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蛋白質核酸酵素:サイトカイン受容体を介した細胞の増殖, 分化, そして死

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蛋白質核酸酵素:サイトカイン受容体を介した細胞の増殖, 分化, そして死
サ イトカイン受 容 体 を 介 した細 胞 の増 殖 ,分 化 ,そして死
長 田重 一
生 体 の恒 常性 は細 胞 の増 殖 と分 化 , お よび そ の死 に よ って 巧 妙 に制 御 さ れ て い る 。 この
制 御 過程 に は サ イ トカ イ ンと よ ば れ る 一 群 の 蛋 白質 が 関 与 して い る。 サ イ トカ イ ンは 特 異
的 な受 容 体 に 結 合 す る こ と に より , 一連 の 増 殖 , 分 化 あ る い は細 胞 死 (アポ トー シ ス) の
Database Center for Life Science Online Service
シ グ ナ ル を伝 達 す る。 本 稿 で は ,G-CSF/G-CSF受
分 化 ,Fas抗
は じめ に
容 体 シス テ ム を 介 した 細 胞 の増 殖 と
原 を 介 した ア ポ トー シス の 機 構 に 関 して 筆 者 ら の研 究 を 中 心 に 概 説 す る。
私 た ち の 身体 は,60兆
個 に も達 す る 細 胞
白質 が ,サ イ トカイ ン と よば れ て い る2)
。 これ ら サ イ ト
か ら構 成 され て い る。 これ ら の細 胞 は1個 の受 精 卵 か ら
カ イ ンの なか に は , 特 定 の細 胞 に対 して の み 作用 す る も
始 ま り,増 殖 ,分 化 を く り返 しな が ら, あ る特 定 の 役 割
の や種々 の細 胞 に作 用 す る も のが 知 られ て い る。 サ イ ト
を 担 う細 胞 ,臓 器 を 形成 す る。 この過 程 で 細 胞 は 秩 序 だ
カイ ンの作 用 は ,標 的 細 胞 表 面 上 に存 在 す る特 異 的 な 受
っ て増 殖 , 分 化 し, そ の 異 常 増殖 が 癌 と して の 病 気 で あ
容体 に結 合 す る こ とに よ り細 胞 へ 伝 達 さ れ る。 この受 容
る。 一 方 ,個 体 の形 成 に お い て す べ て の細 胞 が 増 殖 ,分
体 は ,1個 の膜 貫 通 領 域 を も ち ,N末 端 側 が細 胞 外 領 域
化 し成 熟 細 胞 とな るの で は な く,無 用 な 細 胞 , 有 害 な細
と して サ イ トカ イ ン と相 互 作 用 す る 。 一 方 ,C末 端 側 は
胞 はそ の発 生 分 化 の過 程 で死 滅 す る1)
。 た とえ ば 神 経 ネ
細 胞 内 に存 在 し, 種 々 の シ グナ ル 伝 達 物 質 と 相 互 作 用
ッ トワー クの形 成 時 に50% 近 くの 神経 細 胞 は ネ ッ トワ
ー ク形 成 に 参 加 す る こ とな く死 滅 す る。 肢 芽 の 形 成 に お
し,そ の情 報 は 最 終 的 に核 へ と伝 達 さ れ 特 定 の遺 伝 子 の
活 性 化 , あ るい は 抑 制 と して 体 現 され る。
い て も, 指 の 問 の 間充 織 細 胞 が あ る発 生 段 階 で 死 滅 し手
を形 成 す る こ と とな る。 また ,Tリ
ンパ 球 の成 熟 段 階 に
お い て , 自己抗 原 と反 応 す る細 胞 な ど95%
以上 の細胞
筆 者 らは , サ イ トカ イ ンの 一 種 で あ る 顎粒 球 コ ロ ニー
刺 激 因 子 (granulocyte colony−stimulating factor;G−
CSF)
とそ の受 容 体 系 を 用 い て, 細 胞 , 特 に 白血 球 の増
が胸 腺 に お い て 死滅 す る。 さ ら に, い った ん ,成 熟 した
殖 と分化 機 構 を分 子 レベ ル で解 析 し て い る。 ま た, 最
細 胞 も そ の役 割 を終 え た 場 合 や , 寿 命 に 達 した 場 合 ,速
近 ,Fas抗
や か に死 滅 し個 体 の恒 常性 を 維持 して い る。
ば か りで な く細 胞 死 もサ イ トカイ ン とそ の受 容 体 を 介 し
そ れ で は , これ ら細 胞 の 増 殖 , 分 化 や 死 の過 程 は どの
原 とよば れ る蛋 白質 の解 析 か ら,増 殖 や 分 化
て 制 御 され て い る と の 結 論 に達 し た 。 本 稿 で は,G-
よ うに制 御 され てい るの で あ ろ うか。 これ ま で 数 多 くの
CSF/G-CSF受
容 体 を 介 した 細 胞 の増 殖 と分 化 ,Fas抗
人 々が 細 胞 の増 殖 ,分 化 を促 進 す る分 子 の 同定 を 試 み ,
原 を 介 した細 胞 死 に 関 して, 筆 者 らの 研 究 室 で の結 果 を
ペ プ チ ドや 蛋 白質 が 一種 の ホ ル モ ン と して 細 胞 に作 用 す
中 心 に 紹 介 し,将 来 へ の課 題 を記 述 す る。
る こ とが 報 告 され て い る。 これ らの うち , リン パ球 , マ
ク ロフ ァ ー ジ, 血 管 内皮 細 胞 な どで 生産 され る一 群 の蛋
Shigekazu:Nagata,
(財 )大 阪 バ イ オ サ イ エ ン ス 研 究 所
(〒565大
阪 府 吹 田 市 古 江 台6-2-4)
dai,Suita,Osaka565,Japanコ
Cytokine-mediated
Proliferation,Differentiation
【サ イ トカ イ ン】 【G-CSF】
2208
【Fas抗
and
Apoptosis
of
原 】 【ア ポ トー シ ス 】
Cells
[Osaka
Bioscience
Institute,Furue・
サ イ トカ イン 受 容 体 を 介 した細 胞 の増 殖 , 分 化 , そ して死
173
り大 量 に調 製 され る と ともに , そ の発 現 機 構 ,作 用 機 構
1.G−CSFに
の解 析 が 精 力 的 に進 め られ て い る。
よ る細 胞 の 増 殖 と分化
2.G-CSF
1. コ ロニ ー 刺 激 因 子
血 液 中 に は1mm3あ
た り5,000∼8,000個
の 白血 球
が存 在 す る が, この 白血 球 分 画 で最 も大 き な割 合 (65∼
エ ン ド トキ シ ンで 刺 激 され た マ ク ロ フ ァー
70%) を 占め る血 球 が好 中 球 であ る。 好 中 球 は 細 菌 な ど
る7)9)
。G−CSFに
の異 物 を 認 識 し,そ れ に 向か って遊 走 しそ れ らを 負 食 す
が , そ の うち4個 はS−S結
る。 貧 食 され た 異 物 は 好 中球 が保 持 して い る種 々 の 水解
G−CSFの
糖 蛋 白質 で あ
は5個 の シ ス テ イ ン残 基 が 存 在 す る
合 に よ り連 結 さ れ て お り,
活 性 に必 須 で あ る。G-CSFの
