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議事要旨

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議事要旨
第1回 データ流通環境整備検討会
AI、IoT時代におけるデータ活用ワーキンググループ
議事要旨
1.日時
平成28年9月30日(金)
2.場所
中央合同庁舎第4号館
10:30∼12:00
共用第1特別会議室
3.議題
(1)開会
(2)ワーキンググループの運営と今後の進め方について
(3)意見交換
(4)加藤様からプレゼンテーション
(5)閉会
4.配布資料
【資料1】データ流通環境整備検討会
AI、IoT時代におけるデータ活用ワーキンググループの開催について
【資料2】データ流通環境整備検討会
AI、IoT時代におけるデータ活用ワーキンググループの運営について(案)
【資料3】データ流通環境整備検討会の今後の進め方について(スケジュール)(案)
【資料4】AI、IoT時代におけるデータ活用に向けた検討内容について(案)
【資料5】WGでの検討にあたって
【資料6】MyData2016の報告(加藤様ご提出資料)
5.出席者
【構成員】
中央大学大学院
法務研究科
東京大学大学院
経済学研究科
東京大学大学院
情報学環
総合政策学部
一般社団法人
新経済連盟
東京大学
一般財団法人
大橋構成員
越塚構成員
教授
新保構成員
事務局長
関構成員
情報理工学系研究科
人工物工学研究センター
桜坂法律事務所
安念主査
教授
教授
慶應義塾大学
東京大学大学院
教授
弁護士
准教授
橋田構成員
原構成員
林構成員
日本消費者協会
1
教授
理事長
松岡構成員
独立行政法人
国立病院機構
東京医療センター
名誉院長
松本構成員
英知法律事務所
弁護士
森構成員
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任准教授
矢作構
成員
【オブザーバー】
総合科学技術・イノベーション会議
知的財産戦略推進事務局
永山参事官
個人情報保護委員会事務局
金融庁
総務企画局
総務省
情報通信国際戦略局
経済産業省
小川参事官
油布参事官
商務情報政策局
情報通信政策課
小笠原課長
情報経済課
佐野課長
内閣官房
情報通信技術(IT)総合戦略室
二宮次長
内閣官房
情報通信技術(IT)総合戦略室
吾郷次長
内閣官房
情報通信技術(IT)総合戦略室
犬童参事官
内閣官房
情報通信技術(IT)総合戦略室
山路参事官
観光庁
【事務局】
布施田参事官
観光戦略課
船本課長
向井副政府CIO
神成副政府CIO
2
○山路参事官
それでは、定刻になりましたので、ただいまから「データ流通環境整備検
討会AI、IoT時代におけるデータ活用ワーキンググループ」を開催させていただきます。
本ワーキンググループの事務局を務めます、内閣官房IT総合戦略室の山路でございます。
よろしくお願いします。
皆様には、御多忙の中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
本日、構成員のうち、宍戸構成員、柴崎構成員、根本構成員につきましては、御欠席と
の御連絡をいただいております。
本ワーキンググループの親会に当たります、データ流通環境整備検討会の会長である鶴
保IT政策担当大臣から本ワーキンググループの主査として安念先生に御就任を依頼して、
お引き受けいただきました。
安念先生より御挨拶をいただいた上で、以降の議事進行を安念先生にお願いしたいと思
います。安念先生、よろしくお願いします。
○安念主査
皆さん、おはようございます。主査を仰せつかりました安念と申します。
きょうはもうネクタイをしなければいけない日だったのでしょうか。いいのですか。
○向井副政府CIO
○安念主査
役所は10月です。
いや、どうもネクタイをしていらっしゃる方が多いので、失敗したかなと思
いまして。
私もいろんな座長を務めまして、座長だけは務まるのです。座長は素人でもよろしい。
ああ、そうですか、すごいですねと言っていればそれで時間が過ぎてしまいますので、多
分、この中でピュアな素人というのは私だけだと思いますので、どうぞよろしくお願いい
たします。
ただ、つらつら考えますと、日本経済の伸びしろもだんだん、どこにあるのか怪しくな
ってまいりまして、この手の話が期待できる数少ない分野の一つになってきたと思います。
役所とか我々とかが手柄を立てるとか、そういうみみっちい話ではなくて、当会議が一つ
の転機になったというように後の時代から言われるように頑張りたいと思いますので、ど
うぞよろしくお願い申し上げます。
では、プレスの方の撮影はここまでとさせていただきます。
それでは、本日の資料の確認からお願いいたします。
○山路参事官
○安念主査
(資料確認)
ありがとうございました。
それでは、早速、議事に入ります。議事の「(2)ワーキンググループの運営と今後の進
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め方について」です。
事務局より、資料1から資料4に基づいて御説明をお願いいたします。
○山路参事官
まず、資料1ですが、本ワーキンググループの開催についてということで、
9月15日にデータ流通環境整備検討会会長である鶴保IT担当大臣より決定されております。
先ほど申し上げましたように、ワーキンググループの主査として安念先生にお願いすると
いうことになっております。
今回の開催の趣旨ですが、多種多様かつ大量のデータを安全・安心に流通・利活用でき
る環境整備に必要な措置について検討に資するため、本ワーキンググループを開催すると
いうことになっております。
資料2は運営についてでして、こちらは主査決定案ということで、本日御決定いただき
たいと考えておりますが、ワーキンググループの行う調査・検討内容については、親会で
あるデータ流通環境整備検討会に対し報告するものとする。
会議は原則として公開とする。主査が必要と認める場合には、非公開とすることができ
る。会議の議事要旨を作成し、会議終了後速やかに公開する。会議で配付された資料は、
会議終了後速やかに公開する。ただし、主査が公開することにより支障があると認める場
合には、資料の全部または一部を非公開とすることができる。こういうものになっており
ます。
こちらにつきましては、もし差し支えなければ、この主査決定ということで進めさせて
いただきたいと思います。
資料3についてですが、こちらは「データ流通環境整備検討会の今後の進め方について
(スケジュール)(案)」ということで、9月16日の親会に提出させていただいたものでご
ざいます。
親会については、9月16日の第1回に引き続いて、第2回を2月に開催する予定でござ
います。こちらのワーキンググループについては、9月30日、本日の第1回目の開催に引
き続いて8回、御多忙中、大変恐縮でございますが、かなり集中的に議論をしていただき
たいと考えております。
続きまして、資料4について御説明をさせていただきます。「AI、IoT時代におけるデー
タ活用に向けた検討内容について(案)」というものです。
資料をおめくりください。最初に背景として、有線・無線のブロードバンドネットワー
クの整備、スマートフォンやIoT機器(センサー等)の普及によって、またクラウド利用が
進展したり、AIの進化等、こういったような環境が整ってきておりまして、個人の行動履
歴を含めた多種多様かつ膨大なデータを効率的かつ効果的に収集・共有・分析・活用でき
るインフラ・技術環境が実現できているのではないかと認識をしております。
こういう中で、次のページに移りますが、データ利活用に関する最近の制度面の動きと
しては、昨年の個人情報保護法改正によって、匿名加工情報に関する規定が整備され、さ
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まざまな分野で今後、匿名加工されたデータの利活用が進展することが期待されておりま
す。
次の3ページ目について御説明させていただきます。こちらは我々のほうが、データと
いうものがどういうものがあるかということを簡単に整理したものでございます。
個人にかかわるデータということとして2種類、個人情報を含むデータと匿名加工され
たデータ。それとは別に、個人にかかわらないデータ、IoTのセンサーで収集するようなデ
ータ。こういった3つのデータというものに、世の中にあるデータを整理できるのではな
いかと考えておりまして、それぞれのデータを活用することで社会全体、個人に対してメ
リットが出てくると考えておりますが、このデータを流通させていくことが、経済活性化
等をしていく上で急務ではないかと考えております。
そうした中で、この3つのデータに共通する課題として、データ形式の標準化・プラッ
トフォーム整備を進めていくべきではないか。また、個人にかかわるデータの流通を促進
していく上ではユースケースを共有化していくことが必要ではないかと考えております。
次のページですが、こちらは先ほど申し上げたデータのフォーマットの標準化であると
かプラットフォーム整備ということに関しまして、IT室が関係省庁と連携しながらどうい
ったことを取り組んできたかという代表例を挙げさせていただいております。
農業の分野ですが、農地台帳の整備ということを取り組んでおります。農地の所有者の
情報等を全国一元化して、文言等も統一した上で、閲覧できるようなシステムの導入とい
うことを我々は農水省と連携して取り組んでまいりました。また、農業関係の情報を、デ
ータのフォーマットを統一するなどして、作業の中身とかそういったものも名称を統一す
ることによって、篤農家の知識を形式知化して、それを皆さんで活用できるような環境と
