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A Pattern Language for Creative Presentations
プレゼンテーション・パターン
創造的プレゼンテーションのパターン・ランゲージ
Ver. 0.50
Presentation Patterns Project
Presentation Patterns
プレゼンテーション・パターン
創造的プレゼンテーションのパターン・ランゲージ
Ver. 0.50
Presentation Patterns Project
あらゆる分野・領域でイノベーションが求められている現在、自分の考えや新しい
アイデアについてプレゼンテーションすることが、ますます重要になっています。そ
こで求められているプレゼンテーションというのは、単なる「伝達」ではなく、そ
のこと自体が新しい「創造」であるような「創造的プレゼンテーション」(Creative
Presentation)ではないでしょうか。
創造的プレゼンテーションは、聞き手が自身の経験・知識を混ぜ合わせた新しい認識
や発見をつくることを誘発し、次なる行動を生み出すことで、未来をつくリ出します。
そのような創造的プレゼンテーションは、一体どのように実現できるのでしょうか。
本冊子『Presentation Patterns』では、創造的プレゼンテーションのデザインの秘訣
を「プレゼンテーション・パターン」というかたちにまとめました。ここには、プレゼ
ンテーション・デザインの視点や方法が 34 個収録されています。
本冊子のプレゼンテーション・パターンを、ぜひみなさんのプレゼンテーション・デ
ザインに活かしてみてください。
プレゼンテーション・パターン プロジェクト
プレゼンテーション・パターンとは
プレゼンテーション・パターンは、「創造的プレゼンテーション」の秘訣を言語化し
たものです。創造的プレゼンテーションには、想いが凝縮されたメッセージがあり、聞
き手の想像力をかきたて、新しい発見をもたらす工夫がなされています。そのようなプ
レゼンテーションのデザインにおける視点や方法をまとめたものが、プレゼンテーショ
ン・パターンです。
本冊子には、プレゼンテーション・パターンが全部で 34 個収録されています。
中心には「創造的プレゼンテーション」(No.0) があり、それに続いて、創造的プレゼ
ンテーションの本質である「メインメッセージ」(No.1)、
「心に響くプレゼント」(No.2)、
「成
功のイメージ」(No.3)が続きます。
その後のパターンは、大きく分けて 3 つのまとまりに分かれています。第一のまと
まりは No.4 から No.12 までの「内容・表現」に関するパターン、第二のまとまりは
No.13 から No.21 までの「魅せ方」に関するパターン、第三のまとまりは No.22 から
No.30 までの「振る舞い」に関するパターンです。
そして最後に、「独自性の追求」(No.31)、「魅せ方の美学」(No.32)、「生き方の創造」
(No.33) という 3 パターンで締めくくられます。
これらのパターンが相互に関係し合うことで、創造的プレゼンテーションのデザイン
を支えます。
12. 魅力のちょい足し
11.
31. 独自性の追求
適切な情報量
10.
ぶんび両道
9. はてなの扉
14. リアリティの演出
15. 参加の場づくり
13. イメージの架け橋
8. 驚きの展開
7. メリハリ
16. 細部へのこだわり
2. 心に響くプレゼント
6. 図のチカラ
17. 表現のいいとこどり
5. ことば探し
0. 創造的プレゼンテーション
18. 不快感の撲滅
4. ストーリーライン
33. 生き方の創造
1. メインメッセージ
3. 成功のイメージ
19. スキマをつくる
30. 終わりが始まり
20. きっかけスイッチ
22. 場の仕上げ
29. 即興のデザイン
21. テイクホームギフト
23. 成功のリマインド
28. 世界 への導き
24. 自信感の構築
27. ひとりひとりに
32. 魅せ方の美学
26.
25. キャスト魂
最善努力
プレゼンテーション・パターンの全体像
プレゼンテーション・パターンの読み方
個々のプレゼンテーション・パターンは、ある一定の形式で記述されています。ここ
では、パターンがどのような形式で記述されているのかについて説明しておくことにし
ます。
各パターンの左ページには、そのパターンの内容をつかむための概要が書かれていま
す。上から順にみていくと、
「パターン番号」、
「パターン名(日本語)」、
「パターン名(英
語)」、「導入文」、「イラスト」、「引用文」となります。
パターン番号
No.
No.2
心に響くプレゼント
Touching Present
パターン名 ( 日本語 )
パターン名 ( 英語 )
プレゼンテーションは、聞き手へのプレゼント。
概要説明
イラスト
引用文
「聞き手を念頭に置かずにプレゼンテーションの設計をすることは、『関係者各位』
に宛ててラブレターを書くに等しい。」̶ Ken Hammer
まずページの左上に書いてあるのが、各パターンにつけられた「パターン番号」
(Pattern Number)です。それに続くのが、日本語と英語の「パターン名」(Pattern
Name) です。パターン名は、パターンの内容を適切に表し、かつ魅力的で覚えやすい
ようにつけられています。
その次に来る「導入文」(Introductory Sentence)、「イラスト」(Illustration)、および
「引用文」(Quotes) は、そのパターンの内容を生き生きとイメージできるようにするた
めのものです。
各パターンの右ページには、そのパターンの詳細、つまり学びのコツの詳細が書かれ
ています。上から順にみていくと、
「状況」、
「問題」、
「フォース」、
「解決」、
「アクション」、
「結果」となります。
状況 (Context)
プレゼンテーションの「メインメッセージ」(No.1)は決まり、どのようにして伝
えるのかを考えている。
▼その状況において
伝えたい相手のことを考えていないプレゼンテーションは、自分が満足す
るだけのものになってしまう。
・ 自分が伝えたいことと相手が聞きたいことは、必ずしも一致しない。
問題 (Problem)
フォース (Forces)
・ 人は話を聞くとき、その内容だけでなくその想いも受け取っている。
・ プレゼンテーションの準備の段階には、聞き手となる人はいない。
▼ そこで
このプレゼンテーションが誰に向けてのものなのかを意識し、その人が喜
ぶような魅せ方を考える。
まず誰が聞き手なのかを把握し、その聞き手がどのようにすると喜ぶかを考える。
解決 (Solution)
アクション (Actions)
初めての相手の場合には、その周囲の人や関係者から、どうすればその人たちが
喜ぶのかを聞いてみるとよいだろう。
▼その結果
聞き手は共感を持って聞くことができるようになるので、内容や話し手に対して
より興味を持つようになる。すると、話し手にとって話しやすい空気になり、話