ア ミノ酸 配 列 は
酵 素 に よ って 分 解 され る と とも に , この過 程 で 活性 酸 素
イ ン ター ロイ キ ン6(interleukin6;IL-6)
が産 生 さ れ 細 菌 な どを 効 率 よ く 死 滅 させ る。 この よ う
似 性 を 示 す が , 他 の サ イ トカ イ ン とは ほ とん ど似 て い な
に ,生 体 防御 に お い て重 要 な役 割 を 演 じて い る好 中 球 は
い 。 最 近 ,G−CSFの
増 殖 す る こ との な い細 胞 で あ り2∼4日
が ま たれ る 。
間 で死 滅 す る。
好 中 球 の産 生 は ,成 体 にお い て は お も に骨 髄 で営 まれ
Database Center for Life Science Online Service
G−CSFは
ジに よ って産 生 さ れ る分 子 量 約20,000の
と顕 著 な 相
結 晶 が得 られ て お りそ の構 造 解 析
多 くの サ イ ト カ イ ン が さ ま ざ ま な細 胞 を標 的 細 胞 と
る。 骨 髄 には す べ て の血 球 の 母 細胞 で あ る多 能 性 幹 細 胞
し,種々 の活 性 を 示 す の に対 し,G-CSFは
が 存 在 し, こ の細 胞 が 増 殖 ,分 化 し,種 々の 中 間 段 階 の
胞 に特 異 的 に作 用 す る10,10)。
す なわ ち , 骨 髄 細 胞 を 軟 寒
細 胞 を経 て成 熟 好 中 球 とな る。 この増 殖 , 分 化 は2週 間
天 中 でG−CSFと
以上 か か り,毎 日7.5∼10×109個
細 胞 は 増 殖 と分 化 を く り返 し,7∼10日
の 好 中球 が新 た に産
好中球前駆細
培 養 す る と,骨 髄 細 胞 中 の 好 中 球 前 駆
目に50∼100個
生 され る。 好 中球 の産 生機 構 に 関 す る 研 究 は ,1966年
の 細 胞 か らな る コ ロ ニー が形 成 さ れ る。 こ の よ うなG−
Sacsら3),Metcalfら4)
CSFの
に よる骨 髄 細 胞 のin
vitroで の
増 殖 , 分 化 作用 は骨 髄 性 白血 病 細胞 を用 い て再
培 養 か ら始 ま った 。 彼 ら は ,二 層 軟寒 天 培 養 法 で上 層 に
現 す る こ と も可能 で あ る。 す な わ ち ,IL-3に
標 的 細 胞 と して マ ウ ス骨 髄 細 胞 ,下 層 に腎 細 胞 や 胎 児 細
増 殖 す る32DC13やL−G骨
胞 を 入 れ て 培 養 す る と上 層 の 骨髄 細 胞 の一 部 が 増 殖 , 分
CSFと
依 存 して
髄 性 白血 病 細 胞 株 をG−
培 養す る と,1週 間 か ら10日
後 に は成 熟 好 中 球
化 し, 好 中球 や マ ク ロ フ ァ ー ジか らな る コ ロ ニ ーが 形成
の形 態 を もつ 細 胞 へ と変 化 す る。一 方 ,同 じよ うにIL−3
され る こ とを示 した。 この際 ,下 層 に 細 胞 を 加え な い と
に 依 存 して増 殖 す るNFS60細
上 層 で の コロ ニ ー形 成 は 認 め られ ない こ とか ら,下 層 の
は 増 殖 を 促 進 す るの み で あ り好 中球 へ の 分 化 は 誘 導 され
細 胞 か ら液 性 因子 が分 泌 され こ の因 子 が 骨 髄 細胞 , 特 に
な い 。 好 中 球 の 分化 過 程 に お い て そ の前 駆 細 胞 (
骨髄 系
好 中球 や マ ク ロ フ ァー ジ の前 駆 細 胞 の増 殖 ,分 化 を促 進
幹 細 胞 ) は ,顆 粒 系 ・マ ク ロ フ ァー ジ系 幹 細 胞 ,骨 髄 芽
し コ ロニ ー形 成 を 促 した と結 論 され た。 そ して , この液
球 (myeloblast)
,前 骨髄 球 (prcmyelocyte) を経 て骨 髄
性 因 子 が コ ロニ ー刺 激 因 子 (colonystimulating factor;
球 (myelocyte) とな るI2)。こ の段 階 ま で は分 裂 を く り返
CSF)
と よぼれ る こ と とな った5,6)。
そ の 後 ,CSFは
し, そ の 間 ミエ ロペ ル オ キ シ ダ ー ゼや 好 中 球 エ ラ ス タ ー
種々 の 培 養 液 な どか ら 精 製 さ れ , そ
の 標 的 細 胞 の 違 い か ら 少 な く と も5種
類 のCSFの
存在
が 明 らか とな っ た 。 す な わ ち ,好 中 球 , マ ク ロ フ ァ ー
ジ , 好 酸 球 に 特 異 的 に 作 用 す るG-CSF(granulocyte
C5F),M-CSF(macrophage
philCSF,IL−5と
胞 株 に対 して は,G−CSF
CSF),Eo-CSF(eosinoも よぼ れ る) と, 好 中 球 とマ ク ロ フ
ゼ な どの酵 素 が 合 成 され顆 粒 と して蓄 積 され る。 つ い で
後 骨 髄 球 に な る と細 胞 の 分 裂 は 止 ま り, 桿 状 核 球 を 経 て
核 が 分 葉 した 成 熟 多 形 核 白血 球 とな る。32DC13細
は こ の好 中 球 分 化 の初期 の 細 胞 であ り,G−CSFに
胞
より
そ の分 化 が 誘 導 され る と考 え られ る。 一 方 ,1VFS-60細
胞 も好 中 球 前 駆 細 胞 で あ りG-CSFに
応 答 して増 殖 す る
ァ ー ジ 両 者 に 作 用 す るGM-CSF(granulocyte-macro・
が , 癌 遺 伝 子c-mybやEvi一1遺
phageCSF)
スが 挿 入 され て い る こ とに よ り,好 中球 へ の分 化 が 阻 止
, お よ び種 々 の血 液 細 胞 の前 駆 細 胞 , 肥 満
細 胞 に 作 用 す るIL-3(multi-CSFと
る 。 こ れ ら の 因 子 は 活 性 化 さ れ たTリ
も よば れ る) であ
ンパ球 や マ ク ロフ
伝 子 内 に レ トRウ イ ル
さ れ て い る と考 え られ る。
G−CSFの
好 中球 前 駆 細 胞 に対 す る 効果 は,in vivoに
ァ ー ジに よ って産 生 さ れ る リン フ ォカ イ ン, モ ノ カイ ン
お い て も 再 現 可 能 で あ る13)
。 す なわ ち, 精 製 し たG-
で あ りサ イ トカ イ ン の 一 種 で あ る 。1980年
CSFを
CSF遺
代 , これ らの
伝 子 が 相 つ い で 単 離 さ れ ,遺 伝 子 工 学 の 手 法 に よ
マ ウス に 投 与 す る と, マ ウス 血 中 の 好 中 球数 は
12時 間 後 よ り顕 著 に増 加 し24時
間 後 に は 通 常 レベ ル の
2209
174
蛋 白 質 核 酸 酵 素 5∼10倍
に ま で 達 す る。 そ して,G−CSFの
vol.38No.12(1993)
投 与 を終 了
す る と速 やか に (48時 間 以 内 に) 通 常 レベ ルへ とも ど
る。 この 際,G−CSFは
好 中球 のみ を 増 加 させ , 他 の血