いうものに取り組んできております。
次のスライド5は、データ流通環境整備の必要性についてです。
個人にかかわるデータとしては、匿名加工データと個人情報を含むデータの2つがある
と考えておりますが、新たな仕組みをつくることによって、これらの流通を包括的に進め
ることが必要ではないかと考えております。こういった情報が流通することによって、メ
リットが本人にも還元されると考えておりますし、社会全体としても大きなメリットを生
み出せるのではないかと考えております。
例えば、観光の領域においては、社会全体に対しては訪日外国人の増加等観光産業の活
性化ということが期待できるのではないか。また、個人向けとしては個人ニーズに応じた
おもてなしサービスというものが提供されることになるのではないかと考えております。
金融・フィンテックの分野についても、時間や場所の制約なく金融サービスを利用可能
であったり、資産のリアルタイム把握、最適な資産運用ということができるのではないか。
ヘルスケアの領域においては、社会全体としては健康寿命の延伸であるとか、医療費の
削減ということにつながるのではないか。また、健康意識の向上、行動変容による個人個
人の健康増進にもつながるのではないかと考えております。
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交通分野においては、渋滞緩和による排出ガス削減であるとか、環境改善につながる。
また、混雑状況や天候に応じた最適なナビゲーションというものも実現するのではないか
と我々は期待しております。
このようなデータ流通を実現したいと考えておりますが、現状では以下の要因から事業
者間のデータ流通は十分に進んでいない。それで、複数の事業者が保有するデータを統合
的に管理することも困難であると考えております。
その理由としては、プライバシー保護に関する個人の漠然とした不安・不信感等が背景
にありまして、事業者が積極的に流通・利活用するということをちゅうちょしているので
はないか。また、第三者提供に関する本人の同意を取得するというのが手続的にも複雑で、
本人がなかなか理解できないために困難になっているのではないか。また、本人がデータ
利活用を希望する場合であっても、事業者が囲い込み、積極的にデータを開放していない
のではないか。例えばデータ互換性確保ができていないであるとか、APIの開放ができてい
ないであるとか、データポータビリティー等が実現していない。こういったような課題が
あるのではないかと考えております。
そこで、本人にかかわるデータの、本人同意に基づく、事業者や業界を超えた共有・分
析・活用が可能な環境を整備することで、さまざまなメリット、急速な少子高齢化社会に
向かう我が国が直面する課題の解決等に貢献していきたいと考えております。また、AI、
IoT等の高度化・活用を推進する上でも多種多様なデータが流通して利活用できる環境をつ
くることが不可欠ではないかというように考えております。
次のスライドは、閣議決定された日本再興戦略におきましても、このような文言が盛り
込まれているという参考です。
読み上げさせていただきますと「データ流通における個人の関与の仕組みや健全な取引
市場の在り方、個人自らがデータを信頼できる者に託し個人や社会のために活用する等の
仕組みについて技術・制度面から本年度末までに取りまとめる」ということとされており
ます。
次のスライドに移らせていただきます。
先ほど課題として申し上げました、個人の不安や不信感を払拭するということが必要で
すが、そのためにはデータ流通への個人の関与を強化していく必要があるのではと考えて
おります。データ利活用により国民が便益を享受できるユースケースを想定しつつ、デー
タ流通への個人の関与を強化する以下のような仕組みについて検討を行うべきではないか
と考えております。
国内外で議論されている仕組みPDSであるとか、情報銀行、データ取引市場、こういっ
たものを社会で導入していくことが必要ではないかということを考えております。
次のページ以降が、想定されるユースケースでございます。
例えば観光の分野におきましては、個人が自身に関する位置情報、飲食履歴・購買履歴、
旅行履歴等を収集し、流通させることで、観光団体による観光情報の提供や、ショッピン
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グモール運営業者等によるさまざまな提案が可能になって、観光地全体での「おもてなし
サービスの実現」が期待されるというように考えております。
続きまして、金融・フィンテックの分野です。資産状況やインターネット販売での購買
履歴等の情報を本人が収集・流通させることで、信託銀行や証券会社等、また、公益事業
者等からさまざまなサービスパッケージの提案が可能になる。
「安全・安心な管理」もでき
るようになるのではないかと考えております。
また、ヘルスケアの分野におきましては、ヘルスケア関連情報、個人が収集・流通させ
ることで、個人の嗜好や健康状態に合わせたさまざまなサービスが提供され、社会全体と
しても健康寿命の延伸、先ほど申し上げたような社会保障関係経費の削減ということも実
現するのではないかと考えております。こちらはPDS中心の書きぶりになっておりますが、
情報銀行がPDSにかわり、個人に関するデータを管理・運用する場合もあるのではないかと
考えております。
次のスライドが、PDSと情報銀行の流れを示したものでございます。
左側のPDSというものにおいては、個人がみずからのデータを安全に蓄積・管理・活用
する。もともと契約等によって他の事業者に集まっていた情報を、個人が一旦、自分の手
元のPDSというところに集めて、それを誰に提供するかということを判断する。そういった
ものがPDSだと考えております。
そういったものについて、だんだん自分で管理するのが大変だと思われるような個人の
方々が出てきた場合に、そういった個人にかわって、個人からの預託を受けて情報を預か
って、妥当性を判断の上で業界や事業者にデータを提供して、個人に便益を還元する事業
者という情報銀行というものが今後出てくるのではないかと考えております。
次のスライドに移らせていただきます。これは左側の下のほうから右側の上のほうに発
展していくのではないかと我々が考えている図でございます。
業界ごとに、個人の手元に情報を集めるようなPDSというものが出てきて、先ほど申し
上げたように、情報を管理するのが大変で、他者に預けて委託したいという形で、分野ご
とに情報銀行というものが出てくるのではないか。それが場合によって収斂されていくよ
うな形で1つ、または少数の情報銀行が個人からのデータを集めて、業界横断的にデータ
を流通させていくということも考えられるのではないかと思っております。
次のスライドですが、論点と議論の方向性というものを大まかに整理させていただきま
した。PDS、情報銀行、データ取引市場。こうしたものを今後、社会で実装していく上で、
技術面、事業面、制度面でどういう課題があるかというものをマッピングしたものです。
PDS、情報銀行を実現していく上で、技術的には個人を安全・確実に認証するような技
術が必要ではないか。本人によるデータ管理(オプトアウト等)を可能とするような技術
も必要ではないか。また、セキュリティーの確保、データのトレーサビリティー等を担保
する技術も必要ではないか。こちらはデータ取引市場についても対象になってくるのでは
ないかと考えております。
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次が技術と事業、両方にかかわってくるものではないかと思いますけれども、データ互
換性の確保であるとか、各種データの標準化について、これは横断的に取り組まなければ
いけないのではないかと考えております。
また、事業面におきましては、データ流通に個人や事業者がインセンティブを持つよう
な仕組みというものを検討する必要があるかと考えております。
制度面のほうにおきましては、データ流通における透明性。これがないと、なかなか個
人も安心してデータを預けて流通させることにはならないのではないかと考えております。
データに関しての知的財産の関係でのあり方というものも検討する必要があるのではない
かと思います。また、データコントロール権であるとかデータポータビリティー権。こう
いったものをどのように扱っていくかということ。情報管理、情報銀行に関しましては、
信頼性・セキュリティーを確保するためにはどういう要件が必要かということについても
検討対象になるかと思っています。
次のスライドでございますが、御参考までにEUの一般データ保護規則の中に新たに盛り
込まれましたデータポータビリティーというものについて説明を入れております。
こちらは、個人がデータ管理者に提供したみずからのデータを、一般に用いられる機械
判読可能な電子的フォーマットで当該データ管理者から受け取る、または、他の事業者に
移管する仕組みというものでございます。EUのほうでは、こういうような制度も導入され
る予定になっております。
最後のスライドです。こちらはワーキンググループ各回のアジェンダというものについ
て整理したものです。こちらは事務局のほうでざっくり整理したもので、今後、構成員の
皆様方と議論をしていく中で柔軟に変更しながら進めていきたいと考えておりますので、
よろしくお願いします。
事務局からの説明は以上でございます。
○安念主査
どうもありがとうございました。
それでは、資料5をご覧いただけますでしょうか。当ワーキンググループでの検討に当
たってということです。今、山路参事官から問題の背景でありますとか具体的な論点につ
いて御説明をいただきましたが、我々としてはこういう心構えでやっていったらいいので
