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2016年11月開催のTRG会合

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2016年11月開催のTRG会合
注:本資料はDeloitte & Touch LLPが作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。
この日本語版についは有限責任監査法人トーマツにお問合せください。
この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、英語版ニュースレターの
補助的なものです。あくまで英語版が(正)となります旨、ご了承下さい。
TRG Snapshot
2016年11月
2016年11月開催のTRG会合
目次
•
トピック 1 — 時間の経過に
伴う収益の認識
•
トピック 2 — 契約獲得のた
めの増分コストの資産計上な
らびに償却
•
•
トピック 3 — 販売ベースあ
るいは使用量ベースの最低
保証付きロイヤルティ
トピック 4 — 顧客に支払わ
れる対価
•
付録 A - 事例ならびに分
析:TRG
•
付録 B — 事例ならびに分
析: TRG
クリスティン・バウアー、クリス・チリアッテイ、ジョー・ディレオ、ローレン・ヘッグ、ジェイク・マニング、リン
ジー・オカダ、デロイト・トウシュ LLP
当 TRG Snapshot は、移行リソース・グループ(TRG)が 2016 年 11 月 7 日に開催した会合の議事録
の要約である。
TRG の目的は、ガイダンスを公表することではなく、(「新収益基準」と総称される)ASC6061 ならびに
IFRS 第 15 号2の適用に関連して発生し得る問題に対するフィードバックを探り、提供することである。
TRG は、適用に関連して発生し得る問題の分析および討議を通じ、明確化のための説明の提供ある
いは他のガイダンスの公表等の追加措置を講じる必要があるかどうかについて、審議会が決定を下す
ための支援を行う。TRG は、財務諸表作成者、監査人ならびに「広範にわたる業界、地理的地域、公
3 のボード・メンバーが TRG の会合に出席
的・民間組織」の財務諸表利用者で構成されており、FASB
やむむたたたう言葉の意味、規則
している。また、SEC、PCAOB、IOSCO4 ならびに AICPA の代表がオブザーバーとして招かれている。
1
2
3
4
FASB会計基準コディフィエーション(ASCまたは「コディフィエーション」)のタイトルの言及については、デロイトの「FASB 会計基
準コディフィケーションのトピックならびにサブ・トピックのタイトル」を参照されたい。
IFRS第15号、「顧客との契約から生じる収益」
2016年1月21日、IASBは、新収益基準の明確化に係る意思決定プロセスを完了したこと、また、今後、IFRSの要素のために
TRG会合を開催する予定はないことを発表した。ただし、IASBのボード・メンバーならびにスタッフは、オブザーバーとして、TRG
会合に出席することがある。
証券監督者国際機構
1
2016 年 11 月 7 日開催の会合では、以下のトピックが討議された。

トピック 1 — 時間の経過に伴う収益の認識

トピック 2 — 契約獲得のための増分コストの資産計上ならびに償却

トピック 3 — 販売ベースあるいは使用量ベースの最低保証付きロイヤルティ

トピック 4 — 顧客に支払われる対価
TRG は、これまで、当該トピックに関連する FASB スタッフの分析および見解に、概ね同意してきた。したがって、
新収益基準に変更を加える推奨を行わなかった。一方、SEC のオブザーバーは、契約コストの償却期間の決定
(トピック 2)、象徴的知的財産のライセンスに起因する収益認識プロセスの進捗度測定のための適切な手法(ト
ピック 3)、顧客に対する前払いの認識時期(トピック 4)等、新収益基準の適用に係る重要な判断ならびに(新た
に)策定された会計方針が事業体によって開示されるべきことを、会合の席上で、数度、強調した。
編集者注
FASB ボード・メンバーは会合終了に際し、今後 TRG 会合の開催予定がないことを発表したが、
同時に関係者に対し、引き続き直接 TRG に、あるいは FASB の「技術的質問プロセス(technical
inquiry process5)」を通じて適用に関連する問題点を提起するよう奨励した。また、適用に係る重
要かつ広範な問題を討議するため、今後 TRG 会合を開催する可能性が残されていることを認め
る一方で、一部事業体が 2017 年 1 月 1 日の基準の早期適用を決めていることを一因に、トピック
の選択を慎重に行うべきであることを指摘した。
ボード・メンバーは、以下の項目(についての討議)が進行していることを指摘した。

(収益に係る)技術的調整 — 会計基準の最終アップデート(ASU)は年内に発表される予定であり、以
前ボードが討議した13の個別項目を含むものとなる6。

(2016年5月発行の)技術的調整に係るFASBのASU提案の下では、非経常的なエンジニアリング費用
を含む生産開始前コストの会計処理が、長期供給協定に係る生産開始前コストの会計処理に関連する
ASC340-10のガイダンスに優先される。その結果事業体は、かかる協定に対する契約コストについて、
ASC340-40の新基準を適用することとなろう。ただし、関係者により提起された懸念を勘案し、ボードは
2016年10月開催の会合でASC340-10のガイダンスを優先しないことを暫定的に決定した。FASBは最
終決定に先立ち、かかるコストの会計処理を討議するためのワークショップを企画している。当ワーク
ショップに参加を希望する関係者は、FASBスタッフに連絡されたい。
この他、FASB スタッフは、以下に係る開示要件についての質問事項を討議した。

収益の分解 — 開示様式に関連する質問に対し、FASBスタッフは、事例417等に含まれる表形式の照
合は要求されないことを示唆した。ただし、事業体には、ASC606-10-50-6に準拠した金額の照合が要
求される。

残存履行義務 — 当該開示要件については、引き続き、質問が寄せられている。ボードは、技術的調整
に係るASUの最終アップデート時に、不明点の明確化を行う予定である。
5
6
7
技術的調整のプロセスに関連する情報は、FASBのウェブサイトで入手可能である。
デロイト・ジャーナル(2016年5月19日号ならびに2016年9月1日号)の記載事項を参照されたい。
ASC606-10-55-295から55-297まで。
2

契約残高 — 前年末時点の契約負債残高から認識された収益(ASC606-10-50-8(b))ならびに期間外
に認識された収益(ASC606-10-50-8(c))の開示を要求するASC606-10-50-8に関連して、数件の質問
が寄せられた。FASBスタッフは、以下に言及した。

事業体は、四半期毎に、当該情報のフル・ロールフォワードの開示を選択することができる。フル・
ロールフォワードはASC606-10-50-8の開示要求項目ではないが、開示された情報は、新収益基準
に記載された開示の目的である、顧客との契約から生じる収益ならびにキャッシュフローの性質、金
額、時期及び不確実性に関連して、財務諸表利用者の理解を助ける可能性がある。

事業体は、フル・ロールフォワードの一部として、(1)前年に記録された契約負債残高、ならびに(2)
当該期間中の残高への流出入額(典型的な 一行表示(控除科目)から認識される収益を含む総額
を提供することができるが、これは、契約負債残高のフル・ロールフォワードに含まれるものとなる。

