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「創造都市」への挑戦

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「創造都市」への挑戦
調査季報
154
顕11裂噺1 51 否驀朧朧羅願蕭悲願㈲︷匠願意宍
glゝ♂j 白白回⋮⋮⋮忿∼偕lmumI闇闇闇副副斟皆烈烈∼IEy∼、︷lメ鑓’そ胎2 。∼`yI
から都市へ﹂という社会の大きな
21世紀の地球社会は﹁国民国家
る。金沢では経済界や市民が﹁金
都市再生﹂への関心が高まってい
いても、﹁創造都市﹂や﹁文化による
から脱出できないでいる日本にお
化産業を﹁創造産業﹂Creative
り、イギリス政府も広義の芸術文
き出す芸術文化政策への転換であ
の一つは、社会の創造的な力を引
革が行われている。そのポイント
が登場して以来、大規模な行政改
レイバー﹂を標榜するフレア首相
例えば、イギリスでは﹁ニュー
﹁創造性﹂に関心が集中してきた。
ティビティこそアメリカ社会に多
の中で芸術・学術が持つクリェイ
という問題を投げかけている。そ
ティビティをどのように高めるか
おいて、アメリカ社会のクリェイ
ブ・アメリカ﹄と題する報告書に
員会が答申した﹃クリェイティ
芸術・学術に関する大統領諮問委
アメリカでは1997年2月に
ている。
っいても関心が広がり、相次いで
上る中で、都市や地城の創造性に
創造産業や創造的企業が話題に
いる。
求められるものであると主張して
引き出す﹁知識経営﹂こそ、今、
あると批判し、労働者の創造性を
ろ企業の存立を危うくするもので
復させるが、長期的に見るとむし
期待する企業収益を短期的には回
主義社会の基礎を強化するもので
なる。
﹁創造都市論﹂が登場することに
という小冊子に続き、2000年
1995年にまとめた﹃創造都市﹄
あるランドリーとビアンキーニが
﹁9・11口事件﹂以降は、ニュ
ーヨーク型の﹁世界都市﹂に対す
る評価は厳しくなり、﹁多様性を
調査季報154号・2004.03●40
各地の取り組みから︱
パラダイム転換を迎え、﹁都市の
沢創造都市会議﹂を設立して、創
Industryという定義のもとで分類
大阪市立大学教授
世紀﹂が始まろうとしている。そ
造都市をめざした運動を開始し、
佐々木雅幸一
の際、ロンドンやパリなど、ニュ
横浜でも2004年1月に市長か
していた欧米では芸術文化の持つ
ーヨークや東京と並んで﹁世界都
引き出すため1997年に専門委
ス、ドイツ、イタリア、そして北
1990年代半ばまでにイギリ
しラ
直し、その﹁豊さ創造能力﹂を
らCreative City Yokohamaプ
を﹁︵準︶公共財﹂として位置づ
ンが提案されて芸術創造都市への
員会を置き、振興策を打ち出して
の都市でありながら独自の芸術文
取り組みが本格化されることにな
いる。
目されるのではなく、人間的規模
化を育て、革新的な経済基盤を持
り、また、長期不況の中で沈滞す
文化振興基本法が施行され、文化
にはランドリーによる﹃創造都市
欧を中心に欧州創造都市研究グル
つ﹁創造都市﹂の動向に人々の関
政策の新しい展開が期待される
ープが形成され、そのリーダーで
クラフト、美術品市場、建築、テ
が、これに先立ち、経営学者の野
具箱﹄と題する著書が出版されて
−都市イノベーターのための道
であると述べている。
レビーラジオ、出版、広告、そし
中郁次郎が﹃知識創造企業﹄を1
いる。
具体的には、音楽、舞台芸術、
てゲームソフトを含むソフトウェ
995年に出版し、企業サイドか
また、現代都市研究の第叉者
る大阪では、再生に向けた政策立
立大学に世界最初の大学院創造都
アの各産業を﹁創造産業﹂として
ら見た知識創造を課題としてマイ
心が集まっている。特に、﹁市場
市研究科が設立されるなど新たな
一括すると、1995年には14
ケル・ポラニーの﹁暗黙知﹂や
映像、ファッション、デザイン、
①高まる﹁創造性﹂への関心
0万人︵全産業の5%︶以上が雇
であるピーター・ホールの﹃文明
