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MHD発電
用語解説 MHD発電 エネルギア総合研究所 発電・材料担当 松村 栄郎 次世代の高効率発電方式の1つとして実現が期待さ れるMHD発電について紹介する。 1 加し,導電性を持つプラズマとしたものを作動流体と して発電する。燃料に含まれる硫黄分はシード物質と の化合物として除去できる利点を持つ。(1) MHD発電の原理 MHD(Magneto-Hydro-Dynamics, 電磁流体力学) 発電は,図1に示すように導電性を持つ作動流体(プ ラズマ)を,外部から磁界が印加された発電機流路内 に流し,ファラデーの電磁誘導の法則に基づいて発生 する起電力により発電するものである。(1) 外部負荷抵抗 インバータ 起電力 u×B 図1 MHD発電の原理(1) MHD発電は,発電機流路内に可動部分がないこと から,2,000∼3,000℃の高温の作動流体を用いるこ とができ,蒸気タービンやガスタービンと組み合わせ ることにより50∼60%の高い熱効率(発電端,HHV) を達成することが期待される。システム構成により作 動流体を大気放出するオープンサイクルと循環使用す るクローズドサイクルに大別される。 CO+ H2 電気出力 燃焼器 プラント効率 (%) O2 クローズドサイクル MHD発電 ガスタービン複合発電 (天然ガス) 超超臨界圧発電 (天然ガス) 加圧流動床 ボイラ 複合発電 原子力 (ABWR) オープンサイクル MHD発電 石炭ガス化 複合発電 石炭 蒸気 CO2+H2O ガス化炉 C,CO, CO2 H 2,H 2O 空気予熱器 3 微粉炭焚ボイラ 火力発電 500 1000 1500 2000 酸素製造 装置 O2 CO+ H2 CO2分離器 図4 CO2回収型高効率石炭燃焼MHDプラント(2) 2500 3000 まとめ MHD発電は克服しなければならない課題が少なくな く,今すぐ実現できるものではないが,将来の高効率発 (1) 電技術の候補として注目する価値があると考えられる。 図2 発電プラントの使用最高温度と効率(1) オープンサイクルMHD発電 予熱空気または酸素富加空気で石炭や天然ガスを燃 焼させ高温の燃焼ガスを生成する。この燃焼ガスに微 量のシード物質(カリウムなどのアルカリ金属)を添 Page 18 MHD CO2 サイクル最高温度 (℃) 2 復水器 圧縮機 60 20 0 空気 MHD発電は高温の作動流体を用いるため,電極や熱 交換器の腐食,プラズマの不安定性,強力な磁界を得る ため超伝導磁石が大型化するなどの課題があり,期待さ れたほどの熱効率が得られていないのが現状である。 最近では,CO2排出量削減に寄与するため,CO2回 収型の高効率石炭燃焼MHDプラントが提案されてい る。その特徴は,石炭ガスを酸素燃焼させ,その燃焼 ガスでMHDを駆動するとともに石炭のガス化を行い, CO2濃度の高い排ガスよりCO2を回収するものであ る。CO2回収動力を含んでも,熱効率が50%を超え ることが期待されている。(2) 70 30 空気 圧縮機 給水 ポンプ 図3 オープンサイクルMHD発電(1) 作動気体 絶縁壁 40 蒸気タービン 電気出力 電極壁 50 燃焼 排ガス ボイラ 予熱空気 電流 流速 u 磁界 B 燃焼器 燃料 MHD発電機 空気予熱器 【参考文献】 (1)http://www.es.titech.ac.jp/okuno/kaisetsu.pdf (2)N.Harada,“Magnetohydrodynamics For Advanced Power Generation System,”The International Conference on Electrical Engineering 2008,No.O-043,2008. エネルギア総研レビュー No.25