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足と手
足育 ~健康な心と体は健康な足元から育つ~ 船堀幼稚園は東京都の東の江戸川区にあり、通園範囲が広く、区内の 広地域から通ってくる。そのため家から、自転車や車に乗って登園し ている幼児も多い。幼児は自分の好きな遊びを見付け、積極的に取り組 む反面、家庭で体を動かす機会が少なく、疲れやすい、転びやすいなど、 体力の低下がみられ、大きな課題となっていた。そこで、幼児が楽しんで 取り組める運動遊びの環境を工夫し、幼児が主体的に体を動かせるよう な運動遊びを計画的に行ったり、幼児が体を動かしたくなる環境を設定 したりし、幼児の体力向上に向けて、研究を進めてきた。 そして、今年度は、特に幼児の足・足裏に視点を当てることとした。 足・足裏は、歩く、走る、跳ぶなど、幼児が体を動かす上で、体を支 える基となる部位である。幼児が思い切り体を動かして遊び、また、 生涯に渡り体を動かすことを楽しむためにも、幼児期にしっかりとし た足・足裏を育てることが大切だと考え、実践していくこととした。 また私は今年度から、研究副主任になり、研究主任の補佐をしながら、 園全体の研究の推進を意識して行っている。 <足裏の実態>船堀幼稚園の幼児の足裏の実態を把握するために、日本教育シューズ協会 の協力を得て、足の裏をスタンプで紙に写し出すフットプリンターで、足裏を測定した。 その結果は①足の指が写らない「浮き指」の幼児が多い。②割合は少ないが「土踏まず」 がない扁平足の幼児もいる。③足裏全体の写りが薄く、力強さに欠ける幼児もいる、とい う結果だった。①の浮き指は、足指を動かすことが少ないことや、足のサイズにあってい ない靴を履いたり、正しい靴の履き方をしていなかったりすることが原因と考えられる。 ②、③は足を動かす運動遊びが不足していることが考えられる。そこで、○足指を動かす、 ○正しく靴を履く、○足や体を十分に動かす運動遊びを行う、これらを積極的に行うこと とし、園全体で取り組めるように推進していった。 浮指 写りが薄く、力強さに欠ける <足指体操> 普段、靴下や上履きを履いている園生活では、足指を動かすことは少なくなりやすい。 それが浮き指の原因の一つだと考えられる。足指がしっかり地面を捉え、足裏全体で体を 支えたり、蹴り出したりすることができるように、足指を動かす体操に取り組んだ。 1、足と手の握手 足の裏側から、足指の間に手の指を入れ、しっかり握手をする。 普段、閉じたままの足の指と指の間を開けることができる。始め はできない幼児もいたが、繰り返し取り組むことで、楽にできる ようになった。 2、足指ジャンケン 足指でのジャンケンは、チョキとパーは難しく、「できない」という声も聞かれたが、 できなくても足指に集中して足指を動かそうとすることが大切だということを伝え、安心 して取り組めるようにした。また教師や友達とジャンケンをするとこで楽しく行うことが できた。 また、親子が幼稚園に設定した様々なコーナーで遊ぶ「親子ふれあいの日」という行事 の中で、足指遊びコーナーをつくり、そこで親と子が向かい合って座り、足と手の握手と 足指ジャンケンをした。親が子どもに教えたり、ジャンケンを したりして楽しんでいる姿が見られた。また、家庭でも続けて 遊べるように、足と手の握手と足指ジャンケンを絵に描き、 プリントにして全家庭に配布した。幼児から「お家でも、 やったよ」という声が聞かれ、「親子ふれあいの日」後は、 幼児たちが足と手の握手や足指ジャンケンが上手にできるよう になり、家庭でも取り組んでいることを実感した。 この他にも、立って足指のグーとパーを繰り返すことで前に進む「いもむし歩き」も保 育に取り入れ、足指体操に園全体で取り組むように、自分の学級が行う時に他学級を誘っ て一緒に行ったり、プールの時期は裸足になっているので、プール前の体操に取り入れる とよいことを他の先生に知らせたりした。 <正しい靴の履き方> 浮き指の原因のもう一つは、靴を正しく履いていないことである。そこで、幼児が自分 で正しく靴が履けるように、履き方を絵に描いて見せた。正しい靴の履き方は、①座る、 ②靴のバンドを外し、足を入れる。③かかとを合わせるために、 かかとをトントンとする。④バンドを引っ張ってしっかり止める、 である。幼児が覚えやすいように、「ベリベリトントンギュー ピタッ」という言葉で表現し、歌にも合わせた。幼児たちは、その 言葉を覚え、歌を口ずさみながら、靴を履いている姿が見られた。 また、幼児が靴を履く場所で視界には 入る位置に、三角ポールに履き方の絵を 貼って置き、正しい履き方を意識でき るような環境を整えた。 これらの指導でかかとを踏んで履いて いる幼児がいなくなり、靴の履き方を意識し、習慣化してきた。ま た、靴を足にフィットさせて履くことで、動きやすくなり、 鬼ごっこなどで全力で走ったり、鉄棒や雲梯などの固定遊具に積極的に取り組んだりする 姿も増えた。正しい靴の履き方が、積極的に体を動かして遊ぶことにつながった。 <修業の道> 幼児が足を充分に動かすことを含む運動的な遊びを楽しみながら たくさん経験することが、足や足裏を育てることになると考え、 幼児が思わず体を動かしたくなるような環境をつくることに取り 組んだ。 そこで、幼児が普段の遊びでも楽しみ、親しみがある忍者の イメージを取り入れた。かっこいい忍者になるために修業をしよう という提案をし、修業の道を園庭につくった。 修業の道とは、園庭に「ぴょんぴょん跳び」「ケンパ」「ジャン プをして手裏剣にタッチ」「お化けの的当て」などのコーナーを作り、それらを道でつな ぎ、最後はジャンプをしてタンバリンを叩いてゴールする、というサーキット方式の遊び である。スタート位置に、暖簾のトンネルを作り勢いよく始められ るように工夫したので、幼児たちはテンポよく、様々な運動遊びに 取り組んだ。「お化けの的当て」は、幼児が描いたお化けの絵を 紙に貼り、自分で作った手裏剣や玉を当てるようにした。手作りの 物を取り入れたことで、楽しさが増し、お化けの的当てを繰り返し 行っていた。また、幼児が何回も繰り返し取り組めるように、 ジャンプしてタッチする手裏剣の高さを変えたり、ゴールの場所を 毎日違う場所にしたりして、修業の道に変化を持たせ、幼児が新たな気持ちで取り組める ように工夫した。 幼児が好きな忍者のイメージ、幼児が意欲をもって取り組める ような設定、自分の作った物を取り入れたこと、毎日環境に変化を つけたことなど工夫したことで、幼児が自ら体を動かし、夢中に なって取り組む遊びとなった。 <裸足の遊び> 足裏を育てるために裸足で遊ぶ機会を増やし、ホールで遊ぶ時には、できるだけ裸足に なるようにした。裸足で歩く、走る、ジャンプする、クマ歩きをするなどの動きで、足の 指がしっかりと床を捉えようと力が入っていた。普段している体操や簡単な体を動かす遊 びも、裸足で行うことで足指をしっかり動かしていた。特に足を「踏ん張る」動きは、足 指、足裏全体を使うことができるので、足を踏ん張る動きができるように「マット引き」 を行った。幼児はマットを教師や幼児同士で引っ張り合ったりして楽しみながら遊び、足 を踏ん張り、自然と足指や足裏に力を入れていた。 これらの実践を行い、再びフットプリンターで足裏を計測したところ、扁平足、浮指を幼 児が減り、足裏全体がしっかりと映る力強い足裏になっていた。また、靴の正しい履き方 が幼児たちに定着したことで、身のこなしが良くなり、積極的に体を動かして遊ぶ幼児が 多くなり、転んだりぶつかったりする幼児も減った。 今後は、保護者の足育に関する意識を高め、成果を継続させること、また、私自身も、 「幼児期の足の育ちが人生を決める!」と信じ、足育を推進し、さらに幼児が体を動かす 楽しさを感じられるように努力していきたいと思う。 浮指 浮指がなくなった 写りが薄く、 足裏がしっかり写り、 力強さに欠ける 力強さが出た