事業体は、開示要件の遵守のため、各四半期に四半期ベースのロールフォワードを別個に開示し、
年初来のロールフォワードを省くことができる。会計年度が暦年ベースの事業体が第2四半期の財
務情報を開示する際には、3月31日に終了する四半期のロールフォワードと6月30日に終了する四
半期のロールフォワードを別個に開示する一方で、6月30日までの6ヵ月のロールフォワードは開示
しないで済むこととなる。8
トピック 1 — 時間の経過に伴う収益の認識
背景: 新収益基準のステップ 5 は、契約に定めた別個の財あるいはサービスの支配を顧客が獲得した時点で
(あるいは獲得するに従って)、事業体が収益を認識することを要求する。事業体は、ASC606-10-25-27 の 3 つ
の要件を満たすことで、時間の経過に伴う履行義務を充足することとなる。
ASC606-10-25-27(c)の下では、事業体の履行は他に転用できる資産を創出してはならず、事業体は現在まで
に完了した履行に対する支払を受ける強制可能な権利を有さなければならない。事業体は、ある資産が転用で
きるかどうかの評価に際し、資産の転用を指図する能力に係る実務面の制約と契約上の制限の双方を勘案しな
ければならない。また、資産の転用に係る評価は契約開始時に行うものとし、履行義務を大きく変えるような契約
の修正が無い限り、評価のアップデートを行ってならない。
支払を受ける強制可能な権利を有するかどうかの評価に際しては、契約条項とそれに適用される全ての法律を
勘案しなければならない。現在までに完了した履行に対する支払を受ける強制可能な権利には、現在までに発
生した費用ならびに妥当な利鞘に対する対価が含まれなければならない。事業体に対して発生費用あるいはそ
の一部のみを補償する解約規定は、現在までに完了した履行に対する支払を受ける強制可能な権利とは見なさ
れない。ただし、妥当な利鞘は、(1)固定の金額、あるいは(2)契約が完了した場合に、契約全体に関連して事
業体が獲得するであろう金額、に限らないものとする。妥当な利鞘とは、契約の全期間を通じて充足された履行
に対して事業体に支払われるべきものであり、(1)事業体が想定する利鞘の妥当な割合あるいは(2)事業体の
妥当な資本コスト、のいずれかに基づくものとなろう。
8
SECのオブザーバーは、FASBスタッフの意見を、明確に容認することも却下することもなかった。
3
TRG アジェンダ・ペーパー第 56 号は、事業体が、時間の経過に伴って収益を認識すべきかどうかについて、関
係者が提起した、適用に関連する質問の討議を掲載している。
「質問 1: 現行の [米国会計基準] の下で、一時点で収益を認識する事業体は、[新収益基準の
下では]、時間の経過に伴って収益の認識を要求されることとなるのか?」
現在、一時点ベースで認識される(財の生産等)の契約の一部は、新収益基準の下では、時間の経過に
伴って(一定の期間ベース)で認識される必要があると FASB スタッフが考えるのは、かかる財が、事業体
にとって他に転用できる資産ではなく、また、事業体が支払を受ける強制可能な権利を有するからである。
TRG アジェンダ・ペーパー第 56 号の事例 A は、新基準の下での、製造サービスを代表する特別注文に
よる財の製造に関連する 2 年契約に係るものである。(1)特別注文によって製造される財は、事業体に
とって他に転用できる資産とはならないと考えられる一方で、(2)事業体は、契約が終了された場合、支払
(発生費用ならびに妥当な利鞘に対する対価の合計)を受ける強制可能な権利を有していたからである。
当事例が、特別注文による財に関連する契約の全てが一定の期間ベースで認識されるべきことを示すも
のではないが、一方、事業体は、新収益基準の下で、従来通り、一時点ベースでの認識が継続されること
を想定すべきではないことを、FASB スタッフは警告した。収益を時間の経過に伴って認識すべきかどうか
を決定するには、ASC606-10-25-27 に定められた基準の評価が必要となろう。いずれの基準も満たされ
ない場合、収益は、一時点ベースで認識されるべきである。
「質問 2: その履行が[ASC]606-10-25-27(c)に依拠する他に転用できない資産を創出するか
どうかの評価に際して、事業体は(当該資産を)完成資産と見なすべきか、あるいは、仕掛資産
とみなすべきか?」
FASB スタッフは、事業体が資産を完成した状態にあると見なしていること、また、転用の評価に際しては、
当該資産を他の顧客9に移転するために多大な再加工が必要となるかどうかを考慮すべきであることが新
収益基準の要件であると述べた。TRG アジェンダ・ペーパー第 56 号の事例 B は、顧客毎に特異な設計
仕様を持つ特別注文によって財を製造する事業体についての討議に係るものである。特注生産は、製造
工程の 75%が完了した後に行われる。換言すると、特注生産は製造工程の最後の 25%で行われること
から、事業体は、製品の再加工に多大な費用をかけなければ完成状態の特注製品を顧客に販売すること
が出来ない。また、多大な再加工費用が発生するという実務面の制約のため、当該資産は事業体にとっ
て転用できる資産とはならない。
したがって事業体は、製造工程の特注生産の時期にかかわらず、特注財の再加工に多大な費用をかけず
に完成資産を他の顧客に移転することができるかどうかについて考慮する必要がある。
「質問 3: [ASC]606-10-25-27(c)に依拠する支払を受ける強制可能な権利を有するかどうか
について、事業体はどのように、また、どの時点で判断すべきか?」
ASC606-10-55-14 の下では、事業体が、契約条件の評価に加え、以下の項目を考慮すべきであることに
FASB スタッフは言及した。

「現在までに完了した履行に対して支払を受ける権利を、かかる権利が顧客との契約に規定され
ていないにも関わらず、事業体に付与する法律、行政上の慣行あるいは判例」

「同様の契約における現在までに完了した履行に対して支払を受ける同様の権利が法的効力を持
たないことを示唆する適切な法的判例」
9
ASC606-10-25-28、ASU2014-09、パラグラフ BC136、顧客との契約から生じる収益
4

