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全文PDF - 感染症学雑誌 ONLINE JOURNAL

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全文PDF - 感染症学雑誌 ONLINE JOURNAL
446
症
例
三日熱マラリアの再発との判別が困難であった 4 カ月以上の
潜伏期間の後に発症した四日熱マラリアの 1 例
1)
亀田総合病院総合診療・感染症科,2)京都市立病院感染症科,3)安房地域医療センター総合診療科,
4)
東京ベイ浦安市川医療センター総合内科
馳
曽木
1)
亮太
美佐3)
上蓑
北薗
義典1)
英隆4)
村中
細川
清春1)
直登1)
杤谷健太郎2)
(平成 25 年 1 月 25 日受付)
(平成 25 年 4 月 24 日受理)
Key words : Plasmodium malariae, incubation period, chemoprophylaxis, (vivax)
序
文
院後は無症状で経過していたが,パプアニューギニア
四日熱マラリア原虫によるマラリアは他のマラリア
への最終渡航から約 4 カ月後に 2 週間持続する間欠的
原虫によるものと比較すると稀である.日本国内では,
な発熱,咳嗽を認めたため当院内科外来を受診した
この 10 年間で 13 例しか報告されていない.今回我々
は,パプアニューギニア渡航時に三日熱マラリアに罹
患し治療を終えた後,メフロキンによる予防内服を実
(Fig. 1)
.
既往歴:マラリアの既往はなし,その他特記すべき
既往はなし.
施したにも関わらず,再度マラリアを発症した症例を
内服薬:市販薬・健康食品を含め常用薬はなし.
経験した.当初は三日熱マラリアの再発を疑っていた
アレルギー歴:薬剤:なし,食品:なし.
が,最終的に PCR 検査で四日熱マラリアの診断が確
生活歴:喫煙歴なし,飲酒歴:機会飲酒.
職業:サー
定した.本症例を通して,赤血球期で作用する殺シゾ
フ ィ ン の イ ン ス ト ラ ク タ ー.海 外 渡 航 歴:パ プ ア
ント薬の予防内服の効果は,有効な血中濃度が保たれ
ニューギニアに複数回,インドネシア,フィリピン,
ている期間に限られること,そして四日熱マラリア原
オーストラリア,モルディブ,アメリカ合衆国,台湾,
虫の中には予防内服の効果が持続する期間を超える潜
ミクロネシア連邦(ポンペイ島)に渡航歴あり(過去
伏期を持つものが存在するという重要な教訓を得るこ
1 年以内ではパプアニューギニアに 2 回渡航したの
とができたので,ここに報告する.
み)
.
症
例
患者:35 歳男性.
主訴:発熱,咳嗽.
家族歴:特記事項なし.
初診時現症:意識清明,血圧 123!
62mmHg,脈拍
60 回!
分,体温 36.1℃,呼吸数 18 回!
分,SpO2
99%
現病歴:パプアニューギニアから帰国後 8 日目から
(室内気)
,眼瞼結膜充血なし,眼球結膜黄疸なし,両
約 1 週間持続する発熱と関節痛を主訴に当院内科外来
側後頸部に 1cm 程度の可動性良好なリンパ節を複数
を受診.末梢血スメア所見および PCR 検査から三日
個触知,肺雑音なし,心雑音なし,肝臓 2 横指触知,
熱マラリアと診断し,入院の上メフロキン内服(825
脾臓触知せず,腹部軟・圧痛なし,皮疹なし,有意な
mg+550mg)で治療を行い症状は改善した.退院後
神経学的所見なし.
メフロキン 275mg!
週の予防内服を開始し,退院 11
血液検査!
尿検査:Table 1に検査結果を示す.
日後に再度パプアニューギニアに渡航した.1 週間の
胸部レントゲン:胸水貯留なし,浸潤影なし.
滞在後帰国し予防内服は 4 週間継続した.その後,根
腹部超音波検査:肝臓腫大の所見あり(左葉 114×
治治療に関して熱帯病治療薬研究班に相談し,他院で
69mm,右葉 165×110mm),脾臓は軽度腫大の所見
プリマキン 15mg×14 日間の内服治療が行われた.退
あり(125×48mm)
.
