Comments
Description
Transcript
和 文 - 地質汚染-医療地質-社会地質学会
地質汚染- 地質汚染-医療地質- 医療地質-社会地質学会誌 第 1 巻 第 2 号 2005 年 目 次 論説 68 関東ローム層におけるクエン酸アルミニウム分解微生物の分布 高嶋恒太・難波謙二・楡井 久 81 江東デルタ地域における有楽町層上部のヒ素濃度分布 吉田 剛・楡井 久・田中 武・堀内誠示 調査・ 調査・技術報告 技術報告 100 新潟県中越地震と新潟地震による新潟平野の液状化現象 仲川隆夫 寄書 107 アスベスト問題と鉱物としての同定法 赤井 純治 113 2004 年 12 月 26 日に発生したインド洋地震津波によるタイ王国及びスリランカ民主社会主義共和国における被害の現地調査報告 吉原 浩 119 地質汚染・医療地質・社会地質学に関する研究室の紹介: 茨城大学広域水圏環境科学教育研究センター地質環境研究室(楡井研究室) 楡井 久 ニュース 121 第 15 回環境地質学シンポジウム発表題目の一覧 127 賛助会員 123 投稿規定 134 会則 135 訂正とお詫び 地質汚染- 地質汚染-医療地質- 医療地質-社会地質学会誌 第1巻 第2号 論説, 論説,調査・ 調査・技術報告 技術報告, 報告,寄書の 寄書の内容紹介 論説 関東ローム 関東ローム層 ローム層におけるクエン におけるクエン酸 クエン酸アルミニウム分解微生物 アルミニウム分解微生物の 分解微生物の分布 高嶋恒太1・難波謙二2・楡井 久1 1: 国立大学法人茨城大学広域水圏環境科学教育研究センター 地質環境部門 2: 国立大学法人福島大学共生システム理工学類 福島県福島市金谷川 1 〒960-1296 〒311-2402 茨城大学潮来市大生 1375 千葉県野田市の関東ローム層を対象に,クエン酸アルミニウム分解微生物の分布について研究を行った.風化作用にお ける一次鉱物の溶解・拡散過程では,低分子有機酸のひとつであるクエン酸がアルミニウムと錯体を形成して一次鉱物の 分解を促進することが知られている.一方で,低分子有機酸は,その高いキレート形成能力により,二次鉱物へアルミニ ウムの供給を絶つことによって,アロフェンやイモゴライトといった二次鉱物の生成を阻害することが知られている.し かしながら,実際には関東ローム層や他の火山灰層中には二次鉱物が広く存在することから,低分子有機酸アルミニウム 化合物の分解作用は二次鉱物生成過程における重要な鍵となると考えられる.本研究では,クエン酸アルミニウムを唯一 の炭素源,エネルギー源とした寒天培地での培養実験によって,クエン酸アルミニウム分解微生物の存在を確認した.こ れらは,寒天を除いた液体培地中でも増殖可能であり,関東ローム層中での当該微生物数は,従属栄養細菌数との比較に おいて,最低でも 0.6 ~ 2.4 %存在することが確認された.地層中のクエン酸アルミニウム分解微生物と二次鉱物の鉛直 分布との一致は見られなかったものの,以上のことから,地層中の微生物活動が二次鉱物形成に関与していることが示唆 された. Keyword : Aluminum citrate, Degradation, Heterotrophs, Secondary minerals, Weathering 江東デルタ 江東デルタ地域 デルタ地域における 地域における有楽町層上部 における有楽町層上部の 有楽町層上部の砒素濃度分布 吉田 剛 1・楡井 久 2・田中 武 3・堀内誠示 4 1: 茨城大学大学院理工学研究科 〒310-8512 水戸市文京 2-1-1 e-mail: [email protected] 2: 茨城大学広域水圏環境科学教育研究センター 3: 田中環境開発株式会社 〒170-0005 4: パリノ・サーヴェイ株式会社 〒311-2402 潮来市大生 1375 豊島区南大塚 2 丁目 42 番 3-1104 〒375-0011 藤岡市岡之郷字戸崎 559-3 東京低地,有楽町層上部とそれらを覆う人工地層のヒ素の分布について論じた.研究地域では,有楽町層上部は下位よ り縄文海進高海面期の堆積物である粘土層,その後のデルタの発達に伴って堆積したシルト層,砂層,暗褐色シルト層に 区分できる.そして,その上位に人工地層が分布する. 各地層のヒ素の含有量と溶出量はそれぞれ,粘土層は 8.6~19.8mg/kg と 0.016~0.112mg/l,シルト層は 9.5~34.5mg/kg と 0.007~0.122mg/l,砂層は 6.6~32.2mg/kg と 0.001~0.044mg/l,暗褐色シルト層は 8.7~16.8mg/kg と 0.008~0.021mg/l, そして,人工地層は 2.1~26.2mg/kg と 0.000~0.021mg/l であった. 有楽町層上部の各地層のヒ素含有量には特筆するほどの差は認められなかったが,溶出量には各地層の上下の境界付近 で少なく,中部で多いことが認められた.