「支払を受ける権利を強制しないことを選択した結果、かかる法律環境において、権利の行使が出
来ない状況にある事業体の商慣行」
この他、新収益基準の「結論の根拠」パラグラフ 145 には、支払の権利が、現時点での無条件の権利であ
る必要はなく、契約完了前の事業体の義務不履行の理由以外の理由で契約が終了した場合、事業体の
支払を要求する強制可能な権利であることを示すに過ぎない旨が記載されている。更に、ASC606-10-5513 のガイダンスと整合性のある状況で、顧客が契約を終了する権利を有さずにこれを終了した場合、事
業体は、当該契約の下で債務の履行を継続する権利を有することが示唆されており、これが顧客から支
払いを受ける強制可能な権利を生じ得ることとなる。
TRG アジェンダ・ペーパー第 56 号の事例 C には、ASC606-10-25-27(c)の支払を受ける強制可能な権
利の基準に関するスタッフの分析が示されている。事業体が時間の経過に伴う収益の認識の基準を満た
したとスタッフが結論付けた根拠は、(1)事業体が特注のアイスクリーム・メーカーを製造し、当該アイスク
リーム・メーカーが事業体にとって他に転用できる資産ではなかったこと (再加工のために多大な費用をか
けなければ、当該資産を他の顧客に移転することは出来ないであろうこと)、(2)事業体が、契約締結時に
支払を受ける強制可能な権利を有していたこと、の 2 点である。また、事業体は、当該機器が一連の特異
な財あるいはサービスであることを説明する ASC606-10-25-14 ならびに 25-15 の要件を満たしている。
その結果、事業体は、顧客との追加契約を想定して製造したアイスクリーム・メーカー計 300 個のうち、完
成品 50 個、仕掛品 10 個から生じた収益について、累積遡及修正を行うこととなろう。また、新規契約の
締結時に、収益を認識することとなろう。
要約: FASB スタッフは、当トピックに関して、構成員が繰り返し問い合わせを行ってきたこと、従って、TRG ア
ジェンダ・ペーパー第 56 号は、主に教育上の性格を有するものであることに言及した。TRG メンバーは、質問 1
に対する FASB スタッフの見解に概ね同意しており、原則ならびに必要とされる分析の確認が行われたことを評
価した。また、新収益認識基準には、時間の経過を伴う収益の認識に関する推定あるいは規定の立場がないこ
と、したがって、事業体が過去に下した結論が新基準の下では同様の結果をもたらすことももたらさないこともあ
り得ることがスタッフによって明確に示されたことは、TRG にとって便益となった。事業体は、いつ収益を認識す
るかの評価を個別の契約毎に行う必要があること、従って、同一の顧客との契約についても結論が異なる場合
があることを、TRG の複数のメンバーが強調した。事業体は、契約を個別に評価すべきであること、また、一時
点ベース(あるいは一定期間ベース)の収益の認識が、過去にそのように認識されたからという理由で、現行の
収益に関連するガイダンスの下でも行われることを想定すべきではないということについて、TRG メンバーは概
ね合意した。
転用の評価は契約締結時に行われるべきであり、最終的に顧客に移転される資産の特性が評価されるべきで
あるとする質問 2 に対する FASB スタッフの見解に、TRG メンバーは概ね同意した。TRG の議論は、契約で約
束された完成品の特注化の時期に集中した。契約を時間の経過に伴う収益の認識の要件を満たすものとするた
め、支払を受ける強制可能な権利を特注に先立って得ることが事実および状況次第では要求されないこと(事業
体は、特注の最終製品に必要な標準的な原材料に対して、支払いを受ける強制可能な権利を得る必要がないこ
と)について、TRG メンバーと FASB スタッフは概ね同意した。かかる状況下では、製品の特注化の工程に標準
的な原材料が納入されて初めて、顧客の契約の履行が開始する。TRG メンバーの一人は、アジェンダ・ペー
パーの事例 B の特注化が製造工程の 75%が完了するまで発生しないことを指摘した。製造工程の最初の 75%
の期間については支払を受ける強制可能な権利が存在しないことが(特注化が始まった時点で、支払を受ける
強制可能な権利を事業体が有する限り、)事業体の時間の経過に伴う収益の認識を妨げるものとはならないこと
について、FASB スタッフと TRG メンバーは概ね同意した。 顧客の契約は、特注化が始まって初めて開始され、
製品の最終過程を通じて継続されることとなる。
5
TRG メンバーは、支払を受ける強制可能な権利が、契約条項と適切な判例とを用い、事業体の前歴もしくはか
かる条項を強制する意図にかかわらず決定されるべきだとする質問 3 に対する FASB スタッフの見解に概ね同
意した。
トピック 2 — 契約獲得のための増分コストの資産計上ならびに償却
背景: 顧客との契約獲得のための増分コストは、かかるコストの回収を事業体が想定している場合には資産計
上されなければならない。10当該増分コストは、(例えば、販売手数料のように、).契約が獲得されなかったとした
ら発生することのなかったであろうコストと定義される 11 。また、顧客との契約獲得のための増分コストとして認識
された資産は、かかる資産と関連のある財あるいはサービスの顧客への移転と整合性のある一貫した方法で償
却されなければならない。12
事業体が従業員に販売手数料を支払うことは一般的であり、かかる手数料は多くの場合、契約獲得のための増
分コストの定義を満たすものである。販売手数料の会計処理は、(1)手数料が固定金額であるか、契約価値の
パーセンテージに相当する場合、ならびに(2)契約の更新が想定されない(或いは更新出来ない)場合のように、
通常、単純明快である。 もっとも、報酬体系が複雑である場合には、どのコストが実際に増分に係るものである
かの判定、ならびにこれに関連する償却期間の見積もりが、以下の通り困難なものとなり得る。