液 細 胞 や組 織 に対 し影響 が な い こ とか らG−CSFはin
vivoに
お い て も好 中球 前 駆 細 胞 に の み 特 異 的 に作 用 す
る因 子 と結 論 さ れ た。 また ,G-CSFは
成 熟 好 中 球 の生
存 を延 長 させ る こ と (survival)
, そ の機 能 を昂 進 さ せ る
こ とが知 られ て い るiii。す なわ ち, 好 中球 をG-CSFで
前 処 理 す る と好 中球 遊 走 因 子 (FMLPな
ど)に よ る活 性
酸 素 の産 生 が 増 強 され ,か つ 抗 体 に依 存 した 好 中 球 の腫
瘍 壊 死 活 性 (ADCC)
3.G−CSF受
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G−CSFの
も顕 著 に増 大 す る。
容体
作 用 は 標 的 細 胞 の表 面 に 発 現 さ れ て い る
G−CSF受
容 体 を 介 して細 胞 へ 伝 達 され る。 筆 者 ら は ,
G−CSFに
よ る好 中 球 の 増殖 ,分 化 の 分 子機 構 を 理 解 す
る には 受 容 体 の解 析 が 必 須 と考え,G-CSF受
図1.G-CSF受
容体 の構造
容 体 の 構 造 を 模 式 化 して 示 した。19
マウ スG-CSF受
容体 の 精
1ikeは 免 疫 グ ロブ リン 様 構 造 を 示 す 。 サ イ トカ イン 受 容
製 とcDNAの
たG−CSFを
単 離 に と りか か った 。 [1251]で標 識 さ れ
用 い て,G−CSF受
と ころ , マ ウスNFS−60細
容体 の発 現 を検 討 した
胞 で は他 の細 胞 株 に比 べ 比
較 的 大 量 (細 胞 あ た り2,000分
た 。 そ こ で,NFS60細
CHAPSに
子 ) の発 現 が 認 め られ
胞 を 培 養 し, そ の膜 分 画 よ り
よ る 可 溶 化 ,G−CSFア
フ ィ ニ テ ィカ ラ ム,
ゲル 濾 過 法 な ど を 用 い て ,G−CSF受
た14)。こ の蛋 白質 は分 子 量10∼13万
はG−CSFと
体 間 で 保存 され て い る シ ス テ イン 残 基 (C),Trp-Ser-XTrp-Ser(WSXWS)
モ チ ー フを 横 線 で 示 した 。
容体 を精 製 し
を 示 し, モ ノマ ー
低 親 和 性 (解 離 定 数10nM)
に しか 結 合 し
は 染 色 体 遺 伝 子 構 造 か ら も推 定 さ れ る 。 す な わ ち , ヒ ト
G−CSF受
容 体 遺 伝 子16・17》
は 全 長16.5kbか
ら な り17
個 の エ ク ソ ンか ら構 成 さ れ て い る が ,Ig
CRH領
域 ,FNⅢ
領 域 は そ れ ぞ れ1∼4個
like領
域,
のエ ク ソ ン
に よ っ て コ ー ドさ れ て い る。
筆 者 ら がG−CSF受
容 体cDNAを
単離 しそ の構 造 を
な い が , ダイ マ ー や オ リゴマ ー は細 胞 表 面 上 の受 容 体 と
発 表 し た の と 同 じ こ ろ , 種 々 の 造 血 因 子 , サ イ トカ イ ン
同 等 の高 親 和 性 (
解 離 定 数 約100PM)
受 容 体cDNAが
一方 ,NFS−60細
胞cDNAラ
ロー ニ ン グ法 に よ りG−CSF受
た15)
。 この蛋 白質 は812個
イ ブ ラ リーか ら発 現 ク
容体cDNAを
単離 し
の ア ミノ酸 か らな り,1個 の
膜 貫 通 領域 が この 分 子 を602個
域 と187個
で結 合 した 。
の ア ミノ酸 の 細 胞 外 領
の ア ミノ酸 の 細胞 質 領域 に 分 け て い る。他 の
蛋 白質 との比 較 か ら,G-CSF受
容 体 の細 胞 外 領 域 は モ
ザ イ ク構 造 を もつ と考え られ る。 す な わ ち ,N末 端 約
同様 に 単離 され た 。 そ の構 造 を比 較 す
る こ と に よ り, これ ら の 受 容 体 の 細 胞 外 領 域 約200ア
い る こ と が 明 らか と な っ た18)。こ の フ ァ ミ リ ー の 中 に は ,
IL−2受
LIF,
mone)
容 体 β鎖 , γ鎖 ,IL−3∼IL−7受
容 体 ,GM−CSF,
エ リス ロ ポ エ チ ン受 容 体 , 成 長 因 子 (growth
, プ ロ ラ ク チ ン受 容 体 ,gp130と
よ ば れ るIL一6
ミノ酸 は 免 疫 グ ロブ リン様 構 造 (Ig like), 次 の
で は ,G−CSF,gp130,LIF受
200ア
ミノ酸 は他 の サ イ トカ イ ン 受 容 体 と の 相 似 領 域
造 を 保 持 して い る が , 他 の メ ン バ ー 間 で はCRH領
ミノ酸 は3個 の フ ィ プ ロ
ネ クチ ンタ イ プⅢ (FNⅢ ) モ チ ー フ か ら 構 成 され て い
る (
図1) 。一 方 ,細 胞 質 領 域 に関 して は膜 貫 通 領 域 の近
傍 に プロ リンに 富 む"box1”
と よぶ サ イ トカイ ン受 容
体 間 で共 通 に 見 い だ さ れ る モ チ ー フが存 在 す る が , チ ロ
シ ンキ ナ ー ゼ や , ボ ス フ ァタ ー ゼ な どの酵 素活 性 部 位 は
存 在 しな い。 この よ うなG−CSF受
2210
容体 の モ ザ イ ク構 造
hor・
受 容 体 β鎖 が 含 ま れ る 。 こ の フ ァ ミ リ ー の メ ン バ ー の 間
100ア
(CRH), そ して, 残 り300ア
ミ
ノ酸 は 相 似 し て お り大 き な 受 容 体 フ ァ ミ リ ー を 形 成 し て
容 体 が よ く似 た 配 列 ,構
域を
除 き ほ と ん ど 似 て い な い19,20)
。
G−CSFは
そ の受 容 体 に結 合 し, 好 中 球 前 駆 細 胞 の増
殖 , 分 化 を 誘 導 す る 。 実 際 , 単 離 したG-CSF受
容体 は
これ ら の 情 報 を 細 胞 へ 伝 達 す る 能 力 を 保 持 し て い た 。 す
な わ ち ,G-C5F受
因子
容 体cDNAを
ヒ トペ プ チ ド鎖 延 長
(EF−1α ) 遺 伝 子 の プ ロ モ ー ター21)の 下 流 に 配 置 し
動 物 細 胞 に 導 入 した22)。 こ の 際 導 入 す る 細 胞 と し て は
175
サ イ トカ イ ン受 容 体 を 介 した 細 胞 の 増 殖 , 分 化 , そ して 死
そ の活 性 を 検 討 した22)
。 そ の結 果 , 細 胞 外 領域 のCRH
ドメイ ンはG−CSFの
やFN皿
結 合に 必須 で あ る こ と,Ig
領 域 はG−CSFの
Iike
結 合 , 増 殖 の シ グナ ル に は
必 要 な い こ とが示 さ れ た。 一 方 , 細 胞 質 領 域 に 関 し て
は ,N末 端 か ら76ア
ミノ酸 が 増 殖 の シ グ ナル を 伝 達 す
る の に十 分 で あ る の に対 し, 好 中 球 分 化 の シ グナ ル伝 達
に はN末
