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着物の楽しみ
着物の楽しみ ナタリア・ロドリゲス 私が日本に越してきてすぐのある日、びっくりするような贈り物が送られてきました。中には、私の祖母が横浜の近くの アメリカン・スクールで教師をしていた時の、(若い頃の)祖母の写真が大量に入っていました。そのうちの1枚には、祖 母が着物を着た姿が写っていて、写真の下には、まさにその着物が、長年しまい込まれた香りとともに、帯、草履、足袋 と一緒に詰められていました。50年以上の時を越えて、この着物は日本に戻ってきたのです。私は、それを着ることで祖 母の遺産を生かそうと決心しました。唯一の疑問は、どうやって?ということでした。 6次の隔たり(知り合いを6人 っていくと世界中の誰とでも知り合いになれる)という仮説を当てはめると、着物の専門 家に り着くのは遠すぎるというわけではありません。日本では、ほとんど誰もが、着物について知っている誰かを知っ ていることがわかりました。私はすぐに、木村さんという方を紹介してもらい、彼女は快く、リサイクル着物を扱ってい るというお友達の店へ連れて行ってくれました。お店に入り、注意深く積まれた着物や豪華な生地の山に囲まれ、夢中に なりました。まるで、使われるのを待っている画家のパレットを見ているようでした。その日は結局、リサイクルの振袖 を買いましたが、その時はまだ、その衣装を実際にどのように着るかもわからないままでした。 それから間もなく、菊間で地元のお寿司屋さんを経営している夫婦と友達になりました。彼らもまた、着物の専門家を 知っていて、今度は、その人は自分で着付け教室を開いている先生だったのです。この先生の助けを借りて、私はお寿司 屋さんの畳の部屋で、自分で着物を着る最初のレッスンを受けました。その夜私は、着物について学ぶというのは、ただ 着方を学ぶ以上にもっとたくさんのことがあると気付きました。 一例として、着物を着るに伴い、私が今までの日常的な会話では一度も耳にしたことのないような新しい単語が山のよう にあります。長じゅばん、帯揚げ、帯締め、草履、足袋……どの部品にも特別な名前があります。その上、着物にも、振 袖、訪問着、付け下げ、小紋、浴衣など、格の違いやそれぞれの特徴によって特別な名前があるのです。新しい単語があ りすぎて頭がクラクラしました。着物の単語に関する、私がした最高の失敗は、着付けの先生を誤って「きつね先生」と 言ってしまった時です。彼女は少しぎょっとした顔をしてこう言いました。「えっ?動物のキツネ?」と。私はもう二度 とその単語を混同させませんでした。 着物の世界にますますどっぷり浸かるようになり、私は、陳列されたたくさんの着物やそれに付随する品に見惚れて、新 しいお店に冒険しに入り始めました。しかしすぐに、新しい着物は非常に効果で高級なものだと気付きました。初めて新 しい帯を買ったとき、金額を見て危うく心臓発作を起こすところでした。貯金しようとしているALTには分不相応だと感 じました。 この恐ろしい経験の結果として、私はリサイクル着物のお店に興味を持つようになりました。まるで運命のように、私が ひと月の食費のほとんどをその帯に費やした一か月後、外に1000円の着物を陳列したリサイクル着物のお店を浅草で偶然 見つけました。喜び勇んで、私は先に買った新しい帯のほんの一部にしかならない金額で、着物を3枚と帯を1本買いまし た。それ以来、私はどこに行ってもリサイクル着物のお店を探しています。もしあなたが雑多に詰まった衣装箱を探るの を厭わず、しみや欠陥を見つけるいい目を持っているなら、これらのお店で本当の宝物を見つけることができるかもしれ ません。そしてお店の空気も素晴らしいのです。買わなければならないというプレッシャーを感じることなく自由に見ら れますし、店主はたいてい着物好きなので、合わせ方のコツを喜んで教えてくれますし、新着で一番いい品物を見せてく れます。 リサイクル着物に身を固め、今は週に1回、友達から着物を習っています。友達は私に着付けを、私は友達に英会話の練習 を。最もカジュアルな夏の浴衣から始め、より格の高い着物に、正式な帯結びであるお太鼓結びができるまで練習に練習 を重ねてきました。今後は、誰かに着物を優雅に着せられるようになるまでもっと練習したいです。 日本文化の強化!着物に関する単語 ・浴衣:夏の綿の着物 ・帯:背中で結ぶ着物のベルト ・帯締め:帯をしっかりと結びつけるために帯の上で結ぶ装飾の紐 ・足袋:着物用の靴下 ・草履:着物に合わせて履くサンダル風の靴 ・振袖:袖が最も長い、若い女性または未婚女性が着る、ふんだんに装飾を凝らした正装 ・お太鼓結び:最も一般的な帯の結び方で、太鼓に似ていることからこう呼ばれる 訳: 松原 加純 (Kasumi Matsubara) I-News 103 April/May 2015 The Spring Issue 8