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資料4 (2)(PDF形式:1729KB)
(4) 民活・市場経済化 • 『理想の地域像』をあらかじめ提示しにくい時代 = 計画・政策を作りにくい。 例) (都市)計画学と経済学との相克 • 不確実な未来との関係では、計画サイドはやや 不利な状況下にある。 「それなら人々の多様な行動に結果をゆだねよ う。」という発想に。 1 (都市)計画学と経済学 『理想の都市像』を巡る発想の違い • 都市計画学 • 経済学 『理想の都市像』(地域 『理想の都市像』という 構造や地域のハード・ソ もの自体が(具体的な形 では)存在しない。 「理想 フトのあるべき姿)があら かじめ存在する。 は個人の好みで。」 理想に向かって政策を 立てることを是とする。あ るべき都市像が論理の 前提として存在し、それ にしたがって議論する傾 向がある。 達成すべき理想を、事 前に設定すべきものでは ない。一定の条件下で経 済人の合理的な行動の 結果として生み出される。 (瀬田史彦(2007)「経済学VS都市計画」『季刊経済研究』29(1)) 2 (都市)計画学と経済学 計画とは、地域とは何か? • 都市計画学 • 「計画なくして開発なし」 あるべき姿(『理想の都市 像』、あるいはそれを実 際に描いた計画)を実現 するために各種の活動を 誘導していくコントロール (広い意味での規制)を 司るものに。 「都市(地域)政策は目 的」:『理想の都市像』の 達成のため。 経済学 「(地域)計画は予想」:経 済学者が、地理的・地域的 な観点から「計画で地域の 理想を定めるべき」と考え ることはあまりない。 「都市(地域)政策は手 段」:都市や地域はあるべ き姿(理想像)を持つもの ではなく、あくまで人々の 効用増大という理想を達成 するための手段であるとい う見方が一般的。 (瀬田史彦(2007)同) 3 (都市)計画学と経済学 計画学の『理想の都市像』の説得力 • 果たして、計画学(あるいは地域政策学や実際の都 市・地域政策)が主張する『理想の都市像』は、本当 に理想なのか? 『理想』としての自信の揺らぎ。 例) 中心市街地活性化・コンパクトシティ • 「人の価値観はさまざまだから、それなら理想的な姿 は市場(あるいは民間)に任せてしまおう」という論理 に対抗できなくなっている。 (計画・政策の役割の低下) 例) 都市再生政策(都市再生緊急整備地域) (瀬田史彦(2007)同) 4 Ⅱ 地域(経済)政策の再興・復活 その鍵となる要素 ※説得力と実効性を回復する。 (1) 計画・政策の方向性を総合的に示す 新たな地域政策パラダイムの構築 (2) 計画・政策の実現のための 新たな地域システムの構築 – 地域(ローカル)レベル – 広域(リージョナル)レベル 5 (1)計画・政策の方向性を総合的に示す 新たな地域政策パラダイムの構築 • 求められている新しい都市戦略・地域戦略 – 既存の地域開発手法・成長モデルの限界 – 多様な市民へのアピール、わかりやすさ – しかし、政策である以上それなりの根拠を問われる • 世界の各都市に共通の課題:「何をテーマに?」 – グローバル化、地域間分業、基幹産業の変化 – 人口減少・少子高齢化/環境問題 ※これまでの都市政策が通用しなくなってきている。 • 学術的な概念:「世界都市」 「創造都市」 6 世界都市論 • 「世界都市仮説」(J・フリードマン、S・サッセン、他): – グローバル化に伴い各国・各都市の活動(とりわ け経済活動)が結びつくことによる都市の序列の形 成、とりわけ高度な中枢管理機能を持つ巨大都市 の中心性・集積性と国家的・国際的役割の増大、ま たその反動として他都市への従属性や格差拡大に ついて論じている。 • 当初は、「都市に国際的序列が出来ているので はないか」という現象論(仮説)であった。 • 次第に、「わが都市の序列を上げよう」という都 市政策の政策論として援用される。 瀬田史彦(2007)「日本の創造産業と創造都市戦略」 『世界創造都市フォーラム2007inOSAKA報告書』 7 東京都『東京構想2000∼千客万来の 世界都市を目指して∼』 8 創造都市論 • 「創造都市」 (R・フロリダ、R・ランドリー、他): – 都市の「創造的な」活動が新たな核となり多くの魅 力や付加価値を生む都市。また「創造的な」活動を 促す新たな都市システムを構築しようとする動き。 定義は論者によりかなり異なるが、概ね、以下のよ うな傾向がある。 - 既存の都市政策・地域開発手法との違いを強調 - 文化・芸術活動や関連産業(デザインなど)を注視 - 「創造的な」活動の場としての都市のあり方を強調 • 最初は先進事例の観察(現象)を通じて。 • 新たな都市政策のアイデアとして援用される。 瀬田史彦(2007)「日本の創造産業と創造都市戦略」 『世界創造都市フォーラム2007inOSAKA報告書』 9 横浜市 創造都市事業本部HP 大阪市 『創造都市戦略』 10 例) 日本における位置づけから考える 大阪・関西の都市政策の方向性 「東京と同じ土俵で追 いつき、追い越したい」 「東京の後を追わず、 わが道をいきたい」 東京と異なる政策の推進 東京に比肩する機能と集積 を整備 優位性のある特定産業の (インフラ整備、規制緩和) 選択的集積 日本のサブシステムとして (例えば芸術・文化政策) (二極構造構築、災害対策) 世界都市の発想に近い。 