端 領 域 ぼ か りでな くC末 端 領 域 も 必 須 で あ っ
た22b)
。 以 上 の結 果 は ,G−CSF受
容体 は 細 胞 へ 増 殖 や 分
化 の シ グナ ル を 伝達 し うる が ,そ の経 路
機 構 は異 な っ
て い る こ とを 示 して い る。
そ れ で は,G−CSFは
どの よ うに してG−CSF受
容体
を 活 性 化 す る の であ ろ うか 。一 般 に サ イ トカイ ン受 容 体
図2.G−CSF受
Database Center for Life Science Online Service
は2種
容体 を介 した細 胞 の 増 殖
外 来 のG−CSF受
容 体 を 発 現 し て い るFDC−P1(
BAF−BO3(
○),CTLL−2(
■) 細 胞 を500pMのG−CSF
●),
存 在 下 で培 養 し, 継 時 的 に そ の細 胞 数 を 測 定 した 。親 株 で あ
るFDC−P1,BAF−BO3,CTLL−2はG−CSFに
ま った く
応 答 しな い 。
あ る い は3種 の ポ リペ プチ ドが会 合 す る こ とに よ
り, リガ ン ドに対 す る高親 和 性結 合 部 位 を 形成 す る。 一
方 ,G−CSF受
容 体 は 単一 の ポ リペ プチ ド鎖 の ホ モ ダ イ
マ ー と して機 能 す る と考 え られ る。 ホ モ ダイ マ ーを 形 成
す る受 容 体 と して は成 長 因 子 (growth hormone;GH)
受 容 体 , プ ロ ラ クチ ン受 容 体 が 知 られ て い る。 そ し て
1L−3依 存 的 に増 殖 す る骨 髄 性前 駆 細 胞FDC-P1や
ロB-細
胞 株BAF−B03,IL−2依
CTLL-2細
プ
存 的 に増 殖 す る
胞 を 用 い た 。 図2に 示 した よ う に ,G−CSF
受 容 体 を 発 現 して い るFDC-P1,BAF−B03細
IL-3非
存 在 下 ,G−CSFに
し,CTLL-2細
よ って;
増殖 可 能 で あ る の に対
胞 はG−CSFに
た 。 この こ とはG-CSF受
胞 は
応答せず速やかに死滅 し
容体 はG−CSFに
応 答 して増
GH受
容 体 に関 して は,1分
子 の リガ ン ド (
成長 因子)
が2分 子 の受 容体 に結 合 す る こ と が , リガ ン ドと 受 容
体 細 胞 外 領域 複合 体 のX線
解 析 な どに よ り示 され てい
る23,24)。
そ こで 筆 者 らはGH受
容 体 の 細 胞 外 領 域 ,G−CSF受
容 体 の 細 胞 内 領域 を もつ キ メ ラ分 子 を作 製 した25)
。 この
キ メ ラ分 子 を 発現 す るFDC-P1細
殖 シ グナ ル を伝 達 す る能 力 が あ る こ と, そ の伝 達 回路 は
GH存
FDC-P1,BAF-B03細
濃 度 のGHは
そ の増 殖 を 抑 制 した26)(図3A)
果 は 図3Bに
示 した よ うに 解 釈 され る。す なわ ち,GH
胞 に は 存 在 す る がCTLL-2細
胞に は欠 損 して い る こ とを示 して い る。
つ い で,G−CSF受
胞 をIL−3あ
容 体 を 発現 してい るFDC-P1細
る い はG−CSF存
い るThy−1やF4/80抗
の培 養 時 に発 現 して
原 はG−CSFに
抑 制 され た 。Thy−1やF4/80抗
応 答 して 増殖 す る のに 対 し, 高
。 この 結
には 受 容 体 と結 合 す る部 位 が2ヵ 所 (
部 位1と
在下 で培 養 しそ の表 面 抗
原 を 検 討 した。 そ の結 果 ,1L-3で
在 下 で はGHに
胞 は あ る至 適 濃 度 の
よっ て顕 著 に
原 は 好 中球 分 化 の初 期
存 在 す る。 至 適 濃 度 のGH存
第 一 のGH受
部 位2)
在 下 で は部 位1を 介 して
容体 と, 部 位2を 介 して 第 二 の 受 容 体 と
結 合 し,受 容 体 の二量:
体 化 を誘 導 す る。一 方 , 高 濃 度 の
リガ ン ドの存 在 下 では す べ ての 受 容体 分 子 に1個
のGH
1に発 現 して い る抗 原 で あ り成 熟 好 中 球 に は 見 られ な い こ
が 結 合 し,受 容 体 は ダイ マ ーを 形成 しえ ず シ グナ ルが 伝
とか ら, この結 果 は 単 離 したG−CSF受
達 され な い。 この キ メ ラ分 子 に お い て シ グナ ル伝 達 に必
容体には細胞 の
分 化 を誘 導 す る能 力 も備 って い る こ とを 示 して い る。 実
要 な細 胞質 領域 はG−CSF受
際 ,G-CSF受
か ら,G−CSF受
CSFと
容 体 を 発 現 して い るFDC−P1細
胞を
培 養 す る と, 好 中球 特 異 的酵 素 で あ る ミエ Gロ
容 体 か ら 由来 して い る こ と
容 体 が 機 能 す るた め に はそ の二 量 体 化
が 必 須 と考 え られ る。 おそ ら く,GHの
場 合 と同様 に1
ペ ル オ キ シ ダーゼ や 白血 球 エ ラス タ ーゼ 遺 伝 子 の 発 現
分 子 のG−CSFが2分
が 誘 導 され た22b)
。 この よ うなG-CSF受
を誘 導 し, 増 殖 や 分 化 の シ グナ ル を 伝達 す る と考え られ
FDC−P1細
胞 で のみ 観 察 されBAF/B03細
容体の作用は
胞 で は見 ら
子 の 受 容 体 に 結合 しそ の 二 量体 化
る。
れ な い。
つ い で,G−CSF受
容 体 のそ れ ぞれ の ドメイ ンの機 能
を 調 べ る 目的 でG−CSF受
容体 に 種 々の 変 異 を 導 入 し,
2211
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176
蛋 白 質 核 酸 酵 素 図3.
(A)GHに
よ る細 胞 の増 殖 とそ の 阻 害 。GH受
現 して い るFDC−P1細
胞 の増 殖 に 及 ぼ すGHの
結 合 す る部 位 と し て部 位1と
部 位2が
Vol.38No.12(1993)
リガン ドに よ る受 容 体 の 二量 体 化
容 体 (●) あ るい はGH-R/G−CSF−Rキ
メ ラ受 容 体 (○) を 構 成 的 に 発
効果 を 検 討 した 。 (B)GHに
よる受 容 体 の二 量 体 化 。GHに
は受容体に
存 在 す る 。 至 適 濃 度 のGH存
受 容 体 の 二 量 体 が 形 成 され る。 一 方 , 高 濃 度 のGH存
れ な い と考え られ る。
在 下 で は , まず 部 位 ・1,
つ い で部 位2と
在 下 で は す べ て の 受 容 体 がGHの
部 位1と
トー シ ス の過 程 で は染 色 体DNAが
Ⅱ
.Fas抗
原 を介 した細 胞 死
単 位 で あ る約180塩
受 容 体 が 結 合 し,
結 合 し, 二 量 体 が 形 成 さ
ヌ ク レオ ソー ム の
基 対 の フ ラ グ メ ン トへ と 断 片 化 さ
れ る こ とが知 られ てお り,Ca2+ に依 存 した ヌ ク レア ー
1.