はなかろうかなというのを書いたものです。
まず、第1にミッションですが、個人情報を含め多種多様かつ大量のデータを企業や業
界を超えて安全・安心に流通・利活用できる環境の整備について、技術、事業、制度面か
ら検討することという、これは大くくりです。
それで、今、申しました視点ですが、こんな考え方ではどうだろうか。データ流通に関
する国民の不安を払拭し、民間企業等による積極的な取り組みを促進するということで、
第1は、あくまでも個人が出発点であり、中心であるということです。個人の関与を強化
するのが基本だという出発点に立ってはいかがか。
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第2に、民間企業等による取り組みの促進がやはり何といっても大切です。上のポツは、
もう既にやっていることの邪魔はしない。これは最低限の話です。2つ目のポツで、萎縮
している民間企業等に、こうやってやればいいのですと後押しできるような環境を整えた
い。
第3に、技術革新や外国の動向も常に注意していかなければなりません。どうも6カ月
もたつとランドスケープが変わっているという世界ですので、3通常国会をまたいで立法
するとか、そういうことをやっているととても間に合いません。最近はやりの言葉を使え
ば、ソフトローで対応しなければならないというところも出てくるのではないかというこ
とです。
第4ですが、どうしてもトラブルとかコンフリクトがゼロになるなどということはあり
得ませんので、さまざまな事前の相談であるとか、紛争の解決とかといった手だても考え
なければなるまい。こういうことです。
以上のようなことを基本的な姿勢として考えてみてはどうかということです。先ほど、
おまえは自分がずぶの素人だといった舌の根も乾かぬうちに何でこんな偉そうな紙が出る
んだというお叱りもあろうとは思うのですが、何せ問題が複雑多岐にわたりますので、一
応、こんな姿勢で臨むというのではいかがかという、もちろん、いろいろ御意見や御批判
はあろうと思うのですが、もし大体、7∼8割方、こんなものでよろしかろうという先生
方のお考えがおありであれば、そうやって進めていかせていただけると司会役としては大
変ハッピーである。そういうだけの紙です。
それで、もう議事に入っているのですが、次に議事の「(3)意見交換」に早速入りた
いと存じます。ワーキンググループの運営と今後の進め方について、構成員の皆様からま
ずは、大変申しわけありませんが、一人2分でお願いしたいと思います。初顔合わせでも
ございますので、ごく簡単にそれぞれの、御自分のバックグラウンドなどを交えていただ
いて、しかし2分でお願いできれば幸いでございます。
それでは、大橋先生からお願いします。
○大橋構成員
東京大学の大橋と申します。経済が専門でございます。オープンデータの
話とか経産省での第4次産業革命といった場などで発言させていただいたことが過去ござ
います。
今回、安念先生からいただいた視点について、特段の異議はなく、冒頭の先生の発言は、
ちょっとおくれて来てしまったもので最初からは伺えませんでしたが、非常によく練られ
たものだなと思っております。
安念先生がおっしゃったように、今後、個人に情報を帰着させていくのだという考え方
は重要な見方だと思う一方で、今の日本でどこまで根づくのかということを考えてみると、
やはり一定程度、啓蒙というか、そういう普及活動のようなことは重要であると思います。
ただ、他方でこうしたものに取り組まないと、データ流通というものをどうやって促し
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ていくのかということに関して非常に難しい。要するにデータを持っている個人に帰着す
るという形にすれば、それを預託するなり信託するなりという形の考え方、そこで情報銀
行という概念もいただきましたけれども、それというのは一つの考え方であると思って伺
っていました。
情報というのは有体物と違って複製が可能であって、なおかつ複製されたものというの
を消去したといっても、本当に消去したのかどうか確認をとるのも非常に難しいというこ
とで言うと、こうした制度を考えていく上で余り単純な性善説に立って議論するのもどう
か。そういう意味で言うと一定程度、そうした行為も未然に防止するような感じでの規律
というものを議論していくことは非常に重要であると思いました。
以上です。
○安念主査
ありがとうございました。
越塚先生、お願いします。
○越塚構成員
東大の越塚でございます。専門は技術寄りのほうです。研究としてはIoT
とかオープンデータとか、そういうことをやっております。
今、安念先生のこの検討に当たっての方向性、これは先生のおっしゃるとおりでよろし
いのではないかと思います。
今、事務局の御説明も聞いて幾つかコメントがあるのですけれども、1つは冒頭のとこ
ろのお話に関してですが、これは私自身がIoTの技術に携わっているから思うことですが、
センサーのデータは個人情報にかかわってない、完全にそういう分類になっています。IoT
からみると、そこは結構課題で、例えば自動車の運転のセンサー情報というと、その人の
重要な個人情報で、その情報は自動車保険であるとか、そうしたことにも関わってきて、
その保険で得をするために、センサーのデータの改ざんであるとか、センサー自身をタン
パリングするとか、そういう技術的課題も随分あります。また逆に、そこが個人にかかわ
るからこそ、センサーのデータすらも流通がかなり制約される場面も現に生じているので、
センサー関連のデータも個人情報と関係あるとお考えいただけたら、というのが1点。
2点目は、先ほど大橋先生もおっしゃったように、これは今度、どれくらい普及してい
くかという、啓蒙もありますけれども、その際にはアプリケーションや応用、ユースケー
スは極めて重要で、こういうものは汎用的なプラットフォームのような話なので、ややも
するとぼやんとした一般的な話になって、何にでも使えるけれども、何にも使えないとい
う話では仕方ない。これはユースケースとかアプリケーションは非常に重要です。個人情
報の流通の制限を守る立場もあれば、その利活用の普及という立場の、両方の立場があり
ますが、普及という立場に立てば、アプリケーションは非常に重要だと思います。
あと、3点目には、こういった情報銀行的なコンセプトは、ある程度、既に色々なとこ
ろでなされていて、我々自身も今、2020年に向けて「おもてなしクラウド」というものを
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総務省とやっておりまして、アプリケーションをインバウンド観光とシャープに定めて、
つまり旅行ということで短期的な応用という強いシナリオにもとづいて、個人情報をを
色々な情報やサービスにひもづけて、日本国内を旅行や観光するときに役立てるというこ
とを、かなり具体的に進めています。しかも、それを今年度実装して、動かして、検証し
ていく取り組みもありますので、そうした知見も共有させていただければと思います。
以上です。
○安念主査
ありがとうございました。
新保先生、どうぞ。
○新保構成員
慶應義塾大学の新保と申します。バックグラウンドも含めて2分ですので、
個人情報保護の専門家の個人情報は保護されておりませんので、私のバックグラウンドは
検索していただければすぐにわかりますので、バックグラウンドは詳細を省略させていた
だきたいと思います。
今回のこの進め方について意見を述べさせていただきたいと思いますけれども、今回の
検討対象はデータ流通に関する民間企業等による積極的な取り組みの促進で、これは2つ
大きく意味があると思うのですけれども、1つは民間事業者が保有する情報の利活用とい
う意味での取り組み。もう一つは民間事業者による情報の利活用です。これら両方では、
意味が違うと思うのです。
それで、今回の検討会の名称は、せっかく、AI、IoTという言葉をつけていただいてお
りますので、AIの開発・普及のためのディープラーニングにおいては、あらゆるデータを
スムーズに利活用するということが必須の課題であります。とりわけ、AI、IoTの高度化・
活用を推進するという今回のこのワーキンググループの名称からすると、この部分は避け
ては通れない。そうすると、民間部門だけでなく、官民が一体となってデータの利活用に
向けた取り組みを推進するということが不可欠であると考えているわけでありますけれど
も、今回のこのワーキンググループの設置趣旨を拝見すると、先ほどの点からすると、民
間事業者による情報の利活用に向けた取り組みの促進にあると思われるわけですが、民間
事業者による情報の利活用ということについては、民間事業者が保有する情報の利活用だ
けでは本来のデータ利活用を推進できないと考えております。
そこで3つ意見を述べさせていただきたいと思います。1つ目はオープンデータ活用の
ための制度を整備することが不可欠である。特に行政が保有するオープンデータ、行政機
関、独立行政法人等も含めて、オープンデータは埋蔵金でありますので、そのデータを官
民が双方で活用できることはAIの普及には不可欠である。とりわけ、中国などは積極的に
あらゆるデータを活用して、その点で日本はかなりおくれをとっておりますので、まず、
その点を進めるということは必要である。
そうなると、行政機関と個人情報保護法については、個人情報保護法の改正に合わせて
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今回改正が行われたわけでありますけれども、残念ながら不十分かつ不完全な改正にとど
まっております。とりわけ匿名加工情報の取り扱いにつきましては、そもそも行政機関等
