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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
Title Author(s) Citation Issue Date 米国アトランタが取り組む持続可能な都市圏政策 : Atlanta BeltLine 大庭, 哲治 都市計画 (2012), 61(5): 114-114 2012-10-25 URL http://hdl.handle.net/2433/193763 Right © 2012 公益社団法人 日本都市計画学会 Type Journal Article Textversion publisher Kyoto University 米国アトランタが取り組む持続可能な都市圏政策: A t l a n t aB e l t l i ne SustainableUrbanPolicyi nAtlanta,USA:AtlantaBeltLine 大庭哲治 京都大学大学院工学研究科,助教/ ジョージア工科大学公共政策学部,客員研究員 3 .アトランタンによる草の根活動と都市圏政策の今後 1 .はじめに 米国南東部に位置するジ、ョージア州の州都アトランタは.人 A t l a n t aB e l t L i n e,I n c . で、は,アトランタ市民 ( ア トランタン) 口42万人,都市圏人口 527万人の成長著 しい都市である 。 による多くのボランテイアが草の根活動を積極的に展開してい 1996年の夏季オ リンピック開催を契機に,人口増加と経済発 る。四半期ごとに進捗状況が詳細に報告される上,各地区で 展が進み,大企業が本社を置く南部最大の商業・経済の中心 幾度となく会議,勉強会,イベントが開催されており,パブリッ 地として近年大きな役割を担っている O クアートにも力が注がれている 。また,パスで現地を回りなが 米国の中でも代表的な自動車都市の l つとして挙げられるア ら学ぶツアーも定期的に開催され,これまで、に数千人にのぼる トランタは,十字型に走る地下鉄と多数のパス路線によって公 アトランタンが参加している。人気で、予約が困難なこのツア」 共交通が一定は整備されているものの,朝夕の深刻な交通渋 に私も参加した点約3時間で、A t l a n t aB e l t L i n eのコンセプト 滞とスプロール開発による都市圏の拡大が喫緊の課題となっ や経緯,現状を効率良く学ぶことができる。このようにハードと ている。そのような中,都心部への過剰な自動車の乗り入れに ソフトの両面で都市圏政策を牽引している。 よる社会的損失を縮小し持続可能な都市構造の形成を目指 本年7 月3 1, 日 TransportationInvestmentAct( TIA)に基 す新たな都市圏政策が現在進行形で展開されている。それが づき, 1%の物品税を交通輸送改良整備に充てる住民投票が A t l a n t aB e l t L i n e で、ある。 アトランタ都市圏で実施された。承認されれば新たな財源が 確保され,新しい路面電車システムの一部区間の整備も着手さ 2 .AtlantaBeltlineの概要 ”で、あった O この都市圏 れる予定で、あったが,投票結果は“NO A t l a n t aB e l t L i n e とは,都心部を囲む全長約 35kmに及ぶ 政策の恩恵、をアトランタンが享受するまでには,まだ長い時間 低未利用の鉄道線路を活用して周辺の工業地域との土地利 と多くの労力を要することが予想される。都市の変容に関わる 用混合による都市再開発と新しい公共交通路線の整備によ 都市国政策では,利害関係が大きく交錯するため,住民個々の る公共交通指向型都市開発( TOD )を構想したものである。 意 識 と責任が不可欠である 。自動車都市アトランタが取り組 また,歩行者や自転車利用者に優しい遊歩道や緑地公園とい む,この持続可能な都市圏政策の今後が注目される。 った公共空間の整備により,環境保全と住民の健康福祉向上 も期待されており,エメラルドネックレスとも称されている。 r a v e lが, この構想、は,ジ、ヨージ、ア工科大学の修了生RyanG 1999年に修士論文のテーマに取り上ばその内容を複数の地 元有力者に送付したことに端を発している 。2004年の The 参考文献 ・ A t l a n t aB e l t L i n巴 h t t p: / / w w w. b e l t l i n e . o r g / ・ D a v i d s o n ,E .( 2 0 1 1 ) .TheA t l a n t aB e l t L i n e :AGr 巴e nF u t u r e, P u b l i cR o a d s ,V o l . 7 5N o . 2 .p p . 2 0 2 7 ω e tg 、各当g m e h p g ea a a a d一 咽 向 T r u s tf o rP u b l i cLandによる研究レポートが牽引役となり,当 時の市長が投資調査を実施, 2005年には A tlantaBeltLine の再開発計画と TaxA l l o c a t i o nD i s t r i c t( TAD)の指定が アトランタ市議会をはじめとする関連機関で承認, 2006年に は予算を伴う 5ヵ年計画がアトランタ市議会で承認され,構想、 から具体的な政策に移行する 。また,この都市圏政策の管理 t l a n t aB e l t L i n久 I n cーが,関係主体 運営を目的に設立された A との連携のもと, P lを幾度となく実施し公園や遊歩道の整備 を進めており,現在は,マスタープランに基づいて周辺の商業 空間や住宅空間も 開発されている 。さらに,新しい公共交通 整備として 2010年に米国運輸省がアトランタ都心部におけ る新しい路面電車システムの整備に予算をつけている。 ⑪一 I2 99 正をも A t l a n t a : 議1 ' JB e l t . I 問 アトランタ都心部の交通渋滞 ( 左上),ツア←の様子 ( 左下) , A t l a n t aB e l t l i n eの概要図 ( 右)