ゼ の活 性 化 が起 こる と考え られ る。 この よ うな ア ポ トー
ア ポ トー シ ス
細 胞 死 は 死 に つ つ あ る 細 胞 の 形 態 か ら 大 き く2つ
ポ トー シ ス
(apoptosis)
,ア
と ネ ク ロ ー シ ス (necrosis)
に
シ スは , 動 物 の形 態 形 成 ,変 態 や ,不 必 要 あ る い は有 害
な 細 胞 の除 去 な ど の際 に み られ る プ ロ グ ラム細 胞 死 の 形
分 け られ て い る1・27・28)
。 ア ポ トー シ ス に お い て は 細 胞 膜
態 で あ る。 また ,cytotoxic T細
が 湾 曲す る と とも に細 胞 質 ,核 の凝 縮 , 断 片化 が誘 導 さ
ル キ ラ ー細 胞 (NK
れ る 。こ の 際 ,ミ ト コ ン ド リア な ど の 細 胞 内 器 官 は イ ン タ
ベ ル での 放 射 線 に よ る胸 腺 細胞 死 ,抗 癌 剤 に よる細 胞 死
ク トに 保 た れ , 細 胞 の 内 容 物 を 保 持 し た ま ま ‘apoptotic
に お い て もア ポ トー シ ス の形 態 が 観 察 され る。
一方 , 熱 , 浸透 圧 な どの物 理 的 , 化 学 的 要 因 でひ き起
odies’ と よば れ る 小 胞 体 へ 断 片 化 さ れ る。 そb し て , こ
胞 (CTL) や ナ チ ュ ラ
ceUs) に よ る腫 瘍 細 胞 の死 や ,低 レ
の小 胞 体 は まわ りの マ ク ロフ ァ ー ジや好 中球 な ど の食 細
こさ れ る不 慮 の 死 に よ って起 こ る ネ ク ロー シ スは 形 態 的
胞 に よ っ て 貧 食 さ れ 処 理 さ れ る 。 す な わ ち , ア ポ トー シ
に ア ポ トー シ ス と区 別 さ れ る。 す なわ ち , ネ ク ロー シ ス
ス の過 程 では死 に つ つ あ る細 胞 か らは そ の 内容 物 が 放 出
で は 細 胞 は 膨 潤 す る。 ミ トコ ン ド リアや 核 な ど も 膨 潤
さ れ ず ク リー ン (clean) な 死 と考 え ら れ る 。 ま た , ア ポ
し,最 終 段 階 で は細 胞 膜 が 破 裂 し細 胞 内 容 物 が 細 胞 外 へ
2212
177
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サ イ トカ イ ン受 容 体 を介 した 細 胞 の 増 殖, 分 化 , そ し て死
図4.TNF/NGF受
容 体 フ ァ ミ リー
容 体 フ ァ ミ リー の構 成 員 を 模 式 化 して 示 した 。 細 胞外 領 域 で斜 線 の楕 円 は シス テ イ ン
TNF/NGF受
残 基 を6∼8個
含 むサ ブ領 域 で あ り, そ れ ぞ れ3∼6個
想 され る糖 結合 部位 で あ る。 また ,Fas抗
原 とTNFタ
メ イ ンで あ る。
と 放 出 され , まわ りの 細胞 に 悪影 響 を 及 ぼ す と考 え られ
か ら構成 され て い る。Ⅰ は ア ミ ノ酸 配 列 か ら予
イ プ1受 容 体 で太 線 部 分 は 両 者 で 似 て い る ド
る33・34)
。 図4に 示 した よ うに , こ の メ ンバ ー の蛋 白質 は
1個 の膜 貫 通 領 域 を も ち, シ ス テ イ ン残 基 に 富 む細 胞 外
る。
領 域 は3∼6個
2.Fas抗
Fas抗
原
のサ ブ領 域 に 分 け られ る。 一 方 ,細 胞 質
領 域 には 既知 の キ ナ ー ゼや ホ ス フ ァ タ ー ゼな どの酵 素 活
原 の同 定 は , あ る種 の ヒ ト細 胞 に対 して 致 死 的
性 部位 は存 在 せ ず , また , お 互 い の ア ミノ酸 配列 に も ほ
に 作用 す るモ ノ ク ロー ナ ル抗 体 の樹 立 が そ の端 緒 とな っ
とん ど相 同性 は み られ ず ,Fas抗
た。1989年
容 体 に約70ア
Trauthら
, 米 原 らは,IgMク
はIgG3ク
ラス の抗Fas抗
ラ ス の 抗APO-1抗
体29,
体 を樹 立
し30)
, これ らの抗 体 が活 性 化 され た リンパ球 な どに 対 し
原 とタ イ プITNF受
ミノ酸 か らな る相 同 領 域 が 見 い だ され る
のみ で あ る (
後 述)。
とこ ろ で,TNF,NGF受
容 体 は サ イ トカ イ ン受 容 体
致 死 的 に作 用 す る こ とを 示 した 。 これ らの抗 体 に よ っ て
と して 同定 され た蛋 白質 で あ る が ,Fas抗
認 識 され る抗 原 を 同定 す るた め ,筆 者 らは 発 現 クロー ニ
OX40,CD27,CD30な
ン グ法 に よ り, ま たOhemら
は精製APO-1抗
ミノ酸 配 列 を用 い て, そ れ ぞ れFas抗
原cDNAを
APO−1抗
単 離 した32)
。 そ の結 果 , 抗Fas抗
体 は 同一 の分 子Fas抗
らか とな った 。 ヒ トFas抗
原の ア
原31)
,APO-1抗
離 され , これ らの蛋 白質 に対 す る リガ ン ドが存 在 す るか
ど うか 不 明 で あ った。 し か し, 最 近 ,CD40やCD27
体 と抗
原 を 認 識 す る こ とが 明
原 は325個
原 ,CD40,
どは 細 胞 表 面 蛋 白質 と して単
の ア ミノ酸 か ら
に対 す る リガ ン ド のcDNAが
TNFに
単離 さ れ, こ れ ら は
似 た ア ミノ酸 配 列 を もつ タイ プⅡ膜 蛋 白質 で あ
る こ とが判 明 した36,36)。TNFも
タイ プⅡ 膜 蛋 白質 と し
な り,N末 端 に シ グナ ル 配 列 ,中 央部 に膜 貫 通 領 域 が 存在
て 存 在 し うる こ とか ら,Fas,OX40な
す る こ とか ら典 型 的 な タイ プ1膜 蛋 白質 と考え られ る。
様 の リガ ン ドが 存 在 す る と考 え られ る。 実 際 ,Golstein
Fas抗
原 の細 胞 外 領 域 は ,TNF受
容 体 (タ イ プ1,55
K; タ イ プⅡ ,75K) , 低 親 和 性NGF受
の表 面 抗 原CD40,T細
4-1BB,
30と
ど に関 して も同
らは あ る種 のT細 胞 ハイ ブ リ ドー マ がFas抗
容 体 ,B細
胞
胞 の表 面 抗 原OX40,CD27,
お よ び ポ ジ キ ン リンパ 腫 に 発 現 され て い るCD
相 似 して お り, 一 つ の フ ァ ミリー を 形成 し て い
原に対 す
る リガ ン ドを発 現 して い る と報 告 して い る37)。
Fas抗 原 の構 造 か らは この 蛋 白質 が どの よ うな機 能 を
もつ蛋 白質 で あ るか 推 定 す る こ とは で きな か った 。 そ こ
で, ヒ トFas抗
原 を マ ウス 線 維 芽 細 胞L929や
マ ウス
2213
178
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol.38No.12(1993)
3.Fas抗
原 遺 伝 子 の マウ ス 変 異 体
ア ポ トー シ ス は , 個 体 発 生 の 種 々 の 過 程 で 見 ら れ る細
胞 死 で あ る 。 上 に 述 べ た よ う に ,Fas抗
原 は ア ポ トー シ
ス を 媒 介 す る 未 知 の リガ ン ドに 対 す る 受 容 体 と考 え られ
る が , そ の 生 理 作 用 は 何 で あ ろ う か 。Fas抗
を 用 い たNorthern