においては非識別加工情報という定義を定めるなど、ちょっと厳しい言葉で申し上げると、
無意味な新たな定義を設けて、オープンデータ活用に向けて行政機関等が保有する情報の
利活用を推進といった理念に相反するような改正がなされている。そのような観点からす
ると、行政における個人情報の取り扱いについて、個人情報保護委員会の執行権限もこの
部分にしか及びませんし、やはり官民双方が同じ執行体制で情報を活用することが将来的
には不可欠である。今回の検討会でそこまで達成できるかどうかは不明ですけれども、や
はりオープンデータ活用のための整備ということを忘れてはならない。
2点目が、公平性と透明性の確保を前提とした利活用の制度の検討が必要である。今回
の仕組みを検討するに当たって、ブラックボックスで利活用を推進というのは論外であり
ますけれども、もう一つの観点として、公平性と透明性の確保の上で、一部の分野の事業
者であるとか、一部の業態に有利になるような制度ではなくて、やはり公平性を確保した
上でデータの利活用を推進する。個人情報保護法の改正のときにも、グレーゾーン解消と
いっても、結果的にはいろいろな各業界の意見を踏まえて、最終的にはグレーゾーン解消
には至っていない。
最後に3点目ですけれども、今回の目標とする検討を最後まで達成していただきたい。
これはどういうことかというと、過去にも私もいろいろな検討会に携わって、例えば電子
私書箱検討会であるとか、かなり詳細な検討を行ったものの実現しなかった制度は多々あ
るわけです。ですから、そういった過去の検討結果も踏まえて、検討結果も活用して、ま
さに検討結果の利活用ができずに、またゼロから出発ということはなかなか最後まで検討
することが難しい部分もありますから、そういった過去の検討結果も踏まえた上で、最後
まで今回は、今度こそはこういった利活用を推進するための制度を真剣に考えていきたい
というところが3点、私からの意見であります。
以上です。
○安念主査
ありがとうございました。
関事務局長、お願いします。
○関構成員
新経済連盟事務局長の関と申します。
論点が多岐にわたっておりますので、このコメントで全てをカバーはできないと思いま
すが、まず、このワーキンググループは、データ活用を進めるということが主眼だろうと
私は理解をしております。そういう意味で、新経済連盟はもともと新産業の創出といった
ことについて制度的な提案をしてきておりますので、ぜひそういう方向での議論を進めて
いただきたいと考えております。
環境整備に関して申し上げれば、現在、民間のビジネスでデータ流通は一定程度行われ
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ており、そこでどういう課題が生じているのか、あるいはユーザー側にどういうニーズが
あるのか、あるいはないのか。そういったことは、ある程度しっかり調査をして把握して
おく必要があると思います。
その上で、根本的な話になりますが、そもそもPDSとか情報銀行は本当に必要とされて
いるのかということについては、個人的には疑問もありまして、特定の分野についてはそ
ういったものが必要とされているということもあるのかもしれないのですが、分野横断的
に何かルールを定めなければいけないというところまで来ているのかということについて
はかなり吟味する必要があると思っております。
そのときに、何かルールを議論をするといったときでも、民間の自由なサービス、ある
いはサービスの創出を阻害するようなものをつくってはいけないと思っています。ニーズ
がないところにも民間企業は創意工夫してマーケティングし、あるいはイノベーションに
よってサービスをつくっていきますので、そういったものを阻害するようなものになって
はいけないと思っています。例えばデータ形式の標準化につきましても、サービスの色々
な形態の発展に応じて柔軟に対応できるような仕組みにしないといけないと思いますので、
そういったことはぜひ配慮していただきたいと思います。
それから、最後に1点だけ、資料5につきまして、これについて賛成、反対ということ
は、この場でまだ申し上げられないのですけれども、例えば個人の関与強化ということが
データコントロール権を個人に移動するという内容を含むのであれば、それは日本の現状
からすると、かなり慎重に議論がなされないと、方向性を決められないと思っております。
○安念主査
ありがとうございます。
12時まで時間をいただいておりまして、この後は加藤先生のお話を伺って、その後、ま
たディスカッションの時間をとりたいと思います。この2分間で全てを尽くしてください
などということでお願いしているわけではございませんので、どうぞよろしくお願いいた
します。ありがとうございました。
橋田先生、お願いします。
○橋田構成員
東京大学の橋田です。私は7年ほど前から実際にPDSの研究をしております。
当時はPDSという言葉は知らなかったのですけれども、ここにPDSの定義が書いてあります
が、その中でも分散型のPDSということで、個人が特定の事業者に依存せずに自分のデータ
を管理・活用できるという技術に関して研究をしておりまして、こういう世界にどっぷり
つかっているという者です。
特段、大きな修正意見等はないのですけれども、若干コメントをさせていただきます。
資料4の5ページのところにデータ流通環境整備の必要性という話が書いてありますね。
先ほどの関さんの御意見とも関連するのですけれども、この図の本人同意に基づく個人情
報を含むデータの流通という話と、それから、安念先生の資料5の個人の関与を強化する
13
ということに関連して、確認なのですけれども、この個人の関与を強化するということは、
それによって民間企業の行動を抑制するということではないということです。この5ペー
ジの絵でいうと、既に民間企業の間で、ある程度、個人情報の流通は行われているので、
それに純粋にプラスして、本人同意に基づくデータの流通もやろうというのが重要だと思
います。
全部個人に任せてしまおうという話だというように誤解される方も時々おられるのです
けれども、そうではありません。今までやってきた流通はそのままやってください。それ
に加えて個人を経由したデータ流通もやりましょうという話だということを外に向かって
も内に向かっても確認しておくべきだと思います。
もう一つは、同じ資料4の12ページ、13ページに個人のデータが事業者から本人にやっ
てきて、そこからほかの事業者に流れていくという絵が描かれているのですけれども、特
に12ページの右側の情報銀行、それから、13ページにも関連しますが、この情報銀行の役
割というのは、この資料にちゃんと書かれているわけではないのですけれども、恐らく、
マーケットなのだろうと思います。
つまり、もちろん完全情報市場というのは厳密には実現し得ないものですけれども、ICT
を活用することによってそれにいかに近づけるかというソリューションの一つが情報銀行
なのではないかと考えております。そうすると情報銀行の役割としては、個人のニーズと
事業者が提供する商品やサービスの間のマッチメーキングをする。それはまさに市場の役
割であるわけですけれども、それをやるためには、情報銀行は個人からデータを集めるだ
けではなくて、企業・事業者からサービスや商品のデータを集める必要があります。日本
国内では400万社にも上るたくさんの事業者から商品・サービスの情報を集めるということ
はとても個人ではできませんので、やはり集中型の仕組みが必要になる。それが情報銀行
ではないかと考えています。
そうすると、情報銀行は双方からデータを受け取ってマッチメーキングをするという、
一種の市場の役割を果たしますので、いかにしっかりしたガバナンスを情報銀行にかける
かということが極めて重要なテーマだろうと考えております。
とりあえず、以上です。
○安念主査
ありがとうございました。
林先生、どうぞ。
○林構成員
弁護士の林いづみと申します。専門は知的財産の関係です。IoT推進コンソー
シアム委員や、経産省、総務省、内閣府などで本件関連の会議などに出ております。
また、安念先生よりも新米なのですけれども、3年半前に規制改革会議で、農業ワーキ
ングと健康・医療ワーキングに入っていましたので、先ほど事例に出ました農地中間管理
機構のベースとなる農地情報のデータベース化や、規制改革会議発の厚労省での審査支払
14
基金の診療報酬の審査の効率化など、ナショナルデータベースにかかわるような議論をこ
れまでやってきております。
それで、今回のこの会議について、正直申し上げまして、会議のタイトルを見ると、現
在、安念先生がかかわっておられるだけでも、私が入っているだけでも相当数の似たタイ
トルのものがたくさん走っているように認識しており、商標法では、識別性が商標の本質
なのですが、検討会のタイトルに識別性がないので、例えば安念ワーキングとかにしてい
ただけないかというくらいに思っておりました。本日、冒頭に安念先生が、当会議が一つ
の転機になったと後で言われるようにしたいと宣言されまして、おおっと思ったのですが、
早速8回までのスケジュール、各回のアジェンダ、検討の視点という3点セットを出して
いただきましたので、これで安心して、この会議で議論ができるなと思ったところでござ
います。
この会議のアジェンダになっているPDSとか情報銀行といった仕組みは一つのビジネス
モデルなのかなと思うのですが、これがどういうものであるべきかとか、何が求められる
ものかというのは、正直に申し上げまして、私は今のところわかりません。ただ、が、PDS
や情報銀行、データ取引市場というビジネスモデルが、今後、どのように時間軸に合わせ
て、世界の動きに合わせて変わっていくかによらず、きょうの資料4の14ページにオレン
ジ色のバーの技術、事業、制度で挙げられた論点は、データの自由な流通環境を整える上