別刷請求先:(〒296―8602)千葉県鴨川市東町 929 番地
亀田総合病院総合診療・感染症科 馳
亮太
血液塗抹ギムザ染色標本:薄層標本の顕微鏡観察所
見で赤血球内の輪状体を確認した.複数の輪状体を含
感染症学雑誌 第87巻 第 4 号
長期間潜伏の後に発症した四日熱マラリア
447
Fig. 1 Clinical course
Table 1 Laboratory findings on admission
Blood test
WBC
Segment
Hb
Ht
Plt
Na
K
Cl
Cr
BUN
glucose
10,500 /μL
81.0
13.4
38.0
15.4×104
134
3.5
99
0.87
14
101
%
g/dL
%
/μL
mEq/L
mEq/L
mEq/L
mg/dL
mg/dL
mg/dL
間の投与方法が標準的であった.しかしながらパプア
AST
15 IU/L
ニューギニア,東南アジアを中心に標準投与量(15
ALT
12 IU/L
mg×14 日間)での治療失敗例が報告されており2)3),
LDH
ALP
γ-GTP
221 IU/L
228 IU/L
20 IU/L
積算量として 315mg 以上を投与した方がより確実な
1.5 mg/dL
0.5 mg/dL
2.16 mg/dL
リマキンの総説の中で,30mg×14 日間の治療を推奨
T-bil
D-bil
CRP
Urinalysis
WBC
RBC
Protein
効果が期待できると考えられている.Baird らは,プ
している1).
2012 年の時点で,日本国内で販売されているマラ
1-4 /HF
1-4 /HF
(−)
リア予防目的に使用可能な薬剤は,メフロキン,ドキ
シサイクリンの二種類であった.但し後者はマラリア
予防薬としては認可されていない.メフロキン,ドキ
シサイクリンはいずれも赤血球期で分裂体への発育を
む赤血球は存在しなかった.輪状体の寄生している赤
抑制する殺シゾント作用によって予防効果を発揮す
血球の膨化は明らかではなかった.寄生率は 0.06%
る4).従って,肝細胞内に潜伏するマラリア原虫に対
と低値であった(Fig. 2)
.
しては効力を示さない.どちらの薬剤も,帰国後 4 週
入院後の経過(Fig. 1)
:三日熱マラリアの再発を
間程度は内服を継続することが推奨されているが,こ
疑い,メフロキン内服(550mg+550mg)で治療を開
れは罹患すると最も重症化しやすい熱帯熱マラリアの
始した.前回入院時にメフロキンを使用した際の眩暈
最長の潜伏期をカバーするためである.
の副作用が強かったため,投与量を計 1,100mg に減
このような熱帯熱マラリアの予防を主目的とした予
量した.治療後すぐに解熱し咳嗽も改善したため入院
防内服レジメンでは,肝内休眠体を形成して潜伏する
4 日目に退院となった.G6PD(グルコース-6-リン酸
三日熱マラリア原虫や卵形マラリア原虫,および四日
脱水素酵素)欠損がないことが確認した上で,熱帯病
熱マラリア原虫であっても肝細胞内での潜伏期間が予
治療薬研究班に再度相談し,プリマキンを 30mg!
日
防内服の有効期間を超えるような場合には,マラリア
に増量して 14 日間の根治治療を行った.その後,追
の発症を防ぐことはできない.Schwartz らの報告に
加で提出した PCR 検査の結果が届き,四日熱マラリ
よると,帰国後 2 カ月以上経過して発症したマラリア
アの単独感染であったことが判明した.
患者 987 人のうち 62.2% にあたる 614 人は,渡航地
考
域と耐性を配慮した赤血球期に作用する予防内服を
察
三日熱マラリア原虫は,治療後も肝細胞内に肝内休
行っていた患者であった.四日熱マラリア患者だけに
眠体(hypnozoite)として潜伏し,再発する可能性が
注目すると,帰国後 2 カ月以上経過して発症した 51
あることが知られている.従って,通常の治療を終え
人の患者のうち 76.5% にあたる 39 人が赤血球期に有
た後に,根治治療(radical
効であるはずの予防内服を使用していた患者であっ
cure)としてプリマキン
の投与が必要になる.プリマキンによる治療を行わな
た5).
かった場合の再発の頻度に関しては様々な報告がある
潜伏期の長い非熱帯熱マラリアの発症予防を目的と
が,ニューギニア付近の三日熱マラリア原虫は特に再
する場合には,プリマキンのような肝内休眠体に対し
発しやすいこと が 知 ら れ て お り,再 発 率 が 99%∼
て作用する薬剤の予防内服を検討する必要がある.プ
1)
100% であったとの報告も存在する .