案と人材養成をめざして、大阪市
認め合うグローバリゼーション﹂
二つの世紀の交わり目において
用され、約250億ポンドの付加
﹁創発﹂という概念に拠りながら
原理主義的なグローバリゼーショ
への移行の中でどの都市も、芸術
閉塞状況が続く日本では、困難な
価値︵GDPの4%︶をあげる一
ン﹂に対する反省の契機となった
文化の創造性を高めることで、市
現状を打開するためのキーワード
動きが始まっている。
民の活力を引き出し、都市経済の
における都市−文化、技術革新、
大産業となっており、ロンドンな
都市秩序﹄が1998年に登場し
として﹁創造性﹂が話題になって
いる。彼はリストラを名目にした
議論を展開し国際的に注目されて
いる。一方、すでに、1970年
その成長可能性が注目されるとし
ど大都市では10%を超えており、
っているように思われる。
代末から福祉国家の見直しに直面
ている。1、OOOページを超え
バブル経済崩壊後の長期の不況
企業の闇雲の人員削減は、株主が
再生を多様に競いあう方向に向か
日本でも2001年末に、芸術
け、積極的に推進する政策が必要
あるという理由から、芸術・学術
﹁世界都市﹂から﹁創造都市﹂へ
市﹂と呼ばれる巨大都市のみが注
様性をもたらし、アメリカの民主
はじめに
②﹁創造都市﹂への挑戦
特集2
古代アテネから現代の世界都市ニ
言うべき位置にある。すなわち、
これを凌駕する新たなる古典とも
﹃都市の文化﹄を念頭において、
有名なルイスーマンフォードの
るこの大著は都市論の古典として
りあう都市に新たな創造的コミュ
的相関が見られ、これらが重さな
ク指標﹂と﹁ゲイ指標﹂には地域
の集積を示す指標である﹁ハイテ
っており、これら二つの社会集団
時に、前衛的な芸術家が多数集ま
持った研究者の系譜を辿ると、文
人間活動の﹁創造性﹂に関心を
創造活動への注目
②創造都市とは何かI人間の
い創造性の源泉とは何なのか?
とはどういうことなのか?いった
ラスキンの提唱した職人の創造活
の非人間化を促進すると批判し、
生産H大量消費が労働疎外と生活
リスは、機械制大工業による大量
ラスキンの後継者を自認するモ
こに込められているからであった。
生み出した﹁精神の力と表現﹂がそ
職人達の自由な仕事︵オペラ︶が
活の文化﹂を豊かにすることであ
せるための彼の提言は市民の﹁生
死の状態にある巨大都市を再生さ
在への懐疑的予一言を展開した。瀕
の輪廻説を展開し、巨大都市の存
﹁ポリス﹂が復活するという都市
を置いて、その廃墟の上に再び
に﹁ネグロポリス︵死者の都市︶﹂
系譜にっいてみると、代表的な二
化経済学の創始者と目されるジョ
つのアプローチがある。
三7 イが形成され、そこでは創造
と﹁生活の芸術化﹂をはかる美術
その第1は、﹃都市と諸国民の
的なライフスタイルが発展し、産
工芸運動を指導し、その影響は食
富﹄元訳書名は﹃都市の経済学﹄︶
ューヨークやロンドンにいたる歴
のヴィクトリア期に活躍したラス
と題するユニークな書物を著わし
史上の典型都市を取り上げて﹁創
キンは、当時の主流であった功利
ザインを通じて世界中に広がった。
器、家具、インテリア、住宅等のデ
たアメリカの都市研究者であるジ
った。
造都市論は欧州から始まって、ア
ラスキンとモリスの思想を都市
動に基づく工芸︵クラフト︶的生
視点から分析を加え、芸術と技術
メリカでも新しい都市モデルとし
創造活動と享受能力﹂を重視する
主義的経済学に対抗し、﹁人間の
論に適用したのが都市研究者とし
ェーン・ジェイコブズである。彼
業と文化の両面で新たな活力が生
の新たな融合による﹁来るべき黄
て注目を集めている
芸術経済学を提唱した。彼にょれ
女は、アダム・スミスの古典﹃諸
さて、現代の﹁創造都市﹂論の
金時代の都市﹂の展望が語られる。
これらの欧米における創造都市
ば芸術作品に限らず、およそ財の
ある。彼は古典的名著である﹃都
て著名なルイス・マンフォードで
産の再生により、﹁労働の人間化﹂
このように、ピーター・ホールの
研究と交流しっつ、日本では筆者