では、どれもなくしてはできないものだと思いますので、今回、この議論の軸としてPDS
や情報銀行というものを設けながら、その中でこの論点を議論していくということは、や
はり当会議が一つの転機になったと後で言われるようなものになるのではないかと思いま
す。
よろしくお願いいたします。
○安念主査
ありがとうございます。
原先生、どうぞ。
○原構成員
東京大学の原と申します。専門はサービス工学という分野でして、工学部の
中でサービスを研究しています。
私のサービス研究での一つのキーワードとして、ともにつくる共創というものがありま
す。その観点で申し上げますと、このワーキンググループを含めた検討会の目的は、デー
タを流通させることで、ともにつくる共創を促す環境を整備していくことであろうと認識
しています。ですので、流通はあくまでも手段であり、その後の活発な競争と共創の二つ
を促すことがねらいであろうと思います。
ともにつくる共創においては、ここにありますように、個人の関与度、個人の主体性、
あるいはエンゲージメントをどう高めるかが大きな鍵でして、これらは今、皆様から御意
見いただいたことにも通じます。ですので、個人を守る立場と個人を促すという2つの立
15
場がこのワーキンググループの肝だと思っており、このことを忘れずに私自身も臨んでい
きたいと思っています。
資料4の14ページにあります論点と議論の方向性に関しては、以前の検討会等の経緯も
あり、PDS、情報銀行、データ取引市場というキーワードが出てきて、これらが技術、事業、
制度という縦軸で整理されているのだと思います。確かにこうだなと感じた一方で、では
例えば個人というキーワードはどこに入るのだろうかと疑問に思いました。もちろん、表
中に個人が関わるキーワードがちりばめられているのですが、この検討会が個人の関与を
中心に考えるのであれば、技術、事業、制度に加えて、個人という縦軸を表に出して整理
をし、国民や社会の皆さんにメッセージを伝えていくやり方もあるのではと思いました。
あと1点、私は観光サービスの研究を行っておりまして、その観点で申し上げたいと思
います。10年ほど前から観光統計が整備され始めて、近頃になってようやくそれらの観光
統計が共通的な基盤になりつつあります。そして、まさにこれからはデータ流通ですとか、
個人に適応した「おもてなしサービス」の実現というフェーズに入ってきております。
観光という分野は非常に良い題材と思っておりますが、一方で私自身、一旅行者として
も研究者としても少し不安を感じているところがあります。昔であれば旅の恥はかき捨て
というように、旅というものは非日常の体験ですので、そこでの出来事は日常の私のデー
タとは切り離されることが多かったのですが、最近は恥のかき捨てならぬ旅の個人情報は
かき集めてという状況になってきています。おのれをさらけ出さないとよい旅はできない
ような、そんな話になっているかなと思っています。
旅行において個人情報がかき集められることは、旅行者本人にとってメリットがあれば
いいのですが、もしそれが十分に示せないとなると、大きな問題ではないかなと感じます。
観光の場合でいえば、さまざまなデータの流通を通じて、防災・減災、災害情報の個別提
供、業界横断的な連携等のメリットを打ち出していくことができるはずです。そのあたり
をうまく絡め、旅行者や国民の方々が抱く不安を払拭するようなユースケースをどうつく
れるかが鍵だと思っています。
よろしくお願いします。
○安念主査
ありがとうございました。
松岡理事長、お願いいたします。
○松岡構成員
一般財団法人日本消費者協会の理事長をしております松岡萬里野と申しま
す。個人情報保護法をつくる消費者運動にかかわったのがきっかけでずるずると、個人情
報保護法の改正のところから、何かだまされながら、この1年間、次々と課題がふえてい
って、びっくりしております。
一般の人たち、このデータの利活用というのは、やはり目に見えないものですから、非
常に不安があるので、それをどういうようにわかりやすくしていただくかということが私
16
の役割かなと思っております。
少なくとも、個人情報そのものというのはなかなかデリケートな感覚が消費者にはある
のですが、先ほど新保先生がおっしゃったように、公表されているデータの利活用という
ものをもっとしていただきたいと思います。今までもたくさんの方が、せっかくいいデー
タがあるのに使いにくいというお話を何回もお聞きしておりますので、そういうものを活
用して、一般にデータの利活用というものがお得になる、自分たちに返ってくるのだとい
うことを示していただきたいと思います。
それから、情報銀行などというものも大変興味がありますので、どういう流れになって
いくか、なかなか積極的な意見は申し上げられないのですけれども、全くの素人ですので、
一般の人たちにわかりやすい形になっていけるように私も努力したいと思っております。
よろしくお願いいたします。
○安念主査
ありがとうございます。
松本先生、お願いいたします。
○松本構成員
東京医療センターの名誉院長の松本です。
ヘルスケアの専門家として、ここに参加しているのだと思いますが、たった2分では言
えないと思うのですが、ヘルスケア領域に関しては資料4の5ページに、目標としては健
康寿命の延伸、医療費の削減、健康意識の向上、行動変容による健康増進。ということは、
健康寿命の延伸というのはエクササイズをすることである。それで、健康意識の向上とい
うのは、例えば食事の制限をしてボディマスインデックスを適正な位置にする。あるいは
嗜好であるたばこをやめるとか、そういうことなのですが、一番難しいのはやはり医療費
の削減ということなのですが、私、四十数年医者をやってきて、病院長を十数年やりまし
たけれども、それは患者確保に自分の狙いを、要するに入院数を高めるために自分の行動
を規定してきた。これを否定することから医療費の削減は始まるのではないか。
要するに、医療を使わないようにネットで情報を提供して、病院に来ないでも済む。そ
ういうことは無駄な時間が、病院に来て外来を、待ち時間を長くするとか、そういうこと
をしないような社会をネットでつくる。そういう意味で情報銀行とか、そういうものを設
立する意味がありますし、情報銀行単体ではできなければ、それぞれ日本の二千数百ある
病院の中に、あなたは病院に来なくても、寝ていれば治りますとか、薬局へ行って、こう
いう薬を買って、数日おとなしくしていれば大丈夫ですよというような、今までの私の行
動様式を否定することから多分、皆さんのお役に立つということになると思います。
それから、安念主査が8回もスケジュールを決めていただいていますが、その中に一つ
もヘルスケアに関することはないので、自由に参加して、自由に意見を言わせていただき
たいと思います。
以上です。
17
○安念主査
森先生。
○森構成員
弁護士の森です。松本先生のお話がおもしろかったので話しにくいのですけ
れども、専門はインターネット上の違法・有害情報で、掲示板にプライバシー侵害を書か
れたので消してくださいというようなことを仕事にしています。
きょうのテーマの御説明との関係では、きょうの資料を拝見して思ったことを申し上げ
ますと、やはり会合のタイトル、AI、IoT時代におけるデータ活用というのは非常に広いの
で、色々なことが上がってきてしまうのですけれども、先ほどお話にもありました、ほか
のところでもいろんな検討というのがなされているわけでして、私のイメージでは、例え
ばセキュリティーとかオープンデータとか、そういうことはデータ流通・利活用には不可
欠ですけれども、それは結構、ほかで非常にされていることなので、ここで直接、時間を
かけてやることではないのではないか。この資料4の14枚目のスライドを拝見していると、
またスケジュールを拝見していると、このPDS、情報銀行というところにフォーカスがある
のではないかと思いました。
1つはどこにフォーカスがあるのかという話だと思うのですけれども、そうしますと、
ではPDS、情報銀行ということで考えますと、安念先生に書いていただいた資料5の「WG
での検討にあたって」。これは非常にいいことを書いていただいたなと思っておりまして、
特に「(2)民間企業等による取り組みの促進」というところで、既に提供されているサー
ビスを阻害しない。これも当然のことでありながら、確認すべきことであろうかなと思い
ますし、もう一つ、この下ですね。
「萎縮している民間企業等がデータ流通・利活用を通じ
た新たなサービス提供等に積極的に取り組める環境を実現」と書いていただきました。や
はりPDS、情報銀行といっても、PDSです、情報銀行ですと看板をかけたら、いきなり預金
者が列をなすかというと、それはそんなことはないと思います。
そういうPDSとか情報銀行というものがどういう実態なのかですけれども、先ほどから
先生方のお話にもありまして、例えば旅行の話がありましたが、あるアプリケーションを
やっていたら、その関係で情報銀行のようなことを、PDSのような機能を果たしているとい
うケースのほうがむしろ今はイメージしやすいといいますか、そっちのほうが現実的なシ
ナリオなのではないかと思いますので、そういった事業者が参照できるような、うまく利
活用をすることができるような、そして、消費者の不安を解消することができるようなこ
とを紹介できる。そういう成果物が出ればいいのではないかなと今は思っています。
以上です。
○安念主査
ありがとうございました。
矢作先生、お願いいたします。
○矢作構成員
名前順ですので、どうしても最後になってしまい、トリを飾るのが非常に
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緊張するのですが、慶應義塾大学の矢作でございます。私、専門は小児科医で、情報技術