大きな付加特典を伴う報酬体系

従業員が前年に署名した契約に基づく給与

異なる期間に支払われる手数料或いは同一の販売契約について複数の従業員に支払われる手数料

特定の期間に営業員が獲得した複数の契約に基づいて支払われる手数料

契約獲得の過程ならびに契約更新を見込む過程で発生した法的費用ならびに旅費・交通費
TRG アジェンダ・ペーパー第 57 号は、契約獲得のための増分コストに関連して関係者が提起した、以下の適用
に係る質問の討議を掲載している。
「質問 1: 契約獲得のためのコストのうち、どのコストが増分コストか?」
「増分」という用語が新収益基準の下で資産計上されるべきコストとしての要件を満たすものかどうかの広
範な解釈につながり得ることについて、関係者は懸念を表明した。かかる懸念に対し FASB スタッフは、当
事者が契約に署名をしようという時点で顧客(あるいは事業体)が契約を締結しないことを決めた場合にコ
ストが発生するかどうかを事業体が考慮すべきであることに言及した。契約が履行されなかったにもかか
わらず(契約の草案作成のための法的費用等の)コストが発生した場合、かかるコストは契約獲得のため
の増分コストとは見なされないであろう。質問1に関して FASB スタッフが分析した TRG アジェンダ・ペー
パー付録 A の事例を参照されたい。
10
11
12
ASC340-40-25-1.
ASC340-40-25-2.
ASC340-40-35-1.
6
「質問 2: 事業体は、顧客との契約獲得のための増分コストとして認識された資産の償却期間
を、どのように決定すべきか?」
ASC340-40 の償却のガイダンスは、長期性資産の耐用年数の見積もりと概念的に合致するものであるこ
とをスタッフは指摘している。事業体は、現時点では、長期性資産の耐用年数の見積もりに判断を行使し
ていることから、契約獲得のための増分コストに関連する資産の償却期間についてもそうすることが可能
だろうとスタッフは考える。
従って、契約獲得のための増分コストから生じる資産の償却期間を見積もる際、事業体は、(1)コスト(即
ち、手数料)に関連する契約を認識し(以下の「質問 2a を参照のこと)、(2)更新された契約に定められた
手数料が当初の契約の手数料に見合ったものであるかどうかを決定し(以下の「質問 2b を参照のこと)、
(3)契約を獲得するためのコストに関連して契約の更新が想定される場合に契約期間を超える適切な償
却期間を決めるため、事実および状況を評価しなければならない。
ただし、新収益基準は顧客の平均(契約)期間あるいは(耐用)年数を通じた償却を要件としない一方で、
かかる償却は、その償却期間が ASC340-40-35-1 の要件と整合的である限り適切であろうとの見解に、
スタッフは言及した。事業体は、当該資産に関連する財あるいはサービスの評価に判断を行使すべきであ
る。
FASB スタッフは、事業体による償却期間の決定に関連して、以下のケースについて、特に注意を喚起し
た。
「質問 2a: 販売手数料が、想定される特定の契約下で移転される財あるいはサービスに
関連するものであるかどうかについて、事業体はどう判断すべきか?」
新収益基準の開発過程において、審議会は、増分コストを計上した資産が、想定される特定の契約
下で、財あるいはサービスに関連するものとなり得ると判断した。FASB スタッフは、事業体は手数
料に関連する契約の決定に判断を行使すべきであると考える。
(事業体の実績あるいは関連するその他の情報を鑑みて)事業体が契約の更新を想定せず、当初
の契約のみに基づいて手数料を支払う場合には、新収益基準の適用に際して、当初の契約期間を
通じた資産の償却が適切であろうことにスタッフは言及した。
もっとも、事業体の実績から契約更新の公算が高いことが示唆され、資産が契約更新期間中に提供
される財あるいはサービスと関連するものである場合には、償却期間は当初の契約期間を超えるも
のとなり得る。13
「質問 2b: 販売手数料が当初の契約に関して支払われ、更新された契約に関しても支払
われた場合、更新された契約に関して支払われた手数料が当初の契約に関して支払わ
れた手数料と整合性のあるものであるかどうかを事業体はどう判断すべきか?」
手数料が更新された契約に関して支払われ、それが当初の契約に関して支払われた手数料と整合
性がある場合、当初の契約期間を超えた資産の償却が適切ではないことに審議会は言及した。14 ま
た、2015 年 1 月の TRG の会合での議論(ならびに TRG アジェンダ・ペーパー第 23 号)を踏まえ、
当初契約と更新された契約の手数料が整合性のあるものであるかどうかの判断の際に、当初の契
約と更新された契約を入手するために要した相対的な努力水準を考慮し得ると関係者が考えている
ことを、スタッフは伝えた。
13
14
TRG アジェンダ・ペーパー第57号、パラグラフ34
ASU2014-09、パラグラフBC309
7
更新された手数料と当初の手数料の双方が、それぞれに関連する契約価値に対して妥当な割合で
あり(例えば、契約価値の 5%に相当する金額が、当初契約ならびに更新契約の手数料として支払
われた場合)、両者は「整合性がある」ことを FASB スタッフは明確に示した。同様に、(更新手数料
が 2%、当初手数料が 6%の場合のように)15更新手数料が当初手数料に見合わない場合、更新手
数料は当初手数料と「整合性がない」と事業体が結論付けることは妥当であろうと FASB スタッフは
考える。
要約: TRG メンバーは、質問 1 に対するスタッフの見解ならびにコストが増分コストであるかどうかの分析の枠
組みに概ね同意した。また、当事者が契約に署名をしようという時点で、顧客(あるいは事業体)が契約を締結し
ないことを決めた場合には、コストが生じたとしても、当該コストは増分コストではないと試験的に見なすことにつ
いて、概ね合意した。
TRG メンバーは、顧客との契約に関連して負債を計上する必要があるかどうか、必要な場合はいつ計上するか
の判断に際し、事業体が負債の認識に関連する現行の米国会計基準を引き続き参照すべきである 16とのメン
バー間の合意事項を、コストの認識に係る過去の議論と整合性のある方法で確認した。従って、事業体は、当初
は、(手数料、給与税、401(k)拠出金等の)負債の認識ならびに測定の決定に係る特定のガイダンスを適用す
べきである。事業体は、負債を計上する場合、計上時点で初めて、当該負債を資産計上するかあるいは費用計
上するかを決めるべきである。
TRG メンバーの一人は、契約獲得のためのコストの資産計上に関する新収益基準のガイダンスと、現行の会計
処理の間に相違点があることを強調した。現行の米国会計基準は、(融資の組成や保険料の獲得等)コストが直
接的かつ増分であることを要求しているのに対し、新収益基準は、増分であることとしている。従って、かかる相
違点が、(負債の資産計上方針を選択した場合、現行の米国会計基準の下では資産計上することのなかったで
あろう負債が、新基準の下では資産計上を要求されることとなるように)、広範囲のコストに資産計上を要求する
状況をもたらし得ることについて、TRG は概ね合意した。
一方、契約の署名のため、複数の従業員に対して支払われる手数料等の特定のコストが、真の増分コストであ
るかどうかの決定に際し、事業体が「判断」を行使すべきであることについて、TRG は警告を発している。(手数
料あるいはボーナス等の)従業員報酬、とりわけ、組織内の異なる立場にある個人ならびに組織内の相対的に
高い役職にある従業員の報酬が、実行された契約のみに関連するものなのか、あるいは、その他の要因もしく
は(従業員の一般的なパフォーマンスあるいは顧客満足度等の)基準の影響を受けるものであるのかを理解す
るために、事業体は従来以上に懐疑的な態度で臨むことを FASB スタッフは推奨した。また、TRG メンバーは、
(他の資産認識基準が満たされていることを前提に、)(契約獲得の結果の)増分コストのみを資産計上すべきで
あることを強調した。
この他、資産の償却期間には、事業体が当該資産に関連する財あるいはサービスから恩恵を期待する期間が
反映されるべきであるとのスタッフの見解に、TRG は概ね同意した。償却期間の見積もりについては、関連する
財およびサービスの決定、ならびに(当初契約あるいは更新契約の)いずれの契約がかかる財およびサービス
を含むものであるかの評価に際し、事業体が判断を行使するべきであることを TRG メンバーは強調した。事業
体は、長期性資産の減価償却あるいは償却期間の決定に際して用いたのと同様の判断を下す必要があり得る。
15
16
TRG アジェンダ・ペーパー第23号、パラグラフ23
契約獲得のための増分コストに関連する特定の問題点が、2015年1月26日のTRG会合で討議された。追加情報については、デロイトの
TRG Snapshot 2015年1月号を参照されたい。
8
FASB スタッフは、TRG メンバーの質問に対して、事業体が償却期間の見積もりに、顧客関係の想定年数を用
いなければならないとする反論の余地ある推定が、TRG アジェンダ・ペーパー第 57 号によって生じることはない
ことを確認した。従って、事業体は、顧客関係の想定年数を償却期間として用いてもよいが、これを規定値として
はならない。また、複数の TRG メンバーは、資産の償却期間の適切な見積もりの決定に際して事業体が考慮す
るであろう要因を、会合の議事録に記載することを提案した。ボード・メンバーはスタッフがかかる推奨を考慮す
る可能性に言及したが、TRG メンバーに対し、事業体は、償却期間ならびにその他の長期性資産の耐用年数を
見積もること、また、契約獲得のために生じたコストの償却期間の見積もりに、同様の要因を考慮する可能性が
あることについて注意を促した。
トピック 3 — 販売ベースあるいは使用量ベースの最低保証付きロイヤルティ
背景: 事業体は、知的財産のライセンスと引き換えに、販売ベースあるいは使用量ベースのロイヤルティの支払
いを受けることがあるが、(対価の額は、ロイヤルティの元となる知的財産の、その後の販売あるいはライセンス
使用量によって異なる)。ロイヤルティは変動対価の一形態を表すものであることから、通常、見積もりが要求さ
れ、新収益基準の下では制約を受けるが、知的財産のライセンスに関連する販売ベースあるいは使用量ベース
の対価の形態には、例外がある。かかる例外の下では、(1)ロイヤルティの元となる販売あるいは使用、或いは、
(2)関連する履行義務の充足(または一部充足)のいずれか遅い方が発生するまで、収益は認識されない。この
ことは、事業体が契約締結時に獲得することを期待するロイヤルティを見積もる必要がないことを意味する。事
業体は、その後販売あるいは使用が発生するに従って、或いは、関連する履行義務が充足(または一部充足)さ
れるに従って、収益を認識することとなる。
販売ベースあるいは使用量ベースのロイヤルティは、最低保証を伴う場合があるが、これは、事業体に支払わ
れる対価の下限を設定する。TRG アジェンダ・ペーパー第 58 号17の事例 1 を一部変更した以下の例を検討さ
れたい。
事例
任意の事業体が、知的財産のラインセンスに係る 5 年契約を結ぶものとする。かかるライセンスは顧客に対
し、知的財産に関連する顧客の総売上の 5%に相当する金額の支払いを要求するものである。ただし、契約
には、事業体が 5 年の期間のうちに、最低 5 百万ドルを受け取る保証が設定されている。
事業体は、契約締結時に、顧客の総売上とこれに関連して事業体に支払われることとなるロイヤルティにつ
いて、各年毎の数値を以下の通り見積もった。
(百万ドル)
総売上
ロイヤルティ
1 年目
2 年目
3 年目
4 年目
5 年目
15.00
30.00
40.00
20.00
60.00
0.75
1.50
2.00
1.00
3.00
想定されるロイヤルティの総額は、8.25 百万ドルに等しい。
17
事例1 は、象徴的知的財産と見なされる商標のライセンスの議論に係るものである。上図の例は、アジェンダ・ペーパーに記載の二つの質
問を説明し象徴的知的財産と機能的知的財産の代替的な見解を示すため、知的財産の種類を省略し、一部変更を加えたものである。
9
最低保証は、事業体が受け取る権利のある固定対価を設定することから、販売ベースあるいは使用量ベースの
ロイヤルティの例外が適用されるかどうか、また、どのように適用されるかについて、関係者が疑問を提起してい
る。具体的には、TRG アジェンダ・ペーパー第 58 号が、関係者が提起した以下の疑問を掲載している。
「質問 1:最低保証は、象徴的知的財産のライセンスと引き換えに約束された販売ベースあるい
は使用量ベースのロイヤルティの認識にどのように影響するか?」18