リマキンは肝内休眠体に対して有効であるため,三日
プリマキンは計 200mg 程度の積算量で三日熱マラ
熱マラリア原虫,卵形マラリア原虫に対する最終期予
リアの再発予防効果が期待でき,1 日に 15mg 程度の
防(terminal prophylaxis)として使用されることが
内服量であれば副作用も少ないことから 15mg×14 日
ある.肝内休眠体の形態をとらない四日熱マラリア原
平成25年 7 月20日
448
馳
亮太 他
Fig. 2 Peripheral smear on admission
Ring forms are detected in red blood cells on a peripheral smear. Red blood cells
with ring form are not enlarged. The parasite density is 0.06%.
虫に対するプリマキンの有効性に関しては不明な点も
た.さらに,一旦退院後にパプアニューギニアに再渡
多いが,Schwartz らは,潜伏期間の長い四日熱マラ
航した際には,メフロキン(渡航 1 週間前から渡航後
リアの発症を防ぐ効果がありうると考察している5).
4 週間後まで)による予防内服を実施しており,アド
四日熱マラリアは,熱帯熱マラリアや三日熱マラリ
ヒアランスも良好であった.そのような背景の中で最
アに比べると稀であるが,世界中に広く分布しており,
終渡航から 4 カ月以上も経過してから症状が出現して
アフリカ大陸で比較的多く報告されている6).寄生率
おり,また血液塗抹ギムザ染色標本の所見からはマラ
の低さ,形態の多様性から血液塗抹標本で確定するの
リア原虫種を確定できなかったため,新たなマラリア
が難しく,他のマラリア原虫種との混合感染が見逃さ
感染が原因ではなく,前回罹患した三日熱マラリアの
れている場合も多い.従って,PCR を用いた検査が
再発の可能性が高いと考えるに至った.最終的には
行われていない場合には,頻度が過小報告されている
PCR 検査で三日熱マラリアの再発ではなく,四日熱
可能性も指摘されている6)7).本邦における輸入四日熱
マラリア単独感染であったことが判明した.
マラリアは 1999∼2009 年に報告されたマラリア 904
患者が四日熱マラリア原虫に感染した時期は,直近
例のうち,13 例のみである.最近 10 年間の四日熱マ
の 2 回(発症約 4 カ月前および 5 カ月前)のパプア
ラリア患者の渡航先は,アフリカ 7 例,アジア 2 例,
ニューギニア渡航時が,最も疑わしいと考えた.WHO
8)
9)
オセアニア 1 例,不明 1 例であった .
(世界保健機構)の world malaria report 2012 による
四日熱マラリア原虫の寄生率は比較的低く,症状は
と,パプアニューギニアでは,熱帯熱マラリアが 75%,
軽めであることが多い.肝内休眠体の形態はとらない
三日熱マラリアが 12% を占めると報告されている13).
が肝細胞内での発育に時間を要するため,通常 13 日
四日熱マラリアの割合については明記されていない
間から 28 日間の比較的長い潜伏期間を持つと記載さ
が,残りの一部を占めるにすぎないので数%程度と推
10)
れている .また赤血球内発育の段階においても,主
測される.しかしながら,PCR 検査を使用した場合,
に脾臓で網内系細胞による貪食が活発に行われるた
マラリア罹患患者の約 18% で四日熱マラリア感染が
め,寄生率が増加して症状が顕在化するまでに長期の
証明されたとの報告も存在しており14),顕微鏡を用い
日数を要することがある.Vinetz らは,ギリシャで
た末梢血塗抹標本の確認のみでは,頻度が過小評価さ
初感染から 40 年以上経過して症状が顕在化した 74 歳
れている可能性がある.
女性の四日熱マラリアの症例を報告している11).本邦
一方で,直近 2 回よりさらに以前に渡航したパプア
でも,初感染から 44 年後に再燃した四日熱マラリア
ニューギニア,および過去に渡航した他のマラリア蔓
12)
の症例が報告されている .これら 2 症例では,高度
延国(フィリピン,インドネシア)で感染したという
な脾腫を伴っている点が共通しており,初感染から数
仮説も考えられるが,いずれの国の四日熱マラリアの
十年もの間,脾臓の赤血球貪食作用と拮抗しながら,
発生頻度も高くはなく,これらの国への渡航歴はいず
赤血球内発育の状態が持続していたと推測される.