し手の伝えたいメッセージがより届きやすくなる。
結果 (Consequences)
まず最初に、そのパターンをどのようなときに使うのかという「状況」(Context)が
書かれています。区切りを示す「▼ その状況において」の後、その状況において生じ
やすい「問題」(Problem)が、太字で書かれています。その下には、その問題の解決
を困難にしている原因が「フォース」(Forces)として示されています。フォースとは、
物事や人間についての変えることができない力や法則性のことです。問題の解決が困難
なのは、これらの諸力をすべて解決しなければならないからです。
そして、区切りを示す「▼ そこで」の後、その問題に対する「解決」(Solution)の
考え方が、太字で書かれています。「解決」は抽象的に書かれており、それを具体的な
レベルに落とすとどうなるかが、「アクション」(Actions)の部分に書かれています。
再び区切りを示す「▼ その結果」が来た後、このパターンを適用したときの予想さ
れる「結果」(Consequences) が書かれています。
パターン・ランゲージの考え方
プレゼンテーション・パターンの記述方法についての補足
プレゼンテーション・パターンは、「パターン・ランゲージ」という考え方にもとづ
いてつくられています。パターン・ランゲージは、建築家のクリストファー・アレグザ
ンダーが提唱した知識記述の方法です。アレグザンダーは、建物や街の形態に繰り返し
現れる法則性を「パターン」と呼び、それを「言語」(ランゲージ)として記述・共有
する方法を考案しました。彼が目指したのは、街や建物のデザインについての共通言語
をつくり、誰もがデザインのプロセスに参加できるようにすることでした。
パターン・ランゲージでは、デザインにおける多様な経験則をパターンという単位に
まとめます。パターンには、デザインにおける「問題」と、その「解決」の発想が一対
となって記述され、それに名前が付けられます。パターン・ランゲージの利用者には、
自らの状況に応じてパターンを選び、そこに記述されている抽象的な解決方法を、自分
なりに具体化して実践することが求められます。
パターン・ランゲージを記述・共有する意義は、大きく分けて二つあります。一つは、
熟練者がもつ経験則を明文化しているので、初心者であっても、洗練されたやり方で問
題解決ができるようになるという点です。もう一つは、デザインに関する共通の語彙(ボ
キャブラリー)を提供するので、これまで指し示すことができなかった複雑な関係性に
ついて簡単に言及できるようになるという点です。
このようなパターン・ランゲージの考え方は、建築の分野以外でも、ソフトウェア開
発を始めとして、インタラクション・デザインや組織デザイン、教育のデザインなどに
応用され始めています。パターン・ランゲージの考え方は、実践知を共通言語化する方
法として、今後もいろいろな分野へ応用されると考えられます。
本冊子で示した「プレゼンテーション・パターン」は、創造的なプレゼンテーション
のためのパターン・ランゲージです。ぜひ、プレゼンテーション・パターンを自らのプ
レゼンテーションのデザインに活かすとともに、パターン・ランゲージという方法の可
能性についても考えてみてほしいと思います。
•『時を超えた建設の道』(クリストファー・アレグザンダー , 鹿島出版会 , 1993)
•『パタン・ランゲージ:環境設計の手引』(クリストファー・アレグザンダー , 鹿島出
版会 , 1984)
•「パターン・ランゲージ 3.0:新しい対象 × 新しい使い方 × 新しい作り方」(井庭 崇 ,
情報処理 , Vol.52 No.9, 2011)
中心パターン
(No.0)
0
創造的プレゼンテーション
No.
No.0
創造的プレゼンテーション
Creative Presentation
プレゼンテーションとは、
単なる “ 伝達 ” ではなく、“ 創造 ” の営みである。
「デザインは単なる見え方や感じ方ではない。デザインはどのように機能するかで
ある。」ー Steve Jobs
自分が持っている知識やアイデアによって、未来に変化をもたらしたいと
考えている。
▼ その状況において
知識やアイデアを、他の人に単に「伝達」しようとするだけでは、その人
たちの心に響かせたり、行動を促したりすることは難しい。
・ 与えられた知識は、すでに自分がもっている他の知識と結びつくことで、初め
て「理解する」ことができる。
・「理解する」ことは、「信じる」ことではない。
・「信じる」ことなしに、自発的に行動に移すことは、まずない。
▼ そこで
プレゼンテーションを、「伝達」の場ではなく「創造」の場であると捉え直
し、聞き手の想像をかき立て新しい認識・気づきを生み出す「創造的なプ
レゼンテーション」となるようにデザインする。
創造的なプレゼンテーションのデザインでは、聞き手を突き動かす「メインメッ
セージ」(No.1)を徹底して考え、それを「心に響くプレゼント」(No.2)となる
ように細部までつくり込んでいく。そのとき、聞き手に創造(発見の連鎖)が起
きているという「成功のイメージ」(No.3)を常に持ち、そのイメージに近づくよ
うに意識することが大切である。
▼ その結果
聞き手の心に響き、行動を促すような「創造的プレゼンテーション」が実現する
ことで、未来に何らかの変化をもたらすことができるだろう。さらに、その準備・
実践・反応を通じて、自分自身にも何らかの創造(発見の連鎖)が起きるはずで
ある。このように、創造的プレゼンテーションでは、聞き手が変わるだけでなく、
自分も変わりながら未来を変えていくことになる。
A Pattern Language for
Creative Presentations
創造的プレゼンテーションのコア・パターン
(No.1∼3)
1
メインメッセージ
2
心に響くプレゼント
3
成功のイメージ
No.
No.1
メインメッセージ
Main Message
今、最も伝えたいことは何だろうか?
「音を出すことで何を伝えたいのか。技術的なところで自分の立派さを追い求め、
そこに価値をおいているだけだと、どんなにうまくても、音楽にはならない。」
ー久石譲
プレゼンテーションをつくるにあたり、何を伝えるべきかを考えている。
▼ その状況において
伝えたいことがたくさんあって、なかなかまとまらない。
・ 自分の中で整理されていない情報は他の人に伝わらない。
・ 伝えたいことと他の人に理解してほしいことは必ずしも一致しない。
・ 話をまとめるためには、手間と時間がかかる。
▼ そこで
最も伝えるべきメッセージをひとつに絞り、そのメッセージに関係する内
容だけを取り上げるようにする。
伝えたいことがいくつかある場合には、その中でどれが一番伝えたいのか/伝え
るべきなのかを考え、一つに絞る。そして、そのメインメッセージをより適確に
表すとどういう内容となるのかを考える。
▼その結果
聞き手にとって、何がメッセージなのかがわかりやすいプレゼンテーションにな
る。また、作り手にとっても、メッセージが明確になることで、「ストーリーライ
ン」(No.4)を考えやすくなる。
No.