見解 A — ロイヤルティの総額が最低保証額を上回ると事業体が想定した場合には、ASC 60610-55-65 に準拠し、その後販売あるいは使用が発生するに従って、収益を認識する。

見解 B — (固定対価にライセンス期間を通じて獲得することが想定されるロイヤルティを加えた)
取引価額を見積もり、「最低保証額が充足された場合には、認識された累計収益がロイヤルティの
累計を超えてはならないとする制約に従って、」進捗度を測る適切な手法により、期間を通じて収
益を認識する(TRG アジェンダ・ペーパー第 58 号、パラグラフ 19 を参照されたい)。

見解 C — 進捗度を測る適切な手法により、期間を通じて最低保証を認識する。最低保証が充足
された場合は、その後販売あるいは使用が発生するに従って、増分のロイヤルティを認識する。
18
ASC606-10-55-59ならびに 55-60に記載の通り、象徴的知的財産は、独立した重要な機能性を有するものではない。従って、知的財産の
効用は、主に、かかる知的財産の維持あるいは支援のためになされる、事業体の過去のあるいは現在継続中の活動から得られることとなる。
また、顧客は、契約面であるいは実務面で、知的財産の最新版を使用することが要求される。従って、象徴的知的財産は、事業体の知的財
産へのアクセス権を顧客に付与するものであり、収益は通常、期間を通じて認識されるべきである。
10
TRG アジェンダ・ペーパー第 58 号(の事例)を改定して作成した以下の表は、各見解に関連する(収益)認識の
パターンの概要を示すものである。
(百万ドル)
1 年目
2 年目
3 年目
4 年目
5 年目
見解の影響
見解 A
0.75
(0.75)
1.50
(2.25)
2.00
(4.25)
1.00
(5.25)
3.00
(8.25)
見解 A の場合、収益
は、ロイヤルティ獲得の
方法と整合性のある方
法で認識される。
見解 B
1.65
(1.65)
1.65
(3.30)
1.65
(4.95)
0.30
(5.25)
3.00
(8.25)
見解 B の場合、想定さ
れる収益総額($8.25 百
万ドル)は、ライセンス契
約期間の最初の 3 年間
を通じて、定額法で認識
される。事業体は、ロイ
ヤルティの累計が最低
保証の 5 百万ドルを超
える 4 年目以降、その後
の販売が発生した時点
で残りの対価を認識す
る。
見解 C
0.75
(1.00)
1.50
(2.00)
2.00
(3.00)
1.00
(4.25)
3.00
(8.25)
見解 C の場合、最低保
証の 5 百万ドルは、5 年
のライセンス契約期間を
通じて、定額ベースで認
識される。事業体は、 ロ
イヤルティの累計が最低
保証を超える 4 年目以
降、その後の販売の発
生に従って、増分のロイ
ヤルティの認識を開始す
る。
FASB スタッフは、ライセンスが販売ベースあるいは使用量ベースの最低保証付きロイヤルティに基づくものであ
る場合の収益認識のための画一的なモデルを、新収益基準が規定するものとは考えない旨を述べており、時間
の経過を伴う収益認識の進捗度の測定に適切な手法を選択する際、事業体は判断を行使すべきであること、ま
た、アジェンダ・ペーパーに記載された見解が新収益基準の妥当な解釈であっても、他に適切な手法があり得る
ことを考慮すべきであることを指摘した。更に、実務面で多様な手法が用いられていることを勘案し、事業体が、
収益の認識や取引価格の決定の手法等、新基準の適用に際して行使した重要な判断の開示を要求されること
について、関係者に注意を促した。
11
「質問 2: 最低保証は、機能的知的財産のライセンスと引き換えに約束された販売ベース或い
は使用量ベースのロイヤルティの認識にどのような影響を及ぼすか?」19
関係者は、以下の二つの見解を表明した。
 見解 A — 知的財産に関連する最低保証は、事業体がライセンスの支配を顧客に移転した時点で、
収益として認識されるべきである。また、最低保証を上回った一切のロイヤルティは、ASC606-1055-65 に準拠して、その後の販売あるいは使用の発生に従って認識されるべきである。

見解 B — ロイヤルティが最低保証を上回ることを想定した場合、事業体は、ASC606-10-55-65
に準拠して、その後の販売あるいは使用の発生時に、一切の収益を認識すべきである。換言する
と、ライセンスの支配が顧客に移転された時点で認識される収益はないこととなる。
以下の表は、各見解に関連する(収益)認識のパターンの概要を示すものである。
(百万ドル)
1 年目
2 年目
3 年目
4 年目
5 年目
見解の影響
見解 A
5.00
(5.00)
—
(5.00)
—
(5.00)
0.25
(5.25)
3.00
(8.25)
見解 A の場合、最低保
証の 5 百万ドルは、ライ
センスの支配が顧客に
移転される 1 年目に全
て認識される。4 年目以
降については、ロイヤル
ティの累積が最低保証を
上回った時点で、その後
の販売の発生に従って、
増分のロイヤルティの認
識を開始することとな
る。
見解 B
0.75
(0.75)
1.50
(2.25)
2.00
(4.25)
1.00
(5.25)
3.00
(8.25)
見解 B の場合、収益
は、ロイヤルティの獲得
の方法と整合性のある
方法で認識される。
FASB スタッフは、見解 A が、新収益基準の適切な適用法だと考える。FASB スタッフは、かかる見解に到達す
る過程で、保証は変動対価ではなく、従って、ロイヤルティの認識制約の影響を受けないことを強調した。新収益
基準の下では、機能的知的財産のライセンスの履行義務は、一時点で充足される。従って、事業体がライセンス
の支配を移転する時点で、固定対価が認識される。もっとも、ロイヤルティの形態での変動対価(固定対価を上
回る額)は、ロイヤルティの認識制約に準拠して認識される。
19
ASC606-10-55-59ならびに55-63に記載の通り、機能的知的財産は、(取引を処理したり、機能あるいは任務を遂行したり、演奏あるいは放
映される等の)独立した重要な機能性を有している。事業体の活動が知的財産の機能性や効用を著しく変えることはないため、機能的知的
財産は、顧客に知的財産を使用する権利を付与し、通常、その時点で収益が認識される。
12
要約: TRG メンバーは、(質問 1 の)象徴的知的財産のライセンスに関連して、販売ベースあるいは使用量ベー
スの顧客とのロイヤルティ契約が最低保証を含み、ロイヤルティが最低保証を上回ることを事業体が想定する一
切の場合において、新収益基準は単一帰属手法の適用を要求するものではないことに合意した。事業体は、当
該基準の下ではどの手法が完了に向けての進捗を最もよく表すものかを決める際に、事実と状況を評価すべき
である。この他、見解 C の適用が同一の履行義務の進捗の測定のために二つの手法を用いることに類似する
かどうかについて、議論があった。
TRG メンバーは、TRG アジェンダ・ペーパー第 58 号に概説された 3 つの見解が、以下の「ガードレール」を条
件とすれば、新収益基準の妥当な解釈であり得ることに概ね合意した。