hybridization法
原cDNA
に よ り, こ の 遺 伝 子
は 胸 腺 , 肝 臓 , 心 臓 , 卵 巣 な どの 限 られ た 組 織 で の み発 ・
現 さ れ て い た38)。 一 方 , マ ウ スFas抗
原遺 伝 子 の染 色 体
マ ッ ピ ン グ な ら び に そ の 染 色 体 遺 伝 子 の 解 析 か ら,Fas
抗 原 遺 伝 子 は マ ウ スlpr(1ymphoproliferation)
造 遺 伝 子 と判 明 し た39)。lpr変
変 異 の構
異 はMurphyら
がMRL
と よば れ るマ ウス種 を作 製 す る過 程 で 見 い だ した リンパ
節 腫 脹 を 発 症 す る 変 異 で あ る40)。 こ の 変 異 は 常 染 色 体 劣
性 変 異 で あ り, そ の 二 倍 体MRL
lpr/lprマ
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に 伴 い リンパ節 , 脾 臓 な どが 肥 大
DNA抗
ウス は加 齢
し, ほ ぼ 同 時 期 に 抗
体 な ど多 種 の 自 己 抗 体 が 血 中 に 増 加 し約5ヵ
齢 で 死 亡 す る。 そ し て , こ のlpr変
に よ りマ ウ ス 第19番
方 ,Matsuzawaら
月
異 はWatanabeら
目 の 染 色 体 に マ ッ プ さ れ た41)。 一
はlprと
ほ ぼ 同 様 の 症 状 を 示 す 伽CG
と よ ば れ る マ ウ ス 変 異 種 を 樹 立 し , こ の 変 異 もlprと
同
じ遺 伝 子 の 変 異 で あ る 可 能 性 を 指 摘 し た42)。
筆 者 ら はFas抗
原 遺 伝 子 とlpr変
異 が 染 色 体191番
目 の ほ ぼ 同 一 の 位 置 に マ ッ プ さ れ る こ と, ま たlprの
症
状 が ア ポ トー シ ス を 誘 導 す る蛋 白 質 の 変 異 で 説 明 で き る
図5.Fas抗
マ ウ スWR19L細
原 を 介 した ア ポ トー シ ス
胞 (上 段 ), あ るい は ヒ トFas抗
原を
構 成 的 に 発 現す るWR19L細
胞 (下 段 ) を1μ9/mlの
抗ヒ
トFas抗 体 と37℃3時
間 反応 させ , 透 過型 電子 顕 微 鏡 で 観
察 した。 下 段 で は 核 が凝 縮, 断 片化 して い る の が 見 られ る。
T細 胞 株WR19L細
胞 上 に発 現 さ せ抗 ヒ トFas抗 体 と
反 応 さ せ た31)。そ の結 果 , この細 胞 株 はFas抗
体 の用 量
依 存 的 に5時 間 以 内 に す べ て 死 減 した。 この 際 ,T細 胞
株 は 抗Fas抗
体 のみ で 死 滅 した の に 対 し,L929細
お い て は 抗Fas抗
体 と ともに0.5μg/mlの
胞に
ア クチ ノマ
と 考え た こ と か ら ,lprマ
ウ ス に お け るFas抗
原 遺 伝子
の 発 現 を 検 討 し た39)。 そ の 結 果 , 野 生 型 マ ウ ス 胸 腺 や 肝
臓 で 見 ら れ るFas抗
H
lpr/lprの
方 , 野 生 型 ,lprマ
zationで
原mRNAがMRL
lpr/lpr,C3
マ ウ スで ほ とん ど 観 察 され なか った 。 一
ウ ス の 染 色 体 をSouthern
解 析 した 結 果 ,lprマ
原遺
原 染 色 体 遺 伝 子 を 野 生 型 ,lprマ
ウス
伝 子 の再 編成 が示 唆 され た。
そ こ で ,Fas抗
よ り単 離 しそ の 構 造 を 比 較 し た 。Fas抗
70kb以
体 添 加3時 間 の細 胞 を電 子顕 微鏡 下 で観 察 した と ころ ,
さ れ て い る 。lprマ
細胞 膜 の湾 曲 , 核 の 凝 縮 と断 片 化 ,apoptotic bodiesの
を も っ て い る が , そ の イ ン ト ロ ン2に5.4kbか
形成 な ど ア ポ トー シス に典 型 的 な 形 態 変 化 が 見 られ た
マ ウ ス 内 在 性 レ トロ ウ イ ル ス の 一 種 で ,early
(図5) 。 さ らに , 生化 学 的 に も抗 体 添 加2時
son1(ETn1)
単 位 と した 染 色 体DNAの
3時 間 後 に は ほ とん どす べ て の 染 色体DNAが
れ て い た 。 以 上 の結 果 は,Fas抗
間 目か ら
断片化が見 ら れ,
切断 さ
原 は 細胞 へ死 の 情報 ,
上 に わ た る 遺 伝 子 で9個
原 遺 伝 子 は全 長
イ シ ンDを 添 加す る 必要 が あ った。 つ い で, 抗Fas抗
180bpを
ウ ス のFas抗
と よ ぼ れ るDNAが
(図6) 。 こ のETnの
(A) 付 加 配 列
nal repeat)
原遺 伝 子 も同 様 の構 造
らな る
transpo−
挿 入 さ れ て い た43)
を 含 むLTR(long
termi−
配 列 が 存 在 す る 。 こ の こ と か ら,lprマ
に お い てFas抗
こ とを 示 して い る。
る が イ ン トロ ン2のETn上
実 際 ,lprマ
の エ ク ソ ン に よ り構 成
両 端 に は 転 写 終 結 の た め のpoly
(AATAAA)
ア ポ トー シス の シ グナ ル を伝 達 す る能 力 を 保 持 して い る
2214
hybridi−
ウ ス に お け るFas抗
原 遺 伝 子 は エ ク ソ ン1,2と
ウス
転写 さ れ
で 終 結 す る と考 え ら れ る 。
ウ ス の 胸 腺 や 肝 臓 に は エ ク ソ ン1と2の
み
179
サ イ トカイ ン受 容 体 を 介 した 細 胞 の 増 殖 , 分 化 , そ して死
図6.lprマ
ウス に お け るFas抗
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野 生 型 マ ウ ス (上 段 ) お よびlprマ
ウス (下 段 ) のFas抗
Fas抗 原 遺 伝 子 の イ ン トロン2にETn(early
transposable
を 含 む 約1kbの
短 いmRNAが
見いだされ た。 さ ら
に,lprマ ウ ス の イ ン トロン2内 に 存 在 す るETnを
と
原遺伝子
原 遺 伝 子 の 構 造 を模 式 化 して示 した 。Lprマ
element) が 挿 入 され て い る。
ウスにおいては,
胞 へ と分 化 す る。 この成 熟 過 程 でT細 胞 受 容 体
遺 伝 子 は 再 編成 され ,MHCと
(TCR)
適 度 に反 応 す るT細 胞 は
りだ し動 物 細胞 発 現 ベ クタ ー の イ ン トロ ンに挿 入 した と
positive selectionを 受 け ,機 能 し得 な いTCRを
ころ ,ETnは
す る細 胞 は 死 滅 す る。 ま た, 自己 抗 原 を 提 示 す るMHC
そ の発 現 効 率 を顕 著 に抑 制 した 。 しか し,
そ の 抑制 は 完全 で は な く数 % レベ ル の発 現 が 観 察 さ れ
と反 応 す るT細 胞 はnegative
た 。 この こ とは ,lpr変 異 はnull変
死 滅 す る。
異 で はな く,leaky
な 変 異 で あ り野 生 型 マ ウス の数 % レ ベ ル でFas抗
mRNAを
一方
原
発 現 して い る こ とを示 唆 して い る 。
原mRNAが
野 生 型 マ ウス と
同程 度発 現 され て い た。 しか し, この マ ウ ス のFas抗
原 は ,細 胞 質 領 域 にT→Aの
る べ き ア ミノ酸 がAsnに