価値は本来、機能性と芸術性を兼
ン・ラスキンやウィリアム・モリ
大著は﹁文化と産業の創造性﹂を
が﹃創造都市の経済学﹄︵199
ね備え、消費者の生命を維持する
スに遡ることができる。イギリス
基軸に人類の歴史を代表的な都市
7年︶と﹃創造都市への挑戦﹄
まれるとしている。このように創
の歴史に置き換えて、ダイナミッ
︵2001年︶ の二つの著作を上
造的環境と革新的環境﹂の二つの
クに展開した壮大なスケールの
な発揮に基づいて、文化と産業に
事1鄙︵ラテン語でオづフ︶で
間の自由な創造的活動、つまり仕
︵固有価値︶を産み出すものは人
スを支配する金融機関、官僚機構、
ての地域﹂と定義し、メガロポリ
都市を﹁文化的個体化の単位とし
な機能であろう﹂とし、要約的に
−これこそ都市のもっとも本質的
なく、中部イタリアの人間的規模
ークや東京のような巨大都市では
匝として注目するのはニューヨ
そこでジェイコブズが﹁創造都
を求めた。
主張し、経済学のパラダイム転換
﹁創造都市論﹂である。
うに、アメリカでも文化産業や創
おける創造性に富み、同時に、脱
あり、決して他人から強制された
そしてマスメディアの三位一体構
の都市であるボローニャやフィレ
経済を発展させる前提は創造的な
造的コミュニティに関する研究が
大量生産の革新的で柔軟な都市経
労働孚目︵ラテン語でラホール︶
造を痛烈に批判して﹁生命と環境﹂
ンツェである。彼女は、これらの
国民の富﹄を念頭において、国民
現われた。まず、経済地理学者の
済システムを備え、グローバルな
を何よりも重視する﹁生命経済学﹂
市の文化﹄において﹁文化的貯蔵、
アランースコットが﹃都市の文化
環境問題や、あるいはローカルな
れを評価することのできる消費者
ではない。本来の固有価値は、こ
を提唱し、﹁人間の消費活動と創
伝播と交流、創造的付加の機能−
経済﹄ ︵2000年︶を刊行し、
地域社会の課題に対して、創造的
の享受能力に出会ったときにはじ
地域に集積する特定分野に限定し
とともに人間性を高める力を持っ
ロサンジェルスにおける映画産業
問題解決を行えるような﹃創造の
めて有効価値となると主張した。
た中小企業群︵イタリアでは職人
ている。このような本来の価値
の集積などを取り上げて、文化製
場﹄に富んだ都市である﹂と定義
造活動を充実させる都市の再建﹂
梓してきた。この中で筆者は﹁創
品産業の構造と都市経済における
してきた。
を主張した。
造都市とは市民の創造活動の自由
その重要性を明らかにした。次い
の建築群の美しさに心を奪われ、
彼はイタリアの都市ヴェネチア
欧州の新動向に呼応するかのよ
で、リチャード・フロリダによる
サンチェルは筆者とともに、﹁ア
また、ソウル国立大学のチェー
ズムの視点から地域経済分析に従
に金沢︵2000年︶と韓国の清
ジアにおける創造都市﹂をテーマ
生その保存に尽力した。そこで世
名著﹃ヴェニスの石﹄を著し、終
リス﹂↓﹁テゴフノポリス︵専制
↓﹁メトロポリス﹂↓﹁メガロポ
の発展を﹁原ポリス﹂↓﹁ポリス﹂
﹃都市の文化﹄の中で彼は都市
り、大量生産システムの時代に一 ●
す高度な労働の質を保持してお
得意とし、柔軟に技術を使いこな
企業と呼ぶ︶がイノベーションを
都市経済を実現することであると
が登場する。ポスト・フォーディ
﹃創造階級の興隆﹄ ︵2002年︶
事してきた彼はオースチンやサン
中から特にゴシック様式を至高の
界的な文化財である多数の建築の
般的であった市場、技術、工業社 41
議を開催した。
都市︶﹂として、その最後の段階
州︵2001年︶において国際会
ものとしているが、その理由は、
フランシスコといった最近注目さ
それでは、都市が創造的である
れる成長都市にはIT産業やハイ
テク産業の技術者が集積すると同
が特徴的である。
京都
④﹁創造都市﹂をめざす金沢と
して最重要に位置づけていること
③なぜ、創造都市をめざすのか
彼らは都市プランナーとしての
会のヒエラルキーの画期的な再編
成をもたらすものであるという見
︱危機からの脱出
自らの経験から﹁芸術文化のもつ