見解A或いは見解Bの適用において、販売ベース或いは使用量ベースのロイヤルティの見積もりは、最
低保証を上回らなければならない。

見解Bが適用される場合、事業体は、定期的に(固定対価と変動対価の合計である)対価の総額の見積
もりを更新すると同時に、進捗度の測定手法を見直す必要があるが、その結果、収益の累積調整が必
要となる可能性がある。
SEC のオブザーバーは、TRG メンバーの結論に同意したが、事業体が適切な情報の開示を考慮する必要があ
ることを強調した。例えば、(ライセンス)登録者は、どの見解が適用されているかについての財務諸表利用者の
理解を助けるため、財務諸表ならびに(有価証券報告書の)経営者による財務・経営成績の分析(MD&A)中の
重要な会計の見積もりの項目に記載された象徴的知的財産のライセンスから生じる収益を認識するための進捗
度測定手法の選択に際して行使した主要な判断を開示する必要に迫られるだろう。
TRG メンバーは、(質問 2 の)機能的知的財産のライセンスについて、スタッフの分析ならびに見解 A を新収益
基準に適用すべきであるとの結論に同意した。
この他、TRG のメンバーの一人は、最低保証(固定対価の額)を機能的ライセンスの引渡し時の収益として認識
することが、(規制当局の承認等の)将来の事象の発生の有無を条件とすべきではないことを指摘し、固定対価
と変動対価の相違点を強調した。
編集者注
TRG メンバーの一人は、見解 A の説明に、(1)顧客の販売から生じるロイヤルティと引き換えに、
5 年契約の開始時に、機能的ライセンスが顧客に移転される場合、ならびに、(2)事業体が毎年 1
万ドルの受領を保証される場合、が含まれた事例を用いた。生じ得る資金調達の影響を無視すれ
ば、事業体は契約 1 年目の年初に、5 百万ドルの最低保証総額を認識すべきである。これは、5
百万ドルが最低保証の結果の固定対価であり、ライセンスが、(収益が一時点で認識される)機能
的ライセンスだからである。いかなる年においても、ロイヤルティが百万ドルの最低保証を上回った
場合には、追加のロイヤルティ収益が認識されることとなろう。
その他の TRG メンバーならびに FASB スタッフは、当該事例が見解 A の適用を適切に説明して
いることに概ね合意した。
13
トピック 4 — 顧客に支払われる対価
背景: TRG アジェンダ・ペーパー第 59 号に記載の通り、(現金、クーポン、クレジット、割引等)20 顧客に支払わ
れる対価の認識、測定、表示に関連する新収益基準のガイダンスの大半は、現行の米国会計基準に基づくもの
である。21一方、事業体の顧客に対する前払いが資産として認識される(その後、収益の控除科目として「償却」
される)べきなのか、もしくは即刻収益から控除されるべきなのかについての明確なガイダンスがないため、実務
面では多様な会計処理がなされる結果となっている。その結果、かかる多様性が新収益基準の下でも継続され
るかどうかについて、関係者は疑問を提起している。また、顧客に対する前払いが資産として計上された場合、
新収益基準は資産の償却期間について不明確であるとの意見も表明している。
FASB スタッフは、新収益基準が、特定の状況における顧客に対する前払いの会計処理方法を明確に示してい
ると考える。例えば、取引相手が顧客の場合22 、支払は、それが明確な財あるいはサービスとの引き換えでない
限り収益から控除されるべきである。新収益基準は、前払いが明確な財あるいはサービスとの引き換えではなく、
完全に現在の契約に関連するものである場合については、それが資産として計上され、契約に定められた財あ
るいはサービスが顧客に移転されるに従って、その後収益の控除科目として「償却」されるべきであることを規定
している。資産の計上およびその後の償却は、資産が顧客に対する資金の前払いを表すものであり、事業体が
財あるいはサービスの顧客への移転に従って回収するものであることを意味する、という事実に基づくものであ
る。
一方、(1)収益契約が未だ存在しない場合(顧客が事業体との契約を結ぶ気になるよう、事業体がインセンティ
ブとして顧客に支払を行っている場合)、或いは、(2)前払いが、現行の契約ならびに将来想定される契約に基
づいて移転される財あるいはサービスに関連するものである場合、新収益基準は、前払いの時期について相対
的に不明確であると、FASB スタッフは考える。よって関係者は、顧客に対する前払いが、いつ収益の控除科目
として認識されるべきかについて、2 つの見解を表明している。
スタッフは、TRG アジェンダ・ペーパー第 59 号で、2 つの異なる種類の契約(IT の外部委託サービス契約ならび
に供給契約)における 2 つのシナリオについて、以下の 2 つの見解を分析している(当該シナリオの追加情報に
ついては、付録 B を参照されたい)。

見解A —顧客に対する前払いは、資産計上し、(その後)関連する財或いはサービスが顧客に提供され
るに従って、収益の控除科目として「償却」すべきであるが、(前払いの認識は、)現行の契約期間を超え
て行われることがあり得る。見解Aの提案者は、現行の契約期間を超える支払の認識が、特定の状況に
おいて取引の経済的意味をよりよく反映するものであると考えている。また当該提案者は、米国会計基
準のその他のガイダンスの下で、事業体が現行の契約期間を超えて支払を認識できることを指摘した
23 。資産は、現行の法的に強制可能な契約(期間)を超えて存在し得ることから、回収可能性について
の定期的な評価がなされるべきである。