の世界で得意としているのは人の思考プロセスの技術化と次世代社会基盤構造設計です。
これまで全国50の医療施設と、それから、個人からの情報を集めて、子供たちの副作用
情報を分析するプロジェクトに携わらせていただきまして、その中で少し生々しいいろん
な実態を見ることができました。子供たちというのは非常にシグナルが小さくて、異常検
出が難しいのです。そうした中でデータを集めてくるというのは本当に難しくて、そのた
めに各種いろんなルール・規制の中でどう超えてデータを集めるかというのは非常に困難
でした。
ところが、一般的に、例えば個人同意を得るのは難しいと言われていますけれども、こ
れは実は主治医の力量によることが非常に見えてきていて、その信頼関係があると、95%
以上は個人同意をとれているのです。世代の違いというのもあるのでしょう。ただ、別に
同意、同意と言っているわけではなくて、今回、すごくデータの種別を明確にしていただ
いているので、すばらしいことだと思っていまして、その中で、一方で今度は、個人はデ
ータを提供したいのだけれども、医療機関がそれを拒否するということが実態としてあっ
たのです。これはすごく不思議な現象がいろいろ起きていました。自分の子供の情報、自
分の体の情報というものを誰かのために使っていただきたいと思っている個人がいるにも
かかわらず、実際の事業主体となっている医療機関がそれを拒否するという実態が多かっ
たのです。これは恐らく、個人情報という概念の部分、それから、どうしても医療情報と
いうキーワードに引っ張られていたことが多くあったのでしょう。
ところが、副作用情報だとかを集めるに当たっては、決して医療情報は全てではないの
です。生活情報ですとか、そういった要するに個人から得られる情報は非常に大きくて、
こちらの部分が色々な部分で大きな意味を占めている。先ほど松本先生のほうからも御発
言もありましたけれども、医療機関はいろんな立ち位置があると思うのですが、医療機関
に受診するという行動を抑制することもいろいろできる中で、どうやって予防だとか、そ
ういった展開にしていくときに、これはどうしても医療というところから切り離さないと
いけなくて、今回、実は医療というキーワードではない、ヘルスケアというすばらしいキ
ーワードが入っていたので、まさにここが膨らんでいかないと、国が幾ら医療費ですとか
全体の予算を削ろうとしても、なかなか展開できない。そのマーケットが実際、まだ現状
としてなくて、加えて、まさに書いてあったように、萎縮しているというところもあるの
です。という意味では、そういったところを支援していかないといけないときに、いわゆ
る個人ということを無視するわけにはいかない時代になっていると同時に、やはり世代間
の認識の違いがあることをはっきりとわかった上で、これは議論していかないといけない
のではないかなと思っています。
そこで大きく4つ、私はこの場で、今後ですけれども、意見をしていきたいと思ってい
ることとしては、もう既に話が出ていますが、官民に限らず、これは要は分野横断的であ
るべきだと思うのです。情報というものは、これまでいろんな縦割り、構造的な壁という
19
ものを越えられるはずなのにもかわらず、ここの部分が越えられないことが往々にしてあ
る。そういう意味では、全てが連携を、手を取り合ってやっていかないといけない。
それが次の2番目になってくるのですけれども、これまで国という定義をどのように考
えてきたかということを少し冷静に考えてみたときに、やはりインフラというものは避け
られないと思うのです。日本は治安がよくて安全で、とても安心な国だと世界中から言わ
れていますけれども、これからはもしかしたら個人の、自分たちの情報を日本というとこ
ろに預けておいたら、世界中、誰もがここは安心で安全なのだ。自分の健康・資産、全て
を預けて、こんなすばらしい国はないね。そういう世界ができていくであろうということ
を、実はこの会議には期待しています。
ただし、すなわち一方で、3つ目で、保障です。当然、何かがあったときに、何かがあ
ったときというのは大きく2つあると思うのです。インフラ規模のいわゆるプラットフォ
ーマーになっていったときに、その機能が要するに破綻したときに、では、それをバック
アップする体制がきちっとあるのか、あるいはそれを迂回する経路があるのかという、要
するに仕組み上の問題です。
それから、実際、個人に何か不利益があった場合に、それをどう補償するかということ
もやはり国としては考えていかないといけない。これは官民一体として考えるべきだと思
うのです。民だけではなくて、やはり官としても考えなければいけないと思います。
最後に4つ目ですが、これはとても時間のかかることだと思うのですけれども、私、常々、
これは申し上げているのですが、文化醸成という非常に重要なキーワードがあると思いま
す。一足飛びにこういった議論というのはできることではなくて、やはり教育というのは
非常に重要で、当然、これは企業がやらなければならないこともあるでしょうけれども、
一方で、これは学校教育を含めて、情報の怖さ。そういったようなことを含めて、しっか
りと教育していかないといけない。情報の怖さというのは何か。要するに、自己責任とは
何か。そういう物の考え方です。少し脱線した内容なのかもしれませんけれども、これは
避けて通れない内容だと思います。
以上です。
○安念主査
どうもありがとうございました。既に貴重な御示唆を多々いただきました。
それでは、加藤先生からプレゼンテーションを拝聴して、それを含めて残りの時間があ
りましたら、残り時間も余りないなら、次回をお楽しみということでお願いいたします。
その前に、私の紙で御意見をいただきましたので、ちょっとだけ申し上げておきます。
舌足らずで本当にいろいろ申しわけございませんでした。情報銀行とかPDSというのは
あくまでも、まだ今のところは概念にすぎないものであって、何かそのための組織とか建
物をつくるとか、そんな話では全然ない。結局、マーケットができればいいのであって、
そのための一つの手がかりのようなものだと私自身は考えております。
それから、橋田先生がおっしゃった個人の関与ということなのですが、これは林先生の
20
専門分野で申し上げれば、例えば特許権というものは誰がどういう技術的範囲で権利を持
っているかがはっきりしているからこそ流通が促進されているわけで、そういうイメージ
で物を考えておりました。
それで、先ほどの私の名前の紙は、一部にこの検討会では何か日銀のような、国立情報
銀行というものをつくって、強制的に個人から情報を召し上げるようなものをつくろうと
しているのではないかなというようにお考えの方もいらっしゃると聞いたものですから、
全然ベクトルは逆ですということを確認したいという意味で書いたものでございます。こ
こにいらっしゃる方はそんなことはとうに御存じだと思いますが、世の中の伝わり方とい
うのはいろいろだなと思いました。
以上でございます。
大変失礼いたしました。お待たせいたしました。本日は文教大学情報学部専任講師の加
藤先生においでをいただいておりますので、加藤先生から、窮屈な時間で恐縮ですが、20
分程度でプレゼンテーションをいただけますでしょうか。
○加藤(文教大学)
ありがとうございます。文教大学の加藤と申します。
現在は文教大学におりますが、2年半ほど前までは東京大学大学院情報学環におりまし
た。もともとの専門は社会情報学です。本会議の分野には長く携わってきたわけではござ
いませんが、社会経済のさまざまなところで個人中心のモデルになっていくのではないか
との問題意識のもと、最近、この分野の議論に加わらせていただいております。
資料6をご覧ください。ちょうど1カ月ほど前の8月31日から9月2日にかけて、フィ
ンランドのヘルシンキでMyData2016という国際会議が開催されました。今回はその参加報
告をさせていただきます。
MyData2016の主催者はOpen Knowledge Finland、Aalto大学、フランスのシンクタンクFing
であり、メーンパートナーはフィンランド運輸通信省です。このほか、資料の2ページ目
に掲載しました通り、多くの企業・団体などがパートナーとして名を連ねています。
MyDataの基本的な考え方については、次の3ページ目にございます。MyDataの基本的な
考え方は、個人本人の同意に基づくデータのマネジメント、および、コントロールを実現
していこうというものです。
Aggregator Modelと書かれた図をご覧ください。こちらは、例えばGoogle、フェイスブ
ック、アマゾン、アップルなど、いわゆるGAFAと呼ばれる国際的な巨大プラットフォーム
に我々の個人のデータがいや応なしに集約されてしまっていることを表している図です。
このようなパーソナルデータの囲い込み、GAFAの寡占状態に対して、MyDataは問題意識を
持っており、このロックインからデータを解放する必要があるだろうという立ち位置で今
回の国際会議を組織していたようです。
同じく3ページ目の中央に個人中心のモデルの図がございます。MyData Modelと書かれ
た図です。この図は、個人を中心に据えて、物理的にデータをどのように所有するかは別
21
問題ですが、個人がさまざまなデータに関して管理ができ、本人が許諾した範囲でデータ
の利活用ができるようにしていこう、ということを表しております。こちらがMyDataの主
要なコンセプトです。
しかしながら、現状では事業者が各社でパーソナルデータ、個人にかかる情報を蓄積し
ており、それらを事業者間で流通し合う、あるいは利活用するということが十分には実現
されていません。ですので、個人中心モデルでデータ流通を実現していこう、と提唱され
ているわけです。