No.2
心に響くプレゼント
Touching Present
プレゼンテーションは、聞き手へのプレゼント。
「聞き手を念頭に置かずにプレゼンテーションの設計をすることは、『関係者各位』
に宛ててラブレターを書くに等しい。」— Ken Hammer
プレゼンテーションの「メインメッセージ」(No.1)は決まり、どのように
して伝えるのかを考えている。
▼その状況において
伝えたい相手のことを考えていないプレゼンテーションは、自分が満足す
るだけのものになってしまう。
・ 自分が伝えたいことと相手が聞きたいことは、必ずしも一致しない。
・ 人は話を聞くとき、その内容だけでなくその想いも受け取っている。
・ プレゼンテーションの準備の段階には、聞き手となる人はいない。
▼ そこで
このプレゼンテーションが誰に向けてのものなのかを意識し、その人が喜
ぶような魅せ方を考える。
まず誰が聞き手なのかを把握し、その聞き手がどのようにすると喜ぶかを考える。
初めての相手の場合には、その周囲の人や関係者から、どうすればその人たちが
喜ぶのかを聞いてみるとよいだろう。
▼その結果
聞き手は共感を持って聞くことができるようになるので、内容や話し手に対して
より興味を持つようになる。すると、話し手にとって話しやすい空気になり、話
し手の伝えたいメッセージがより届きやすくなる。
No.3
成功のイメージ
Success Imaging
プレゼンテーションによって聞き手がどうなることが
理想なのか。そのイメージを持つ。
「成功へのはしごを登り始める前に、そのはしごが自分の望むチャンスの窓にか
かっていることを確認せよ。」—Tracy Brinkmann
「できると思ったら、できる。できないと思えば、その通りになる。」—Mary Kay
Ash
「メインメッセージ」(No.1)をどのように「心に響くプレゼント」
(No.2)
にするかという構想がまとまり、そのプレゼンテーションによって何を成
し遂げたいのかを考えている。
▼ その状況において
目的が定まらなければ、どのようなつくり込みを行えばよいのかが決まら
ない。
・ 同じ内容でも、いろいろな魅せ方が可能である。
・ どこを目指してよいのかが不明確であると、ブレやすくなってしまう。
▼ そこで
これからつくるプレゼンテーションが成功している場面をイメージする。
プレゼンテーションをしている自分と、それを見ている聞き手の反応の両方を思
い浮かべ、それを目指して準備を進める。「成功のイメージ」は全過程を通じて重
要なので、「成功のリマインド」(No.23)を行うことで、そのイメージを抱き続け
るとよい。
▼その結果
明確になった「成功のイメージ」を持つことで、ブレることなく実現に近づいて
いくことができる。また、プレゼンテーション全体の統一感も生むことができる。
A Pattern Language for
Creative Presentations
「内容・表現」に関するパターン
(No.4∼12)
4
ストーリーライン
5
ことば探し
6
図のチカラ
7
メリハリ
8
驚きの展開
9
はてなの扉
10
ぶんび両道
11
適切な情報量
12
魅力のちょい足し
No.4
ストーリーライン
Story Line
語り部として魅力的に語る。
「『ひとつひとつの文章を簡潔かつ直接的に書き、それをつなぎさえすればわかり
やすい文書になる』と思い込んでいる方はいないでしょうか。」— Barbara Minto
「メインメッセージ」(No.1)を決め、それをどのような流れで伝えるのか
を考えている。
▼その状況において
説明すべき内容をただ並べただけでは、いまいちつかみどころのないプレ
ゼンテーションになってしまう。
・ 情報は、ただの羅列よりも、ストーリー(物語)に埋め込まれている方が理解・
記憶しやすい。
・人は話されたことを前から順に理解していく。
▼ そこで
メッセージが魅力的に伝わるストーリーをつくる。
「メインメッセージ」(No.1)を伝えるための魅力的なストーリーラインを考える。
ストーリーをつくるときの基本は、まずは聞き手が受け入れることができる前提
の話から入る。そして、聞き手がなぜこのプレゼンを聞く必要・価値があるのかを、
好奇心に訴えるように示す。それから、メインメッセージにつなげるための流れ
を考える。そのとき、「メリハリ」(No.7)をつけるために、「驚きの展開」(No.8)
や「はてなの扉」(No.9)などの工夫を加えると、よりドラマティックなストーリ
ーとなる。
▼その結果
聞き手はストーリーに乗って、自然にメッセージを受け取ることになる。また、
作り手にとっては、ストーリーから外れるような情報を省かざるをえなくなるの
で、シンプルでわかりやすいプレゼンテーションにすることができる。
No.5
ことば探し
Words Exploration
想像力をかき立て、人を突き動かすことばがある。
「世の中は言葉で成り立っている。人間性を磨くにはまず、基本の言葉を正すこ
と。」ー美輪明宏
「難しく書けば(言えば)、立派なことを書いた(言った)気になるのは、勘違い
も甚だしいのですね。難しいことでも簡単にわかりやすく書いたり、話したりす
ることこそ、実は難しく、高度な能力なのです。」ー池上彰
「メインメッセージ」(No.1)を伝えるための「ストーリーライン」
(No.4)
ができ、内容の具体的な表現について考えている。
▼その状況において
魅力のないことばや、聞き手が知らないことば、自分に似合わないことば
を使ってしまう。
・ 自分が思っていることを正確に人に伝えることは難しい。
・ 考えながらつくった文は自分だけにとってわかりやすいものになってしまう。
・ 自分にとってわかりやすいことばでも、他の人にとってわかりやすいとは限ら
ない。
▼ そこで
自分と聞き手がともに魅力的だと思うようなことばを探し、選んでいく。
自分の伝えたいことをより魅力的に表すことばを、本や Web などを見ながら考え
ていく。そして、そのことばが聞き手にとっても魅力的かどうかも考える。自信
が持てないときは、聞き手の分野・立場に近い人に話してみて、魅力的かどうか
/わかりやすいことばかどうかをチェックしてみるとよい。
▼その結果
親近感や魅力のあることばで語られることで、聞き手はプレゼンテーションに共
感を持って理解するようになる。また、作り手にとっても、ことば探しをしてい
るうちに表現のバリエーションを拡げることができる。
No.6
図のチカラ
Visual Power
百聞は一見にしかず。
「百聞は一見に如かず。」ーことわざ
「あなたのプレゼンテーションのビジュアルが際立てば際立つ程、人々はそれを忘
れないだろう。そして何よりも、人々はあなたのことを忘れないだろう。」ー Paul
Arden
「メインメッセージ」(No.1)を伝えるための「ストーリーライン」
(No.4)
ができ、内容の具体的な表現について考えている。
▼その状況において
ことばを重ねていくだけでは、内容が複雑・過剰になってしまい、わかり
にくくなってしまう。
・ ことばで伝わりやすい内容とビジュアルで伝わりやすい内容がある。
・ 意図が不明確な情報は、わかりづらさを増してしまう。
・ 視覚は五感の中で最も強力な感覚である。
▼ そこで
伝えたい内容が一目でわかるような図をつくる。
ビジュアル化する意義を考え、伝えたい情報をどのように表現することが適切か
を考える。複数の要素の関係性を示したい場合には関係図をつくり、全体像を示
したい場合には、全体の配置を把握できる地図(マップ)を描く。
▼その結果
聞き手が内容を理解しやすいだけでなく、印象にも残りやすくなる。また、作り
