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藤石 修 氏

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藤石 修 氏
劇 映 画
岳 –ガク–
2011年5月7日(土)
より全国公開
製作:
「岳−ガク−」製作委員会
製作プロダクション:東宝映画
配給:東宝
◆ストーリー
誰よりも山を愛する名登山家であり、山岳救助ボランティアの島崎三歩(小栗旬)
。山岳
救助隊の隊長・野田(佐々木蔵之介)
は、そんな三歩に絶大な信頼を置いていた。ある日、
野田の下に新人救助隊員・椎名久美(長澤まさみ)
が配属されてきた。やる気に満ちた久
美だったが、実際の救助現場は過酷な試練の連続。厳しい自然の前で無力な自分に苛立
ち、焦りはじめる。そして、何事にも動じない三歩の大らか過ぎる言動に反発を覚える
のだった。そんな折、猛吹雪の山で多重遭難が発生。仲間とともに救助に向かう久美を
待ち受けていたのは、想像を絶する雪山の脅威だった。
山の素晴らしさと自然の厳しさ、
生命の大切さを問うベストセラーコミック
石塚真一さんによる原作コミックの「岳」は、第1回「マンガ大賞」
(2008
年)
、第54回「小学館漫画賞」
(2009年)
を受賞し、現在までに累計330
万部を突破するベストセラーコミックです。舞台となっているのは、日
本有数の名山が連なる北アルプス山系。北アルプスを庭に育った小
栗旬さん扮する主人公・島崎三歩は、ヒマラヤや北南米など世界中の
巨峰を登り歩いた後、現在は地元・北アルプスで山岳救助ボランティ
アとして登山者の生命を守る名登山家です。この山を誰よりも愛する
三歩を中心に、長澤まさみさんが扮する新人救助隊員の椎名久美、
佐々木蔵之介さんが扮する山岳救助隊の隊長・野田正人など個性豊
かな人物が登場し、さまざまな出逢い、度重なる遭難事故、そして必
死の救助活動を通じて、山の素晴らしさと自然の厳しさ、生命の大切
さを問う珠玉のヒューマンストーリーです。現在、日本の登山人口は、
1000万人を超えると言われています。誰もが頂に立った時の、あの絶
景の感動を求めて登るのだと思いますが、山には喜びとともに生命を
も脅かす危険が存在します。今回の撮影は、こうしたリスクのある場
所でありながら、キャストはもちろん、スタッフの誰もが登山初心者と
いう状況 。私自身も、経験はまったくありませんでした。最初の打ち
合わせは、登山道具を一式買い揃えることからだったのを思い出しま
す。いつもとはずいぶん違う、たいへんな撮影現場でした。
ロケハンでの山の感動が高めてくれた
作品づくりへのモチベーション
撮 影
藤石 修
撮影にあたっては、監督の片山修さんとともに、ベテランの山岳ガイド
氏
Osamu Fujiishi
1954年、新潟県生まれ。撮影助手を経て、1988年「聖熟女」でデビュー。
主 な 撮 影 作 品として、
「 七 人の お たく
(cult seven)
」
(1992年 )
、「帝
都 物 語 外 伝」
(1995年)
、「陽 炎Ⅱ」
(1996年)
、
「 踊る大 捜 査 線 THE
MOVIE」(1998年)、「催眠」
(1999年)
、
「サトラレ TRIBUTE to a SAD
GENIUS」(2000年)、
「踊る大捜査線THE MOVIE 2レインボーブリッ
ジを封鎖せよ!(
」2003年)
、
「嗤う伊右衛門」(2003年)、
「青の炎 (
」2003
年)
、
「手紙 」
(2006年)
、
「花田少年史 幽霊と秘密のトンネル」
(2006年)
、
「銀色のシーズン」
(2007年)
、
「舞妓Haaaan!!!」
(2007年)
、
「ホームレス
中学生(2008年)
」
「
、蛇にピアス」
(2008年)
「
、ウルルの森の物語(2009
」
年)
、
「いけちゃんとぼく」
(2009年)
、
「ソフトボーイ」(2010年)などがある。
1
のサポートを受けながら、北アルプス 穂高連峰の奥穂高岳・槍ヶ岳、
そして八ヶ岳、谷川岳、立山、白馬
(八方尾根)
と数多くの山岳でのロ
ケハンを入念に行いました。特に最初の穂高連峰のロケハンでは、初
日が穂高連峰のメインルートである上高地から涸沢カールまでの徒
歩7時間、2日目が標高3190mの奥穂高岳へ往復7時間
(天候不順の
ため途中断念)
、3日目が槍ヶ岳へ往復12時間など、山の初心者には
相当厳しい行程でした。特に槍ヶ岳は、ロケ場所をチェックし、戻って
くるだけで12時間と聞いていたので、正直、自分の体力が持つのか
心配でした。
「撮影を降りるなら今のうちかな」
とも考えました。しかし
「山岳歩行は1cmでも高いところに踏み込む」
という気持ちで、2日目、
3日目とチャレンジしてみると、山の歩き方やザックの背負い方のコツ
が自分なりにつかめてくる。すると、それまでは自分の歩く足元ばかり
を見ていたのが、少しずつ周りの景色が見えるようになってくる。その
れました。実は、以前に撮った「銀色のシーズン」では、雪の量が少な
美しさ、その感動は何よりも得がたいものがありましたね。そうした本