れも発症から 1 年以上前である.年単位の極めて長期
今回の症例では,三日熱マラリアに対する根治治療
の潜伏期間を持つ場合には前述の二つの症例報告のよ
が標準療法のプリマキン 15mg×14 日間で実施された
うに高度な脾腫を伴っている場合が多いが,本症例の
ため,パプアニューギニアで罹患した三日熱マラリア
脾腫は軽度であった.また,四日熱マラリア原虫に感
に対する根治治療としては不十分な可能性が考えられ
染してから厚層塗抹標本で虫体が確認できるまでの期
感染症学雑誌 第87巻 第 4 号
長期間潜伏の後に発症した四日熱マラリア
449
間は 16∼59 日との報告があり6),肝細胞内で 1 年を超
2)Bunnag D, Karbwang J, Thanavibul A, Chit-
えて潜伏していた可能性は低い.赤血球期に移行して
tamas S, Ratanapongse Y, Chalermrut K, et al.:
High dose of primaquine in primaquine resistant vivax malaria. Trans R Soc Trop Med Hyg
1994;88(2)
:218―9.
3)Jelinek T, Nothdurft HD, Von Sonnenburg F,
Loscher T:Long-term efficacy of primaquine in
the treatment of vivax malaria in nonimmune
travelers. Am J Trop Med Hyg 1995;52(4)
:
322―4.
4)Patricia Schlagenhauf-Lawlor, Kevin C. Kain:
In:Jay S. Keystone, Phyllis E. Kozarsky, David
O. Freedman, Hans D. Nothdurft, Bradley A.
Connor, eds. Malaria Chemoprophylaxis(Travel Medicine 2nd edition)
. Mosby, 2008;p.
137―57.
5)Schwartz E, Parise M, Kozarsky P, Cetron M:
Delayed onset of malaria--implications for chemoprophylaxis in travelersv. N Engl J Med
2003;349(16)
:1510―6.
6)Collins WE, Jeffery GM:Plasmodium malariae :
parasite and disease. Clin Microbiol Rev 2007;
20(4)
:579―92.
7)Dhangadamajhi G, Kar SK, Ranjit MR:High
prevalence and gender bias in distribution of
Plasmodium malariae infection in central eastcoast India. Trop Biomed 2009;26(3)
:326―
33.
8)国立感染症研究所 感染症情報センター 感染
症発生動向調査 IDWR 2010 年 第 38 号「速
報 」 http:!
!
idsc.nih.go.jp!
disease!
malaria!
2010w
eek38.html
9)国立感染症研究所 感染症情報センター IASR
The Topic of This Month Vol.28 No.1(No.323)h
ttp:!
!
idsc.nih.go.jp!
iasr!
28!
323!
tpc323-j.html
10)Nicholas J. White:Chapter 73. Malaria. In:
Gordon C. Cook, Alimuddin Zumla, eds. Manson s Tropical Diseases(22nd ed)
. Saunders
Ltd, London, 2008;p. 1201―300.
11)Vinetz JM, Li J, McCutchan TF, Kaslow DC:
Plasmodium malariae infection in an asymptomatic 74-year-old Greek woman with splenomegaly. N Engl J Med 1998;338(6)
:367―71.
12)山上祥司,土田研司,中村 敦,金森俊成,物
江孝司,広瀬昭憲,他:脾摘により 44 年後に再
燃した四日熱マラリア症例.医薬の門 1991;31
(5)
.
13)World Health Organization. World Malaria Report 2012 Country profiles. http:!
!
www.who.int!
malaria!
publications!
world_malaria_report_201
2!
wmr2012_country_profiles.pdf.
14)Mueller I, Widmer S, Michel D, Maraga S,
McNamara DT, Kiniboro B, et al.:High sensitivity detection of Plasmodium species reveals
positive correlations between infections of different species, shifts in age distribution and reduced local variation in Papua New Guinea. Malar J 2009;8:41.
から無症状で感染が持続していたのであれば,初回入
院時の三日熱マラリアに対するメフロキンによる治療
で,四日熱マラリア原虫も治療されていたはずである.
従って本症例では,直近 2 回のパプアニューギニア渡
航時に四日熱マラリア原虫への感染が成立,肝細胞内
で発育しながら潜伏し,三日熱マラリアに対するメフ
ロキン治療およびその後のメフロキン予防内服の効果
が消失した頃に,赤血球期に移行し症状が顕在化した
可能性が高いと考えた.
