
スギ、ベイスギ等
E120‐F375
同一等級構成
(4枚以上)
ベイマツ、ダフリカカラマツ等
E105-F345
ヒノキ、ビバ、カラマツ等
E95-F315
ベイツガ等
E85-F300
エゾマツ、スプールス、オウシ
ュウアカマツ等
E75-F270
スギ、ベイスギ等
E115-F405
化粧ばり
構造用集成柱
ベイマツ、ダフリカラマツ等
E105-F375
ヒノキ、ヒバ、カラマツ等
E95-F345
ベイツガ等
E85-F315
エゾマツ、スプールス、オウシ
ュウアカマツ等
E75-F300
スギ、ベイスギ等
圧縮
引張り
曲げ
せん断
単位:N/mm2
めり込み
25.2
22.2
32.4
3.6
9.0
22.8
19.8
29.4
3.6
9.0
22.8
19.8
29.4
3.6
7.8
21.6
18.6
27.0
3.6
6.0
21.6
18.6
27.0
3.0
6.0
17.4
15.0
24.0
3.0
6.0
24.6
21.0
31.2
24.0
3.6
9.0
22.2
19.2
28.2
22.2
3.6
7.8
20.4
18.0
25.2
21.0
3.6
6.0
20.4
18.0
25.2
21.0
3.0
6.0
18.6
16.2
24.0
19.2
3.0
6.0
16.8
14.4
22.2
18.0
3.0
6.0
30.0
25.8
37.2
3.6
9.0
27.6
24.6
34.2
3.6
7.8
25.8
22.8
31.2
3.6
6.0
24.0
21.0
29.4
3.0
6.0
22.2
19.2
27.0
3.0
6.0
31.8
28.2
40.2
3.6
9.0
29.4
25.8
37.2
3.6
7.8
27.6
24.0
34.2
3.6
6.0
25.2
22.2
31.2
3.0
6.0
24.0
21.0
29.4
3.0
6.0
1.許容応力度は平成13年度国土交通省告示第1024号(平成13年6月12日)による。
2.異等級構成(非対称構成)の上段は正の曲げ、下段は負の曲げとする。
3.化粧ばり構造用集成柱の強度区分については、便宜上規格に定められた曲げヤング係数
および曲げ強度の適合基準を使用しております。
4.標準集成材以外の強度等級集成材も製造できますが、特注扱いとなります。
http://www.syuseizai.com/syuseizai_kyoudo.html
-65-
摘要
-66-
-67-
-68-
-69-
-70-
-71-
-72-
4.7 積算の考え方
(1) 設計費用
SW橋の設計手法は鋼橋に準じて行うことになるが、標準的な費用に次の項目を追加す
る。
・集成材の選定、設計諸数値決定(場合によっては強度試験を実施)
・構造検証(事例又は識者による指導等)
これらは、設計者からの見積徴収となる。
下部構造については標準的な設計法が適用出来る。
(2) 上部工工場製作費、架設費
鋼橋製作工、鋼橋架設工を準用する。集成材部分は見積中心となる。
杉の木 1 号橋では、完成後の載荷試験を実施しており、設計施工の妥当性確認のためにも
実施するのが良い。
4.8 参考歩掛・積算
1) 工事価格の積算要領等
農林水産省土地改良工事積算参考資料(施設機械:鋼橋製作架設工事価格積算要領)
に基づくものとする。
2) 見積等
構造用大断面集成材の製作加工等木材部の価格については集成材メーカー等の見積が
参考となる。
4.9 施工段階での留意点
SW橋は鋼橋に準じた施工法となるが、主要部材は木製であるため「木橋設計施工の手引き
(財)日本住宅・木材技術センター著」が参考となる。
次頁以降には、徳島農林事務所のパンフレットからSW桁の製作工程を示す(H14.3)
-73-
-74-
-75-
-76-
-77-
4.10
設計Q&A(渡辺昇名誉教授の協力を得て作成)
Q1.SW橋とは?
A1.材料の強さには、次表のように、「比強度」という概念があります。「比強度」とは、
強度(kgf/cm2)を比重で割った値です。この値が大きいのは「軽くてつよい材料」で
あり、この値が小さいのは「重くて脆い材料」です。この表によれば、木は軽くて強
い材料であり、コンクリートは重くて脆い材料です。プロ野球で使うバットは木製で
あってコンクリート製ではありません。
比強度
(kgf/cm2)
比重
強度(kgf/cm2)
スギ
0.35
引張強度
圧縮強度
900
350
2570
1000
鋼鉄
7.85
引張強度 5000
641
アルミニュウーム
2.7
引張強度 1050
390
花崗岩
2.7
引張強度
92
圧縮強度 1370
34
508
大理石
2.2
引張強度
圧縮強度
24
563
11
256
コンクリート
2.4
引張強度
圧縮強度
31
400
13
167
材
料
強度
注:比強度=
比重
重くて脆いコンクリートで橋を作る場合には、コンクリートの桁の中に多量の鉄筋や
PC鋼棒を入れて補強しなければなりません。そこで、軽くて強い木材の桁を、サン
ドイッチのように、リブつき鋼板で上下から挟んで補強すれば、コンクリート橋より
も軽くて強い橋を作ることができます。これがSW橋で、Steel stiffened Wooden
bridge(鋼補剛木橋)の略称です。
Q2.従来の合成桁橋に比べてSW橋の構造上の特性は?
