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評価のためのデータの利用に関する留意点について(PDF形式:12KB)
資料4 「環境力」評価のためのデータの利用に関する留意点について 本資料では、評価のためのデータの利用に関する留意点を整理した。 「環境力」評価フレームに関する評価指標を整理することで、「環境力」に関する価値体 系を明らかにしているが、価値体系を明らかにしたとしても、評価実施上の大きな障害と して、評価のためのデータの入手の困難さや、データ間の比較可能性を確保するための測 定方法や記述の標準化といった課題が存在する。ここでは、そのようなデータ利用上の制 約を概観し、制約を克服するための課題、課題への段階的な対応の方向性を整理した。 1.比較可能性 比較可能性に関する論点を以下のように整理した。これらの課題への対応策案として以 下に示した内容を、「環境力」フレームに対応したデータ利用上の要件とすることが考えら れる。 ・企業経営のバウンダリー ・異なる企業規模間での比較 ・セクター間比較 ①企業経営のバウンダリー 企業経営のバウンダリー問題とは、市場の変化による不確実性を排除するために複雑な 調達関係を内部化するサプライチェーンマネジメントが潮流としてある中で、企業経営に おける「環境力」を測定する際に、当該企業の影響力が及ぶ範囲をどう設定するかという 問題である。この問題への対処としては、単純に当該企業の影響力を資本関係で代表させ、 出資比率による経営への介入力で決定することが考えられる。加えて、当該企業の影響力 のある範囲の中で、環境負荷の大きさを加味して「環境力」の測定範囲を決定することが 考えられる。 【段階的な対応】 ・企業経営のバウンダリー問題については、当面は資本関係で判断して当該企業の「環境 力」の測定範囲を決定することが考えられる。例えば、便宜的に当該企業の子会社のみ を範囲とする等である。中長期的には、環境負荷の大きさも加味して「環境力」の測定 範囲を決定するための業界別の基準制定を行うことが考えられる。 ②異なる企業規模間での比較 異なる企業規模間での比較において問題となるのが、例えば中小企業と大企業とでは、 環境経営にかけるコスト負担能力が異なるために一つの尺度で比較できないという点であ 1 る。特に「環境力」フレームにおける「企業の環境経営の実践」及び「環境コミュニケー ションの実践」に関する評価指標に対応することは、短期的には経営上のコスト増大要因 であり、この点で一般にその負担能力については大企業に優位性がある。この問題への対 応としては、企業規模の差異による環境力特性が存在することを前提として、企業規模別 に「環境力」に関するコスト負担割合で評価の重み付けを行う、環境力に関する要求水準 を変えて評価を行うこと等が考えられる。 【段階的な対応】 ・異なる企業規模間比較については、当面は、企業規模別に「環境力」に関するコスト負 担割合で重み付けを行うこと、環境力に関する要求水準を企業規模別に変えて評価を行 うことについては、評価主体の裁量による。中長期的には、これらの重みや、要求水準 に関する企業規模別、業界別の基準を制定していくことが考えられる。 ③セクター間比較 セクター間比較において問題となるのが、セクター別に環境負荷特性が異なり、セクタ ー間を一つの尺度で比較できないという点である。これは、セクター間で同額の生産額を 得る場合に、セクター別に活用する技術やビジネスモデルが異なり、活用する技術やビジ ネスモデルによって環境効率(単位生産当たりの環境負荷)が異なるためである。この問 題への対応としては、セクター別の環境負荷特性を代表するデータ(例えばセクター内の 環境効率の平均値)を設定し、セクター間評価を行う際の重み付けの根拠としていくこと が考えられる。 【段階的な対応】 ・セクター間比較については、当面は、セクター別の環境負荷特性を代表するデータ(例 えばセクター内の環境効率の平均値)の設定について各評価主体の裁量とする。また、 中長期的には、各セクターの環境負荷特性に関する代表値の基準化を図ることが考えら れる。 2.データの信憑性確保 データの信憑性に関する課題を以下のように整理した。これらの課題への対応策案とし て示した内容を、 「環境力」フレームに対応したデータが備えるべき要件とすることが考え られる。 ・事実記載に関する信憑性 ・推計値に関する信憑性 2 ①事実記載に関する信憑性 企業が開示するデータについて、事実記載について虚偽がないか否かを判断する必要が ある。この問題への対応としては、企業内部に事実記載に関するチェックを行う独立した 組織が存在すること、第三者認証を得ていること、等をもってデータの信憑性を確保する ことが考えられる。 【段階的な対応】 ・事実記載に関する信憑性の確保については、既に第三者認証をとるような企業も存在す る。よって、当面は、データの信憑性を確保するメカニズムがない場合、企業内部にデ ータ監査を行う独立したメカニズムがある場合、第三者認証がある場合に区分して評点 の重みをつけた評価を行う。中長期的には、例えば大企業には第三者認証を行ったもの しか評価しないなどの基準を制定していくことが考えられる。 ②推計値に関する信憑性 長期的な環境経営戦略やマーケティング戦略等を評価する場合には、将来推計値に関す る信憑性確保が求められる。この問題については、推計のために利用した推計モデルの限 界や推計上の前提条件などについても情報開示を行うこと、推計値の感度分析を行うこと 等によって、推計の限界や不確実な部分に関する情報提供を行うことが考えられる。 【段階的な対応】 ・推計値に関する信憑性の確保については、当面は、推計モデルの限界や推計上の前提条 件に関する情報開示を求める。中長期的には、利用する推計方法に関して基準を制定し ていくことが考えられる。 3