自然状態において,地層境界付近は地下水の基底流動系に支配されやすく,地 下水水質の交換もされやすいため,溶出試験で少量を示したと考えられる Keywords:Koto delta, Yurakucho Formation, Arsenic concentration in sediment, Arsenic concentration in leachate, Groundwater flow 調査・ 調査・技術報告 新潟県中越地震と 新潟県中越地震と新潟地震による 新潟地震による新潟平野 による新潟平野の 新潟平野の液状化現象 仲川隆夫 〒950-0911 新潟市笹口 3-41 新潟平野では, 新潟県中越地震 (2004 年, M=6.8) と新潟地震 (1964 年, M=7.5) の際に,地盤が液状化している.両地震 による液状化現象について検討すると, ①いずれの地震でも, 液状化は, 主に旧河道や埋め立て地で発生した, ②発生に は, 地形要素に加え, 地震の規模・震央からの距離・地盤の年齢 (埋め立て後の年数)・緩い砂の層厚・地下水位が密接に 関係している, ③液状化に直接関与したのは, 地表付近に存在した帯水層のみで, その多くは周囲から独立した宙水であ ったと考えられる, ことなどが明らかになった. さらに, 与板町の信濃川の堤外地では, 新潟地震と新潟県中越地震によ って同じ地点が液状化していた.再液状化は, 比較的短い間隔で大きな地震を繰り返した場合にのみ発生し, 一度液状化 した地盤は, 急速に液状化しにくくなる (液状化直後を除く) と考えられる. Keyword: Niigata-ken Chuetsu Earthquake, damage, liquefaction, land condition, man-made strata, Niigata Plain 寄書 アスベスト問題 アスベスト問題と 問題と鉱物としての 鉱物としての同定 としての同定 赤井 純治 Keyword: Asbestos, Minerals, Chrysotile, Amphiboles アスベストは繊維状鉱物でありその物理的な性質からすぐれた素材と考えられ,3000 種以上の用途で使われてきた.こ の「奇跡の鉱物」から発がん性のあることがわかり一転して「静かな時限爆弾」へと変化した.小論では,アスベストの 鉱物としての基礎知識をまとめて解説した:大きく角閃石石綿と,蛇紋石アスベストの 2 種類があること,産状例,それら の結晶構造と多形の説明,化学組成,光学的性質,他.また,アスベスト問題と政治の問題,アスベストのサイクルと廃棄の問 題,総合的な対策の視点,さらに一般的な科学と社会の関係まで論及した.つぎに,偏光顕微鏡 XRD などでの具体的なアスベ ストの調べ方の概略について説明した. 2004 年 12 月 26 日に発生した 発生したインド したインド洋地震津波 インド洋地震津波による 洋地震津波によるタイ によるタイ王国及 タイ王国及び 王国及びスリランカ民主社会主義共和国 スリランカ民主社会主義共和国における 民主社会主義共和国における被害 における被害 吉原 浩 Keyword: Tsunami, Indian Ocean, Disaster, Thailand, Sri Lanka 2004 年 12 月 26 日,スマトラ沖で発生した地震(M9.0)によって,インド洋沿岸諸国では津波による多大な被害が発生し た.タイ及びスリランカ両国では、津波高さが数 m を越える被災地域では鉄筋コンクリート造の建物の壁と柱のみが残さ れていたこと,津波の高さが 10m を越える地域では 2 階部分まで建物が損傷していたことなど、家屋等の被害状況等の概 要を紹介した.両国のインド洋沿岸には大規模な工業施設はなかった.そのため,小規模な石油タンクの被害はあったが, 石油類や薬品類の漏洩による海洋の汚染は発生しなかったようである. 地質汚染・ 地質汚染・医療地質・ 医療地質・社会地質学に 社会地質学に関する研究室紹介 する研究室紹介 茨城大学広域水圏環境科学教育研究 茨城大学広域水圏環境科学教育研究センター 広域水圏環境科学教育研究センター地質環境 センター地質環境研究室 地質環境研究室( 研究室(楡 井研究室 井研究室) 究室) 楡井 久 Keyword: Geo-pollution, Geoenvironments, Geological Hazards, Sustainability 茨城大学広域水圏環境科学教育研究センターは、平成9年に茨城大学理学部付属臨湖実験所が発展的に改組され、陸水 域環境自然史部門・沿岸域環境形成部門の2研究部門からなる研究・教育機関となる。平成10年に(陸水域環境自然史 部門地質環境系・生物環境系)と沿岸域環境形成部門(地球環境系・沿岸環境系)といった現在の研究分野が確立される。 陸水域環境自然史部門地質環境研究室では、地質汚染科学・医療地質学・社会地質学に関われる研究・指導が行われて きた。その研究活動を理解するために学生の氏名と学士論文・修士論文・博士論文を紹介する。