20
21
22
23
見解B —顧客に対する前払いは、現行の契約期間に限定して収益の控除科目として認識されるべきで
あり、(前払いの認識は現行の契約期間を超えるべきではない)。契約が存在しない場合、前払いは収
益の控除科目として即刻認識されるべきである。見解Bの提案者は、新収益基準が、顧客との契約のた
めの事業体の会計処理に関連する法的に強制可能な権利ならびに義務に焦点を置いたものであり、将
来選択可能な契約が想定されるとしても、かかる契約に焦点を置いたものとはならないことを主張した。
ASC606-10-32-25から32-27.
ASC605-50.
TRG アジェンダ・ペーパー第59号の論点の対象範囲は、顧客(ならびに潜在的な顧客)に対する支払に限定され、顧客ではない第三者に対
する支払には適用されない。
見解Aの提案者は、類似する議論として、顧客に支払われる対価に関するガイダンス、ASC340-40の資産計上された契約コストの償却に関
するガイダンス、ならびに、ASC350-30ののれんを除く無形資産の、その後の測定に関するガイダンスの対象範囲に関連する過去のTRG
の議論(デロイトの TRG Snapshot の2015年3月号 および 2015 年7月号を参照されたい)に、特に、言及した。
14
TRG アジェンダ・ペーパー第 59 号に指摘の通り、新収益基準は、かかる状況において、前払いの会計処理の
手法についての明確な説明を行っていないが、二つの見解にはいずれも利点があり、両者の「会計報告は同じ
結果となり得る」と FASB スタッフは考える。もっとも、スタッフは、いずれかの見解を選択することは会計の方針
を選択することではなく、事業体が、「顧客に対する支払の特性ならびに契約上の権利と義務を理解し、関連す
る事実および状況を評価し、(新収益基準の)顧客に対する対価に関連するガイダンスを適用し、その他の米国
会計基準が適用可能かどうかを考慮し、プロとしての判断を行使」した上で、かかる選択がなされるべきであるこ
とに繰り返し言及した。新収益基準の下では、実務面で幾分か多様性が継続することもあり得るが、FASB ス
タッフは、取引価格の決定24 に際して行使された判断に関連する開示要求の強化が、事業の顧客に対する前払
いの会計処理に対する財務諸表利用者の理解を助けるはずであると強調した。
要約: FASB スタッフが両方の見解を支持するのに対し、TRG メンバーは概ね見解 A のみを支持することを表
明した。もっとも同メンバーは、見解 A が事業体に全ての状況における資産の認識を要求しているのではないこ
と、また、支払が資産の定義を満たすものであり、従って支払が将来発生し得る経済的便益に帰結するかどうか
の考慮が要求されることに概ね同意した。
TRG メンバーの一人は、TRG アジェンダ・ペーパー第 59 号では、前払いが顧客に対する資金の前払い25と比
較されていることを指摘し、かかる比較が、前払いが顧客にファイナンス上の重要な便益(重要なファイナンス項
目)を提供したことを示唆するものであることに懸念を表明した。FASB スタッフは、前払いが顧客との契約にお
けるファイナンス上の重要な項目を表すことを示唆するよう意図したわけではないことを確認した。
この他、SEC オブザーバーは、事業体が前払いの評価に際して判断を行使する必要があることに言及し、財務
諸表ならびに(有価証券報告書の)経営者による財務・経営成績の分析(MD&A)中の結論について、適切な開
示が必要であることを強調すると同時に、当該トピックに関連する見解の策定の過程において、SEC スタッフが、
ASC605 の現行のガイダンスに基づいた過去の決定とは独立して、新基準のガイダンスの分析を意図している
ことに言及した。
24
25
ASC606-10-50-17.
TRG アジェンダ・ペーパー第59号、パラグラフ15(a)を参照されたい。
15
付録 A - 事例ならびに分析:TRG アジェンダ・ペーパー第57号
以下の表は、TRG アジェンダ・ペーパー第57号の事例に関連してTRG会合で討議された見解ならびにFASBスタッフが選択した見解の概要
である。
トピック
事例・質問
討議された見解
FASB スタッフが選択した見解
従業員に支払
われる固定給
与
「事例 1: 任意の事業体は、従業員に 10
万ドルの年間給与を支払う。従業員の給
与は、従業員が前年度に署名した契約
と、今年度の想定署名契約に基づく。従
業員の給与が、今年度の実際の署名契
約に基づいて変わることはないが、将来
の給与は、今年度の実際の署名契約の
影響を受ける公算が高い。事業体が年
間の契約を獲得するための増分コストを
資産として計上するとしたら、幾らを計上
すべきか?」
見解 A: 「従業員の給与のどの
部分が販売予想に関連するもの
かを決め、給与のかかる部分
を、契約を獲得するための増分
コストに割り当てるべきである。」
見解B. 「一切の従業員の給与
は、契約を獲得するための増分
コストとして資産計上されるべき
ではない。従業員は、100本の契
約を販売しても、10本の契約をし
ても、或いは、全く契約をできな
かったにしても、固定給与を受け
取る権利だけを有するからであ
る。
(ASC)340-40-25-1の要件の目
的は、事業体のマーケティング
活動ならびに販売活動になんら
かの関連のある方法でコストを
割り当てることではない。目的
は、契約が獲得されなかったとし
たら発生しなかったであろう増分
コストを認識することである。」
「事例 2: 事業体は、従業員が顧客との
契約を獲得した時、当該従業員に 5%の
販売手数料を支払う。従業員は、見込み
顧客との契約の交渉を開始し、契約の獲
得までの過程で、事業体に 5,000 ドルの
法的費用ならびに交通費が発生する。顧
客は、最終的に、50 万ドルの契約を結
び、その結果、従業員は 25,000 ドルの
販売手数料を受け取る。事業体は、顧客
との契約を獲得するための増分コストと
して、いくらを資産計上すべきか?」
見解 A: 「事業体は、25,000 ド
ルのみを、販売手数料として資
産計上すべきである。かかるコ
ストのみが契約を獲得するため
の増分コストであるのは、契約
が獲得されなかったとしたら、事
業体にはコストが発生しなかっ
たであろうからである。」
全部ではなく、
一部のコストが
増分コストであ
る。
見解 B: 「従業員の給与のいか
なる部分も、契約を獲得するた
めの増分コストとして資産計上さ
れるべきではない。かかるコスト
は、従業員の今年度の署名契
約にかかわらず発生したと考え
られるため、いかなる契約に対
しても、増分コストとはならな
い。」
見解 B: 「事業体は、販売手数
料、法的費用ならびに交通費を
含む 30,000 ドルを資産計上す
べきである。かかるコストの発生
がなければ、事業体は、契約を
獲得することが出来なかったで
あろう。」
16
見解 A. 「契約が獲得されなかっ
たとしたら、事業体に発生しな
かったであろうコストは、…販売
手数料のみである。事業体に
は、販売促進に必要なその他の
コスト(法的費用、交通費ならび
にその他の多くの費用)が発生
するが、かかるコストは、顧客が
土壇場になって契約を結ばな
かったとしても発生していたであ
ろうと考えられるからである。
契約の交渉のため、事業体に同
じ種類の法的費用や交通費が発
生したものの、当事者双方が契
約を結ぼうとする直前になって、
顧客が契約を結ばないことを決
めたとしたら、契約は獲得出来な
かったとしても、やはり交通費な
らびに法的費用は発生したであ
ろう。しかし、販売手数料は発生
しなかったであろう。」
(表続き)
トピック
事例・質問
討議された見解
FASB スタッフが選択した見解
手数料支払い
の時期
「事例 3: 任意の事業体は、従業員の全
ての署名された顧客契約に対して、4%
の販売手数料を支払う。事業体は、
キャッシュフロー管理上、販売完了時に
手数料の半分(契約価値総額の 2%)を
従業員に支払い、残りの半分の手数料
(契約価値総額の 2%)を 6 ヵ月後に支
払う。従業員は、支払期限が到来した時
点で事業体に雇用されていないとして
も、未払いの手数料を受け取る権利を有
する。従業員は、(契約期間)1 年目の年
初に、50,000 ドルの販売を行う。事業体
は、契約獲得のための増分コストとし
て、幾らを資産計上すべきか?」
見解 A: 「手数料の半分 (1,000
ドル) を資産計上し、手数料の
残りの半分(1,000 ドル)を費用
計上すべきである。」
見解 B. 「手数料は署名された契
約に明確に関連する増分コスト
であり、従業員は未払いの手数
料を受け取る権利を有する。「支
払いの時期は」、契約が獲得さ
れなかったら、コストが発生した
かどうか…については「影響を及
ぼさない。」