注目される市民参加型文化施設が
誕生することになった。
ルチメディアやフィルムや音楽、
出し、都市や地域の再生を進める
産を活用して﹁創造の場﹂を創り
においても文化資源や近代産業遺
作品展示や休日には親子陶芸教室
アート工房では地元の芸術家の
がりを見せている。
全国公演を展開するまでに盛り上
に至るまで市民が手作りの演劇の
ドラマ工房では設立記念演劇祭
解に立っている。
これに対して、第2のアプロー
劇場などの文化産業が製造業に代
ケースが増えている。
などに多数の市民が訪れ、ミュー
で地元劇団など25団体が68公演を
そして、ジェイコブズはこれら
のグループのリーダーであるラン
わってダイナミックな成長性や雇
金沢は、従来北陸の小京都、あ
ジック工房はロックバンドや学生
行い、5年後には劇団数は36まで
欧州では、ボローニャやバーミ
ドリーによる﹃創造都市−都市
用面での効果を示す点を挙げ、第
るいは日本海側の歴史的観光都市
ンガム、フライブルクなど創造都
の集積がしめす﹁柔軟性、効率の
イノペーターのための道具箱﹄は
二に、芸術文化が都市住民に対し
とよばれることが多かったが、近
の使用が多く、エコライフエ房は
創造性﹂に着目した理由として、
よさ、適応性﹂のすばらしさに驚
都市問題に対する創造的解決のた
て問題解決に向けた創造的アイデ
リサイクルフェアなどの催しなど
チとしては先の述べた欧州創造都
嘆し、その特徴を輸入代替による
めの﹁創造的環境﹂creative
アを刺激するなど多面的にインパ
年はボローニャと並ぶ﹁内発的創
の都市の主役である職人企業とい
自前の発展とイノベーションとイ
milieuをいかにして作り上げ、い
造都市﹂としての評価が高まって
増加し、脚本段階から俳優・制作
ンプロビゼーションに基づく経済
かにそれを運営していくのか、そ
クトを与えることを挙げて、﹁都
で賑わい、5年間に合計100万
第一に、脱工業化都市においてマ
的自己修正能力あるいは、修正自
市の創造性にとって大切なのは、
人の市民が訪れ、芸術・文化・環
市研究グループが挙げられる。こ
在型経済と把握している。
続的にしていくのか、実践的に
してそのプロセスをいかにして持
いる。
市への歩みを始めているが、日本
輸入代替とは、先進技術を他地
金沢の高度経済成長を担った繊
うマイクロ企業のネットワーク型
域から学び、これを吸収して自前
る分野における創造的問題解決と
経済、文化、組織、金融のあらゆ
境の催事を﹁生産と消費﹂の両面
を提供する興味深い﹁創造都市政
維産業が衰退すると、金沢市は紡
﹁創造都市をつくるための道具箱﹂
その連鎖反応が次々と起きて既存
の技術体系とし、他の産業との連
策論﹂でもある。
関性を豊かにしながら地域内市場
を優先的に発展させる方式であ
のシステムを変化させる流動性で
から楽しんだのである。ともすれ
欧州においては日本よりいち早
ば、伝統文化や伝統芸能に傾斜し
り、インプロビゼーションとはジ
96年9月に﹁金沢市民芸術村﹂
績工場跡と倉庫群を活用して19
がちな金沢の芸術文化に転機が訪
ある。﹂とも述べている。
れた。
く製造業が衰退した結果、青年層
をオープンさせた。
ャズの即興演奏のように、環境の
金沢市長は、昼間働く市民にと
市民の能動的な参加によって、
さらに、第三に、文化遺産と文
化的伝統が人々に都市の歴史や記
﹁近代産業遺産﹂が﹁文化創造の
の失業者が増えて、従来の福祉国
家システムが財政危機に直面し
って深夜でも使える施設にしたい
変化や技術革新の波に柔軟に対応
できる想像力のことである。
た。産業空洞化と財政破綻の中で
という声を聞き入れて、﹁1日24
場﹂に転化しっつあり、新しい文
ションの中にあっても都市のアイ
化的インフラストラクチュアが芸
憶を呼び覚まし、グローバリゼー
時間1年365日﹂自由に使える
国家の財政的支援から自立して、
施設とすることが決定された。こ
ネットワーク型に結びっき、労
働者や職人の高度の熟練や洗練さ
デンティティを確固たるものと
う。このように都市の文化的集積