先程の皆様の御意見に重なりますが、やはり重要視されているのは、事業者間できちん
とデータを使えるようにしようという意味での相互運用性(Interoperability)。それから、
データのポータビリティーであります。これを実現するには、当然ながら本人の許諾が必
要です。さらには、データがどのように使われているかに関して、きちんと説明をしてい
く必要があります。その意味で、透明性(Transparency)が重要になります。信頼性(Trust)
も重要なキーワードの一つでした。
ほかにもポイントは幾つかあるかと思いますが、おおむね、このような考え方に基づき
ながら、パーソナルデータのエコシステムを実現していこうというのがMyDataの基本的な
アプローチであります。
た だ 、 状 況 は ま だ ま だ こ れ か ら の 部 分 も あ る よ う で し て 、 MyData2016で は 「 Make it
happen, Make it right」ということで、これから事を起こしていかねばならないとの提唱
がしばしば見受けられました。
4ページ目、MyData2016のプログラムとしては、非常に多数の発表がなされていました。
3日間の会期にわたり、毎日、全員参加のプレナリーが朝と夕方にありまして、このほか
午前、午後それぞれにパラレルセッションがありました。
パラレルセッションはきちんと分野が区分されているわけではなく、さまざまなテーマ
の発表がなされている状況でした。具体的には、ビジョン、技術、公共・政策、ビジネス、
各領域に特化したセッションがありました。各領域のテーマには、ヘルスケア、モビリテ
ィー、スマートシティー、保険・金融などがあり、ワークショップの中でもこれらのテー
マが扱われるというプログラム構成になっていました。
5ページ目、参加者の顔ぶれについてです。参加者は、事前登録者だけでも250名以上
でして、3日間で延べ600名前後の参加者数があったのではないかと思われます。
参加者の内訳ですが、こちらは国際会議ではありますが、学術研究の学会ではありませ
んので、行政・公共、スタートアップ企業、中小企業などの参加が多く見受けられました。
また、大手企業、NGO、それから我々研究者、教育機関、調査機関などの参加がありました。
5ページ目の左側の写真1をご覧いただきたいのですが、発表者数は非常に多く、3日
間の会期で、この写真に掲載されている方たちほぼ全員が発表されていました。ですので、
パラレルで幾つものセッションが開催されており、私も3日間参加しましたが、全てのセ
ッションを聞くことはできませんでした。
22
参加者のパーソナルデータやMyDataにおける従事期間に関しては、参考までに写真2を
資料に掲載しました。長年従事している方もいらっしゃいましたが、ほとんどの参加者が
この1∼2年から数年の間にこういった仕事にかかわり始めたとのことでした。
6ページ目に掲載しました「プレナリー」では、Intention EconomyのDoc Searls氏や、
今回のMyData2016のメーンパートナーであるフィンランド運輸通信省の大臣、フランスの
データ保護当局CNILの事務総長、保険会社MAIFのチーフ・デジタル・オフィサー、MyData
Modelを実現するサービスを提供しているMeecoのCEOのほか、多数の発表がありました。
7 ペ ー ジ目 、 日 本 から の 発 表 は「 Global winds from Japan to Silicon Valley」 と 題
し、日米共同セッションで開催されました。資料にお名前・ご所属を記載しました通り、
こちらのセッションは大学、企業の研究所の方が中心となり組織されました。発表内容は、
法制度、技術、市場動向、社会受容性など各方面をカバーしたセッションであったかと思
います。
資料の8ページ目に移ります。MyDataの議題である、パーソナルデータをどのように扱
っていくかということ、およびそのサービスは、Personal Information Management Service
(PIMS)と呼ばれることもあります。こちらのテーマに関して、多くの発表がなされてい
ました。これは私の感触ですが、その発表者の多くはスタートアップ企業や中小企業であ
り、発表内容は自分たちのサービスの紹介や、取り組みの事例紹介が中心であった印象で
す。
一般セッションを全て確認したわけではありませんが、いくつかの発表内容と公表資料
をもとに要点をまとめますと、資料8ページ目に記載した事項にまとめられるかと思いま
す。
PIMSの各サービスに共通するものとして、1点目は、事業者と個人の間で保有されてい
るパーソナルデータ、取引履歴などの情報を、個人の側で一元的に把握できる仕組みを提
供しようという考え方です。これが、いずれの仕組み、サービス、事例においても概ね共
通して見られたポイントでした。それから、こちらのワーキンググループの論点にもなっ
ておりますように、データの使用の如何を自分自身が、つまり個人が決定できる仕組みを
提供しようというのが共通項の2点目であります。特定の個人のデータを利活用するとい
う点で、本人確認も重要になりますので、3点目として、アイデンティティーが挙げられ
るかと思います。
これらのサービスでは、データをどこかに貯蔵する、あるいはどこかにあるデータにア
クセスすることが必要になるわけですが、データの貯蔵庫としてはパーソナルサーバーで
すとかパーソナルクラウドが想定されているケースが多いようでした。少し面白い事例と
して、資料8ページ目に写真を掲載しましたFreedomBoxのサービスでは、物理的な箱が用
意されていました。そして、一般の人たちにとってわかりやすいように、ここにデータが
あるのだと示し、オンラインショッピングの際などに個人情報へのアクセスがあると物理
的に箱が光るようにしてある、というデモンストレーションがなされていました。これは
23
あくまでも一風変わった事例として御紹介する次第です。
多くのサービスは、資料8ページ目の下部に掲載しましたCozy Cloudや、digi.me、meeco
などのアプリケーションに代表されるように、個人を中心に据えて、さまざまな事業者の
データがきちんと個人によって管理・把握されながら、データの使用がなされる形態とな
っています。そこでは、個人本人は、例えばデータの公開のレベルを設定したり、公開し
ないことを選択したりすることができます。また、データが可視化されて、ユーザーの手
元で見られるといったサービスも提供されているようでした。
先ほども申し上げましたが、これらの多くがスタートアップ企業によるものでした。た
だ、彼らはベンチャーキャピタルや大手企業からの投資を獲得しており、アライアンスを
組みながら、実現に向けてプロジェクトを進めているようでした。
資料9ページ目、数はさほど多くありませんでしたが、大手企業による発表もありまし
た。その代表例として資料では2つほど挙げておりますが、テレコムイタリアとAXAグルー
プの発表がございました。
個人中心モデルのデータ管理のサービス・仕組みを提供していこうというのは、スター
トアップ企業や中小企業の取り組みが目立ちましたが、テレコムイタリアのような大手企
業であっても、このような取り組みを行っているというのは、非常に興味深いことだと思
います。
AXAグループに関しては、こちらは保険会社ですので、ドライビングデータを用いたパ
ターンの抽出と、保険料率の決定、社内に蓄積されるビッグデータの扱いをどのようにし
ていくかという話がなされていました。GDPRが可決し、なおさら法制度への対応や倫理面
の対応が求められるといった話をされていて、かなり興味深いお話を聞くことができまし
た。
最後の10ページ目はまとめになります。
MyData2016は、おおむねPDSを想定しながら、PDSなどを用いた個人主導のデータ流通を
実現していこうという趣旨の会でありました。その背後には当然ながら、データプライバ
シー、自己情報コントロールをどのようにしていこうか。それを実現するにはどうしたら
いいかというテーマがありました。
そして、いわゆるGAFAによるデータの支配からの脱却を目指すというのが彼らの理念で
ありました。データの主権は個人にあるということを前提に、メッセージとして共有され
ていたのは「自分たちの手にデータを取り戻そう」ということであります。
日本で本日のような会議に参加して議論に加わらせていただいていますと、あたかもEU
のほうが先進的で、問題もあろうかとは思いますが、物事がうまく進んでいて、日本はそ
れに追いつかなければならないという感覚を持たれるかもしれません。確かにそうではあ
るのですが、ただ、1つ気づきを得たことがあります。それは、そもそもEUでは市民社会
において、市民、個人が「自己決定」することは何の疑いもなく、当然であるということ
です。それをサポートするためならば政策や、技術、市場、ビジネスなどを連携させてい
24
こう、そして市民社会を実現していこう、それが「当然である」というスタンスが根底に
あるわけです。このことは、当たり前かもしれませんが、今回の重要な気づきでありまし
た。
ですので、資料10ページ目の3つ目の項目に記載しました通り、
「個人が」
「自分で」
「判
断できるように」するための技術的・社会的な仕組みを構築していこうという方向性が、
MyData2016の会議の根底にあったと言えるかと思います。
同資料4つ目の項目ですが、そのためにはエコシステムが重要になります。技術のみな
らず、法制度、ビジネス、それから、先ほど少し言及がなされていて、これも本当に重要
だと思ったのですが、教育、啓蒙など、あらゆる側面が関係してやっと、一つの社会の仕
組みが成り立っていくだろうとの認識が、現地では共有されていました。