手にとっては、内容を可視化することを通して情報や構成の整理をすることにな
るので、よりクリアなプレゼンテーションにつながる。
No.7
メリハリ
Dramatic Modulation
変化に富むリズムで、時間展開をデザインする。
「メインメッセージ」(No.1)を伝える「ストーリーライン」(No.4)を魅
力的にしたいと思っている。
▼ その状況において
抑揚のない単調なプレゼンテーションになってしまう。
・ 単調な時間が続くと、人は飽きてしまう。
・ 重要なところとそうでないところの区別は、すぐにはできない。
▼ そこで
プレゼンテーションにメリハリがつくように工夫する。
表現や話し方において、重要なところを強調し、そうでないところを弱めること
で抑揚をつける。
▼その結果
聞き手を「ストーリーライン」(No.4) にうまく乗せることができるので、「メイン
メッセージ」
(No.1)がつかみやすくなる。また、作り手にとっては、聞き手を巻
き込む雰囲気を生み出すので、より話しやすくなる。
No.8
驚きの展開
Unexpected Evolution
ときには、聞き手の予想の外側へ。
「メインメッセージ」(No.1)を伝える「ストーリーライン」(No.4)を魅
力的にしたいと思っている。
▼その状況において
インパクトのないプレゼンテーションになってしまう。
・ 単調な時間が続くと、人は飽きてしまう。
・ 単調な変化は、印象に残りにくい。
▼ そこで
聞き手が何を予想しているかを考えて、そこからあえて外すことで、意外
性をもたらし、印象づける。
まず、プレゼンテーションのどこで意外性のスパイスを入れるのかを考える。例
えば、冒頭の「つかみ」の部分や、メインメッセージにつながる展開部で用いる
ことができるだろう。どのような場合でも、聞き手がどのような予想をしている
のかを想定して、そこから外す。
▼その結果
聞き手は、意外性のなかで新しい発見をしたり、今までになかった視点を得たり
することができる。また、作り手は聞き手の予想の一歩先へ行こうとするので、
常に自分の視野を広げ続けることができる。
No.9
はてなの扉
Mysterious Doors
次々と謎が解決していく爽快感を。
「僕たちは前進を続け、新しい扉を開き、新たなことを成し遂げていく。なぜなら、
好奇心が旺盛だからだ。好奇心があれば、いつだって新たな道に導かれるんだ。」
ー Walt Disney
「興味が続くかぎり集中力は続くものだ。」ー羽生善治
「メインメッセージ」(No.1)を伝える「ストーリーライン」(No.4)を魅
力的にしたいと思っている。
▼その状況において
聞き手を惹きつけ続けることができない。
・ 単調な時間が続くと、人は飽きてしまう。
・ 面白いと思っていないものには、惹きつけられない。
▼ そこで
聞き手の「その先を知りたい」という気持ちが、最初から最後までどんど
ん続くような構成をつくる。
まず、聞き手は何を知っていて、何を知らないかを考える。次に、それを知った
上で聞き手がどこに興味を持つか考える。また、聞き手がすでに知っていること
を見せるだけでなく、知らないであろう新しいことを見せ、好奇心をくすぐるよ
うな展開にする。
▼その結果
聞き手は受け身になって話を聞くのではなく、好奇心をもってプレゼンテーショ
ンを聞くことができる。また、作り手にとっては、「ストーリーライン」(No.4)
を綿密に詰める機会となる。
No.10
ぶんび両道
Beautiful Clarity
ぶん び
分 美 両道 —「分かりやすさ」と「美しさ」の両方の道を究める。
「メインメッセージ」(No.1)がより魅力的に伝わるように、表現のブラッ
シュアップをしている。
▼その状況において
わかりやすいけれども美しさに欠けるか、美しいけれどもわかりにくい表
現になりやすい。
・ ベタに説明するとわかりやすいが、美しくないことが多い。
・ 見た目を優先したデザインは美しいが、わかりにくことが多い。
▼ そこで
わかりやすさと美しさが両立するように、表現を修正していく。
「この表現で伝えたいことがうまく伝わるか」ということと、「この表現は魅力的
に見えるか」の両方を満たすかをチェックし、その両方が満たされるような表現
を模索する。わかりやすさと美しさは、必ずしも相反するものではない。
▼その結果
聞き手のことを考えてつくられるので、わかりやすく引き込まれやすいプレゼン
テーションに仕上がる。また、わかりやすさと美しさの両方を兼ね備えた表現に
近づける中で、わかりやすさと美しさのバランス感覚が磨かれていく。
No.11
適切な情報量
Perfect Volume
多すぎても、少なすぎても、わかりにくい。
「洗練を突きつめると簡潔になる。」ー Steve Jobs(Leonardo da Vinci の引用として)
「単純なことを複雑にするのは普通のこと。複雑なものを単純に、ものすごく単純
にする、それがクリエイティビティである。」ー Charles Mingus
「メインメッセージ」(No.1)がより魅力的に伝わるように、表現のブラッ
シュアップをしている。
▼その状況において
情報量が多すぎても少なすぎても、伝えたいことがうまく伝わらない。
・ 情報が多すぎると、どの情報に注目すればよいのかわからない。
・ 情報が少なすぎると、十分に内容を理解できない。
▼ そこで
全体から部分のあらゆるレベルにおいて、情報量が適切になるように調整
する。
まず、プレゼンテーション全体における情報量が聞き手にとって適切な量かどう
かをチェックする。最初必要だと考えて入れていた情報の中にも、必ずしも不可
欠でないものも含まれているだろう。それらは思い切って削る。逆に、理解の前
提となるような情報で不足しているものはないかをチェックし、見つかった場合
にはそれを加える。このようなチェックと調整を、全体だけでなく部分ごとにも
行っていく。
▼その結果
内容の理解に不要な情報がなくなるので、聞き手はメッセージの本質を捉えやす
くなる。また、プレゼンテーションの構成や内容がシンプルになるので、混乱が
生じる可能性を減らすこともできる。
No.12
魅力のちょい足し
Slight Enchantment
ちょっとした魔法で、世界がまったく変わって見える。
「メインメッセージ」(No.1)がより魅力的に伝わるように、表現のブラッ
シュアップをしている。
▼ その状況において
このままでも問題はないが、いまいち魅力に欠けていると感じる。
・ 完成したと思っているものに手を加えることにはためらいがある。
・ 目的もなくただ飾り立てるだけでは、魅力的なものにはならない。
▼ そこで
内容は変更せずに、表現における付加的な魅力を加えていく。
魅せ方についての工夫を考えて、付加していく。ただし、単に冗長性を増すものや、
混乱を生みそうなものは避ける。
▼ その結果
最後の一息を吹きかけることで、プレゼンテーションの魅力がさらに増す。また、
このことにより、そのプレゼンテーションに対する自信につながる。
A Pattern Language for
Creative Presentations
「魅せ方」に関するパターン
(No.13∼21)
13 イメージの架け橋
14 リアリティの演出
15
参加の場づくり
16
細部へのこだわり
17
表現のいいとこどり
18
不快感の撲滅
19 スキマをつくる
20 きっかけスイッチ
21 テイクホームギフト
No.13
イメージの架け橋
Imagination Bridge
喩えや例をつかってわかりやすく。