A2.図(a)は合成桁橋で、 図(b)はSW橋です。いま、図(c)の3径間連続桁橋の場合につ
いては、この両者の特性を比較してみます。
-78-
図(c)の曲げモーメント図において、点Aと点Bのところの曲げモーメントは負である
から、そこの床版には引張応力度が生じます。そうすると、図(a)の合成桁橋の場合は、
コンクリート床版は引張りに弱いため、そこに大きな亀裂は生じます。しかし、図(b)
のSW橋の場合は、鋼床版は引張に強いため、亀裂は生じません。すなわち、SW橋
は連続桁形式に適した橋梁です。
Q3.間伐材とは何ですか?
A3.日本の人工造林の樹種は、スギ、ヒノキ、アカマツ、カラマツ、クロマツなどです。
人工造林はおもに木材を生産するためにありますから、森林を生産目的にかなうよう
に育成する必要があります。樹木の葉緑素は空気中の炭酸ガスを「光合成」によって
炭水化物に変えながら成長します。日本では大凡 1ha あたり 2000 本から 4000 本の苗
木を植えますが、20 年、30 年たつと、成長した樹木同士が日陰になって光があたらず、
「光合成」ができなくなります。そこで、「間伐」(まびき)が行われ大量の「間伐材」
が必ず発生します。この大量の間伐材をSW橋に利用するので、木材の地場産業に貢
献します。
Q4.SW橋の主桁には木を使いますが、腐りませんか?
A4.木が腐るという現象は、木に腐朽菌が宿り、空気中の水分と木の炭水化物を栄養分と
して繁殖していくことです。したがって、水分が無いと菌は繁殖しません。例えば、
奈良の正倉院は木造建築物ですが、例え雨水があたっても、風通しがよいため、すぐ
乾いてしまうので、腐朽菌は繁殖しません。正倉院は 1300 年腐らずに現存しています。
SW橋は主桁に木を使いますが、風通しがよいため、腐朽菌は繁殖しません。また、
SW橋の鋼床版は、傘のようになって、主桁を雨水からまもっているので、さらに好
都合です。
Q5.補強鋼板と集成材との接着に対する信頼性は?
A5.接着剤はエポッキシ樹脂接着剤を使います。鋼材と集成材との接着強度試験を行った
場合は、通常、木質部が破断されます。鋼板と木材との接着面の鋼材表面は、予め、
ブラスト処理などして清浄にしておきます。現場接着の場合も、入念な施工管理を行
えば、接着性能についての問題はないと言えます。
Q6.SW橋の橋面舗装は?
A6.SW橋の床版は鋼床版です。したがって、従来の鋼床版の橋と同じ橋面舗装を用いま
す。一般的には、アスファルト系舗装です。
Q7.SW橋の地覆、高欄は?
A7.SW橋の地覆は木製地覆で、コンクリートは一切使いません。高欄は角形鋼管を組み
合わせて工場で鋼製高欄を作り、その表面に木のラミナー(単板)を接着剤で貼って
被覆します。
Q8.SW橋について、特別な指針や示方書はありますか?
A8.SW橋の設計・製作・架設などについては、道路橋示方書・鋼橋編や耐震設計編を用
い、構造用製材や構造用集成材については、JASの規格を用います。したがって、
特別な指針や示方書は必要ありません。
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Q9.SWスラブ橋とは?
A9.SWスラブ橋は図(a)に示すように、杉の間伐材の角材(15cm×15cm)を 1 層ある
いは 2 層に接着して、木材のスラブを作り、その上下を、鉛直リブ鋼板のついた上鋼
板および下鋼板によって、サンドイッチのように、挟んで接着した「鋼板で補強した
木スラブ橋」です。橋梁支間長が 10m 以下くらいの林道橋や農道橋によいでしょう。
従来のコンクリートPCホロースラブ橋に比べて次のような優位性があります。
1)軽いので(コンクリート橋の3分の1)、地震に対して有利で下部鋼の設計も楽で
ある。
2)鋼床版なので、100 年の寿命が期待でき、維持管理費が殆どいらない。
3)工場でプレハブ式に作るので品質がよく、現場架設が 1 日で終わるので工費も安
い。
4)スラブの木材の角材は、地元の杉の間伐材を安く使うので、地場産業に貢献する。
5)素材が鉄と木材なので、リサイクルができる。
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