同資料、最後の項目は、私自身の感想でもあります。MyData2016は以上のような考え方
が共有された会議ではありましたが、データ量や取引対象が増えた場合のメディエーター
機能のようなものや、本人が意思決定できるとは限らない場合、例えば高齢者や、未成年、
障害を有する方などに関しては、どうしたらいいだろうか。その場合は他者に判断を委ね
る可能性もあるでしょうといった議論については、実はあまり込み入った検討がなされて
いませんでした。ですので、逆に言うと、日本での議論のほうが、産学官が連携して、現
実的に実現可能性のある検討がなされている部分もあるのではないかという印象を持ちま
した。
長くなりましたが、以上です。ありがとうございました。
○安念主査
本当にありがとうございました。大変興味深い御報告をいただきました。
済みません。もうぎりぎり12時までしか時間をいただいておりませんので、もうほとん
ど御発言をいただく時間もなくなってしまいましたが、橋田先生、ちょっとだけ、御報告
者としていかがでしょうか。
○橋田構成員
今、加藤先生から御報告いただいたとおりなのですけれども、二言ぐらい
つけ加えるとすると、8ページにいろいろベンチャー企業の話とかも書いてありますが、
ビジネスモデルはまだまだだなと思いました。私も、このCozy Cloud、digi.me、meeco、
全てに一応会員登録してみましたけれども、何に使うのかちょっとぴんとこないという状
況です。
しかしプロモーションとかプレゼンテーションがうまいので、どういう仕組みかわから
ないけれども、結構ベンチャーキャピタルから投資を受けたりしているようですが、それ
は日本との投資環境というか空気の違いのようなものではないかという感じがいたしまし
た。
大企業としてはテレコムイタリアとかAXAが参加していました。AXAはちょっとわかりま
せんけれども、テレコムイタリアがMy Data StoreというPDSをやっているようです。これ
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は恐らく、MITのOpenPDSが2012年ごろからイタリアのトレントあたりで実証実験をテレコ
ムイタリア、インフォニカと組んでやったというのがあって、その流れだろうと思います
が、まだまだこれも実証ステージではないかという感じがいたします。そういうわけで、
理念は先行しているけれども、まだビジネスとしてもこれからというところで、さっき加
藤先生もおっしゃいましたが、議論は我々のほうがちゃんとしているという感じがいたし
ます。
ただし、GDPRが2年後に発効したときにそれが実際にビジネスの上でどういうインパク
トを与えるかということもあり、このMyDataは来年もあるようですので、次回が楽しみで
す。
○安念主査
ありがとうございました。
しかし、まだ我々も食い込むチャンスはありありということですね。ありがとうござい
ました。
お一方か、お二方ぐらいしかお話を伺えないと思いますが、きょうとにかく、これだけ
はぜひ言い残さなければいけないということがありましたら、どなたか。
森先生、どうぞ。
○森構成員
済みません。今のところでぜひともお伺いしたいのは、1つは、加藤先生、
重要な情報の共有を本当にありがとうございました。
10枚目のまとめのところで「GAFAによるデータの支配からの脱却を目指す」というのが
ありまして、これが忘れられないのですけれども、主権は個人にあるとか「自分たちの手
にデータを取り戻そう」ということなのですが、何か具体的なお話があったのかというこ
と。
もう一つは、何でも結構なのですが、匿名化の話、アノニマスでもスドニマスでも何か
ございましたかというのを教えていただければと思います。
○安念主査
加藤先生、いかがですか。
○加藤(文教大学)
ありがとうございます。
資料8ページ目でご紹介しました各種サービスにおいて、3ページ目で目指されている、
個 人 主 導 の デ ー タ 流 通 を 実 現 す る サ ー ビ ス が 提 供 さ れ て い ま す 。 例 え ば Cozy Cloudや 、
digi.me、meecoはそのサービスを提供しています、という事例紹介を行っていました。
我々は消費者として複数の事業者と契約を結びサービスの利用をしているわけですが、
今回ご紹介した事例では、一つのアプリケーションを入り口として、我々が契約・利用し
ている幾つもの事業者のデータがハンドルできるということです。例えばCozy Cloudであ
れば、銀行口座の取引データなどが一元的に自分の手元で見ることができます。銀行のデ
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ータのほか、例えば買い物の購買履歴なども見ることができます。場合によっては通信履
歴や光熱費の履歴なども見ることができます。スタートアップ企業を中心に提供されてい
るサービスとは、まさに、さまざまな事業者のデータを個人の手元でハンドルできるサー
ビスであり、その事例が多数紹介されていた、ということです。
○森構成員
ありがとうございました。
それはGAFAの情報についても何かわかったりするものなのでしょうか。
○加藤(文教大学)
わかりやすいところでは、メールは自分の手元でハンドルできる事
例がありました。メールやカレンダーなど、Googleの機能にあるようなものは、スタート
アップ企業のアプリケーションに盛り込まれているケースが幾つか見受けられました。
現状ですと、Google等の提示する利用規約に対して消費者は同意するしか選択肢がなか
ったり、あるいは初期設定でチェックが入っている項目を後から外すということが多かっ
たりするだろうと思います。これに対して、MyData Modelのサービスは、きちんと個人が
自分のデータに関して細かく条件設定できるようになっており、データの利活用をどうす
るかの判断を個人が行えるようにしよう、というコンセプトでつくられています。
○森構成員
Googleとかに代替するサービスということですか。メールとかスケジュール
管理とかを、Googleを使わないでこれを使ってくださいと。
○加藤(文教大学)
完全に代替するのではなく、Googleにあるデータも含めて各種の事
業者が現在保有している情報は個人を介して、そこでまず一旦、本人が情報を確認したり、
ハンドルしたり、どう使いたいかを判断したりすることができるようにしましょう、とい
うことであると理解しています。
あと、ご質問の2点目の匿名加工情報に関してですが、MyData2016で登壇のあったスタ
ートアップ企業のサービスで主に想定されているのは、資料4の3ページで提示されてい
る3つの類型のうち、1つ目の「個人情報を含むデータ」が多かったという印象でした。
○安念主査
よろしゅうございますか。
○森構成員
ありがとうございました。
○安念主査
もう大体、時間が。
どうぞ。
○関構成員
簡潔に申し上げます。
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我々は常にEUの政策動向もウオッチしており、資料4の中にはGDPRのスライドも入って
いますが、ドイツ、フランスを中心に規制強化の方向というのが非常に強くて、ビジネス
とは反対の方向に向かっているケースはかなりあります。
加藤先生の資料にもありましたGAFAのデータ支配の話については、これは対個人という
話だけではなくて、対企業とか、あるいはEUの当局から見てもやはり非常に問題だという
ことで、それに対抗するために規制寄りの政策を導入しているということかと見ておりま
す。
そういう意味で、EUの政策もウオッチをする必要はあると思うのでが、運用の状態とか
実態を十分に吟味しないと、日本に同じものを導入しようという判断はできないと思って
います。
それに関連して、例えば個人情報保護法でも問題になった域外適用の問題がありまして、
仮に今回の議論で企業に対して何らかの規制や義務の導入を考えるのであれば、基本的に
我々は消極的ですが、もし導入するとしても、海外企業に対して日本企業と同条件で適用
できるような規制・義務でなければ、導入すべきではないと思っています。
○安念主査
最初にスケジュールをお示ししていただいたように、非常に短期間でインテ
ンシブに議論しなければいけない。ということは、毎回、それほど長く時間はとれません。
しかも先生方、それぞれ御高見をお持ちなので、この場での議論で全てが尽くされるとは
到底思えません。
それで、事務局に御意見・御質問、あるいはこんなおもしろい情報があるというような
ことをお寄せいただいて、全員で共有しながら議論を深めていけたらと思っておりますの
で、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、最初からどうも、本当に活発な議論をいただきましてありがとうございまし
た。私の取りさばきがまずくて、なかなかディスカッションの時間がとれずに申しわけご
ざいませんでした。
それでは、次回及び次々回の日程について、事務局より御説明ください。
○山路参事官
済みません。本日は貴重な御意見を賜り、まことにありがとうございまし
た。これを踏まえて、今後の会議の運営について、資料のつくり方等で反映していきたい
と思いますので、よろしくお願いします。
次回、第2回でございますが、10月14日金曜日13時15分から。次々回、第3回は、10月
28日同じく金曜日16時半からということで開催を予定しております。詳細については、別
途、御連絡を差し上げますので、よろしくお願いします。
○安念主査
きょうは皆さん、どうもありがとうございました。次回以降、またよろしく
お願いいたします。
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