「雄弁は、君が話す人に真実を完全にわかりやすい言語に翻訳する力である。」
ー Ralph Waldo Emerson
「コミュニケーションの基本は何かを共有すること。」ー茂木健一郎
聞き手にとって生き生きとした印象的な経験になるように、「心に響くプレ
ゼント」(No.2)のつくり込みを行っている。
▼その状況において
なんとかして伝えようと、同じようなことばを重ねてしまう。
・ 同じことばで説明を繰り返しても、人の理解は深まらない。
・ 人に伝えたい、という焦りはことば数を多くする。
・ 自分が思っていることを他の人に正確に伝えることは難しい。
▼そこで
聞き手が想像できるような喩えや具体例を交えて表現する。
相手が知っている身近なものに喩えて表現する。また、具体例をあげることで理
解しやすくする。
▼その結果
聞き手にとってより親近感のある表現が使われることで、内容を理解しやすくな
り、同時に共感もしやすくなる。作り手にとっても、ことばを重ねて念入りに説
明しなくて済むので、それ以外のところに時間と労力を割くことができるように
なる。
No.14
リアリティの演出
Reality Sharing
つかみきれない「感覚」を届ける。
聞き手にとって生き生きとした印象的な経験になるように、「心に響くプレ
ゼント」(No.2)のつくり込みを行っている。
▼ その状況において
ことばや図でいくら説明しても、経験や感覚をうまく伝えることができな
い。
・ ことばや図で表現できることには限界がある。
・ 経験や感覚を他の人に的確に伝えるのは難しい。
・ ことばや図では限られた感覚にしかうったえかけられない。
▼ そこで
共有したい経験や感覚のリアリティを、聞き手が自分自身で感じることが
できる演出をする。
会場に実物を持ってきたり、映像や写真を効果的に使ったりすることで、聞き手
にリアリティを感じてもらえるように工夫する。
▼ その結果
聞き手は、作り手が共有したいと考えている経験や感覚を、自分自身で感じるこ
とができる。その結果、深く理解できるだけでなく、印象にも残りやすくなる。
さらに、作り手にとっても、共有した感覚を前提に話を展開することができるよ
うになる。
No.15
参加の場づくり
Participation Driver
聞き手とともにつくり上げるプレゼンテーション。
聞き手にとって生き生きとした印象的な経験になるように、「心に響くプレ
ゼント」(No.2)のつくり込みを行っている。
▼ その状況において
聞き手が受け身になり、積極性やその人らしさを失ってしまう。
・ 一方的に話している時間が長ければ長くなるほど、参加しようという意識が
薄れる。
・ 話を一方的に聞くだけでは、退屈になってしまう。
▼ そこで
聞き手がただ受け身で聞くのでなく、参加できるような仕掛けや場面をつ
くる。
聞き手との隔たりをなくし、参加しやすい場に変える。例えば、会場のレイアウ
トを工夫したり、BGM を流してムードをつくったりすることによって、参加しや
すくする。そして、参加を促す投げかけや対話の機会を用意することで、聞き手
ともにつくり上げるプレゼンテーションになる。
▼ その結果
聞き手は、ワクワクしながら自発的にプレゼンテーションに参加するようになる。
また、一緒に場をつくるという経験自体が、聞き手にとって特別なものとなり、
印象に残りやすくなる。さらに、作り手にとっては、聞き手の参加や反応から、
新しい発見を見出すこともあるだろう。
No.16
細部へのこだわり
Quality in Details
全体のクオリティは細部に宿る。
DINOSAUR
「神は細部に宿る。」ー Mies van der Rohe
「一方はこれで十分だと考えるが、もう一方はまだ足りないかもしれないと考える。
そうしたいわば紙一枚の差が、大きな成果の違いを生む。」ー 松下幸之助
「心に響くプレゼント」(No.2)として、さらによくしたいと思っている。
▼その状況において
全体が出来上がってくると、そこで作業の手が緩んでしまう。
・ 終わりが見えてくると安心してしまう。
・ 詰めの作業は、つらく厳しい。
▼ そこで
全体を踏まえた上で、細部の修正にこだわりをもって取り組む。
プレゼンテーション全体が見えてきて初めて、個々の部分の役割や意味をより明
確に特定できるようになる。また、全体をみることで、流れに違和感を感じる部
分などが見えてくる。これらの調整・修正を行い、それからまた全体をみて整合
性をチェックする。時間がある限り、この全体と部分の行ったり来たりをしなが
ら調整・修正をくり返し、こだわり抜く。
▼ その結果
聞き手に重要なポイントやメッセージが伝わりやすくなるだけでなく、全体の質
の向上へつながる。また、納得してプレゼンテーションに臨むことができるので、
より想いを込めてプレゼンテーションをすることができる。
No.17
表現のいいとこどり
Expression Coordinator
いいものを組み合わせて、自分のものにする。
「優れたアーティストは真似る。偉大なアーティストは盗む。」ー Pablo Picasso
「もっとよい方法があるはずだ。それを見つけなさい。」ー Thomas Alva Edison
「心に響くプレゼント」(No.2)として、さらによくしたいと思っている。
▼ その状況において
自分の伝え方にバリエーションがなく、いつも同じようなプレゼンテーシ
ョンになってしまう。
・ 自分ひとりで思いつくアイデアには限界がある。
・ 人は慣れた方法に頼りがちである。
・ 外に目を向けなければ新しいアイデアは生まれにくい。
▼ そこで
いろいろな人のプレゼンテーションをみて、自分に活かせそうな魅せ方を
取り入れ、実践してみる。
いろいろな人のプレゼンテーションを見て、表現の仕方や話し方、場のつくり方
などを研究する。そして、その中でよいと思うものを取り入れて実践し、自分な
りの方法に変えていく。
▼ その結果
伝えたいことに合わせた様々な表現を身につけることができ、聞き手を飽きさせ
ない魅力的なプレゼンテーションができるようになる。
No.18
不快感の撲滅
Bad Habit Removing
自分の知らない自分を知る。
「心に響くプレゼント」(No.2)として、さらによくしたいと思っている。
▼その状況において
自分の気付かない癖や動作で聞き手に不快感を与えてしまう。
・ 人には多かれ少なかれ話し方や動作に癖や特徴がある。
・ 人が不快感を覚えると、話に集中できなくなる。
・ 自分の癖を自分で気づくことは難しい。
▼ そこで
自分の不快な点を知る機会をつくり、それらをなくす努力をする。
他の人から意見をもらって、癖や動作を知り、それを直す努力をする。あるいは、
ビデオカメラで自分を撮って研究してみるのもよいだろう。
▼その結果
聞き手は、プレゼンテーションの内容に集中することができる。また、自分の発
表の姿が聞き手からどう見えているのか視点を持つことができる。
No.19
スキマをつくる
Significant Void
意味のある省略をする。
「少ない方が豊かである。」ー Ludwig Mies van der Rohe
「『空』は完全な『無』と概念的に混同されやすいが、実際には無限の可能性を蔵
している。」ー鈴木大拙
「心に響くプレゼント」(No.2)によって、聞き手の能動的な反応や行動を
引き出したいと思っている。
▼ その状況において
情報を詰め込みすぎると、聞き手は理解することに必死になってしまう。
・ 1 から 10 まで説明されると、人は自由に考えられなくなってしまう。
・ 情報量は人の理解度に影響する。
▼ そこで
すべてを詳細に言うのではなく、聞き手が想像しうる余地をつくる。