創造都市の発想に近い。 瀬田史彦(2007)「日本の創造産業と創造都市戦略」 『世界創造都市フォーラム2007inOSAKA報告書』 11 学術・思想から出てきた都市論の課題 現象か政策か • 現象としての都市論 – 既存の都市の(変化の)特徴の観察 – 時代潮流の変化が都市に与える影響の描写 • 政策としての都市論 – 能動的な都市づくりの方法の構築 – 新たな都市モデルとしての提案 ※実際の都市政策に求められているのは政策論 「どうやったらいい都市をつくれるのか?」 瀬田史彦(2007)同 12 都市の方向性をどう定めるか? 都市論による政策形成の問題点 • 現象か政策か – 現象だけみていても政策論にはならない。 – 政策論は個々の技術論になってくる(が、そこまでブ レイクダウンできるか?) • 「わかりやすさ」と「精密さ」のトレードオフ – 都市政策は、単なるキャッチコピーなのか。 – キャッチコピーだったにしても、それがそれなりに政 策の内容(の違い)に反映されているのか? • 評価をどのようにしてやるのか? – 政策採用前の議論はたいてい活発。 – 採用後の具体的な事後評価はあまり見当たらない。 13 現象論を政策論に昇華させるのは 誰の役割か?。役割分担は? • • • • • 学者 官僚・役人 政治家(首長、議員) 市民・NPO 民間企業 ※前述の「調査・分析の進化」を、誰がどのように 現実(現場)に活かすのかという視点に。 14 (2) 計画・政策の実現のための 新たな地域システムの構築 • 理想の実現方法として、具体的な地域システ ムの構築が必要である。 – ローカルレベル ある程度、総合化された地域システムの構築 例) 定住自立圏 「地域ソーシャルイノベーション」 – リージョナルレベル(∼ナショナルレベルも) 補完性の原理の考え方から、ローカルレベルで はこなせない業務を自治体が共同して、あるいは 広域自治体が単独で担う。 広域自治体/広域連合/各種の連携 15 ローカルレベル: 例) 地域ソーシャルイノベーションの議論 • 「地域づくり、福祉、教育、環境、文化等の多 彩な地域課題に対して、多元的主体の参画 や事業の融合化・統合化を図りながら事業活 動を行うことで、社会的効果と経済的効果が 発現されるようなしくみの変革」 – 「地域」「社会」「経済」を統合。 – ソーシャルイノベーション、産業クラスターなどの 概念を地域振興・地域政策に援用。 田代・瀬田(2008)「地域資源を活用した地域ソーシャル・イノベーションの 形成に関する研究」『日本計画行政学会第31回全国大会報告要旨集』 16 地域ソーシャルイノベーションの要素 (1)形成要因 ①地域課題の存在: 地域課題の存在、危機意識の共有化 ②地域資源の活用: 地域環境、地域文化、自然歴史的景観、 地域人材など ③関連・支援組織の存在: ネットワーク、パートナーシップ、中 間支援組織 (2)活性化要因 ①学習を行う場の存在: イノベーティブな活動を行うためには、 ビジネスモデルを検討しさらなる改良を加えるための創造的な学 習の場が必要となる。 ②競争的環境: ビジネスモデルを絶えず更新していくためには 適度な競争的環境が求められる。 田代・瀬田(2008)「地域資源を活用した地域ソーシャル・イノベーション の形成に関する研究」『日本計画行政学会第31回全国大会報告要旨集』 ※より詳細な、また改良されたモデルや事例研究については、田代洋久 (2009)大阪市立大学大学院創造都市研究科修士論文を参照されたい。 17 リージョナルレベル:広域連携の論点 ①どのような考え方で圏域を設定するか 地理的な状況/歴史的な結びつき/経済的な連関/行政 サービス供給の適正化/アイデンティティの同質性/その他 ②圏域を誰がどのような形で決めるか ・都道府県以上のブロックの組み合わせは大抵、国が決めた。 ・市町村合併は(組み合わせは)自主性を前提に。 ③合併か連携か ・最適規模は行政サービス供給の種類によって様々 連携 ・責任主体の明確化 合併 (あるいは責任ある新組織) 瀬田史彦(2008)「地域ブロックの可能性を考える」『季刊まちづくり』20号 18 例) 北東北3県の取組み 【連携の成果が高い】 ①各道県のみでは解決できない 広域的課題への取組み ②情報発信力の強化につながる 取組み ③行財政運営の効率化に つながる取組み 【連携の成果が高くない】 ①効果的手段を見出せないもの ②各道県間で競合関係にあるもの (第10回北海道・北東北知事サミット (2006)資料)より編集) 19 地域システム構築の課題(私見を交え) • 地域システムの構築・改良 – 進化した調査・分析手法を活用して現場に落とし込 んでさらに改善する。 – アイデアを、理念や理想論だけではなく、構築のた めの具体的な政策論・施策手法に結びつける。 – 政策パラダイムとの有機的な結びつきを強くして、 総合性を担保する。 • 地域(経済)政策のための圏域の設定 – 行政サービスの最適規模の把握によって、補完性 の原則を実現する。 – 設定された圏域の運営についての政策技術を蓄積 する。(政治的になりすぎないために) 20 (1) 計画・政策の方向性を総合的に示す 新たな地域政策パラダイムの構築 (2) 計画・政策の実現のための 新たな地域システムの構築 • 計画・政策の退化 克服 (1)グローバル化 (2)人口減少 (3)不安定な時代の無謬性 (4)民活・市場経済化 ・・・ 21