そ の変 異Fas抗
変 異 が 起 こ り本 来Ileで
あ
原 は細 胞 ヘ ア ポ トー シス の 情 報 を伝 達
原遺 伝
子 の転 写 能 を 失 っ て い る こ と,lprcG変 異 はFas抗
原 を発 現 して い る とい う 結
果 を 得 て い る45)
。 今後 , これ ら胸 腺 細 胞 で 発 現 して い る
Fas抗
原 が ア ポ トー シ ス の シ グナ ル を 伝 達 す る能 力 が あ
る か ど うか調 べ る とと もに , どの よ うな 刺 激 に よ り活 性
変 換 され て い た39)
。 そ して,
す る能 力 を失 っ て いた 。 以 上 ,lpr変 異 はFas抗
selectionを 受 け ,や は り
筆 老 らは最 近 , マ ウ ス胸 腺 細胞 (thymocytes) のほ と
ん どす べ て の細 胞 がFas抗
,lprCG変 異 マ ウス の胸 腺 や 肝 臓 に は 野 生 型 マ ウ
ス と同 じ大 きさ のFas抗
発現
原に
化 され るか検 討 す る必 要 が あ ろ う。
一方
, 末梢 に お い て も成 熟T細 胞 は 死 滅 す る。 す な わ
ち 胸 腺 で 発現 され ず 末 梢 で の み発 現 してい る 自己 抗 原 と
反 応 す るT細 胞 はtolerance(
寛容 ) と よぼ れ る過 程 で
不 活 化 され , また , 活 性 化 さ れ役 割 を 終 え たT細 胞 は す
点 変 異 が導 入 され て い る と い う事 実 か ら,lprはFas
み や か に体 内か ら除 去 され る。 最 近 , ヒ ト末 梢T細 胞 を
抗 原 遺 伝 子 の変 異 と結 論 され た 。 そ してlprマ
抗CD3抗
ウ ス で見
体 で活 性 化 しIL−2存
在下 で 培養 す る と
られ る リンパ 節 の 腫 脹 , 自己 免 疫 疾 患 な ど の 症 状 か ら,
Fas抗
Fas抗
よ り死 滅 す る こ とが 示 され た46)
。 この結 果 はFas抗
原 はTリ
ンパ 球 の増 殖 ,分 化過 程 に 関 与 して い る
原 が 誘 導 され る こ と, そ の細 胞 は抗Fas抗
体に
原は
末 梢 で のT細 胞 の寛 容 化 , あ る い は 除 去 の過 程 に関 与 し
と考 え られ る。
そ れ では ,Fas抗
原 はTリ
ンパ球 の増 殖 ,分 化 過 程 の
ど の過 程 に関 与 してい るの で あ ろ うか 。T細 胞 の 増 殖 ,
て い る こ とを 示 唆 して い る。
と ころ で ,Fas抗 原 は 胸 腺 ばか りで な く肝 臓 や 心 臓 で
分 化 の様 々な 過 程 で細 胞 は 死 滅 す る44)。す な わ ち, 骨 髄
も発 現 さ れ て い る38)
。 これ ら の組 織 でFas抗
原は どのよ
にお い て生 成 さ れ たT細
うな役 割 を担 っ てい るの であ ろ うか 。lprマ
ウ ス では こ
CD3一
胞 前 駆 体 はCD4-,CD8-,
細胞 と し て 胸 腺 に 到 達 す る。 そ し て ,CD4+,
CD8+ ,CD3+の
4+,CD8-,CD3+
過 程 を経 て ,成 熟T細 胞 で あ るCD
あ る い はCD4-,CD8+
,CD3+
れ ら組織 の異 常 は見 られ ず ,Fas抗
原 は これ ら組 織 の発
生 , 分 化 過 程 に重 要 な 役 割 を 担 って い る とは 考え
細
れな
い。 一 方 ,最 近 , 筆 者 らは 細 胞 障 害 作 用 を もつ 抗 マ ウス
2215
量
180
蛋 白 質
核 酸
酵 素
図7.Fas抗
原 の構 造 を模 式 化 した 。157個
ヒ トFas抗
Vol.38No.12(1993)
原の構造
の ア ミノ酸 か らな る細 胞 外 領域 に は2個
シス テ ィ ンに 富む サ ブ領 域 (CR−Ⅰ
,Ⅱ,Ⅲ) が 存 在す る。 また ,145ア
の
ミノ酸 か ら な る細 胞
質 領 域 はTNFタ
イ プ受 容 体 と相 似 し, 細 胞 ヘ ア ポ トー シス の シグ ナ ル を 伝 達 す る 領 域
(CK;cell killing domain) お よ び , そ の シ グ ナ ル伝 達 系 に抑 制 的 に 作 用 す る領 域 (R;
regulatory domainが
存 在 す る。
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Fas単
一 抗 体 の樹 立 に成 功 した 。 この抗 体 を マ ウス に投
抗 原 の細 胞 質 領域 に はTNFタ
イ プ1受 容 体 と相 同 性 を
与 した と ころ , マ ウス は劇 症 肝 炎 の症 状 を示 し速 や か に
も ち, ア ポ トー シス の情 報 伝 達 に 必 要 な 部 位 と,C末 端
死 亡 した45)
。 この結 果 は少 な く とも肝 臓 で発 現 さ れ て い
部 位 でそ の 情報 伝 達 に抑 制 的 に 作 用 す る部 位 が 存 在 す る
るFas抗
と考え られ る (図7) 。
原 は 活 性 を 保 持 して い る こ と, ヒ トの劇 症 肝
炎 に お い て もFas抗
原 が 何 らか の役 割 を 果 た して い る
可 能 性 を示 唆 して お り, 興 味 深 い 。
そ れ で は,Fas抗
原 か ら ど の よ うな シ グナ ル が伝 達 さ
れ るの で あ ろ うか 。Fas抗
程 で染 色 体DNAの
4,Fas抗
原 はTNF/NGF受
フ ァ ミ リー に属 してい る。TNFは
容体
一 次 的 な シ グ ナル か 二 次 的 な シ グ ナ ルか な どを 含 め そ の
ポ
情 報 伝 達 機 構 は ま った く不 明 で あ る。 と ころ で ,癌 遺 伝
分 子 量18,000の
リペ プチ ドの 三 量 体 で あ り,TNF受
断 片化 が 誘 導 され る こ とか ら ヌ ク
レア ー ゼが 活 性 化 され る と考え られ るが , この活 性 化 が
原 を 介 した アポ トー シ ス の活 性 化
前 項 で述べ た よ うにFas抗
原 を 介 した ア ポ トー シ ス の過
容 体 と三 重 複 合 体
子 産 物BCL2は
種 々 の系 で ア ポ トー シ ス を抑 制 す る こ
を 形成 す る こ とか ら, この受 容 体 は三 量 体 を 形 成 す る こ
とが 知 られ て い る。 た とえ ば ,IL-3な
とに よ り活 性化 され る と 考 え られ て い る47)。一 方 ,Fas
存 細 胞 か ら増殖 因子 を除 いた と きに 誘 導 され る ア ポ トー
抗 原 を 活 性 化す る抗Fas抗
シ スやc-myc遺
れ ぞ れIgM,IgG3ク
体 , 抗APO−1抗
体 は, そ
ラ ス の抗 体 で あ り とも に オ リゴマ
ー を形 成 す る抗 体 で あ る。Dheinら
はAPO−1抗
体から
伝 子 の強 制 的 な発 現 に よ り誘 起 され る
ア ポ トー シス はBCL2に
は , マ ウ スIL−3依
派 生 した 異 な る サブ ク ラス の抗 体 の活 性 を検 討 し,IgF
Fas抗 原 ,BCL−2を
(ab’
)2やIgG1,IgG2ク
Fas抗
ラス の抗 体 はFas抗
原 に結 合
よ り抑 制 さ れ る50)。筆 者 ら
存 骨 髄 性 白血 病 細 胞FDC−P1に
原 のみ を 発 現 す る細 胞 は 抗Fas抗
か に 死 滅す る の に対 し,BCL2とFas抗
しか し, これ ら の抗 体 に さ らに 二 次 抗 体 を 加 え て 架橋 す