聞き手の想像力でプレゼンテーションの内容を補えるように、意味が限定されす
ぎない抽象化を行う。絶妙なスキマのつくり方は、歌詞や詩、小説などの表現か
ら学ぶことができる。
▼ その結果
聞き手にとっては、省かれているところを、想像力を使って自分なりの解釈をす
る楽しみが生まれる。同時に、聞き手同士でも互いの解釈の違いを共有し合うと
いうコミュニケーションを誘発する。つまり、聞き手の能動的な反応や行動を引
き出せたということになる。
No.20
きっかけスイッチ
Boot Switch
次の行動に移すためのきっかけづくり。
「教えるべきは知識ではない。知識を得る方法だ。」ー Thomas Arnold
「心に響くプレゼント」(No.2)によって、聞き手の能動的な反応や行動を
引き出したいと思っている。
▼その状況において
プレゼンテーションの内容は理解してもらえたが、自分とは関係がないと
思われてしまう。
・ 自分とは関係が薄く感じられる内容に共感することは難しい。
・ 共感が持てないことからきっかけを見出すことは難しい。
▼ そこで
聞き手が自ら考え、行動を踏み出すためのきっかけをプレゼンテーション
に含める。
こうして欲しいという答えを伝えることは簡単である。しかしそれでは聞き手の
考えや行動を促すことは難しい。聞き手の意欲をかきたて、自発的にこれから自
分はどうしていきたいかを考えられるようなプレゼンテーションをデザインする。
▼ その結果
聞き手にとっては、プレゼンテーションを聞き終わった後でも自分で考え続けた
り、実際に行動に移したりするようなきっかけになる。つくり手にとっても、自
分の伝えたいメッセージが聞き手にとってどのような価値があるものなのかを客
観的に考えるきっかけになる。
No.21
テイクホームギフト
Take-Home Gift
自分の考え・アイデアが自然に広まる「お土産」をつくる。
「心に響くプレゼント」(No.2)によって、聞き手の能動的な反応や行動を
引き出したいと思っている。
▼ その状況において
プレゼンテーションを行っても、それ以上の広がりがない。
・ 一度聞いただけのことを人に伝えることは難しい。
・ ことばだけでイメージを共有できることには限界がある。
・ いくら魅力的なことでもそれを正確に思い出したり伝えたりすることは難し い。
▼ そこで
プレゼンテーションの内容を魅力的なカタチにし、プレゼンテーションの
場で聞き手に渡す。
聞き手の手元に残り、プレゼンテーションを聞いてない人にも見せたくなるよう
な魅力的なものを聞き手に渡す。例えば、プレゼンテーションの中でもっとも伝
えたい内容や雰囲気を思い出せるような冊子やカードなどをつくる。
▼ その結果
実際にプレゼンテーションを聞いた人は、その内容や場の雰囲気を思い出すこと
ができるようになる。また、プレゼンテーションについて、他の人にも簡単に伝
えることができるようになる。作り手にとっては、「テイクホームギフト」をつく
るプロセスの中で、最も伝えたいことを再確認することができる。
A Pattern Language for
Creative Presentations
「振る舞い」に関するパターン
(No.22∼30)
22
場の仕上げ
23
成功のリマインド
24 自信感の構築
25
キャスト魂
26
最善努力
27
ひとりひとりに
28
世界 への導き
29
即興のデザイン
30
終わりが始まり
No.22
場の仕上げ
Stage Building
会場の準備もプレゼンテーションの一部。
「成功のイメージ」(No.3)を念頭に、準備の詰めを行っている。
▼その状況において
設備や機材のトラブルで、プレゼンテーションが台無しになってしまうこ
とがある。
・ 設備や機材の種類は、会場によって様々である。
・ 設備や機材には、しばしば不具合や故障箇所があるものである。
・ トラブルは人を困惑させる。
▼そこで
設備や機材もプレゼンテーションの要素のひとつであると意識し、入念な
チェックと調整を行う。
会場の広さや照明の明るさ、立ち位置、聞き手との距離、マイクの調子などを確
認し、必要であれば設定や配置を変更する。また、ときには、設備や機材に合わ
せて、自分が用意してきたものを調整する必要があることもある。そして、でき
る限り、その場で実際にリハーサルを行う方がよい。
▼その結果
本番中のトラブルや不快な点が少なくなり、聞き手がプレゼンテーションの内容
に集中できるようになる。また、作り手にとっては、不安要因を残さずにプレゼ
ンテーションに臨むことができる。
No.23
成功のリマインド
Success Reminding
成功のイメージを抱き続けるために、絶えず思い起こす。
「絶対に成功すると思い続けた者だけが成功するし、思い続けられれば、それだけ
で成功者だ。」ー栗城史多
「成功のイメージ」(No.3)を念頭に、準備の詰めを行っている。
▼ その状況において
いつの間にか成功のイメージを忘れてしまい、ブレてしまう。
・ 時間が経てば経つほど、記憶は薄れていく。
・ 目標があいまいになると、それに合わせて結果もあやふやになってしまう。
▼ そこで
成功のイメージを何度も言語化・可視化して、記憶をリフレッシュする。
成功のイメージについて、紙に書いて貼っておいたり、仲間に話したりする。自
分の頭の中で考えるだけではなく、何度も言語化・可視化してみることが大切で
ある。
▼その結果
「成功のイメージ」(No.3)を思い出すことで、今できていることとできていない
ことが明確になり、これから何をしなければならないかがわかる。また、完成形
が見えることで、詰めの作業へのモチベーションが上がる。
No.24
自信感の構築
Self-Confidence Building
自信は自然に湧いてくるものではない。
「できると考え始めたとき、人は驚くべき力を発揮する。自分自身を信じるとき、
人は成功への最初の秘訣を知る。」ー Norman Vincent Peale
「自信さえあれば、望む場所に到達できる。日々、目指すべき場所に向かって進む
のだ。自分自身、そして自分の能力や才能に自信を持っていれば、それはずっと
簡単にできる。」ー Donald Trump
「成功のイメージ」(No.3)を念頭に、準備の詰めを行っている。
▼その状況において
一生懸命準備してきたはずなのに、プレゼンテーションに自信が持てない。
・ プレゼンテーションが成功したかどうかは、本番で判断される。
・ プレゼンテーション直前になると、やり残したことはないか、不安になる。
・ 練習が自信になるとは限らない。
▼ そこで
これまで自分がやってきたこと・こだわってきたことを1つ1つ確認し、
それらを積み上げて、自信につなげる。
これまで自分がやってきたこと・こだわってきたことを1つ1つ思い出す。小さ
なものでも、それらを集めてみれば、大きな山となるはずである。それらがあっ
ての現在であると考え、それによって自信を持とう。
▼ その結果
自信を持ってプレゼンテーションに臨むことができる。自信にあふれるプレゼン
テーションは説得力を持ち、聞き手の心に響くだろう。
No.25
キャスト魂
Presentership
立ち振る舞いもプレゼンテーションの一部である。
「ヒール履いてない姿を見せるなら死んだほうがマシ。」― LADY GAGA
いよいよプレゼンテーションの本番になり、「成功のイメージ」
(No.3)が
現実になろうとしている。
▼ その状況において
プレゼンテーションの内容を伝えることに集中してしまい、自分が見られ
ているということを忘れてしまう。