改めて見直した血液塗抹ギムザ染色標本では,帯状
体は認めなかったものの早期栄養体が確認され,また
赤血球の膨化を認めなかったことから,四日熱マラリ
ア原虫としても矛盾しない所見であることを確認し
た.特に四日熱マラリア原虫に関しては,末梢血塗抹
標本の確認のみではマラリア原虫種を確定することが
難しい場合もあることを認識し,PCR 検査の最終結
果までは,三日熱マラリアの再発と判断すべきではな
かったと反省した.
今回の症例を通して,赤血球期で作用する殺シゾン
ト薬を用いた予防内服の効果は,有効な血中濃度が保
たれている期間に限定されること,および通常の予防
内服の有効期間を超える潜伏期を持つ四日熱マラリア
原虫が存在すること,そして末梢血塗抹標本のみで確
定が難しい四日熱マラリアの診断には PCR 検査が有
用であることを学ぶことができた.
結
語
三日熱マラリア治療後の海外渡航者がメフロキンの
予防内服を行ったにも関わらず,四日熱マラリアに罹
患した症例を提示した.マラリア蔓延国への渡航者に
対して予防内服を実施する際には,それぞれの予防内
服薬の特徴と限界を理解しておくべきである.メフロ
キンのような赤血球期で作用する殺シゾント薬は,肝
細胞内に潜伏しているマラリア原虫には無効であり,
潜伏期間が予防内服薬の有効期間を超えるような場合
には,予防効果を発揮できない.また四日熱マラリア
は肝内休眠体の形態はとらないものの,本症例のよう
に潜伏期間が長いことがあるので注意が必要である.
謝辞:G6PD 活性の検査でご協力頂いた自治医科大
学感染・免疫学講座の松岡裕之先生,PCR 検査の実
施および病態の解釈に関してご協力とご指導を頂きま
した国立国際医療研究センター熱帯医学・マラリア研
究部の狩野繁之先生,石上盛敏先生に深謝致します.
利益相反自己申告:申告すべきものなし
文
献
1)Baird JK, Hoffman SL:Primaquine therapy for
malaria. Clin Infect Dis 2004;39(9):1336―45.
平成25年 7 月20日
450
馳
亮太 他
Plasmodium malariae Malaria with more than a 4-month Incubation Period :
Difficult to Distinguish from a Relapse of Plasmodium vivax Malaria
Ryota HASE1), Yoshifumi UWAMINO1), Kiyoharu MURANAKA1), Kentaro TOCHITANI2),
Misa SOGI3), Hidetaka KITAZONO4) & Naoto HOSOKAWA1)
1)
Department of General Medicine and Infectious Diseases, Kameda Medical Center,
2)
Department of Infectious Diseases, Kyoto City Hospital,
3)
Department of General Medicine, Awa Regional Medical Center,
4)
Department of General Internal Medicine, Tokyo Bay Urayasu!
Ichikawa Medical Center
We report herein on a case of Plasmodium malariae malaria with more than a 4-month incubation period.
A 35-year-old Japanese man who first presented to our clinic with fever and history of travel to Papua New
Guinea was suspected of having Plasmodium vivax malaria based on peripheral smear results. We admitted
him and initiated treatment with mefloquine. After two days of therapy, he became afebrile. We discharged
him, and P. vivax was later confirmed with PCR. We started mefloquine prophylaxis for a planned trip to
Papua New Guinea. After his return, a standard dose of primaquine (15mg×14 days) was prescribed for a
radical cure of P. vivax. About 4 months after his last visit to Papua New Guinea, he returned to our clinic
with fever. We suspected a relapse of P. vivax malaria and admitted him for a second time. After two days
of mefloquine therapy, his symptoms improved. We discharged him and restarted a higher dose of primaquine (30mg×14 days) therapy for a radical cure of P. vivax. Subsequently, the PCR test revealed the
parasite was P. malariae and not P. vivax.
Only 13 cases of Plasmodium malariae malaria have been reported in Japan during the past 10 years.
Blood-stage schizonticides such as mefloquine is not active against the liver stage. Therefore, the use of
these drugs for prophylaxis will not be effective for prevention of malaria if its liver stage is longer than the
duration of effective chemoprophylaxis. Although the incubation period of P. malariae is typically 13 to 28
days, it occasionally lasts for months or even years. Careful attention should be given to the possibility that
P. malariae occasionally has a long incubation period even in the absence of the hypnozoite stage.
〔J.J.A. Inf. D. 87:446∼450, 2013〕
感染症学雑誌 第87巻 第 4 号
Fly UP