現 して い る細 胞 は抗Fas抗
る とそ の活 性 は 顕 著 に増 強 され た 。以 上 の結 果 はFas抗
した51)
。以 上 の結 果 はFas抗
原 の 活 性 化 に は 二 量体 は 不十 分 で あ り,三 量 体 以 上 の オ
BCL2に
リゴマ ーを 形成 す る必要 が あ る こ とを 示 唆 して い る48)。
原 とBCL2に
原 の細 胞 質 領 域C末 端 か ら
,
構成的 に 発現 した。そ の 結 果,
す る が , そ の細 胞 障 害 作 用 は 非 常 に弱 い こ とを示 した 。
つ い で, 筆 者 らはFas抗
ど の 増殖因子依
体に よ り速 や
原 を と もに 発
体 の致 死 作 用 に抵 抗性 を 示
原 を 介 した ア ポ トー シス も
よ り抑 制 され る こ と, 細 胞 の生 と死 が ,Fas抗
よ り巧 妙 に制 御 され て い る こ とを示 唆 し
て い る。
順 次 欠 失 した 変 異 体 を構 築 しそ の活 性 を調 べ た49)
。その
結 果 ,C末 端15個
Fas抗
の ア ミ ノ酸 の欠 失 変 異 体 は , 野 生 型
原 よ り活 性 が 強 く1/10以 下 のFas抗
体 に よ り細
お わ りに
以 上 ,G−CSF/G−CSF受
容 体 シス テ ム を 介
胞 死 が誘 導 され ,か つ ,L細 胞 で発 現 させ た 場 合 ア クチ
した 細 胞 の増 殖 と分化 ,Fas抗
ノマ イ シ ンD非 存 在 下 で さえFas抗
に関 して ,筆 者 らの研 究 結 果 を 中 心 に 概 説 した 。 図8に
体 に よる 細胞死 が
観 察 され た 。 一 方 ,C末 端 よ り23個
以 上 ア ミ ノ酸 の 欠
G-CSF受
原 を 介 した 細 胞 死 の機 構
容 体 を 介 した 細 胞 の 増 殖 と分 化 , お よびFas
失 した変 異 体 は そ の シ グ ナル 伝 達 能 を ’
まった く失 って い
抗 原 を 介 した 細胞 死 を 模 式 化 した 。G−CSF受
た 。 この変 異 体 で はFas抗
可 溶 性 サ イ トカ イ ンG−CSF,Fas抗
原 とTNFタ
イ プ1受 容 体
間 に存 在 す る 相 似 領 域 に欠 失 が 及 ん で い る。 結 局 ,Fas
2216
容体 には
原 に は膜 結 合 型 サ
イ トカイ ンが結 合 す る こ とに よ り, そ れ ぞ れ の受 容 体 の
サ イ トカ イ ン受 容 体 を 介 した細 胞 の増 殖 , 分 化 , そ して 死
181
に 活 性 化 され る (gain of function)
と細胞 は 癌化 す
る。 一 方 ,lpr変 異 の よ うに , ア ポ トー シ スを媒 介す る
受 容 体 が そ の機 能 を 失 う (lossof function) と細 胞 の異
常 増 殖 を も た らす 。 それ で は ,Fas抗
原 が 異常 に活 性 化
され た場 合 は どの よ うな病 態 が考 え られ るで あ ろ うか 。
種 々 の炎 症 発 応 に お い て組 織 が 死 滅 す る こ とが知 られ て
い る。 これ ら の過 程 にFas抗
原 な どの アポ トー シ ス を
媒 介 す る受 容 体 が 関 与 して い る可 能 性 が あ る だ ろ うか 。
興 味 深 い課 題 が数 多 く残 され てい る。
図8.
G−CSF受
受 容 体 を介 した 細 胞 の 増 殖, 分 化 お よび 死
容 体 を 介 した 細 胞 の増 殖 , 分 化 ,Fas抗 原 を介
した 細 胞 死 を 模 式 化 した 。1個
のG-CSFがG−CSF受
容
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体 のCRH領
域 に 結 合 し, 二量 体 化を 誘 導 す る こ とに よ り,
増 殖 , 分 化 の シ グナ ル 伝 達 系 が 活 性 化 され る と考 え られ る。
一 方 , 膜 結 合 型Fasリ
ガ ン ドが ,Fas抗 原 に結 合 し, 三 量
体 以 上 の オ リゴマ ー形 成 を 誘 導 す る こ とに よ りア ポ トー シ ス
の 情 報 伝 達 系 を 活 性 化 す る。
二 量 体 化 ,三 量 体 化 を 誘 導 し, 増 殖 , 分化 の シ グナ ルや
本稿で紹介 した私たちの研究 は,1987年11月 に筆者が新設
された大阪バ イオサ イエ ンス研 究所に赴任 したのち,約5年 間
で行な った ものであ ります。新 しい研究室のset-upを はじめ,
苦楽を ともに した福永理己郎,伊 藤直人,須 田貴司,村上 宏
博士をは じめ,研究室 のメンバーに心 よ り感謝 します。 また,
これ らの 研究は, 現 日本たば こ 医薬研究所米原伸博士 をは じ
め,国内外の数多 くの研究者 との共同研究の成 果であ ります。
これ ら共同研究者に感謝 します。 最後に,筆 者に大阪パ イオサ
イエ ンス研究所で仕事をす る機会 を与えて くださるとともにた
えず 暖 か く見守 り,かつ適 切な ご助言 を していただいた早石
修所 長に心 よ り感謝致 します。
アポ トー シス の シ グナ ル を 細 胞 へ 伝 達 す る と 考 え られ
文
る。 細 胞 の増 殖 ,分 化 を誘 導 す るサ イ トカ イ ン と しては
G−CSF以
献
外 に数 十 に の ぼ る サ イ トカ イ ンが 知 られ て お
りそ の 受 容体 が 同定 され て い る。一 方 , ア ポ トー シス を
媒 介す る受 容 体 と して はFas抗
原 とTNFタ
1)
2)
イ プ1受 容
体 が知 られ て い る のみ で あ る。 今 後 , ア ポ トー シス の解
析 が進 む につ れ こ の メ ンバ ー も増 加 す る と考 え られ る。
そ して , これ ら増 殖 , 分 化 因 子 , お よび 死 の因 子 の 作用
3)
4)
に よ り生 体 の恒 常 性 は 巧 妙 に制 御 され てい る と考え られ
る。
そ れ で は, これ ら受 容 体 に よっ て ど の よ うな 情報 が細
胞 へ 伝 達 され る の であ ろ うか 。EGFやPDGFな
どチ ロ
5)
6)
7)
シ ンキ ナ ーゼ を も つ 増 殖 因 子 受 容 体 に 関 し て は,CRaf,MAPキ
ナ ー ゼ シ ス テ ムを 介 した 核 内 転写 因子c−
Fosやc-Junの
活 性化 機 構 が 判 明 しつ つ あ る。 イ ンタ
ー ロイ キ ンやG-CSF受
8)
容 体 はそ れ 自身 に は チ ロシ ンキ
ナ ー ゼ 領域 を保 持 して い な い が , あ る種 の チ ロ シ ンキ ナ
ー ゼ を 活性 化 す る能 力 が あ る こ と か らEGFやPDGF
9)
受 容 体 と同様 の シ グナ ル伝 達経 路 を用 い て い る可 能 性 が
あ ろ う。 しか し,G-CSF受
伝 達 経 路 やFas抗
容 体 に よ る分 化 の シ グナ ル
原 に よる ア ポ トー シス の シ グ ナ ル経
10)
路 に関 しては ま った く不 明 で あ る。 これ ら の シ グナ ル は
単 に増 殖 の シ グ ナ ルを 変 化 さ せ て い る のか , あ るい は ま
った く未 知 の シ グ ナ ル経 路 を用 い て い る のか な ど, 今後
の 大 きな 課 題 で あ る。
と ころ で , 増 殖 因 子 の受 容体 や そ の伝 達 経 路 が 構成 的
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