・ プレゼンテーションを通して伝わることは内容だけではない。
・ 人は緊張すると、周りの人や状態が見えにくくなってしまう。
▼ そこで
自分自身もプレゼンテーションの一部であることを意識して振る舞う。
発表の最中は内容を伝えることに集中しがちだが、聞き手は話し手の態度や立ち
振る舞いを見ていることを忘れずに、1つ1つの動きに意識をはらう。また、発
表の間だけがプレゼンテーションではなく、聞き手の前に現れたときから姿が見
えなくなるまでがプレゼンテーションであると考える。
▼その結果
聞き手がプレゼンテーションに惹き込まれやすくなり、内容をより力強くさせる
ことができる。また、常に聞き手からの視線を意識することで、聞き手に目を向
けたプレゼンテーションを行うことができる。
No.26
最善努力
Best Effort
余計な言い訳はいらない。今できるベストを尽くす。
「過去の姿でも、願望でもなく、あるがままの現実に向き合うことだ。」ー Jack
Welch
「困難こそ、最善を尽くすチャンスである。」ー Duke Ellington
「成功とは、持っている能力を最大限利用することである。」ー Zig Ziglar
いよいよプレゼンテーションの本番になり、「成功のイメージ」
(No.3)が
現実になろうとしている。
▼その状況において
自分が自信を持っていない部分について言い訳をしてしまうことで、自ら
プレゼンテーションの価値を下げてしまう。
・ 大勢の人の前に立つと、緊張してしまう。
・ 人は不安があると、そこから逃れたくなる。
・ 人の言い訳を聞くことは気持ちのいいものではない。
▼ そこで
言い訳はせず、今できるベストを尽くす。
まず、プレゼンテーションで一番伝えたい「メインメッセージ」(No.1)を思い出
す。次に、それを「心に響くプレゼント」(No.2)にするためにはどう伝えるべき
かを考える。そして、それ以外のもの・ことは、このプレゼンテーションにおい
ては些細なことに過ぎないと考える。こうして、今自分ができるベストを尽くす。
▼その結果
聞き手は、言い訳しなければならないようなネガティブな点に意識がいくのでは
なく、プレゼンテーションの良い点をみることになり、魅力的なプレゼンテーシ
ョンが成立する。
No.27
ひとりひとりに
One by One
聞き手の目を見て伝える想い。
いよいよプレゼンテーションの本番になり、「成功のイメージ」
(No.3)が
現実になろうとしている。
▼ その状況において
つくってきた内容を話すことに必死になり、聞き手に伝えようとする姿勢
がおろそかになる。
・ 人は緊張すると、周りの人や状態が見えにくくなってしまう。
・ 人が大勢いると、どこを見て話せばよいかわからなくなる。
・ 目を合わさないで話されると、相手が何を伝えたいのかわからない。
▼そこで
聞き手1人1人に伝えようとする姿勢で、意識的に聞き手の目を見ながら
発表を行う。
会場全体を見て、何となく話すだけではなく、聞き手1人1人に1対1で伝える
ような気持ちで、聞き手の目を見て話す。また、聞き手が内容を理解しているか
を見ながら話し方や話すテンポを調節する。
▼ その結果
聞き手は、自分に語りかけられているという感覚を抱き、より熱心にプレゼンテ
ーションを聞くようになる。また、話し手は、聞き手の反応を感じることができ
るため、安心感と喜びを感じることができる。これらは効果を高め合い、相乗効
果を生む。
No.28
“ 世界 ” への導き
World Invitation
徹底した世界観が聞き手の感動を生む。
「言ったことなど忘れられてしまう。したことも忘れられてしまう。
でも、感じさせたことが忘れられることはない。」ー Maya Angelou
高度な「成功のイメージ」(No.3)のプレゼンテーションを行いたい。
▼その状況において
表現のテクニックを磨いても、感動の度合いが上がらない。
・ 人の感動は、表現のよさだけで生み出されるものではない。
・ 魅力的な表現をつくることができる人はたくさんいる。
▼ そこで
聞き手が惹き付けられるような魅力的な “ 世界 ” を垣間見せ、そこに導く。
どのような “ 世界 ” が聞き手の興味を惹きつけるのかを考える。次に、プレゼン
テーションにおけるすべての要素をその “ 世界 ” につなげることを徹底する。そ
して、自分自身もその “ 世界 ” に入り、内側から聞き手を招き入れる。
▼その結果
聞き手が「もっとこの “ 世界 ” を味わいたい」と思うような魅力的なプレゼンテ
ーションとなる。作り手自身も、その “ 世界 ” に入り込むことで、自ら楽しみな
がらプレゼンテーションを行うことができる。
No.29
即興のデザイン
Improvise Presentation
「即興」と「行き当たりばったり」は、まったく違う。
「自分が全く予想しない球が来たときに、どう対応するか。それが大事です。試合
では打ちたい球は来ない。好きな球を待っていたのでは終わってしまいます。」ー
イチロー
高度な「成功のイメージ」(No.3)のプレゼンテーションを行いたい。
▼その状況において
相手の反応に合わせた進行にしようとすると、うまくまとまらないことが
ある。
・ 聞き手の反応や場の雰囲気は、本番を迎えるまでわからない。
・ 想定していた流れで物事が進まないと、人は焦ってしまう。
・ 行き当たりばったりのプレゼンテーションが面白く魅力的なものになることは
ない。
▼そこで
日頃から即興のためのレパートリーを充実させておき、本番でそれらを即
興的に選びながらプレゼンテーションを行う。
ふだんから即興で用いることができる素材や展開のレパートリーを充実させてお
き、本番では、聞き手の反応や状況に合わせて、即興的にそれらを選び出し、組
み合わせて用いる。
▼その結果
聞き手の反応に合わせてプレゼンテーションをすることで、聞き手の興味をそそ
る内容となり、聞き手の反応もよくなり、会場の雰囲気自体がよくなる。また、
話す前に自分の話の要点や構成をより明確に把握できる。
No.30
終わりが始まり
Reflection toward Next
振り返りまでがプレゼンテーション。
「個人であれ、企業であれ、成功したと思えば、そこで進歩はとまる。」ー Thomas J.Watson
「向上することをやめれば、よい状態も保てない。」ー Oliver Cromwell
「世界は丸い。終わりだと思った場所が、実は始まりの場所かもしれないのです。」ー
Ivy Baker Priest
高度な「成功のイメージ」(No.3)のプレゼンテーションを行いたい。
▼その状況において
本番が終わったことで解放感に浸り、やりっ放しになってしまう。
・ プレゼンテーションを終えると、ひとまず安心する。
・ プレゼンテーションを終えると、終えたことに喜びを感じる。
・ 時間が経てば経つほど、記憶は薄れていく。
▼そこで
本番中の自らの振る舞いや聞き手の反応から、今回のプレゼンテーション
全体を振り返る。
プレゼンテーションの本番が終ったら、なるべく早い時期に、自分の振る舞いや
聞き手の反応から感じたことを記録しておく。そこから、今後の改善点を考える。
この振り返りでは、悪い点だけでなく、よい点もしっかり評価し、それを今後も
伸ばしていくことが大切である。
▼その結果
次回のプレゼンテーションの準備や発表の仕方が改善される。また、プレゼンテ
ーションをただやりっ放しにするのではなく、1 回 1 回の経験と反省を積み重ね
ることで、作り手のなかにプレゼンテーションのノウハウが蓄積されていく。
A Pattern Language for