「事例 4: 任意の事業体の販売員は、当
該販売員が獲得する各契約について、
10%の販売手数料を受け取る。この他、
事業体の以下の従業員が、販売員の交
渉を通じて獲得された各契約について、
以下の販売手数料を受け取る:マネ
ジャー:5%、地域マネジャー:3%。どの
手数料が、契約獲得のための増分コスト
か?」
見解 A: 「契約を獲得したのは
販売員なのだから、販売員に支
払われた手数料のみが増分コス
トとみなされるべきである。」
異なるレベルの
従業員に支払
われる手数料
見解 B: 「手数料の 全額(2,000
ドル)を資産計上すべきである。」
当事例では、事業体が残りの半
分の手数料を支払うために必要
なのは、時間の経過のみであ
る。一方、従業員に対する手数
料の支払いに影響を及ぼし得る
追加の要因を含む事例も「あり
得る」。例えば、事業体は、従業
員の顧客に対する追加のサービ
スの販売、もしくは 6 ヵ月につい
ての顧客の良好な満足度調査
の完了を残りの半分の手数料支
払いの条件とすることが可能で
あろう。従って、「事業体は、契約
を獲得するための増分コストの
適切な会計処理の決定に際し、
特定の報酬制度を評価すべきで
ある。」
見解 B: 「販売員およびマネ
ジャーに支払われた手数料のみ
が、増分コストとみなされるべき
である。他の従業員(地域マネ
ジャー)は顧客と直接接触しな
かった公算が高いからである。」
見解 C: 「契約が獲得されなかっ
たとしたら、手数料は発生しな
かったであろうことから、手数料
の全額が増分コスである。」
17
見解 C. 「新収益基準は、手数料
を受け取る従業員の職能あるい
は役職に基づいた区別を行わな
い。契約を締結した報酬として、
直接的に手数料を受け取る権利
を有するのがどの従業員かを決
めるのは事業体である。」
スタッフの見解では、複数の支
払手数料を、同一の契約を獲得
するための増分コストと見なすこ
とが可能である。一方、関係者
は、手数料のそれぞれが、多数
の要因に基づくことから増分コス
トにはならないであろう(例えば、
ボーナス等の)変動対価ではな
く、顧客との契約を獲得するため
の増分コストであることを確実に
するよう奨励される(例えば、
ボーナスの決定も、販売以外の
要因に依存する)。
(表続き)
トピック
事例・質問
討議された見解
FASB スタッフが選択した見解
閾値の影響を
受ける手数料
の支払い
「事例 5: 任意の事業体は、販売員が年
間に獲得した契約件数に基づいて、販売
員が受け取る手数料の金額を増額する
手数料制度を有する。内訳は以下の通り
である。:
見解 A: 「手数料は特定の契約
に直接起因するものではないこ
とから、いかなる金額も資産計
上されるべきではない。」
見解 B. 「事業体は、手数料支払
いのための負債が認識されるべ
きかどうかの決定のために、そ
の他の米国会計基準を適用する
であろう。事業体は、負債が認識
される時、手数料について対応
する資産を認識することとなろ
う。これは、手数料が顧客との契
約を獲得するための増分コスト
だからである。事業体は、顧客と
の契約を結んだことに対する直
接的な報酬としての手数料を支
払う義務を有する。事業体の手
数料制度が(全ての契約に 3%
の手数料を支払う制度に対して)
契約のプールに基づくものであ
るという事実は、事業体が当該
顧客との契約を獲得しなかった
としたら手数料は発生しなかった
であろうという事実を変えるもの
ではない。
•
0-9 件の契約 .............. 手数料は
0%
•
10-19 件の契約 ........... 手数料は
見解 B: 「コストは、顧客との契
約を獲得するための増分コスト
である。従ってコストは資産計上
されるべきである。」
1-19 件の契約価値の 2%
•
20 件以上 の契約 ........ 手数料は
1-20 件以上の契約価値の 5%
どの手数料が契約獲得のための増分コ
ストか?
18
付録 B — 事例ならびに分析: TRG アジェンダ・ペーパー第59号
TRG アジェンダ・ペーパー第 59 号に(編集上の微修正を加えて)作成し直した以下の表は、アジェンダ・ペーパーの事例に示されたシナリオ
に関する FASB スタッフの見解の概要である。
事例・シナリオ
事実
分析 — 見解 A
分析 — 見解 B
事例 1
シナリオ A — IT
の外部委託サー
ビス契約
サービス・プロバイダーは、IT の外部委託サービスを
提供するための契約の交渉の一環として、顧客に対
し、100 万ドルの支払いを行う。
顧客に対する支払が交渉されたのは、従業員を解雇
し、外部委託されることとなる業務において現在使わ
れている機器を処分するために、顧客にコストが発生
するからである。契約は、5 年の解約不能期間を有す
る。事業体は、5 年のサービスに対して、顧客が 600
万ドルの手数料を支払うだろうと見積もる。顧客への
支払いは、法的に強制可能な契約 (即ち、顧客は外
部委託契約を約束する時、100 万ドルのみを受け取
るとする契約)に関連して行われる。
前払いは、解約不能の 5
年契約に関連するもので
ある。従って、事業体は、
支払いのために資産を
計上し、5 年の期間を通
じて顧客にサービスが提
供されるに従って、収益
の控除科目としてそれを
償却することとなろう。
見解 A と同じ
事例 1
シナリオ B — IT
の外部委託サー
ビス契約
契約が、どの月についても月末時点で違約金なしに
解約可能であるという点を除いて、事例1、シナリオA
と同様の事例(トピック606の月ごとの契約となる)を
想定する。サービス・プロバイダーは、顧客が契約を
解約する権利を有していても、5年を通じてサービス
の購入を続けるものと想定する。従業員を解雇し、機
器を処分したことを勘案すると、顧客は、社内でサー
ビスを履行するための能力が限られているからであ
前払いは、5 年の契約想
定期間に関連するもので
ある。事業体は、支払い
のために資産を計上し、
想定期間を通じて、(顧
客が行使することが予想
される更新オプションを
考慮し)収益の控除科目
としてそれを償却するだ
ろう。資産は、回収可能
性について定期的に評
価されることとなろう。
現行の契約期間は、僅
か 1 ヵ月である。従って、
前払いは収益の 1 ヵ月
分に対して相殺されるべ
きである。当事例では、
支払が最初の月の収益
を上回る。
前払いは、想定される
(部品)10 万個に関連す
るものである。事業体
は、支払いのために資産
を計上し、想定される個
数が顧客に提供されるに
従って、収益の控除科目
として償却するだろう。資
産は、回収可能性につい
て定期的に評価されるこ
ととなろう。
顧客はいかなる購入を行
うことも要求されていない
ことから、事業体は顧客
との収益に関する契約を
有さない。従って、前払い
の全額が、支払いがなさ
れた時点で、損益計算書
上で認識されるだろう。
る。更に、顧客には、既に多大な設置費用が生じて
いるが、ベンダーの変更に際しても多大な設置費用
が発生することとなる。更に、サービス・プロバイダー
は、他の顧客と同様の契約を結んだ過去の経験か
ら、大方の顧客が契約を解約しないことを知ってい
る。サービス・プロバイダーは、これまで、当該顧客と
の契約から収益を獲得したことはない。
事例 2
シナリオ A — 供
給協定
サプライヤーは、顧客の主力製品の一つの部品であ
る特殊部品を顧客に供給するための 3 年独占供給契
約の交渉の一環として、顧客に 100 万ドルの支払い
を行う。支払は、(契約締結の)奨励(インセンティブ)
として行われると同時に、解約料ならびにその他のコ
スト等、現行のサプライヤーからの乗り換えのために
発生するコストを顧客に払い戻すために行われる。供
給契約は、部品当たり 100 ドルの価格を規定してい
る。顧客は、供給要件の拘束力のない予想を提供し、
契約期間中の、部品計 10 万個の購入(総額 1,000
万ドル)を予想している。サプライヤーは、これまで、
当該顧客との契約から収益を獲得したことはない。
19
(表続き)
事例・シナリオ
事例 2
シナリオ B — 供
給協定
事実
分析 — 見解 A
分析 — 見解 B
当該シナリオでは、支払がなされた時点でサプライ
ヤーが 2 万個の購入注文を受けるという点を除いて、
事例 2、シナリオ A と同様の事実を想定する。ただ
し、サプライヤーは、シナリオ A と整合的に、顧客の
購入量が 10 万個となることを想定する。
事例 2、シナリオ A と同
じ。
現行の契約は、(部品)2
万個に関連するものであ
る。前払いは資産として
計上され、2 万個の部品
が顧客に提供されるに
従って、収益の控除科目
として償却されるだろう。
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