し、未来への洞察力を高める素地
の質を高めて、創造性あふれる人
どのように新しい都市の発展の方
房、アート工房に姿を変え、練習
材を養成し集積させて、都市経済
向を見いだすかという問題意識で
のみではなく公演も可能な施設と
の発展をめざす方式を﹁文化的集
れた感性に基づいて国際競争力の
ならず、適切な﹁過去との対話﹂
して修復された。運営面では、各
ある個性的な商品群を生み出す
によって成し遂げられるのであ
工房毎に一般市民から選ばれた2
術の創造インフラストラクチュア
を生かして社会の潜在力を引き出
り、﹁伝統と創造﹂は相互に影響
に転化しっっあると評価できよ
そうとする都市の試みに注目し、
し合うプロセスである。それゆえ、
うして、4棟の倉庫はドラマ工房、
を、大量生産システムの行き詰ま
ジェイコブズの影響を受けて﹁創
積を生かした都市の文化的生産﹂
ミュージック工房、エコライフ工
り後に来る新しい生産システムで
造性﹂を空想や想像よりも実践的
人ずつ合計8人のディレクター達
と定義したい。金沢における﹁文
を耕すとも述べている。創造とは
あると彼女は認識したのである。
第四に、地球環境との調和をはか
で、施設利用の活性化、独自事業
化的生産﹂は、ある意味で江戸時
単に新しい発明の連続であるのみ
このように、ジェイコブズの
で、知識︵インテリジェンス︶と
る﹁維持可能な都市﹂を創造する
の企画立案、そして利用者間の調
代に始まった職人的生産の復活と
政策提言を続けている。その際、
﹁創造都市﹂は﹁脱大量生産時代
革新︵イノベーション︶の中間に
ために文化が果たす役割も期待さ
整などを自主的に行う全国的にも
芸術文化が持つ﹁創造的なパワー﹂
の柔軟で創造性あふれる修正自在
あるものとして、つまり、﹁芸術
れるのである。
業群が実践する﹁柔軟な専門特化﹂
型の都市経済システムをもった都
文化と産業経済を繋ぐ媒介項﹂と
﹁第3のイタリア﹂の共生的小企
市﹂といえよう。
調査季報154号・2004.03●42
開催された。この会議は21世紀の
かけて第2回金沢創造都市会議が
2003年11月27日から29日に
づけられると思われる。
ン︶という歴史的展開の中に位置
︵新しいクラフト・プロダクショ
プロダクション︶↓文化的生産
ョン︶↓フォーディズム ︵マスー
人的生産︵クラフトープロダクシ
再構築といえるものであろう。職
友会であり、そこに集う経済人の
の会議を主催したのは金沢経済同
ワークショップ・で報告された。こ
ンカフェなどの社会実験の模様が
トアップや中心市街地でのオープ
かれ、合わせて、金沢らしいライ
探る基調対談と3つの分科会が開
フトの両面から都市再生の方策を
の賑わいの復活など、ハードとソ
ン︶や文化施設を中心とした都心
て、できる限りそれを活かすよう
こうした文化財的価値に注目し
持っている。
の場﹂としても利用された歴史を
呉服問屋が集積する界隈の﹁商い
いた78畳の和室の大広間があり、
して呉服の展示場として使われて
会議室、学校には珍しい茶室、そ
よる壁紙で壁面全体が装飾された
ウィリアムーモリスのデザインに
打ちなどのクリエーター達が西陣
ザイナー、パン職人、そして蕎麦
陶芸家、ガラス作家、音楽家、デ
家に求めて以来、その後続々と、
剛氏が自らの活動拠点を西陣の町
1995年の夏、写真家の小針
っている。
ちに取り戻そうとする試みが始ま
移り住んで、失われた生活感をま
家となった町家や倉庫に芸術家が
する﹂と家主達に働きかけ町家を
くりをしてもらえば西陣は活性化
クリエーターを住まわせ、ものづ
ワーク﹂を発足させ、﹁空き家に
小針氏らは﹁町家倶楽部ネット
うになっている。
ちが移り住み、創造活動を営むよ
価値を見いだしたアーティストた
を刺激する﹁創造空間﹂としての
してではなく、そこにものづくり
をもっている。単なる居住空間と
たちによるネットワークが広がっ
利用した住居の斡旋を行い、現在
ており、機業の停滞によって沈滞
の持つ、ものづくりの空気や本物
が多く、その家並みはしっとりと
工場兼住居として使用されたもの