Creative Presentations
創造的プレゼンテーションの
エクストリーム・パターン
(No.31∼33)
31
独自性の追求
32
魅せ方の美学
33
生き方の創造
No.31
独自性の追求
Unique Presenter
自分なりの山をつくりながら、高みを目指す。
「かけがえのない存在になるには、常に人と違っていなければならない。」ー Coco
Chanel
「人間にとって最も大切な努力は、自分の行動の中に道徳を追求していくことで
す。」ー Albert Einstein
「創造的プレゼンテーション」(No.0)を極めたい。
▼その状況において
他の人と同じようなプレゼンテーションになってしまう。
・ 何もないところから独自性は生まれない。
・ 人の真似だけでは魅力的なものをつくることはできない。
・ 自分だけがつくることができる独自性は、他の人から学ぶことはできない。
▼そこで
内容・表現ともに自分らしさを追求し、他の人との差異も意識し、独自性
をつくっていく。
自分自身を見つめ続け、自分について真剣に考える。今までの経験は自分だけの
ものであり、自分にしかわからない。だからこそ自分を知ることによって独自の
ものを見つけ出すことができる。
▼ その結果
聞き手は、自分にも他の人にもない独自性のあるプレゼンテーションを味わうこ
とができる。また、作り手は独自性を追求するプロセスのなかで、自分と深く向
き合い、自分のなかに新しい価値や可能性を見出したり、構築したりする機会に
なる。
No.32
魅せ方の美学
Sense of Beauty
自分なりの魅せ方を日々探求し、磨いていく。
「同じことをくりかえすくらいなら、死んでしまえ。」ー岡本太郎
「創造的プレゼンテーション」(No.0)を極めたい。
▼その状況において
同じ表現を繰り返してしまい、どれも似たようなプレゼンテーションにな
ってしまう。
・ 自分が慣れ親しんできたものは、よいものに思えてしまう。
・ これまでやってきたことをやめるということは、不安な気持ちを生む。
▼ そこで
魅せ方についての感覚を日々探求し、自分なりの「魅せ方の美学」を持つ。
魅せ方について、他の人のものも見ながら、自分なりの美学をつくっていく。そ
して、それを踏まえた実践をくり返し、洗練させていく。
▼その結果
自分のプレゼンテーションを何度も聞いている聞き手に対しても、いつも発見や
ワクワク感のあるプレゼンテーションをすることができる。また、ふだんから探
求することによって、表現することに対してプライドを持つことができる。
No.33
生き方の創造
Be Authentic !
自分の枠を大きく超えたプレゼンテーションなどできない。
「おなじ内容の言葉をしゃべっても、その人物の口からでると、まるで魅力がちがっ
てしまうことがある。人物であるかないかは、そういうことが尺度なのだ。」ー坂
本龍馬
「事をなすのは、その人間の弁舌や才智ではない。人間の魅力なのだ。」ー桂小五
郎
「創造的プレゼンテーション」(No.0)を極めたい。
▼ その状況において
プレゼンテーションで、スケール感や深みをなかなか出すことができない。
・ プレゼンテーションを通して伝わることは、そこで語られる内容だけではない。
・ スケール感や深みは、出そうと思って出せるものではない。
▼ そこで
自分なりの「生き方」を編み出しながら、本気で生きる。
プレゼンテーションでは、最終的には、その人の生き方がにじみ出るものである。
その人が本気で生きているからこそ、心を揺さぶるプレゼンテーションを実現す
ることができる。だからこそ、自分なりの「生き方」を編み出しながら、本気で
生きることが不可欠なのである。
プレゼンテーション・パターン一覧
No.0 創造的プレゼンテーション
No.1 メインメッセージ
No.2 心に響くプレゼント
No.3 成功のイメージ
No.4 ストーリーライン
No.5 ことば探し
No.6 図のチカラ
No.7 メリハリ
プレゼンテーション・パターン プロジェクト
「創造的なプレゼンテーション」の秘訣をパター
No.8 驚きの展開
ン・ランゲージとして記述することに挑戦するプ
No.9 はてなの扉
ロジェクトチーム。本冊子は、井庭崇(慶應義
No.10 ぶんび両道
塾大学 総合政策学部准教授)をリーダーとして、
No.11 適切な情報量
総合政策学部・環境情報学部に所属する学部 1 ~
No.12 魅力のちょい足し
4 年生、坂本麻美、松村佳奈、荒尾林子、柳尾庸
介、濱田正大、村松大輝、松本彩、下向依梨、中
No.13 イメージの架け橋
野えみり、仁科里志、野村愛、安浦沙絢、原澤香
No.14 リアリティの演出
織、山口祐加によって制作された。
No.15 参加の場づくり
No.16 細部へのこだわり
No.17 表現のいいとこどり
No.18 不快感の撲滅
No.19 スキマをつくる
※本冊子についてのご意見・ご感想・お問い合わ
せは、[email protected] まで、メー
ルにてお願いいたします。
No.20 きっかけスイッチ
No.21 テイクホームギフト
No.22 場の仕上げ
No.23 成功のリマインド
No.24 自信感の構築
No.25 キャスト魂
No.26 最善努力
No.27 ひとりひとりに
No.28 “ 世界 ” への導き
Presentation Patterns
A Pattern Language for Creative Presentations(Ver.0.50)
発 行 日
2011 年(平成 23 年)11 月 22 日
編
プレゼンテーション・パターン プロ
著
ジェクト
イラスト
井庭崇 , 原澤香織 , 荒尾林子
冊子編集
中野えみり , 門谷めぐみ , 濱田正大 ,
井庭崇
No.29 即興のデザイン
No.30 終わりが始まり
表紙制作
村松大輝 , 井庭崇
No.31 独自性の追求
〒 252-0882 神奈川県藤沢市遠藤 5322
No.32 魅せ方の美学
慶應義塾大学 総合政策学部・環境情報学部
No.33 生き方の創造
井庭崇研究室
プレゼンテーション・パターン プロジェクト
Home Page: http://presentpatterns.sfc.keio.ac.jp/
E-Mail : [email protected]
twitter : http://twitter.com/presentpatterns/
0 創造的プレゼンテーション
1 メインメッセージ
2 心に響くプレゼント
3 成功のイメージ
4 ストーリーライン
5 ことば探し
6 図のチカラ
7 メリハリ
8 驚きの展開
9 はてなの扉
10 ぶんび両道
11 適切な情報量
12 魅力のちょい足し
13 イメージの架け橋
14 リアリティの演出
15 参加の場づくり
16 細部へのこだわり
17 表現のいいとこどり
18 不快感の撲滅
19 スキマをつくる
20 きっかけスイッチ
21 テイクホームギフト
22 場の仕上げ
23 成功のリマインド
24 自信感の構築
25 キャスト魂
26 最善努力
27 ひとりひとりに
28
世界 への導き
29 即興のデザイン
30 終わりが始まり
31 独自性の追求
32 魅せ方の美学
33 生き方の創造
Ver. 0.50
November, 2011
Presentation Patterns Project
http://presentpatterns.sfc.keio.ac.jp
[email protected]
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