く、黄砂の影響もあって、雪の色がばらばらで調整するのに苦労した
物の山の素晴らしさを実体験でき、「何としても、この映画を最後まで
経験がありました。ですから、この作品ではあらかじめDI(デジタルイ
撮りつづけよう!」という自信に繋がった。とは言え、今回は撮影の前
に安全の確保が大前提です。実際の撮影では、スタッフとガイドがマ
ンターメディエイト)処理することにしていました。レコーディングフィル
ムには、E TER NA - R DI(8511)を使用しましたが、思った通りの忠実
ンツーマンで、ザイルで身体をつないで登りました。ガイドの方々にしっ
な画像再現でした。実際には雪の量はずいぶん多く、黄砂の影響もな
かりアドバイスをいただき、万全の体制で臨んだのです。
アイディアにあふれた撮影テクニックで挑んだ
雪山の魅力と厳しさ
山の雄大さを表現するため、この作品は空撮シーンも数多く登場しま
す。特にこだわったのは、クレバスに落ちた遭難者の救助に向かう三
かったことから、それほど苦労しませんでしたが・・・。そして新しいポ
ジフィルムのE TER NA - CP DI(3514)は、色の分離がたいへん良く、
被写体がきちんと存在感を持って見えてきますね。これはテストの時
から感じていたことなのですが、このポジフィルムは立体感の表現が
とても豊かで、雪山の風景の再現などに効果的でした。
は黒い点のように見える影が、徐々に寄っていくとやがて三歩の姿に
この作品を観て、「私も山に登りたい!」と
思ってもらえたら嬉しい
なる。そして、三歩がぐるっと振り向くと、背景には見事なまでの北ア
主役の三歩を演じた小栗旬さんも登山初心者でしたが、クランクイン
ルプス山系が広がっているというものでした。通常、空撮と言えば、
する前から厳しい真冬の山岳トレーニングに励んでいました。生来の
歩が、雪の斜面を飛ぶように駆け下りていく冒頭のシーンです。最初
風景をパノラマで撮るのがセオリーですが、今回は、空撮していなが
運動神経の良さもあって、めきめきと登山の腕を上げていき、そのこ
らも、そこにきちんとした芝居が演じられているものが撮りたかった。
とから撮影予定になかった「アイスクライミング」や「懸垂下降」といっ
これは、私が最初からイメージしてきたプランでした。また、山荘の中
た難しいシーンも追加されました。私も小栗さんと同じように、という
や救助隊の本部 、身体が飛ばされそうなほどの猛烈な吹雪、登山者
訳にはいきませんが、この撮影を乗り切るためにずいぶんトレーニン
が落ちてしまったクレバスの底のシーンなどはセットで撮影しています。
グを行いました。キャストやスタッフもそれぞれに山岳トレーニングを
どんな吹雪をつくるか、クレバスの壁面の質感をどのようにするか、雪
してきました。実は撮影中に、クレバスに落ちて亡くなった方をヘリで
の上を歩いた時に足がサクッと沈み込む感じをどう再現するかなど、ス
搬送しているという、現実の遭難事故を目撃することもありました。そ
タッフ皆でアイデアを出し合い、美術スタッフにも相当頑張っていただ
うしたこともあり、私たちも一日の撮影が終わると「今日も何事もなく、
いたこともあり、素晴らしい出来栄えになりました。また、救助に向か
無事に終わって良かった」と素直に思ったものです。標高3000m級の
うヘリコプターのシーンでは、ヘリコプターをスタジオに持ち込み、グ
山々での撮影を敢行し、夏山から雪山まで山の魅力を余すところなく
リーンバックで撮影を行っています。
捉えたこの作品は、同時に自然の厳しさを私たちに教えてくれる作品
でもあります。劇中には、長澤まさみさんが演じた久美が、山の残酷さ
ETERNA 250D、ETERNA 500とETERNA -CP DI
ポジの組合せで、立体感のある風景映像を再現
雪山での撮影ということで、フィルム選択には熟慮しましたが、最終的
にはE TER NA 250D(8563)とE TER NA 500(8573)を選択しまし
た。雪山の現場では、すべてE TER NA 250Dを使用しています。申
に憤り、「山って、なんなんですか!」と三歩に激しく迫るシーンがあり
ますが、その問いかけに対する答えをこの作品を観たお客様それぞ
れに見つけていただき、最終的には「私も山にぜひ登りたい!」と思っ
てもらえたら嬉しいですね。
し上げるまでもなく、雪山には大量のフィルムを持って登ることはもち
使用機材 カメラ:ARRICAM LT、ARRIFLEX 235
レンズ:オプティモズーム、アンジェニューHRズーム、ツァイス(単レンズ)
ろん、カメラにフィルムを装てんすることもフィルターを一枚入れるの
撮影ネガフィルム
も、たいへんな作業です。ですから、夕景のことも考えて、日中は1/2
減感で対応するなど、E TER NA 250DのON E TY PEで通すこと
にしました。セットのシーンではE TER NA 500を使用しています
250D
フィルム出力
500
上映ポジフィルム
RDI
CP DI
が、どちらのフィルムもローからハイまで、幅広い階調表現力に助けら
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