い動きが生まれている。このよう
していた西陣の再生をめざす新し
に1999年に9億8、500万
恵まれない若手の芸術家たちの
した独特の歴史的景観を形成し、
に、若い芸術家達が西陣に﹁文化
みならず、実行委員である筆者や
﹁創造のプロセス﹂を支援する取
内部は天井の高い吹き抜け構造を
創造の場﹂を広げ、草の根からのま
都市のあり方をグローバルな視野
学教授︶の他、山本理顕、永井多
り組みの姿勢である。
もち、職人が住んで長年、手仕事
までに約100軒になる。こうし
恵子、三宅理一、蓑原敬ら都市研
一方、草の根の市民や芸術家た
の友禅や西陣織を作りっづけてき
を産み出す雰囲気に惹かれて集ま
01年から隔年開催で開始された
究者や文化人が駆けっけ、地元か
ちの自発的な動きもある。
ちづくりを進めているのである。
円をかけて改修工事が行われ、ギ
斬新なスタイルの都市会議である。
らは経済人や市民、そして行政関
歴史都市・京都が誇る伝統産
た仕事場にだけ内在する固有価値
川勝平太︵国際日本文化研究セン
その第1回は﹁記憶に学ぶ﹂を
業・工芸は、経済と文化の接点に
から探求し、新しい都市政策の形
テーマに都市としての金沢の歴
創造都市をめざした社会実験を続
係者らが参加して討論に加わり、
立ち、市民の生活に浸透し、独特
て、あらたな仕事場を得た芸術家
史・伝統を振り返り、﹁都市の記
けるユニークな試みである。
の街並みを内側から守る役割を演
ってきた。
憶と人間の創造力﹂にっいて考察
﹁金沢市民芸術村﹂の成功に刺
じてきた。中でも、西陣織、京友
西陣の町家はかって織機の貸し
を行い、その際立った都市の個性
激を受けて、歴史都市・京都も
禅で有名な和装産業は最近まで製
おり、日本における創造都市をめ
策過程への参画を大胆に提案して
ャラリーと制作室が整備された。
を新世紀に引継ぎ、さらに洗練さ
﹁文化創造の場﹂を創り出した。
造業の中核に位置してきたが、近
以上のような、金沢や京都での
注目されるのは練習や製作の場に
せる目的で﹁金沢学会﹂の設立が
﹁京都芸術センター﹂は、18
年は出荷額もピーク時の30%程度
注目されるのが横浜の新しい都市
創造都市をめざす試みにもまして
ター教授︶、水野一郎︵金沢工業
提唱された。2002年にはそれ
69年に開校した長い歴史をもつ
に落ち込み、室町の主要な呉服問
大学教授︶、大内浩︵芝浦工業大
を受けて第1回金沢学会が開か
旧明倫小学校の校舎を利用して2
屋が相次いで倒産している。この
提供するという意気込みで、20
れ、﹁美しい金沢﹂を理念とする
000年4月に開設された。京都
成とそのための実験の場を金沢が
都市再生プランが提案され、その
では1869年から翌年にかけ
ことが確認されたものである。
小学校を設立し、運営してきた歴
金や町衆の寄付金で町単位に番組
て、全国に先駆けて京都府の交付
ンや駐車場に姿を変えて、原風景
00軒が空き家と化し、マンショ
て使われてきた京風の町家、約8
ため、従来、染工場や、機屋とし
づくりにかかわる行政のセクショ
的で、文化政策、産業政策、まち
化の創造性を都市再生に生かす目
ヨコハマ﹂である。特に、芸術文
構想﹁クリエイティブ・シティ・
佐々木雅幸﹃創造都市への挑戦﹄
勁草書房、1997年
佐々木雅幸﹃創造都市の経済学﹄
参考文献
している。
ざす試みの最先端に躍り出ようと
シティ・ヨコハマに期待する
おわりに︱クリエイティブ・
都市会議と交互に10年間継続する
社会実験を検証する場として創造
今回のテーマは﹁都心居住と創
史がある。
ンを横断的に再編する新組織を中
造都市﹂で、従来の開発型都市政
る危機にある。
ともいうべき街並み景観が一変す
策が郊外化と職住分離を進め都心
物は市内中心部の室町通蛸薬師に
1931年に改築されたこの建
岩波書店、2001年
居住を衰退させたことの批判の上
核として、NPOなどの市民の政
あり、玄関を飾るステンドグラス、
こうした中で、西陣一帯の空き
に立ち、空洞化した都心のオフィ
スビルの用途転換︵コンバージョ
43●
Fly UP